平成17年3月


3月31日(木)

●国語、社会科…新聞は生きた教材! 「教育に新聞を=ニュースペーパー(N)イン(I)エデュケーション(E)」という運動が、わが国で始まって15年。確実にその根を広げているが、この運動を教育面から研究する学会(日本NIE学会)が誕生した▼新聞であろうが、本であろうが、「読む」ことは理解力、思考力、推察力などを育む道と言われる。ところが、いつの間にか、学校でも、家庭でも、この「読む」が重きを失って、その結果、子どもたちを含めて若年層の活字離れ、読書嫌いという現実が提起されている▼確かに、わが国ばかりの現象ではなく、米国、英国なども然り。その対策として生み出されたのがNIE運動。わが国では新聞界が中心になって新聞活用授業などを提唱、その実践校は全国で年間400校を超え、その成果は日本新聞教育文化財団の調査からも明らかに▼NIE授業を受けた後、2人に1人が文章を読むことが好きになったと答え、さらに詳しく知る、文章を書く、漢字を覚える、面でも。新聞の閲覧頻度が多くなってもいる。こうした点に注目したのが、初代会長に就任した横浜国立大の影山清四郎教授ら▼どう活用するか、試行錯誤しながら運動をここまで担ってきたのは、小中高の先生たち。「さらなる広がりを」。そんな課題を背負っている現在だけに、大学が加わる意義は大。「教育」に「研究」という視点が加味されるからで、学会の誕生によってNIE運動は第二の出発点を迎えたと言って過言でない。(A)


3月30日(水)

●「ニートが全国で85万人」。内閣府は先日、こんな実態を推計として公表した。遂にここまできたかという思いを抱くが、さらに驚きを覚えるのは「その人数は増えるばかり」という姿であり、「うち就職を希望しているのは半数の43万人」という現実▼雇用の話に最近よく登場する「ニート」。まだなじみ薄いかもしれないが、イギリスで生まれた言葉。「学生、就業者でもなく、求職活動もしていない人」を意味する。もっと簡略して表現すると若年無業者。厳しさ続きだった雇用情勢もあって社会問題化している▼その実態には様々な見方があるが、就業構造基本調査を基に2年前の時点でまとめられたのが、内閣府が示したこの人数。家事手伝いも含めた人数とはいえ、10年前に比べ18万人もの増加。15歳から34歳までの貴重な労働力85万人が眠っているということである▼確かに厳しかった雇用環境も影響していようが、悩み多いのは個々人の意識にかかわるから。かと言って、放っておけない。これほどまでの人数であり、年金などにも波及するいわば社会問題。事は重大と政府は検討会を立ち上げ、遅ればせながら対策に乗り出した▼国に任せて地方は知らない、というわけにもいかない。函館市も若年者就職サポート対策事業をスタートさせる。考えている方策はカウンセリング、インターンシップ(就業体験)などだが、国、地方にしても求められるのは息の長い取り組み。というのも、短期で解決できるほど甘い問題ではないから。(N)


3月29日(火)

●「遂に…」。結論が出されてしまった。道内唯一の第三セクター鉄道・ふるさと銀河線(北見―池田、140キロ)が、2005年度で廃線、バス転換されることに。残念というしかないが、存廃論議が現実となってほぼ2年、地域財産がまた一つ姿を消す▼十勝と北見・網走を結ぶ大動脈・網走線として誕生したのは1911(明治44)年。今日までの歴史的経過については、漠然としながらも分かっている人が多いはずだが、1961(昭和36)年に池北線となり、国鉄民営化に伴い1989(平成元年)に…▼士幌、広尾線などが線路を外した中で、北海道ちほく高原鉄道(愛称ふるさと銀河線)として再出発した。以来、地域も努力し、高齢者や通学生の足という公共的な使命を担ってきたが、沿線町村の過疎化が進み、車の普及もあって利用実績の落ち込みが続いている▼その結果、経営的には厳しく、三セク移行時にあった経営安定資金など70億円あまりも残りわずか。となれば、将来的な経営展望は難しく、議論は避けて通れない。誰もがそれを否定しないが、釈然としないのは、この議論が「廃線・バス転換ありき」だったこと▼結論まで多少、時間をかけたに過ぎない、とも言える。以前にも触れたが、線路を外すのは簡単。しかし、それは二度と復活しないことを意味する。圧倒的多数で取締役会が廃止を議決した背景に、沿線の苦渋とあきらめがにじんで見えるが、本当にそれで良かったのか。答えはその後の歴史が教えてくれる。(A)


3月28日(月)

●立待岬に春を告げるフキノトウが姿を見せた。卒業記念アルバムを胸に抱いて、子供たちが次々と学びやを巣立っていったが、小6女児殺害事件の学校では卒業アルバムに加害女児の写真を載せなかった。「女児の顔を見ると事件を思い出して怖いから」と▼思い出いっぱいの卒業写真は、何年たっても人生の支えになる。自立支援施設に入っている女児に卒業証書は発行され、希望する児童には女児のスナップ写真を渡したという。悲しい。今年こそは、学校、父母、地域が一体となって、こんな惨事が起きないように、と願いたい▼「イカのおすし」のCDが好評だ。警視庁が子供の防犯意識を促すために考案した標語。ついて「イカ」ない、車に「の」らない、「お」おおごえをあげる、「す」ぐ逃げる、「し」らせる。軽いテンポで「♪イカのおすし イカ イカ いかが」と繰り返す。まず新1年生に覚えさせよう▼事故や犯罪を未然に防ぐため、地域安全マップや地域危険マップを作る学校も多くなった。函館でも桔梗、旭岡、上湯川地区など。昨年暮れに児童誘拐事件があった七飯町では「不審者は許さん」と、子ども110番の家に大きな「のぼり」を設置した▼2月末、金沢市内で見知らぬ男が児童を連れ去ろうとしたところ、一緒にいた同級生4人がリュックでたたくなどして追い払ったというニュースがあった。子どもだけで立ち向かうのは危険だが、団結して大人に助けを求めよう。間もなく新学期。「イカのおすし」を魔法の合言葉にしたい。(M)


3月27日(日)

●「がごめ昆布」に産業面からもスポットが当たっている。都市エリア産学官連携促進事業から生まれた共同出資会社・バイオクリエイト(高野元宏社長)が、世に送り出した商品は今月発売の「がごめ黒酢」を含め既に4品。今後にさらなる期待を抱かせる▼函館・道南の人にあらためて説明するまでもないが、“がごめ”は健康食品と言われる昆布の中でも栄養価は抜群。恵山を中心に函館から南茅部あたりまでの海域に生息し、藻体表面に篭(かご)の目に似た凹凸があるのが特徴で、その篭の目がなまって“がごめ”になった、と▼健康志向に乗って脚光を浴び、ここ数年、商品化の取り組みが活発に。函館で期待を担う同社は、栄養補助食品の「ラミネスト」に続いて化粧品の「アクアスト」「モイスチャークリーム」を生み出し販売を進めているが、今月に入って「がごめ黒酢」も商品化した▼「あっ、ねばる自然のチカラ」「自然のチカラで甦る美しさ」。同社のキャッチコピーだが、まさしく産学官連携の成果。さらに商品化の一方で、料理にも使ってもらうためのレシピ作りも…。函館割烹調理師会などの会員が創作したメニューが間もなく発表される▼こうした動きの中で懸念と言えば“がごめ”の確保。対策として函館市が打ち出したのは増養殖の取り組みで、2005年度から着手する。「十分に水揚げされ、研究開発された商品が支持を広げ、調理にも…。その日が早く来るように」。そんな願いが込められた“がごめ”プロジェクトのこれからが期待される。(A)


3月26日(土)

●桜は日本人の文化と表現する人もいるが、確かに人を魅きつけてやまない。五稜郭公園などで知られる「ソメイヨシノ」だけでも全国の名所は数え切れないほど。それぞれに歴史、物語があり、開花時期は訪れる人を感動の世界へと誘ってくれる▼その桜は松前城公園が教えているように「ソメイヨシノ」ばかりでない。沖縄などでは1月末から緋寒桜、伊豆では2月末に河津桜が咲き始めるが、品種は数多く、開花時期も異なる。その数ある中での全国区はやはり「ソメイヨシノ」▼九州などから開花(花が5、6輪開いた状態)情報が伝わってきたが、気象庁の開花予想によると、今年は全国的に平年より数日程度遅い見通し。16日の情報で出された東北の開花予想も同じ傾向で、盛岡で4月18日、青森で25日。これから推測して函館・道南は4月末か▼1カ月余りをかけて南から北へと全国を咲き抜ける、ということだが、東京の開花予想日である、あす3月27日が何の日か知っているだろうか。実は「さくらの日」。桜への関心を高めてもらうことを目的に、1992(平成4)年に日本さくらの会が制定した記念日である▼そのいわれは「3×9(咲く)=27」という語呂合わせと、この時期が七十二候の「桜始開」にも当たることから。残念ながら、函館・道南の開花時期と重なり合わないが、桜に対する思いを共有できる日の一つ。あと1カ月待つと…。北海道の開花予想(気象庁)は4月6日に発表される。(A)


3月25日(金)

●「国が違えば若者像も違う」などとのんきなことを言っている場合でない。そんな現実を浮き彫りにした調査結果が先日、本紙をはじめ新聞各紙で報じられた。驚きを覚えた人、間違いではないか、と思った人がいても不思議でないほど衝撃的だった▼その調査とは財団法人一ツ橋文芸教育振興会と日本青少年研究所が昨年秋に行ったもので、日本、米国、中国3カ国の高校生の意識や行動の比較。勉強から生活、自分の将来など幅広く聞いているが、そこから浮かび上がったのは「このままでは…」という黄色信号▼データはこう語りかけている。日本人の高校生は「勉強時間は少なく、ボランティア率も低い。さらに国家観は薄く、自分の将来は悲観的…」。いくらなんでもこれが現実とは思いたくないが、数字は正直。とすれば、大事なのはしっかり受け止め、どう考えていくかということ▼高校生の年代は将来に夢を抱いていておかしくない年齢。なのに、希望を抱いている生徒が少なすぎる。それも他国と比較して示されると、淡々としてはいられない。「自分の将来は輝いている」と感じている生徒の率が、3カ国中で最低だったというのである▼米国の46%、中国の34%に対し日本は24%。この姿は「今一番したいこと」にも表れ、好きなように遊んで、何もしないでのんびりと、の率が最も高かったのも日本だった。目標を失っている、確かにそうも言えるし、分析もできるが、この調査結果が問いかけている意味はあまりにも重い。(H)


3月24日(木)

●国の登録有形文化財に、函館から新たに2つの建造物が指定される。函館の面目躍如、そんな思いを抱かせるが、その建造物は函館大手町ハウス(大手町5)と遺愛学院謝恩館(杉並町64)。国の文化審議会で承認され、あとは行政手続きを待つだけ▼歴史的に価値のある建造物を後世に残すのは、今に生きる者の責務。指定文化財はともかく、貴重な建造物となると数多い。それらを都市開発などの波から守っていく制度として設けられたのが、この登録有形文化財。10年ほど前の1996(平成8)年の10月だった▼それから今日までに登録されている建造物は全国で3752件。函館からは五島軒本店旧館(平成9年5月)を皮切りに、道教育大函館校北方教育資料室(平成12年4月)、函館中華会館(平成13年4月)や遺愛学院の建物2棟を含め6件が登録指定を受けている▼既に詳しく報じられたが、新規指定の函館大手町ハウスは1918(大正7)年建築の木造2階建て。石造り風の重厚な雰囲気の建物として知られる。遺愛学院謝恩館は1922(大正11)年建築の、同じく木造2階建て。胴蛇腹の軒先、連窓などが歴史を伝えている▼函館の国指定文化財は20件。特別史跡の五稜郭跡(昭和27年)のほか、重要文化財は旧函館区公会堂(昭和49年)など5件。さらに史跡、名勝、重要有形民俗文化財、重要伝統的建造物群保存地区などが。いずれも貴重な、函館の誇れる地域財産。大事に維持してきた人たちに感謝して余りある。(A)


3月23日(水)

●物事を判断する目は、その後の動きなどによって、微妙に変わっていく。それは大人ばかりか、年代に関係なく。社会で起きた出来事をどう見て、どう感じているか、高校生を対象にした東洋大学の「現代学生コラム」からも、その一端が垣間見える▼昨年末にまとめられた「論じ方の変化」が分かりいいが、事例として取り上げられた「イラク戦争」をたどってみると…。最初の頃には戦争反対や平和の大切さを訴える「戦争=悪」が多かったのが、邦人3人の人質事件を境にして論調に変化が表われ始めたという▼具体的にどう動いていったかだが、次は「背景を深く考察すべき」などが多く、さらにアメリカ政府や日本政府批判などへと移り、その後は「戦い続けることの無意味さ」などを主張するように、と。そこからのぞくのは事態の変化、新たな情報などが持つ影響力…▼こうした受け止め方、感じ方の変化は、長崎の小6同級生殺害事件に関しても言えるという。発生当初の戸惑いや不安を語る内容から始まり、1カ月後あたりになるとネット社会への警鐘や親・大人批判が増え、2カ月後ではむしろ加害者に対する思いなどが目立つように▼このプロセスは、時間の経過によって論理性が育つから、と考えれば分かりいいが、逆にそこから生まれるのがメディア批判。それは報じられることが自分たちの感性、認識とは違うという問いかけかもしれない。7000編を超す応募(2004年度)が予想される「現代学生コラム」に教えられることは多い。(H)


3月22日(火)

●地域イベントで大事なのは「他都市との差別化」であり「市民の共有財産意識」。よく耳にする話だが、2週間ほど前、函館大学で開かれた「『函館』まちづくりフォーラム」で、調査結果を踏まえ日野隆生助教授が提起したポイントも、そこにあったように思う▼確かに、どこでも実施できるイベントではアピール度が弱い。そうは言いながら、独自性を見つけられずに苦労している市町村が多いのだが、その点、函館は恵まれている。他都市がまねできない都市環境を備えているから。それは野外劇を頭に描くと分かりやすい▼もちろん、このフォーラムで取り上げられた塩ラーメンサミットやクリスマス・ファンタジーもそう。「差別化」を「オンリー・ワン」とか「らしさ」という言葉に置き換えてもいいが、この両イベントは他都市では似合わないし、育たない。「らしさ」があるイベントだから▼なのに、この両イベントは、今年の継続開催という点で明暗を分けている。塩ラーメンサミットの中止が打ち出されたからだが、それは「函館にとって必要なイベントかどうか」という地域への問いかけでもある。仕方ない、と片付けていいのかどうか…▼どんなイベントもそうだが、立ち上げは大変。資金の問題や準備など、地域の活性化を考えたと映るイベントとなればなるほど、関係者の苦労は計り知れない。「せっかくここまで…。もったいない」とならないように。地域の支えが必要と言われる理由はそこにあるが、フォーラム実行委員会からのメッセージもそう聞こえてくる。(A)


3月21日(月)

●「確かにそうかも…」。自殺は月曜日と早朝に多い、という厚労省の統計分析結果を見て抱いた思いだが、不思議に納得できる。学校にしても、職場にしても、ふさいだ気持ちでいる時など、特に休み明けは気重さが増幅する、そんな思いと重なり合うから▼新聞各紙が報じたのが1月末だったから、忘れかけている人もいようが、様々な角度から自殺の分析を試みた一環。2003年の自殺者を対象に曜日や時間別などで探った結果、明らかになったのは曜日別で月曜日が最も多く、土曜日や祝日は少なくなるという姿…▼また、時間別で男女に共通して多いのが午前5時、6時台の早朝。夜眠れずに、人目を避けて、ということか、はたまた一日が始まってしまうという思いから、とも受け止められるが、さらに生活スタイルが関係するのか男性では真夜中、女性では午前中も多い傾向▼月別では4月、5月の春の季節に多く、例えば4月を例にとると一日平均103人。自殺とは読んで字のごとしで、自ら殺すこと、自ら命を絶つこと。そこに至る事情や理由は他人にはうかがい知れぬが、つらい思いは周りの人も一緒。そんな悲しみが増えている▼10年前には年間2万2000人台だった。それが倒産、リストラなどの嵐が吹き荒れ始めた1998(平成10)年からは3万人を超えるレベル。ちなみに2003年は3万4427人。子どもから大人まで総ストレス社会と言われる現代、この分析はその悩める社会の一端を浮き彫りにしている。(N)


3月20日(日)

●冬枯れの樹木もいつまでも枯れているのではなく、春になれば芽生えて花が咲く。厚い氷も解けて流れ出す。物には永遠不変の性質などない。同様に一生涯悪人であり続ける人間などいない。物に定まれる性なし、人、何ぞ常に悪ならん(空海)▼地下鉄サリン事件を起こしたオウム真理教の松本智津夫(麻原彰晃)被告。チベット密教を取り入れて高学歴の若者を次々と信者に。殺人を正当化する「ポア」を説法。グルの命令なら何でも実行する修行法。悪に走ったのは修行中に死亡した信者の事故を隠したのが発端▼そして10年前の3月20日午前8時すぎ、東京の5本の地下鉄に猛毒サリンの入った袋を傘で破り散布した。ラッシュ時の通勤客や駅員ら12人が死亡、サリン中毒症は5500人を超えた。逮捕者39人のうち、松本被告ら12人に死刑判決、5人に無期懲役の判決が言い渡された▼日本で初の無差別テロ事件。しかも修行中の「ワーク」と呼ばれる作業の感覚で実行。逮捕後の松本被告は「無言の業」。被害者や遺族への謝罪の言葉もなく、最近は心身ともに衰えて、仏教でいう「九相(人間が死滅していく段階)」寸前の状態。空海の「何ぞ常に悪ならん」の願いは最期まで届かなかった▼教団はアーレフに改称しても信者が温熱修行で死亡するなど事件が絶えず、麻原回帰の動きもある。米国は改称してもオウム真理教の名でテロ団体に指定している。10年たっても多くがサリン中毒症で苦しんでいる。米国の同時多発テロのように、国は賠償などで被害者を救済すべき。この事件を風化させないためにも…。(M)


3月19日(土)

●消費者から厳しく問われている食の安全・安心。食料基地を標ぼうする北海道には、とりわけ提起されているテーマで、道も農水産業から食品製造分野まで取り組みの徹底を啓蒙している。その北海道で…。信頼を揺るがす出来事が起きてしまった▼テレビや新聞で報じられているが、ポテトチップス製造の子会社が17日、道警の強制捜査を受けた。ジャガイモの種イモを植物防疫法に基づく検査を受けないまま契約農家に栽培させていた疑いで。その畑で害虫が発生したことから未検査の疑惑がとりざたされて…▼食用、加工用を含め北海道はわが国最大のジャガイモ生産地。作付面積では全国の65%ほど、生産量では70%強のシェアを占めている。種イモの管理が厳しく規制されているのは、シストセンチュウ(畑の天敵とも言える害虫)との長くて大変だった戦いの歴史があるから▼シストセンチュウは、根の養分を吸い取るため収穫量を減らすばかりか、根絶が難しく、畑の回復に時間がかかるなど極めて厄介な害虫。10年近く栽培が制約されるとさえ言われるほど。種イモの厳しい検査体制が整えられた結果、発生が抑えられてきた▼確かに、食べても害はないとされているが、今、生産現場が問われているのは、法の順守はもちろん栽培過程なども公開し、胸を張って出荷する姿勢。食への信頼はそこから生まれるからで、その信頼を損ねた責任は極めて重い。18日付本紙の「『食の王国』汚される」「道内関係者 ブランド失墜懸念」の見出しは、少しも大げさでない。(N)


3月18日(金)

●「育」がつく言葉は、人間を育てる、という意味において使われることが多い。それをひとくくりに表したのが「教育」だが、「体育」「知育」「才育」「徳育」は昔からある言葉。近年よく聞くようになった「食育」もけっして新しい言葉ではない▼農林水産省「消費者の部屋」には「食育という言葉は明治時代以降、体育や知育と並ぶものとして用いられてきた」という記述がある。なのに改めてクローズアップされてきたのは、朝食抜きや偏った栄養摂取など、今の時代に食生活の乱れ、食材の問題があるから▼「現代用語の基礎知識」(自由国民社刊)に「食育」の記載がある理由もそこに。現代の課題とも言われるが、そんな中、聞き慣れない「木育」(もくいく)なる言葉が登場した。字体からある程度の察しはつくが、「木とふれあい、木に学び、木と生きる心を育む」という意味▼子どもの頃から木を身近に感じ、木や森とのかかわりを通して豊かな心を育む取り組み、ということだが、その「木育」に力を入れているのが、ほかならぬ北海道。平成16年度協働型政策推進事業の一つとして決定したのを受け、具体策などを検討している▼その中心となっているのが、公募メンバーらにより昨年8月に発足した木育推進プロジェクトチーム。今月末までインターネット会議室で意見を求めているほか、19日には札幌でフォーラムを開く。木や森林が持つ効能を、心を育む手立てに…。「木育」はそんなメッセージを発している。(A)


3月17日(木)

●エア・ドゥ(北海道国際航空)が、あす函館―東京(羽田)に就航する。「北海道の翼」として新千歳―東京に登場したのは1998(平成10)年。「函館への乗り入れも早く」という願いは6年余りで実現、函館での歴史を刻み始めようとしている▼新しい航空会社を立ち上げて安い航空運賃を実現させよう、エア・ドゥは、そんな道民の思いに後押しされて誕生した。経営を巡り厳しい現実に直面しながらも、その精神を守り、苦しかった再生計画達成に花を添えるのが、一昨年7月の旭川線に続く函館線の就航▼どんな業種にも言えるが、競争相手が多いほど利用者の選択肢は広がる。エア・ドゥ就航の地元メリットもそこに。しかも「道民割引」など数多くの運賃提案をし、就航地の情報発信などを担ってくれる航空会社なのだから。既にその取り組みが展開されている▼東京の私鉄での電車内広告のほか、銀座で行った大規模な函館キャンペーンもしかり。さらに、この11日に披露されたが、投入する機体に「世界一夜景の美しい街 はこだて」の文字を大きくペイント。ホームページでは観光を中心に函館情報を提供している▼「地域が元気になれば地域が潤う。私どもはそのお手伝いをさせていただく」。本紙のインタビューで滝沢進社長はこう話しているが、これらの取り組みはその実践であり、読み取れるのは「地域とともに」の姿勢。それにどう応えていくか、函館線の就航は地域にそう問いかけている。(A)


3月16日(水)

●ドーン・レイド(暁の急襲)、焦土作戦、TOB(公開買い付け)、新株予約権、議決権ベース…。聞き慣れない証券業界の用語が朝夕の新聞に躍っており、主役「ホリエモン」のお陰で株取引や商法の世界が近くなった▼ラジオ局ニッポン放送をめぐる三すくみの株買収劇。焦土作戦(戦術)は戦争の時、よく聞く。広辞苑には「退却する際、施設や資材が敵軍に利用されないように破壊する」とある。証券界ではクラウンジュエル(王冠に付いている宝石)と言い、買収対象企業の資産や子会社を売却するなど、企業価値を低下させるのが狙い▼高校生の頃、部品を買ってラジオを組み立て、よくラジオドラマや歌を聴いた。ラジオはメディアの原点。花形のIT産業が新しいメディア形態を求めて新規参入することは歓迎するが、今度の買収劇で動いた資金は双方で1000億円を超えるらしい。マスコミ界を巻き込んだ訴訟合戦が悲しい▼弱虫のび太に泣きつかれて四次元ポケットから「どこでもドア」を取り出すドラえもん。「むやみに使っちゃいけない」とクギを刺すが…。荒っぽい買収劇を見せた若き挑戦者からは、メディアの社会性に対する考え方が見えてこない。「どこでもドア」のように未来への夢と希望がほしい▼かたや不祥事で受信料拒否が増えているNHK、今月末には約70万件になる。真面目に口座から引かれている年金生活者はどうなるのか。「信用回復に努力する」だけでは情けない。視聴者あってのNHK。一般の株主があっての放送局。メディア界に吹き始めた新しい風から目が離せない。(M)


3月15日(火)

●架空請求というか不当請求というか、まったく身に覚えのない債務などを押し付けてくる事犯が後を絶たない。もっともらしい組織を名乗り、もっともらしい文章で…。悪質極まりない詐欺行為だが、消費者センターなどの相談は増え続け、大きな社会問題▼国民生活センターの2004年消費生活相談10大項目でも「架空請求の相談が急増」が上位に。実際、北海道、函館・道南でも増えている。対策は「しっかり是非の確認を」ということに尽きるが、その組織が不当請求業者か否か、それを調べることから始まる▼そのリストは同センター、道などで公表しており、調べるのは簡単。ホームページ(HP)でも明らかにしている。北海道は消費生活条例(第17条の2第2項)に基づき、昨年11月18日から「不当請求事業者名等の情報提供」というタイトルで。その数すでに60余にも…▼認可法人とか認定法人、企業弁護会などをうたい、○○回収機構、○○法律事務所、○○管理局、○○事務局、○○通告センターなど、確かに紛らわしい名ばかり。住所が記されているほとんどは東京。HPでは、はがきなどの実物写真を載せているから、照合する手もある▼ただ、問題は道にしても、いかに早く不当な業者と認定し、公表できるかということ。「従来の3カ月は遅過ぎる、もっと早く」ということで、道は独自の判断基準を設け、認知から10日程度で公表する体制に。こうした悪質犯罪撲滅の決め手は被害をなくすこと。そのためにも、住民への情報提供のさらなる充実が求められる。(N)


3月13日(日)

●公私、身の周りを見渡しても“動き”が激しい。そんな時代が故に「状況に合わせて…」とか「時代の変化に合わせて…」という話をよく耳にするが、その「変化や状況、時代に…」というのが簡単なようで難しい。とりわけ組織においては▼大小どんな組織でも今の姿になったには、それなりの理由がある。少なくてもその時に「一番いい」という判断があったはず。でも、それは「いつまでも」ということではない。直面する事態、取り巻く環境の変化によって変わって当たり前だが、往々にしてそれがなかなか…▼変えようとしている間に、また変化があって、という話は特別ではなく、テンポが合わないまま、さらに遅れて、ということも。そう言われるのが官公庁、特に国の機関点々。確かに機構改革するにしても、法令や条例の改正が伴うからどうしても時間がかかるという事情は分かるが、それにしても▼そうした中で、道や市町村では変化の兆しがうかがえる。間もなく機構改革の時期を迎えるが、渡島支庁がいち早く道新幹線推進室の設置や、課題の食の安全や観光対策を進めるための新たな体制を打ち出したのは一例。市町村にも例が多い▼民間でも、官公庁でもそうだが、スリムな中で効率的な運営が求められる時代。組織を硬直化させてはならないということを意味するが、国の機関に問われているのは「…に合わせて速やかに」という姿勢。それも受け身でなく、主体的に。今の時代、変化は否(いや)応なしに押し寄せてくるのだから。(N)


3月12日(土)

●「そうだよ、こういった連携をもっともっと…」。そんな思いが込み上げてきたのが海保と気象台の連携話。先日の本紙にも掲載されていたが、第一管区海上保安本部が航空機から写した火山(火口)の熱画像データを気象台に提供するという▼「国の行政機関は縦割り過ぎる」。よく指摘されることだが、その壁は行財政改革が叫ばれる今も厚いまま。「頼まれれば応じる」までは来ているが、そこから一歩進めた対応となるとなかなか。この連携話も当然のことで特記するに当たらないという人がいるかもしれない▼だが、ここは素直に受け止めたい。というのも、道南は駒ケ岳を抱えている地域だから。カメラを設置するなど地上(斜面)からの観測体制はとられているが、上空からの術(すべ)は気象台も日常的に持っていない。今回の提携では海保がそこを補完してくれる▼所属の航空機は海上巡視のため毎日のように北海道近海を飛行、火山の上空や付近を通過することもある。緊急時でなければ、火口温度の撮影を担うことは可能。航空機にサーモグラフィー熱画像の撮影装置を装備しさえすれば、そう難しいことではない▼提携内容は海保が月に1回程度、定期的に写した熱画像データを気象台に提供するのが基本、ということだが、それだけでも違う。確かに火山の観測機器の性能はアップしている。ただ、それはあくまで地上観測の話。上空からの観測、そこからのデータが欠けていたのは事実であり、海保の姿勢は評価されていい。(A)


3月11日(金)

●それは60年前のきのう3月10日だった。新聞、テレビで報道されていたから、思い出した人もいようが、東京が米軍の大空襲を受けた日である。夜中から焼夷弾の嵐にさらされ、街は焦土と化し、死者は10万人、被災者は100万人とも…▼戦争に大義はない。その思いは誰もが認識するところだが、何より糾弾されるのは罪のない住民を巻き込み、無差別爆撃(空襲)へと走ること。なのに、世界は過去の教訓を生かし切っていない。それは今なお尾を引くアフガニスタンやイラク戦争が如実に物語っている▼だからと言って、戦争のない世界を、という問いかけを諦めてはならない。そのためにも、わが国が犯した事実を含め歴史体験を伝えていかなければ。この年、8月の終戦までに、東京をはじめ九州から北海道まで全国でかなりの数の都市が空襲を受けた事実も、その一つ▼函館は…。7月14、15日だった。「…アメリカ海軍機動部隊の攻撃を受け、本州と北海道を結ぶ青函連絡船の基地でもある函館市は大きな被害を受けた」。函館市史の記述だが、青函連絡船12隻が全滅したほか、死者79人、焼失家屋384戸の記録が残っている▼青森は2週間ほど後の28日。死者700人を超す、それは大規模な攻撃だった。戦争で命を奪われるのは住民ばかりでない。戦争のたびに、どれだけの人が戦地で命を落としたことか。この事実を風化させないためにも語り継いでいかなければ。函館では7月14、15日も。今年はそれから60年になる。(Y)


3月10日(木)

●泣きやまぬと床に叩(たた)きつけるなど子供への虐待が絶えない。先日も3歳の男児を裸にして浴槽で水死させた30歳の母親が逮捕される(東京)という事件が。生後8カ月の時に窒息状態で病院に運ばれたり、昨年夏にはマンション5階から落とされたりしている▼大阪では7年前に4歳の男児が、母親と元夫から棒で殴られ死亡していたことが発覚、11年前にも4歳の兄が死んでいる。児童相談所は保育所からの通報で虐待の可能性を把握、施設へ強制入所させる矢先だったというが、子供の命は守られなかった▼誰にでも訪れる「死」を感じることで「生」見つめ直そうという模擬体験が先ごろ、あった。「心臓が止まり、魂となって天井から自分の姿は見えますが、そこには自分はいません」と告げられ、9人が白装束を着て、自分の死をイメージして代わる代わる棺(ひつぎ)の中へ▼読経が流れる中、参列者は焼香をあげて合掌。死を恐怖するのか、生きる意味を確認するのか。体験した中2男子は「わずか4分だったけど、棺に入っている時間は長く感じて、このまま本当にこの世とお別れになるような気がした。生涯に一度の貴重な体験ができたと思う」と▼大半は「頭が真っ白になって、生きることだけを考えた」という。虐待を受けた3歳児も、4歳児も同じ思いだったに違いない。しかも産んでくれた親が「同居している男性から、子供と一緒では幸せになれない、と言われ、殺した」とは、何たることか。子どもが犠牲になる、悲しい事件が多過ぎる。(M)


3月9日(水)

●「男だって簡単な料理ぐらい覚えておかなければ」。若い時ならまだしも、ある程度の年齢になると確かに言える。特に第一線を退いた後はたっぷり時間もある。現役時代のように「男は仕事」と強弁し「家のことは知りません」というのも…▼60歳以上の人を対象にした生活調査などによると、社会性は女性の方が上。趣味などの活動、ボランティアへの参加、旅行などにしても、男性より女性が行動的。男性の付き合いは往々にして仕事に絡み、結果として離職すると夫は家、妻は外出という構図も▼年齢が高くなってくると、妻が病気になったりすることもある。そうした場合に「何もできません」は心もとない。スーパーには出来上がりの食品があふれ、少しも困らないと言われればそれまでだが、ある程度の料理をこなせると、気分は違うし、楽しみも広がる▼そういうことだろう、東京など大都市では60歳を過ぎた男性が料理教室に通い始めているという。料理教室も事業の柱に位置づけているベターホーム協会(東京)では15年前に350人だった男性の受講者が、1999(平成11)年には10倍の3900人に増え、さらに昨年は4500人に▼そのうち46%が60歳以上。ということで、4月から全国18カ所で60歳以上の男性に絞った教室をスタートさせるそう。残念ながら函館地域での開設はないが、この動きは今の時代に需要があることの証し。健康管理のためにも料理は出来るに越したことはない、確かにそうだ。(H)


3月8日(火)

●渡島支庁は新年度の地域政策推進事業として新規に「大千軒の森・ブナの里づくり事業」を打ち出した。道内では黒松内が北限と言われるブナ林だが、それだけに価値が。福島、松前、上ノ国のブナ林を活用した振興策を模索するという▼森林には人間に安らぎなどをもたらす保健休養機能があると言われる。ヨーロッパなどに後れを取りながらも、森林浴が日本にも登場したのは20年ほど前。そのスポットとして脚光を浴びた一つがブナ林。誰もが知る白神山地(青森・秋田)は、いわば象徴的な存在▼森林の中をゆっくり散策する、確かにそれだけで気持ちがリフレッシュしてくる。「森林には気分の落ち込みや疲労などを軽減させ、心も体もリラックスさせる効果がある」。効能解説に見られる記述だが、自然のオゾンに洗われる、そんな言い方もあながち大げさでない▼忙しく、神経をすり減らすことの多い今の時代、森林浴を医療面からアプローチする動きが。森林セラピー。「心や体を健やかにする森林療法」だが、ドイツなどでは当たり前に。生み出された幾つかの療法が着目されているが、本格的な取り組みの機運は道内でも…▼昨年11月に設立準備会が立ち上がった北海道森林セラピー研究会。正式発足に向けての検討が行われている。そうしたタイミングの中で打ち出されただけに、このブナの里づくりへの期待は、森林セラピーの視点からも大。道南は林業振興、森林啓蒙の大事な要素を持っており、試みるに値する所であるはずだから。(H)


3月7日(月)

●雇用情勢の報道や解説に、必ずと言っていいほど「ミスマッチ」という言葉が登場する。2月末の本紙でも1月の道南有効求人倍率の記事で「ミスマッチ続く」という見出しがあったが、適切かどうかは別に、ここ数年、雇用関連記事に出てくる言葉▼その意味は国語辞典をひもとくまでもなく察しがつく。参考までに日本語大辞典(講談社刊)によると「組み合わせで釣り合わないこと。不適合。食い違い」。その現実が雇用情勢にあるということだが、現代用語の基礎知識(自由国民社刊)でも取り上げられている▼「雇用のミスマッチ」としておおむねこんな表現で。「求人企業、求職者が互いに求めるものが一致しないと、企業は必要な人が集まらず、逆に失業者は再就職できないという状況が生まれる」。分かりいい説明だが、その度合いは高まるばかりという指摘は大げさでない▼どんなミスマッチがあるのか、ということだが、これが結構あって。例えば、求人が多い業種(職種)と求職が多い業種(職種)が一致しない、求人側で求める年齢要件と求職者の年齢がかみ合わない…。実際に「あの仕事に」とか「年齢が」などの話はよく耳にする▼確かに、求人側にせよ、求職側にせよ、それぞれに選ぶ自由がある。働いてもらいたい、働きたい、という思いが通じ合わなければ、その雇用関係は長続きしないのも現実。加えて今や価値観というか、考え方が多様化している時代。「雇用の…」に関連する「ミスマッチ」の根はかなり深い。(N)


3月6日(日)

●函館市が掲げる将来構想として、真っ先に上げられるのは国際水産・海洋都市構想。海に囲まれ天然の良港を持つ環境、さらには学術機関の有無などを考慮すると、他都市の追随を許さない函館ならではのプロジェクト。各方面からの注目度も高い▼…海洋都市…、響きいい。そのネーミングから目指す方向も読み取れるが、漠然とした程度でも市民の間で知られているかというと、意外やそうでもないようで。函館市都市構造研究会が行った市民アンケートの結果によると、認知度は半数強の56%だったという▼ちなみに構想では主要施策として「観光と学術・研究の融合」「水産・海洋と市民生活の調和」などを打ち出しているが、市民が重視する姿として浮かび上がった思いは…。「自然・住環境重視の都市」が最も多く60%。「国際水産都市」「国際観光都市」の順だった▼観光都市とも言われる中で、市民が強く意思表示したのは、自然・住環境重視ということだが、それは生活実感からの希望であり、経済や雇用を何とかしてほしいという思いが強いことの表れ、という見方も。確かに、海洋都市とか言われても姿は頭に描きづらい▼それにしても、この調査で気になったのは、まちに対する満足度の低さ。「満足・ほぼ満足」は39%しかない。将来よりも今、市民の思いは常に現実にありということだろうが、それは将来像をどう理解させていくか、という問いかけとも言える。「努力をさらに」。調査結果はこのメッセージを伝えたかったに違いない。(A)


3月5日(土)

●夜明けは徐々に早く、日暮れは遅くなって、近づく春の気配。例年に増して雪は多く、気温もまだ低いが、日中の時間が長くなるだけで気持ちも何となく…。毎年この時期になると「明るい時間を大事に使わなければ」といった思いを抱く▼朝は早起きしてウオーキングなど、帰宅した後に何かを。冬の厳しさからの解放感が抱かせる思いなのだろうが、そのためには朝でも、夕方でもまとまった時間がある方がいい。省エネ対策など他にも理由はあるが、そこから浮上し、注目されているのがサマータイム▼ご存知のように、夏の間だけ時計を1時間進め、昼の時間帯を有効に使おうという社会制度。欧米で定着しているが、確かに午後4時に仕事が終わると、暗くなるまで3時間ある。わが国でも戦後の1948(昭和23)年に採用されたことがある。4年ほどで終わったが▼それから50年。戦後直後と比べものにならないほど社会も成熟してきた。数年前から単発的ながら採用論が起き、昨年は7月だけだったが、札幌で200社ほどが実験したのは記憶に新しい。経済界などにも少しずつながら採用認識が広まり、国会では法案化の動きも▼先日の朝日新聞は「超党派の議員連盟が議員立法を準備している」と報じていた。当然、準備期間をおいて、ということになろうが、急ぐべきは「やってみようよ」という共通認識づくり。そのためにも今年は実験、試行の輪を広げる年としたい。もちろん北海道でも、函館・道南でもだが…。(H)


3月4日(金)

●「熟監(つらつらかんがみ)るに、銭湯ほど教諭(おしえ)なるはなし。湯を浴びんとて裸形になるは、さらり無欲の形なり。欲垢と梵悩と洗清めて浮湯を浴びれば…」。式亭三馬は「浮世風呂」で銭湯の効能を説く。かつて寺院や伽藍では病人や貧しい人のため、温室(うんしつ)や浴堂を開放した▼二股らぢうむ温泉(長万部町)の巨大な「石灰華ドーム」(道の天然記念物)は珍しく、世界では米国イエローストーンのマンモス温泉にあるだけ。ホームページによると、泉質は塩化物泉と放射能泉、効能は神経痛、リウマチ、婦人病、アトピー、椎間板ヘルニア、糖尿、肝臓、腎臓など▼この温泉を経営する会社が広告用のポケットティッシュに「心電図異常、ヘルニアは100%治ります」「脳溢血(いっけつ)による言語障害、半身不随はほとんど治ります」と書いて配布。景品表示法違反の疑いで、公正取引委員会から警告を受けた▼乳白色の白骨温泉では色が薄くなったため草津温泉の入浴剤を使ったり、他でも湧出量が減って水の沸かし湯にしたり、など温泉をめぐる騒動が続いたが、温泉効能での警告は全国初。会社も行き過ぎを認めているということだが、温泉ファンとしては残念▼「椎間板が楽になった」と友人が言うように全く効能がないわけではないが、温泉に入ったから病気が100%完治するとは…。誤解されやすい表示(広告)はやめた方がよい。温泉も限りある自然資源。湧出量は、効能は…。正しい情報の中で湯の香を楽しみたいものだ。(M)


3月3日(木)

●「カロリーベース」でも「生産金額ベース」でもいいが、問題の本質は何時いかなる時も安定的に食料を確保できる体制(自給率)をどう作っておくかということ。どの算出方式を採るかは末節なことなのに、役所という世界はそこが大事らしい▼農水省は3月に閣議決定する「食料・農業・農村基本計画」の中で、自給率の目標として従前の「カロリーベース」に「生産金額ベース」も加えることにした。なぜ、今…。「少しでも高めに映るように」。この裏に農水省の意図がどうも見え隠れして仕方ない▼というのも、2003年を例にとると「カロリーベース」の自給率は40%だが、「生産金額ベース」では70%だから。農水省には踏み切るだけの理論武装があるのだろうが、ここにきて持ち出す意味は、と考えると唐突感は否めず、うがった見方が頭をもたげてくる▼再三言われるように、わが国の食料自給率は、この30年で大幅に落ち込んだ。実際に「カロリーベース」でも1960年代には70%レベル、今から20年前でも50%超だった。それが「食料安保」という言葉も懐かしくなるほどに、今や先進国の中でも際立って低い国に▼だが、何とかしなければ、と苦悩するだけで、決め手を欠いたまま。これでは2010年度までに45%(カロリーベース)までにする目標も白々しく映るだけ。まだ5年あるのに、あっさりと諦(あきら)めて、この基本計画ではさらに5年先送りすることに。計画や目標の信頼性が揺らぐ判断だが、これが今の農政と思うしかない現実が悲しい。(A)


3月2日(水)

●青森市で進む「おでんの街」構想。地元で培った味で、青函連絡船の逸話にも登場する「しょうがみそ」のおでんを全国に、という取り組みだが、その最初の具体的行動として3月末に小田原市(神奈川県)で開かれるおでんサミットに参加するという▼この「おでんの街」構想は、単なる街おこしでない。6年後の東北新幹線青森開業の決定を受けて、というただし書きがつく取り組みで、経済界が即立ち上げたプロジェクト。観光客にも分かるおでんレシピを作ったり、今は「青森おでん会」の設立準備中▼新幹線の開業は地域経済活性化のチャンスと言われる。陸の大動脈であり、それは観光を例に考えると分かりやすい。ただ、黙っていて成果が転がり込んできはしない。地域がどう共通認識を育み、どう戦略を練り、どう行動するか、が鍵を握ると言われるのはそれ故▼伝統のおでんは青森が開業に合わせた地域おこし策として目をつけた一つだが、これとて1年やそこらで全国区に定着させられるほど甘くはない。だから地域の共通認識づくりだけでも早めに、と言われるわけだが、函館開業までに与えられている時間はおおむね10年。長いようで長くはない▼ましてや幾つかの市町村にまたがる話。函館市が、大野町が、などと言っている場合でない。「この間に考えなければならないことがたくさんある。道南地域としてどう考えるか、その母体づくりだけでも急ぎ、地域の総合力を結集しなければ…」。日銀函館支店の山澤光太郎支店長が先日、ある会合でこう問いかけたが、確かにご指摘の通り。誰が聞いてもうなずくしかない。(H)


3月1日(火)

●「おさな子はマリアが母としてほこらかに思う我が子であり、同時に神であることを知っていた。マリアはおさな子を抱えました」(聖エフレム著「聖母賛歌」)。おさな子を抱っこする慈悲深い聖母マリア像をみていると、時間がたつのを忘れる▼「おうちの全員に抱っこしてもらいましょう」。ある小学校で1年生の担任の先生が「抱っこ」の宿題を出した。下校した児童たちは恥ずかしげに家族に「抱っこして」。祖父母、母親、勤め帰りの父親が次々と腕や胸の中に包んでくれた。照れつつ抱き上げる、コアラのようにしがみつく▼安心する抱っこ、慰める抱っこ、愛情を伝える抱っこ、会話をする抱っこ、自制心を育てる抱っこ…。日本抱っこ法協会は、活用例に「引っ込み思案、我慢ができない子どもの問題に取り組むために」「先生が子どもの学習意欲をもたらす情緒の安定をはかるために」なども挙げている▼児童たちは「また抱っこの宿題があったらいいな」と抱っこの作文や詩を書いた。ある父親は「きょうも抱えてクルクル回してやりました。宿題でなきゃ、子どもも言い出しにくかったのでは」と目を細める。美智子妃は「1日1回はしっかり抱いて下さい」と公務で海外に出かけられたという▼皇太子さまも先日の会見で「可愛がられ抱きしめられた子どもは、世界中の愛情を感じとることを覚える」と話された。虐待や子を見放す暗い世相。「ゆとり教育」の見直しが叫ばれているが、抱きしめて、生命のぬくもりを伝えてくれる「抱っこの宿題」をもっと広げたい。(M)


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