平成18年9月


9月30日(土)

●「善も悪も親から譲られる。僕は悪だけを譲られた。自分がどんな人間かを知りたいんだ」「愛されないほどつらいことはない。愛されないと心がねじける」「僕をバラバラにするのか。ああ言ったり、こう言ったり。みんな言いたいことを言っている」▼51年前の9月30日、夕闇迫る米国西海岸の街道。疾走するポルシェが対向車線から飛び出してきた車と激突。ポルシェを運転していたのは、反抗的な若者のシンボルとして人気絶頂の俳優で24歳のジェームス・ディーン。救急車で泣き声をもらしていたというが、病院に着く前に絶命した▼空前の好景気に沸く当時の米国は、競うように家を建て電化製品をそろえたが、父親の権威の失墜や親子の断絶、家庭崩壊が始まっていた。幼くして母の死を体験し、父とも別れたディーンは「エデンの東」で父親に反抗する青春を、「理由なき反抗」で不毛な青春の反逆を演じた▼核家族や少子高齢化に伴い校内暴力や虐待、飲酒運転が急増している最近の日本の現象と重複する。「理由なき反抗」撮影後のディーンは、酒やマリファナで荒れるなど、実生活はすさんでいた。「動物園みたいな家に戻るもんか」と、悲しい奈落へ流されていく▼でも、ブルージーンズ姿の演技は、若者をとりこにした。エルビス・プレスリーもディーンにあこがれ、冒頭のセリフなど一語一句覚えたという。「善悪は親から譲られる」は、半世紀たっても生きている。親をも殺害するという非家族化の時代。いま一度、彼の映画を観て親子のあり方を再考しよう。きょう30日はディーンの命日―。(M)


9月29日(金)

●「独禁法違反事件の事件記録は利害関係人には全面的に開示されて然るべき」。この主張が今年2月の東京地裁判決に続き、控訴審の東京高裁(27日)でも認められた。誰の目にも当たり前としか映らないことだから、全面勝訴といっても当然で…▼当社が何故、この行政訴訟を提起したか、については説明が必要かもしれない。北海道新聞社から創刊妨害を受けたとして、当社が独禁法違反(新規参入妨害)で同社を公取委に申告したのは広く知られているが、家宅捜索などを通して公取委が入手した証拠は数多くある▼求められて当社も幾つか提出している。ところが、同社は公取委の排除勧告を不服として審判に付し、公取委と争うという構図に。その審判の中で同社は当社からのものも含め事件記録を閲覧したが、当社は申告者でありながら公取委から閲覧を拒否された▼同社が排除勧告を受け入れる同意審決に応じた後、当社は損害賠償訴訟を起こしたが、その時既に同社は事件記録の閲覧を終えていて、利害関係人である当社は制限されたまま。それはおかしいと2002年12月、全面開示を求める行政訴訟を起こしたという次第▼東京高裁は「法律に基づかない判断は違法」と断じ、公取委の「それでは協力を得られなくなる」という主張にも「ならば法を改正すべき」と退けた。事件記録の開示は真実を知らせる最大の手がかりであり、利害関係人として当社が裁判に求めたのも「あの時、何があったのか」を解き明かしたい故。時間は要したが、確実にその時が近づいてきている。(A)


9月28日(木)

●国内航空路線の一時代を築くに貢献した国産旅客機「YS―11」が30日、定期便としての役目を終える。道内でも函館―札幌(丘珠)などを結ぶ翼として親しまれ、その勇姿を消してから既に3年4カ月。惜しまれ、鹿児島で最後の時を迎える▼「YS―11」は双発のプロペラ機(64席)で、本格的な開発が始まったのは今から50年ほど前。それから5年余りの歳月をかけてデビューしたのは1962(昭和37)年。地方空港の整備が遅れていたこの時代、短い滑走路で離発着できる旅客機として重宝された▼「何度も乗った」という人も少なくないはず。低い高度で飛ぶため、天気のいい日は窓から素晴らしい景観が広がり、大型ジェット機とはまた一味違った趣きが。道内との縁も深く、函館をはじめとして道内の各空港と羽田を結ぶ役割を担い、その後は道内路線で活躍した▼この間、悲しい事故もあったし、事件にも遭遇した。68人の犠牲者を出した「ばんだい号」の横津岳墜落事故は今なお記憶に新しいが、さらには「よど号」のハイジャック事件も。“ジェット機時代”の波に押される形で1973(昭和48)年、182機で生産中止に▼道内から姿を消した後、九州と離島を結ぶ路線で一部使用されていたが、もはや寿命。最後となる便は発売1分で完売し、キャンセル待ちが約500席に上ったという。それは「YS―11」が身近な存在であったことの証し。その思いと新たな夢は、次なる国産ジェット機の開発に託される。 (H)


9月27日(水)

●安倍政権が誕生した。閣僚の顔ぶれがどうか、などといった評価は人それぞれで、論評を挟む必要はない。真価が問われるのは、表面的な顔ぶれではなく、今後の政治実績であり、長期政権となるか短期で終わるかの境目もその一点に尽きる▼郵政民営化が象徴する構造改革を掲げ、戦後3番目の長期となった小泉政権。行財政をはじめとする“見直し”が、「惰性に流れている体制を変えよう」という国民の思いと合致したのも事実で、それは群を抜いて高かった支持率が物語っている。ただ、その過程で…▼「格差」という言葉に代表されるが、社会に歪(ゆが)みを生み出したことも確か。内政面では財政や社会保障の立て直しなど課題が山積し、一方、外交に目を向けると、中国など東アジア諸国との関係改善のほか、北朝鮮の拉致問題やロシアとの北方領土問題も未解決のまま▼いずれも安倍政権が引き継ぐ重要課題だが、待ったは許されない。官邸機能の充実を図ったのも、その表れであり、当面、注目されるのは安倍総理のリーダーシップ。それは国会の場ばかりか、日常的にどんな姿を見せ、どんなメッセージを発するかで見て取れる▼小泉政権が立証したように、かつての時代と違って、今は世論が鍵を握る。安倍政権は、その世論に支えられての誕生と見る向きもあるが、来年の夏には直接、判断を突きつけられる参院選挙を控えている。それまでに基盤をどれだけ固め、支持を得ていくか、その時間は1年を切っている。(N)


9月26日(火)

●「図書館は単に本の数を集めればいいというものではない。大事なのは市民に本の素晴らしさを教え、問いかける取り組みであり、それを息長く続けることで民度は上がっていく。価値ある書物をどれだけ身近な存在にさせるか、図書館の使命はそこにある」▼この表現で、十分に意を汲(く)むことができたかどうか不安だが、実は先日うかがった室蘭市立図書館の山下敏明館長の講演のポイント。函館にも数度、訪れているから直接、話を聞いた人もいようが、まさに納得の話。しかも実践に裏付けられているから説得力もある▼臥牛子は訪れたことがないが、室蘭の市立図書館は老朽化している上、さらに他都市同様に図書購入費も少ないという。その中で、いかに蔵書を充実させ、市民に図書館を意識させるか、という視点に立って山下館長が生み出したのが「ふくろう文庫」▼1999年12月のことだった。それは市民からの浄財で築く文庫であり、コンセプトは「一過性の図書は購入しない」こと。室蘭には美術館がない、ならば本物ではないまでも美術書、画集、写真集では負けない蔵書を、ということで「美術の分野」を重点に▼「何とか(美術書の蔵書を)1万冊に。本物ではないまでも、美術館の代用になるほどの内容がある一大美術図書館にしたい」。実際に貴重な美術書などが揃(そろ)ってきているが、それもこれも山下館長という人材を抜きに語れない。問いかけから6年。特記すべきは、室蘭市民が同じ思いを共有し始めていることである。(H)


9月25日(月)

●函館山の展望台やテレビ局の塔が建ち並ぶ辺りが大規模な要塞だったこと、さらには頂上駐車場の下に一部残存していることをご存知だろうか。これも語り継ぐべき史実だが、函館産業遺産研究会の要塞施設の調査研究がすべてを解き明かしている▼津軽海峡から函館港を守るため、函館山に要塞の築造が始まったのは100年余り前。現在の展望台となっている御殿山の2カ所の砲台が最初(建設開始1898=明治31年)で、それから7年ほどを要して千畳敷、薬師山、立待など、四方をにらむ形で築かれた▼建設重機や生コンクリートもない時代。もちろん道だって…。資材を運ぶのだって大変なら、土を掘り下げて、石を積むのも至難のこと。その技術や労力は想像を絶するが、軍事遺産と同時に土木遺産と言われ、記録も形も残すべき、とする理由もそこにある▼同研究会が取り組んだ研究報告は250ページに及ぶ。「近代の軍事施設として、土木施設として、世界遺産への登録を考えて少しもおかしくない」。その結果を踏まえ富岡由夫会長が語るのは世界遺産へのアプローチ。8月末のある会合で、そんな話を聞いた。だが、現状は…▼要塞は荒廃したまま、市民の意識も高くない。冒頭の質問に象徴されるが、多くの市民の認識は漠然と要塞跡があるというぐらい。一方、函館市の姿勢も函館山緑地整備計画の見直し作業の中で検討するというにとどまっている。どう道筋をつけるか、要塞跡は今、その答えを待っている。(H)


9月24日(日)

●悲しい思い出、想うはあなた一人、あきらめ、独立、再生、情熱、恐怖…。秋の彼岸に欠かせぬヒガンバナの花言葉。曼珠沙華(まんじゅしゃげ)、如意華、死人華、地獄華、葬式華、平家華、毒華、韓国では相思華(葉は花を思い、花は葉を思う)▼呼び名が1090もあって、日本の植物で最も別名が多い彼岸花。代表的な別名の曼珠沙華は「天上界の華」。梵語で「見るものをして悪行を離れしめる」という意味で、慶事の前ぶれに咲く赤い花。花が咲く時は葉はなく、葉がある時は花は咲かず…。「捨子花」とも▼根に毒を含んでいることから「死人華」といわれる反面、リコリンという毒を水でさらして除去し「饅頭華」を作って飢きん時の食用にしたとも言われる。寺院で育った子供の頃、この饅頭華を食べさせられた記憶がある。墓地に咲くものだとばかり思っていたが、今は観光の目玉として大規模に栽培している町も▼地下鉄に猛毒のサリンをまいて、6000人を超す死傷者を出したオウム真理教の松本智津夫被告は「死人華」か。裁判で反省もせず、謝罪もせず、だんまり戦術をとって死刑が確定したのだから「地獄華」か。裁判でも部下に見捨てられたホリエモンは「幽霊華」なのか▼「教育の再生」を大きな目標の一つに掲げた自民党の安倍晋三総裁は天から降ってきた「天上の花」かもしれない。国の財政再建、社会保障改革など「悪行を離れしめる」対策を決行し、政界の毒をも抜いて「心の豊かさ」「幸せ感」を抱かせるような「美しい日本」の相思華を咲かせてほしいものだ。(M)


9月23日(土)

●わが国では「株」に対する社会の目、企業の考え方が、ここ数年で大きく変わってきた。その象徴的な事例がライブドアのニッポン放送・フジテレビ株を巡る取得攻防であり、最近も失敗に終わったが、王子製紙の動きが話題になったばかり▼こうした報道の中で聞き慣れない用語が登場する。この際、覚えておきたいが、冒頭で挙げた事例の敵対的TOB(株式公開買い付け)もその一つ。不特定多数の株主に対し、公告により株の買い付け申し込みを行うこと。普通は市場株価にプレミアをのせて行われる▼ただ、わが国では最近まで、あまり現実的なことでなく、経済用語としてあっただけ。企業文化、企業風土として馴染むに至っていないということだろう、王子製紙の場合も北越製紙との経営統合を主張し、50%強の同社株取得を目指したが、達成できずじまいに▼企業においては従来、安定株主を確保しておけば、ことさら自衛策など必要ない、ということだった。それが今や自衛策をとっていて当たり前の時代。その具体的な取り組みが、いわゆる自社株買い。自社の株を買い増しして持ち株比率を高めて防衛するという策である▼その動きが確実に加速しているという。今年の4―7月でも、そのために動いた総額は2兆円近く、昨年同期の2倍ともいう調査報告があるほど。買い増しできる経営内容の企業はともかく、できない企業は、ともなるが、いずれにせよ、上場企業にとっては、うかうかしていられない時代になっている。(N)


9月22日(金)

●厳しく言われても後を絶たない飲酒運転。それにしても多い。ごく一部の不届き者とはいえ、重大事故の危険性が高いだけに看過するわけにいかない。福岡県の3児死亡事故を受け、12日から18日まで全国的に緊急の取り締まりが行われた。警察庁のまとめによると、その結果は最悪。検挙は酒気帯びで4383件、酒酔いで27件を数え、逮捕者は149人…▼飲酒して運転すると、注意力が散漫になり、どれだけハンドルやブレーキなどの操作が鈍るかなどは、今さら説明の要はあるまい。事故率が高くなることは誰もが知っていることであり、それは死亡事故の1割が飲酒絡み(過去5年の道内統計)という現実が物語っている▼だから罰則も厳しいのだが、一向に減る気配はなく、この摘発数も氷山の一角。「実態的にはこの何倍、いや何十倍もの現実がある」と指摘する識者もいるほどだが、残念ながら北海道も、道南も然り。同じ期間の北海道での検挙は233件。このうち道南(道警函館方面本部管内)は48件で、4人が逮捕された▼本紙によると、ほかに「呼気検査で政令数値に満たなかっただけのドライバーも24人いた」という。事故も起きている。取り締まりが公にされていて、この実態であり、先の何十倍という話もあながち大げさでない▼確かに飲酒運転に対する関心は高まり、厳しい目が向けられるようになった。飲食店での防止意識、自動車メーカーの対飲酒装備の開発意向も生まれてきたが、最も重要なのは社会の認識。「法律も、社会の制裁も、まだまだ甘い」。この緊急取り締まりからは、こんな声が聞こえてくる。(A)


9月21日(木)

●自民党総裁に予想通り安倍晋三官房長官が選ばれた。26日の衆参両院で首班指名を受ける手続きは残っているが、公明との多数与党であるから総裁就任は実質的な内閣総理大臣就任を意味する。きょうで52歳、初めての戦後生まれ総理の登場である▼時期を同じくして野党第一党の民主党も、小沢一郎代表を再選したばかり。50歳代の安倍氏に対し、小沢氏64歳。この2人、年齢は離れ、当選回数、政治経歴にも差はあるが、その一方で共通点も。若くして頭角を現し、40歳代で自民党要職の幹事長を経験している▼構造改革をうたい5年半に及んだ小泉政治。その中枢に身を置いてきた安倍氏は、いわば直系の継承者だが、内政では財政、経済、雇用、年金など、外交では東アジア諸国との関係修復などの懸案を抱え、来年夏には民主が与野党逆転を唱える参院選を控えている▼小泉政権下での政党支持率は、おおむね自民が35―40%で推移したのに対し、民主は15―20%。この差がどう変わっていくか、安倍総裁、小沢代表の力量が問われるところだが、求められるポイントは、政権を担う党と政権を目指す党として示す政策であり、広範な論議▼小沢氏が掲げるのは「普通の国…」で、安倍氏が打ち出したのは「美しい国…」。その国づくりを目指す舞台の幕開けとも言えるが、いいか悪いか、答えを出すのは国民であり、言葉を換えるなら世論。国会の場はもちろん日常的に、両氏がどんなメッセージを発していくか、当面の政治を占う鍵はそこに尽きる。(N)


9月20日(水)

●「若き日の 身軽さ過信は 事故のもと」。函館西交通安全協会主催の高齢者交通安全標語コンクールで最優秀に選ばれた作品だが、「注意力の衰えなどを自覚してハンドルを握らなければならないよ」と呼びかける分かりやすい、優れたメッセージ▼人間誰しもたどる道だが、年齢とともに視力は衰え、反射能力も落ちる。それだけ事故に遭遇する確率が高まるということだが、ともすると「自分は大丈夫」と思い込みがち。最大の問題点はこの自己過信にあると言われるが、かと言って、免許の一律年齢制限も…▼時間はかかっても、そこに求められるのは、自分の運転レベルを正しく認識してもらう取り組み。「若いころとは違う」という認識は重要なポイントであり、そのための具体策が啓発や講習。標語募集も啓発の一環だが、それは高齢者自らに考えてもらう機会の提供でもある▼函館西署管内の42町会と老人クラブから応募された中には、最優秀以外にも素晴らしい作品が多々。「これ位と 身勝手判断 悲惨事故」「身につけよう 信号青でも 再確認」「気をつけよう 右折左折に 死角あり」「急ぐなあせるな 黄色の信号 要注意」…▼警察庁のまとめによると、昨年、全国で65歳以上の運転者が起こした事故は実に9万8550件(10年前比2・4倍)、うち70歳以上の運転者による死亡事故は758件(同1・4倍)という。自覚と注意にし過ぎはない、冒頭の最優秀作品の問いかけもそこに。あすから秋の交通安全運動が始まる。(H)


9月19日(火)

●家族で一緒に歌を歌う光景など見かけなくなった。戦後、しばらくの間、ラジオから流れる歌謡曲を聴いては、親子が口ずさんでいたのに…。生活時間がかみ合わない、歌が多様化したなど、理由は多々あるが、いつの間にか、そんな姿は遠い過去に▼ここ数年、際立って少年の凶悪犯罪が増えている。その背景にあるのが家族関係の希薄化と言われるが、文化庁が目を向けたのが歌。家族が歌い合うことで絆(きずな)を深めてほしいとの思いに立ち、「親子で歌いつごう日本の歌100選」の募集事業を打ち出した▼臥牛子も小中学校時代、親と歌謡曲を歌っていた記憶がある。時にはラジオから流れる歌手に合わせ、時には月刊誌の付録としてついていた歌詞本をめくりながら。そう言われると、懐かしく、いい思い出。親子の一つのコミュニケーションだったような気がする▼9月初めに報じた読売新聞によると、発案者は病に倒れている河合隼雄長官という。日本PTA全国協議会と共催で、求めているのは「家族で歌うのに相応(ふさわ)しい歌」「子どもや孫に歌ってあげたい歌」「次世代に残したい歌」。10月27日まで、選んだエピソードとともに募集している▼それがどれほど家族の絆を深める役割を果たすのか、と言われれば、戸惑うが、いわば一つの問いかけであり、目くじらを立てることはない。「この曲は素晴らしい」といった共通認識が育(はぐく)まれるだけでも意義はあるのだから。どんな歌が選ばれるのか、来年初めの発表に、今から楽しみが広がる。(H)


9月18日(月)

●「住み良さ」であったり「魅力度」であったり、自分たちが住んでいる“まち”の評価には、無関心でいられない。もちろん、良い評価をされるに越したことはないが、当然ながら逆もあり得る。だから評価に関する話題には敏感になるのだが▼今月に入って「魅力的な市」の上位100が公にされた。地域ブランドに関する調査とコンサルティング業務大手の株式会社ブランド総合研究所(東京)が行った魅力度調査(779市)による結果だが、上位20位内に6市が入っているのだから、北海道としては明るい話▼ちなみに全国一は札幌市。もちろん函館市も上位で、横浜市とともに神戸市に続き堂々の3位。京都市(5位)より上の評価だった。また、読売新聞社が行った街並みに関する評価では全国8位。観光都市としてうれしくなってくるが、その一方で厳しい評価もある▼例えば、利便性や快適性などから探る東洋経済新報社の「住み良さランキング」(741市)だが、昨年の場合、上位100位内に函館市の名はない。さらに日経ビジネスによる2030年に繁栄する都市か衰退する都市かでは、何と衰退する側のランクで73位…▼どんな都市も優れた面、劣る面を併せ持つ。ただ、住みたい、訪れたいと思われる都市は、優れた面が多いことは確かで、魅力があることの証し。こうした調査結果に惑わされる必要はないが、まちづくりを考える上で、外からの評価に敏感であることが大事だとすると、やはり無関心ではいられない。(N)


9月17日(日)

●社会の価値観は時代によって大きく変遷する。育った年代によってズレが生まれる理由もそこにある。その象徴的な言葉が「今の時代は…」「自分たちの時は…」だが、現代は昔と比較にならないほど変化のテンポが速く、まさに「違和感を共有する時代」▼それはわが国の世相に対する認識からもうかがえる。「平和で(物質的には)安定しているが、その一方で、人間関係が希薄で(精神的には)不安定」。最大公約数的な表現だが、当たらずとも遠からず…。政府の「社会意識に関する世論調査」も是認している▼明るいイメージと暗いイメージに対する答えだが、明るいイメージとして挙げられているのが「平和である」(52%)、「安定している」(18%)など。確かに戦争の危機もない、食料不足もない、だから不満が出る、という見方もあるが、問題は逆の暗いイメージの方▼最も多かった「無責任の風潮が強い」(56%)のほか、30%以上に「自分本位である」(47%)、「ゆとりがない」(32%)、「連帯感が乏しい」(31%)、「不安なことやいらいらすることが多い」(30%)などが。現代社会が抱える悩みが網羅された格好だが、その率は高まる方向…▼角度を変えて考えると、それは今の時代に生きる者へのメッセージでもある。「無責任」「自分本位」…。そう言われて仕方ないことが多過ぎるのも事実だが、時代の価値観がどうあれ、社会の基本として「支え合う」が外れる時代はない。年金然り、防犯然り、あす18日は「敬老の日」だが、世代間の支え合いは言うまでもない。(H)


9月16日(土)

●ご存知かどうか、「すこやか北海道21」という道民運動を。正式には「北海道健康づくり基本指針〜すこやか北海道21〜」というのだが、健康長寿をコンセプトに国が策定した「健康日本21=21世紀における国民健康づくり運動」のいわば北海道版▼さらなる地域版の一つとして「健康はこだて21」もあるが、共通の柱に掲げられているのは生活習慣の改善であり、生活習慣病の予防など。単なる寿命でなく、健康で元気に生活できる期間が大事で、その「健康寿命」を延ばすためにも、この運動が必要というわけ▼健康寿命は2000年に世界保健機関(WHO)が打ち出した、健康度を表す総合指標。ちなみに4年前の発表で、わが国の平均健康寿命は73・6歳(平均寿命81・4歳)。死亡率からはじく長寿も、健康生活の長寿も、世界のトップレベルにある▼それを「さらに…」と展開しているのが「健康日本21」「すこやか北海道21」であり「健康はこだて21」。難しく考えることはない、日常的なちょっとした注意をすれば、というだけ。8月18日付本紙掲載の道広報に載っていた「すこやかほっかいどう10カ条」は分かりいい指針▼「スタートは朝食、楽しい1日」を始まりに「やってみようウエストチェックと体重チェック」「つきあい楽しく、過ぎない、強いない飲酒」「かろやかハツラツ、適度な運動」「受けよう健診、変えよう生活習慣」…。運動が展開されて6年目。9月は厚生労働省が提唱する健康増進普及月間でもある。(H)


9月15日(金)

●自民、民主の2大政党の“党首選挙”というのに、国民の関心は覚めたまま。自民党は3氏が立候補して一応党員参加の選挙という体裁を整えはしたが、安倍官房長官の独走であり、一方の民主も連続の無投票決着ときては、当然と言えば当然▼小泉サプライズが始まった5年前、国民は反応した。それは従来型の、硬直した政治の、政治家の体質が変わるのではないかという期待感であり、変動はあったものの小泉内閣の支持率は、その表れだった。本来なら「次の総裁は」と関心が高まっていいはずだが…▼無投票でなかったことが救いという感じでは、それを求めても無理。関心は安倍官房長官がどれだけ得票するかに向けられている。ただ、選挙に持ち込まれたことで、公開討論会など国民に伝える場が生まれ、多少なりとも政策が語られている。ところが、民主は…▼代表選挙は自民党との違いを示し、党をアピールする格好の機会なのに、自ら放棄してしまった。確かに小沢代表が無投票で選ばれてから時間がたっていないとはいえ、これでは…。すべてが来年夏の参院選挙での野党過半数待ちということか、と言われても仕方ない▼内政、外交に課題が山積している。その中で政治に対する信頼は揺らぎ、政党が問われている。それは「見える政治を、分かる政治を」という思いだが、残念ながら永田町からはなかなか伝わってこない。この自民総裁選、民主代表選をどう見たか、両トップがそろった段階で行われる世論調査の結果に無関心ではいられない。(N)


9月14日(木)

●「函館」をキーワードに、市民が函館について学ぶ公開講座「函館学」が、今年も始まった。前期(9月)、後期(11月)合わせて10講座の予定だが、受講者は昨年の2倍以上の193人、延べにすると1112人というから単純に1講座100人強…▼函館の歴史や文化、産業など、長年住んでいながら知らないことが多い。学ぶにもシリーズといった形で機会が設けられるのはまれ。そんな中、公立はこだて未来大、北大水産学部など函館市内の8高等教育機関が連携して昨年、誕生したのが、この「函館学」の講座▼昨年は初年度ということもあって専門的な内容が並んだが、2年目の今年は若干、肩の力を抜いて…。前期は「函館の歴史を探る」、後期は「函館の食や他地域との交流」をテーマとし、受講の募集をしたところ、申し込みは予想を上回り、年齢的にも13歳から82歳まで▼既に「箱館から函館へ〜近代の光と影」と「道南・函館の宗教の歴史」が終了。このあと前期は「高田屋嘉兵衛から学ぶ」(16日)、「箱館戦争〜戉辰戦争最終戦」などと続き、さらに後期では「函館でできる地産地消」「函館とコンブ」「函館の縄文文化と交流」…▼昨今、函館大学、函館大谷短大などをはじめ、市内の大学はそれぞれの特徴を生かした公開講座を開設している。ありがたいことだが、加えて「函館学」の講座が意味あるのは、内容面で多角的に展開できるから。200人近い受講人数は期待の表われであり、来年以降、さらなる充実が望まれる。(H)


9月13日(水)

●コウノトリが巣をかけた家は幸運が約束され、過保護と思われるほど愛情を注いで子を育てる、めでたい瑞鳥(ずいちょう)だ。「飛びたちて大空にまふこふのとり仰ぎてをれば笑み栄えくる」。秋篠宮妃紀子さまが詠われたコウノトリが男児を運んで来て1週間▼お七夜の日に付けられたお名前は「悠仁(ひさひと)」。皇室男子の名前の慣例で下に仁(有徳の人の意味)が付く漢字2文字。ゆったりとした気持ちで幾久しく歩んでほしいとの願いが込められている。お印は、大きく真っすぐ育ってほしいと「高野槙(こうやまき)」が選ばれた▼皇室での男の子の誕生は秋篠宮さま以来41年ぶり。皇位継承順位は皇太子さま、秋篠宮さまに続く第3位。「女性天皇、その子どもの女系天皇を認め…」という皇室典範改正の議論は影を潜めた。▼聖書にも出てくるコウノトリは古代エジプトでは知恵の神。太陽神の長男といわれているテフティは医術、学問、魔術などを支配する神で、コウノトリに姿を変えて人々に神秘学と科学を教えたという。悠仁さまも列島が「笑み栄えくる」ように成長されるだろう▼紀子さまは悠仁さま命名の前日に40歳になられた。40歳以上の女性が産んだ赤ちゃんは2万人(昨年)を超えたが、過重労働などで全国的に産婦人科医が不足し、せっかくコウノトリが運んできても「地元で産めない」という地域が増えているのが気がかり。安心して産めるような少子化対策が必要だ。(M)


9月12日(火)

●新聞紙面において写真の存在は大きい。時として1枚の写真がすべてを物語ることもある。本紙10日付1面に掲載された「傷ついたハクチョウに2羽寄り添う」の写真は、まさにその1例。写真がとらえた3羽の様子から話が十分伝わってくる▼ハクチョウは春、越冬地を後にするが、木古内川河口付近で翼を負傷した1羽が飛び立てなくなって…。家族なのだろう、一度は北に向かった2羽が戻ってきて、ここで一緒に夏を過ごしたという。今の殺伐とした人間社会に、何が大事かを問いかける心温まる話である▼新聞記事は、話が先にあって写真がつくというのが一般的。つまり写真は記事をフォローする役割を担うことが多いということだが、この場合はまったくの逆。というのも、3羽が映っている写真は、それだけで何を語ろうとしているか分かるから。記事はいわば写真の解説役…▼18年ほど前になるが、臥牛子は前任の社で同じような記事に出会っている。車に轢(ひ)かれた子スズメを親が道路脇へ引っ張っていく光景をとらえた3枚組の写真である。カメラマンが撮影したのだが、子細に現場の様子を聞き、記事にした時の感動は忘れられない▼反響もあったし、その写真は北海道報道写真展で最高位(協会賞)輝いた。言うまでもなく、写真は記事と違って補足取材が効かない。そこに難しさがあり、瞬時にとらえるが故の価値がある。このハクチョウの写真も然り。ただ、気がかりは負傷がまだ癒えていないことである。(A)


9月11日(月)

●休刊日


9月10日(日)

●快適な生活を営むに欠かせない要素は多々あるが、誰もが挙げるであろう一つが下水道。家庭から出る日常の汚水や雑排水、さらには雨水の処理機能などを兼ね備えた“ありがたい存在”だが、その整備はかなり進んで、今や普及率ほぼ90%のレベル▼わが国の取り組みは著しく遅れたが、それでも東京で明治の初め。函館では「1907(明治40)年から3年間を第一期工事として、市街地の中央地域で自然流下方式により…」という記録が残っている。ただ、今日の下水道事業の始まりは、というと、戦後…▼国の下水道整備計画が本格化したのは、下水道法(1958=昭和33年)の公布を受けた後。計画を更新しながら全国的に公共下水道事業が展開されてきた。その結果、整備普及率は年々向上し、例えば北海道では、今年3月末現在で下水道処理人口普及率は87・3%までに▼「水洗トイレの恩恵に浴せない人口は50万人を切った」(道)という。もちろん支庁、市町村によって差がある現実に変わりはなく、渡島管内(下水道処理人口普及率=平均77・3%)は、地域としてまだ低め。函館市は87・5%、北斗市は80・2%である▼ちなみに函館市の水洗化普及率は89・4%。全域、全戸をカバーし終えるまで、あともう少し…。この間、理解の広がりを求めて設けられた「全国下水道促進デー」(1961=昭和36年)は、2001年、「下水道の日」に改められた。きのうの「救急の日」と違って、その日が9月10日であることは意外と知られていない。(H)


9月9日(土)

●財政にプラスとなることは「公」として可能な限り…。道が現在、募集中の道有施設のネーミングライツスポンサーや、本庁舎のエレベーター内掲出広告からは、そんな苦しい胸の内が伝わってくる。確かに、格好をつけていられる財政事情ではない▼税率は上げられない、かと言って、台所は火の車ときては…。その一環として各都道府県は昨今、商業面からの増収策に手を尽くしている。道でも自動車納税通知書や職員の給与明細書への広告掲載などに踏み切っているが、新たな二つはさらに一歩進めた取り組み▼「施設ネーミング」の対象は、函館・道南に住んでいても聞いたことのある大きな6施設。道民活動センター多目的ホール(かでる)、月寒グリーンドーム、野幌総合運動公園などだが、道が示している契約希望額以上ですべてが埋ると、3年間で1億円の収入に▼一方の「本庁舎エレベーター」は、職員3500人、年間約60万人の来庁者が利用するといい、しかも狭い空間だから広告効果は大。月額1枠1万4700円(予定16枠)ということで収入面の規模は大きくないが、金になるスペースを遊ばせておく手はない▼確かに公的施設、行政財産であり、歳入増のためといえども内容などに自ずと制限を伴うが、これらは範囲内。とりあえずの締め切りは「本庁舎エレベーター」が15日、「施設ネーミング」が10月末。この道の目論見(もくろみ)に果たして企業側がどう動いてくるか、次の増収策を考えていく上での参考事例とも言える。(H)


9月8日(金)

●9月9日は何の日? ほとんどの人が分かる「救急の日」。いかにも行政用語的だが、その趣旨というか目的は「救急医療及び救急業務に対する国民の理解と認識を深め、かつ救急医療関係者の意識高揚を図る」こと。1982(昭和57)年に設けられた▼救急出動はないに越したことはない。病人も、けが人もいない、ということだから。しかし、現実は…。出動回数の増加が端的に物語るが、救急業務が担う社会的使命は年々高まるばかり。今では全国で年間500万件。1日平均にして実に1万3700件…▼6秒ほどに1回どこかで出動していると言ったら、もっと実感として伝わるかもしれない。9年前の1997年は350万件ほどだった。その4年後には400万件台に乗ってついに500万件時代。救急体制が充実してきたことも背景として考えられるが…▼受け止めようによっては、“頼りになる存在”を物語るに十分ということにもなるが、この増加基調は全国的で、函館市も例外でない。実際、毎日のように救急車の音を耳にする。それもそのはず、市消防本部の昨年1年間の出動は1万3494件。1日平均37件である▼救急体制の充実とともに、救急業務の高度化も急速に進んでいる。その一方、課題となっているのが市民サイドの救急意識の醸成であり、手当て知識などの普及。9日を含む1週間は「救急医療週間」(今年は3日―9日)だが、そう考えると、むしろ「救急知識を深める週間」とした方がいいのかもしれない。(H)


9月7日(木)

●警察庁は12日から1週間を「飲酒運転取り締まり強化週間」に緊急指定した。8月25日夜、福岡市で飲酒運転の車に追突されて子ども3人が死亡した事故を受けての対応。飲酒運転が後を絶たない現実を考えると、これ1回で終わらせずに、という思いも…▼飲酒運転は無免許運転、速度超過とともに“交通三悪”とされる。それだけ重大な事故を引き起こす要因となるからだが、実際に「動体視力が低下し視野が狭くなる」「判断力や注意力が低下する」「速度感覚が鈍くなる」「ブレーキ操作が遅れる」ことなど指摘されている▼その抑止を願い、2002年6月には道交法が改正され、酒酔い、酒気帯び運転の罰則が重くなった。それでも“大丈夫意識”を払しょくするには至らず、事故も違反も期待したほど減っていないのが実情で、それは統計からも浮かび上がってくる▼昨年1年間の違反件数を見ると、全国で酒酔いが1675件、酒気帯びが13万9198件。さらに死亡事故は減ったとはいえ、年間707件も起きている。昨年5月の宮城県多賀城市の高校生3人死亡、15人負傷もそうだが、大事故になった事例が少なくない▼飲酒運転はハンドルを握る時点で故意犯であり、客観的には危険な状態。だから放っておけないわけで、社会として、地域としての取り組みが求められる理由もそこにある。ただ、最終的に鍵を握るのが個々人の意識だとすると、抑止効果として有効なのは取り締まり。残念ながら、それが現実と認めるしかない。(N)


9月6日(水)

●かつては鉛筆を削るため、筆箱にナイフを入れて登校した。先生たちから「鉛筆をきれいに削る子どもは勉強ができるようになる」と言われ、競い合って削ったものだ。左手の人差し指を台にして鉛筆の先を削るので、指を傷つけることも少なくなかった▼ナイフの学校持ち込みは公認。刃渡り10センチくらいのミニ小刀もあった。色紙など切る時、使ったように思う。褒められたことではないが、けんかの時にも使った覚えがある。でも、ガキ大将から「切りつけてもかすり傷だけだぞ」と厳しく言われ、先生からは「生きものを大切にせよ」と怒鳴られた▼今はナイフなどの持ち込みは禁止。図工の授業などでは持ち込むが、使うまでは学校側で保管する。しかし、先日、岡山市の小学校6年生の教室で、男子児童が別の男子児童を小型ナイフで刺した。学校側はナイフの持ち込みを把握していなかった▼2学期のクラスの係を決めていた最中の出来事。「お助け係」をめぐって争いになり「かっとなってやった」という。カッターナイフで殺害した佐世保の小6女児殺害事件から2年。市教委などが行った調査(4―6年生)によると、「いのち」で連想する言葉に「大切」と答えたのは40%台だった▼9月9日は生命を大切にし長寿を祝う重陽(ちょうよう)の節句。指折り数えて数の尽きるという意味の「神聖な9」が重なるのだ。この日、古老から「友だちを大切にせよ。まして傷つけるなどは…」とよく説かれた。学校は児童の刃物管理に徹し、「命の大切さ」を教えてほしい。(M)


9月5日(火)

●JR北海道の「ドラえもん海底ワールド」が、その歴史に幕を閉じた。津軽海峡の海底下に誕生した子どもの“夢の世界”が、家族連れを魅きつけること9年間…。訪問者延べ約37万人は、あらためて子どもたちにとって大きな存在だったことを物語っている▼わが国の土木技術の粋を集めた青函トンネル(総延長53・85キロ)が完工し、開業したのは1988(昭和63)年。海底には二つの駅が設けられ、北海道側の吉岡海底駅の有効活用としてJR北海道が目をつけたのが、テレビ漫画で人気を集めた「ドラえもん」だった▼営業政策の視点もあったが、著作上の問題などをクリアし、オープンさせたのが開業10周年の1998年の3月。当時の快速「海峡」の一部車両はラッピングされ、その後は特別仕様の「ドラえもん海底列車」が函館駅と“夢の世界”との間をつないだ▼ところが、その吉岡海底駅に新たな任務が待ち受けていた。本格化する北海道新幹線工事の資材置き場としてで、今夏が最後ということに。何事もそうだが、終わるとなれば…。さながら、さよなら人気で、運行延べ42日間の利用者は約1万4500人という▼昨今、子どもたちに夢を与える場が少なくなったと言われる。その中で「ドラえもん海底ワールド」は、全国的にも数少ない“夢の世界”だった。それだけに姿を消すのは残念だが、果たした功績は大きい。同時に「子どもたちに青函トンネルを身近な存在にした」ことも特記されていい。(H)


9月4日(月)

●「人間ドック」。わが国では説明なしに通じる日常語の予防医学システム。医学や機器の進歩とともに、その体制、機能が向上し、病気の早期発見や健康維持に頼りになる存在。2年前で年間294万人(人間ドック現況調査)の受診が報告されている▼国語辞典的に言うと、短期間の入院により行う精密な健康診断。この言葉のいわれは「病気の治療ではなく、船が点検のためドックに入るのと同じ体の点検という意味から」と言われる。その歴史は1954(昭和29)年が始まりとされ、当時の国立東京第一病院で▼それから50年余。この間、検査項目の整備が進み精度も格段に高くなり、時間的にも今では1日、2日で終えられるまでに。気づかないだけで、年齢を増すにつれ誰しも何らかの病みを抱えている、と言われるが、それはドック受診者の健診結果も物語っている▼前段で紹介した人間ドック現況調査によると、まったく異状がなかった人は12・3%というから、健康者は10人に1人ということである。定期的に「人間ドック」を受診すべきと勧められる理由もそこに。当然、世界的にある予防医学システムかと思われるのだが、実は…▼わが国独特のシステムなのだそう。ただ、近年、この「人間ドック」の成果に注目する国が増えてきている。こうした動きを受けて、日本人間ドック学会は今後、わが国のシステムを発信し、協力していく考えという。「ニンゲンドック」が世界に広がるのも時間の問題かもしれない。(N)


9月3日(日)

●旭山動物園(旭川市)の勢いが止まらない。8月の入園者数が月間として初めて60万人を超えたという。雨の日や平日も含め単純に計算して毎日2万人…。あの東京の上野動物園でさえ8月は約28万人なのだから、ただただ感嘆するしかない▼爆発的に人気を高めた原動力は、発想の転換であり差別化。動物園は一般的に「動態展示」が主流だが、入園者が減少し、閉園も取りざたされる中で模索したのが、それまでとは異なる展示手法。そして踏み切ったのが動物の行動を多角的に見せる「行動展示」だった▼ペンギン、ホッキョクグマ、アザラシに始まり、最近ではチンパンジーなど。新たな発想を次々と形にし、それが話題を呼び入園者増に。まさに見本例だが、旭山動物園が教えるのは、他の類似施設と違った「特徴」を出すこと、つまり差別化こそ大事という一点▼頭では理解するが、現実には…。函館市で懸案となっていた「海の生態科学★館」(水族館)の建設計画が一時凍結された。現状では賢明な判断と受け止められているが、財政議論もさることながら角度を変えると、市がその「特徴」を示し切れなかったという見方も成り立つ▼確かに、位置づけは社会教育施設。採算が最優先でないという考えも間違ってはいないが、今の時代、造ればいい、は通用しない。だとすると、「特徴」づくりを含め、もっと検討すべきだし、もっと議論した方がいい。一時凍結はそのための時間を設けたということであり、市民へのさらなる問いかけとも言える。(H)


9月2日(土)

●国の2007年度予算編成の概算要求が8月末、各省庁から提出された。それによると一般会計の総額は82兆7300億円。行財政改革を柱に借金財政からの脱却が至上命題になっている中だけに、今年度予算に比べて当然、減額と思いきや…▼減るどころか、逆に3兆円余り増えているという。国債や借入金など国がやり繰りのためにした借金は、05年度末で813兆1830億円。「歳出の抑制、削減なしに借金財政から脱却の道はない」とされ、「骨太の方針2006」がまとめられたばかり▼そこで掲げているのは11年度までに最大14兆3000億円の歳出削減。07年予算は、その「骨太…」を踏まえた初めての編成ということで注目されているのだが、概算要求の総額を見る限り、疑問符を拭(ぬぐ)い切れない▼今のわが国、さまざまな課題を抱え、喫緊の事業が多いことも現実。その一方で地方交付税に対する判断も固まっていなければ、削減覚悟という各省庁の意識もあろう。確かに、要求であり、そのまま決まるわけではない。今後の財務省による査定、さらには政治判断が加わるが、それにしても…▼どれだけ厳格に“無駄”を見直したか、要求段階で構造改革、行財政改革に対する省庁の意識が伝わってきていいはず。「骨太の方針」は5年後の黒字化を目標にしており、その達成に肝心なのは初年度。取り組む姿勢が試されるからだが、老婆心ながら「骨細の方針」とならないよう祈らずにいられない。(N)


9月1日(金)

●「全長35センチ未満のマツカワを採捕した時は、速やかにリリース(海への再放流)してください」。道のホームページに、こんな呼びかけが登場した。海区漁業調整委員会の指示としての理解喚起だが、そこからは将来の漁業資源としての期待感が伝わってくる▼マツカワは日本海北部、茨城県以北から北海道南部までに生息するカレイ類。50―80センチと魚体は大きく、味も評価されている高級魚。30年ほど前には道南の太平洋沿岸で年間100トンの漁獲があったと言われるが、近年は激減して今や天然ものは“幻の魚”状態に▼その「マツカワの資源回復を」と15年ほど増養殖の取り組みが続けられてきた。その役割を担ったのは鹿部町にあった道の栽培漁業センターで、事業化のめどがついたのは3年前。新センターが引き継ぎ、今年から、いよいよ稚魚の100万尾放流作戦(函館市から日高管内えりも町までの海域)に着手▼道によると、渡島沖でも23日の鹿部を皮切りに、順次、放流されるが、稚魚の大きさは8センチほど。マツカワは成長が早い魚。1歳の冬で約30センチ、2歳の冬には40センチほどにまでなると言われ、放流から漁獲までの時間が比較的短いということで、理解の呼びかけも初年度から▼その柱は「未成魚保護のための体長制限」。線引きの目安として示したのが全長35センチ未満だが、この未成魚のリリースに対する理解と協力こそ、放流事業の成果を生み出す前提の一つ。「マツカワを再び道南の主要魚種に…」。道はその資源回復計画の中で、5年後の漁獲目標を年間150トンに設定している。 (A)


戻る