平成19年12月


12月31日(月)

●沖縄県に伝わる民話「大晦日(おおみそか)の客」は、隣り合わせに住む裕福な家と貧乏な家との話だ。大晦日、ボロボロのこじきが訪れる。一晩だけ泊めてほしいと懇願するこじきに対し、裕福な家は「早く立ち去れ」と追い払う▼一方、おじいさんとおばあさんが暮らす貧乏な家にやってきたこじきは、一夜の宿を提供される。心優しい老夫婦の行いに報いるため、実は神様だったこじきは2人を若返らせて男の子を授ける。神仏の化身を歓待した家には幸福がやってくるとの教えだ▼日めくりカレンダーがとうとう最後の一枚になった大晦日は、この1年を振り返る日であろうか。忙しさに振り回され、なかなか他人を思いやることが難しい昨今では、民話の老夫婦のような心優しさは発揮しにくいかもしれない▼それでもこの1年、悲惨な事件や腹立たしい出来事よりも、何か心温まる話題を思い浮かべた方が来る年への期待をつなぐことになるのではなかろうか。縄文のビーナス、中空土偶が道内初の国宝に指定されたのは、うれしいニュースの筆頭に挙げてもいいだろう▼新型高速フェリー「ナッチャンRera(レラ)」が函館・青森間に就航したのは9月だった。従来の半分の2時間で結ばれるのだから、利用客にとってはぐっと便利になった。道内では日本ハムのパ・リーグ連覇、コンサドーレ札幌のJ1昇格があった▼多くの人が共有する話題以外にも、それぞれの1年には身近なうれしい話があったに違いない。〈あすは元日が来る仏とわたくし〉(尾崎放哉)。どうか良いお年を。(S)


12月30日(日)

●年末の休日入りは、時ならぬ風雨で始まった。発達した低気圧の影響で、函館・道南地方は昨日未明から強風と横殴りの雨に見舞われた。買い物などに出かける車は、朝からヘッドライトをつけて走る▼道内他都市や他府県のナンバーを付けた車がいつもより目立つのは、正月休みを帰省先で過ごす家族が、やって来ているからだろう。ほの暗い朝が、そのまま夕暮れになっても雨をついて走る車が目立った▼気ぜわしさが募る歳末。そば屋では、注文を受けた年越しそばの準備に取り掛かった。なじみの和食の店は、店主が陣頭に立って、おせち料理の仕込みに忙しい。「あす最後のお客さんが受け取りに来るまで気が抜けません」と仕事の手を休めずに語る▼落語の世界で、この時期に活躍するのが借金取りだ。「芝浜」と並んで歳末に演じられることの多い「掛け取り漫才」は、買い物が掛け売り(ツケ)で行われた時代だから成り立つ噺(はなし)だ▼大みそ日、借金取りがやって来るのが分かっていても家には一文もない。気をもむ女房を尻目に亭主は一向に動じない。最初に来た大家、次の魚屋と機知を働かせて撃退し、最後の三河屋も漫才調の応対でツケの先延ばしに成功する▼ツケは今風に言えば、クレジットカードや割賦購入などの残高だろうか。高度に発達した経済社会で通用する物差しは、落語の世界ではおもしろみを生まない。何よりも人情の機微にそぐわないだろう。そんなことを考えたのは、テレビ番組で新春恒例の落語を毎年楽しみにしているからだ。今年もあと1日。あすは除夜の鐘が鳴る。 (S)


12月29日(土)

●「ヨーロッパの人々にとっては、明治村をきょうチューリッヒ駅頭に見るような一種特別の感慨があるらしかった」。パリとイスタンブールを結んだ寝台列車オリエント急行が94年の歴史に幕を閉じた30年前、作家の阿川弘之さんは、最終列車に乗った▼スイスの旅行会社がかつての豪華車両を集め、特別に編成した列車だった。阿川さんは「博物館行きの国際寝台車がブルーの胴体に由緒ある『ワゴン・リー』の金文字を飾っているけれど、その金文字はDミ(はく)落しかかっていた」と鋭い観察眼で記す▼オリエント急行は、アガサ・クリスティの「オリエント急行殺人事件」の舞台になったようにヨーロッパの人々には、一度は乗りたい憧れだった。20世紀初頭から30年代の全盛期、王族や貴族、富豪などが競ってオリエント急行での豪華な旅を楽しんだ▼日本でいま豪華な寝台列車の代表といえば、札幌・上野間の「カシオペア」と「北斗星」、札幌・大阪間の「トワイライトエクスプレス」だろう。寝台列車の旅は、航空機や新幹線とは異なり、時間の制約とは無縁の解放感が味わえる▼だが時間の節約を追求するのは、忙しい現代にあっては仕方がないことかもしれない。来春のJRダイヤ改正で、寝台列車が減らされることになり、道内でも1日2往復の「北斗星」が1往復になる▼「北斗星」は1988年の青函トンネル開業時に登場した。フルコースのディナーが人気を集め、予約が難しい花形だった。だが最近は航空機などに押され利用者数が落ちていた。人気のDミ落は花形にもやってくる。(S)


12月28日(金)

●今年の世相を反映した漢字「偽」はまだ続く。熊本県のウナギ養殖業者が台湾産や鹿児島産などのウナギを仕入れ「熊本産」と偽って販売。他の卸業者も台湾産ウナギを「鹿児島産」と偽って県外の加工業者に販売していた。いずれも偽装を認めた▼食品などの偽装が発覚するたびに思うのは「賞味期限」って何だろうということ。行政が食の安全を守るため、生産過程や製造過程などを考慮して設けた基準だが、消費者の表示追従が先走っている気もする。賞味期限が過ぎた途端に「有害化」されて破棄されている…▼今、数字に左右されて食糧自給率の倍の食料品が捨てられているのでは。ロンドン生まれの喜劇王のチャリー・チャプリンは小さい頃、貧乏だった。ポケットにはいつも小石。空腹になると、小石を口に入れてしゃぶり、ツバを出して餓えをしのいだ。母親が倒れ、貧民院に入ったという▼昔は親からもらった耳、眼、鼻、舌などの五感で「これはまだ食べられる」「これは腐りかけている」と見分けることができた。牛、豚、鶏などの肉にしても、魚にしても、野菜にしても、生けとし生けるものが身を呈して、人に「命」を与えている。「徳育」も大事だが「食育」がもっと大事▼食べ物を大切にすることは「ボロをまとっていても上品でありなさい」(チャプリンの母)に通じるのだ。「白い恋人」に次いで「赤福」も正月には復活する。おせち料理に「偽」という具など入っていないだろうな。函館の大晦日にはクジラもどきではなく、本当の「クジラ汁」が食べたい。(M)


12月27日(木)

●ジンギスカン、石狩鍋、ちゃんちゃん焼き。こう並べると、なるほど北海道を代表する料理には違いない。これらを看板に掲げる店は多いし、家庭でも家族で手軽に楽しめる料理だろう▼無難な選択に落ち着いたのは、お役所仕事の常だが、北海道に住む私たちとしても特に異論はない。農林水産省が、各地に伝わる古里の味の中から「郷土料理百選」を選んだ。ミシュランガイドの高級店とは違って、懐具合を気にしなくても味わえるのがうれしい料理だ▼ジンギスカンは、首都圏でも雨後のタケノコのごとく専門店が増えた。一時のブームは下火になったようだが、味と雰囲気にこだわった店は、しっかり定着して、北海道の味覚を広める役割を果たしている▼石狩鍋もいまごろの季節には、欠かせない料理だ。土鍋にみそ仕立ての出汁(だし)をはり、サケや野菜の具材を入れてふつふつと沸き立ったところを頂く。バターを溶かし込んで風味付けしたり、牛乳を加えて濃厚な味に仕上げたりといったバリエーションもある▼ちゃんちゃん焼きは全国的な知名度は劣るかもしれない。行楽の季節などに郊外に繰り出して、鉄板の上でサケとキャベツ、ネギなどを焼いてみそで味付けする。野趣あふれる料理だが、他の2つほどポピュラーではないようだ▼わが函館・道南で郷土料理を選ぶとしたら何を入れたらいいだろう。イカ刺しはまあ別格としても、候補が多すぎて困る?ちなみに地域住民に人気の高い「御当地料理特選」には、道内からウニ・イクラ丼とスープカレーが選ばれたそうだ。(S)


12月26日(水)

●「つり上げた荷物の下には絶対に行かない。これが荷役の鉄則です。この丸太も一抱えで8トン近くありますから」―。函館港で、船荷の上げ下ろしに従事する港湾荷役を取材したことがある。常に危険が伴う仕事だった▼取材当日は、道南スギの丸太を船に積む作業。重機が抱えてくる丸太約30本にワイヤを掛け、45トンづりのクレーンで引き上げる。ワイヤ掛けには熟練を要し、掛け方ひとつ間違えるとつり上げる際、丸太が飛び出してくるという▼日雇い派遣大手「グッドウィル」が、労働者派遣法で禁止されている、この港湾荷役へ派遣などを繰り返していたとして、厚生労働省は来月にも事業停止命令を出す方針を固めた。同様に大手のフルキャストも停止命令を受けており、日雇い派遣の在り方があらためて問われている▼グッドウィルグループの中には、介護事業の虚偽申請で摘発されたコムスンもあり、その経営姿勢への信頼が大きく揺らぐ思いがする。またコムスンと同様、登録者の雇用に大きな影響が出ることも心配だ▼新規ビジネスの開業や成長には時代を読む目が必要。グループの折口雅博会長は、バブル景気のさなかにディスコ事業を成功させ、その後は介護や人材派遣などの新分野に商機を見いだした。才能は確かにある▼しかし、法令を無視した業務拡大は必ずや露見する。「食」の偽装問題がいい例だ。この10年間で、時代を映すように新しく出てきた言葉に「コンプライアンス」がある。日本語で「法令順守」。当たり前のことが、英語で市民権を得る時代が物悲しい。(P)


12月25日(火)

●若くて貧しい夫婦が、クリスマスプレゼントを何にしようかと悩む。妻は、自慢のブロンドの髪を売って得た金で夫にプラチナの時計鎖を買う。夫は、時計を質入して妻がほしがっていたべっ甲のくしを買って帰る▼米の作家オー・ヘンリーの名作「賢者の贈り物」のあらすじだ。相手を思いやることから起きた行き違い。互いに使い道のないプレゼントになってしまったが、夫婦愛の美しさが温かな余韻を残す好短編だった▼子どもにとって心が浮き立つクリスマスだ。物価の値上がりや不景気風が身にしみるといっても、子どもの弾ける笑顔が見たくて財布のひもを緩めた親や、ケーキを囲んで一家団らんの幸せを祝った家族も多いに違いない▼子どものころ、イブの夜はなかなか寝付けなかった。いつサンタさんがプレゼントを枕元に届けてくれるか、見ていたいとの好奇心からだった。サンタさんは、実は親が演じていると知ったのは、園児になってからだったろうか▼いまは、立場が逆転して子どもたちにプレゼントを贈る側になってしまった。もっとも最近の子どもは、何をもらってもすんなり喜ぶわけではない。親の顔を見てほしいものをしっかりと要求してくる。始末が悪いのか賢いのか▼「賢者の贈り物」の夫婦は、相手が最も喜ぶプレゼントを熟知していた。だが事前の情報交換をしなかったばかりに皮肉な結末を招いた。ほしいものを伝え合っていたら、無駄をしないですんだろうと言ってしまっては物語にはならない。さて今年のプレゼントは賢明な選択だったろうか、とふと考えた。(S)


12月24日(月)

●夜が最も長くなる冬至が過ぎて、これからが冬本番。ザビエルが来日した458年前に日本で初のクリスマスが祝われ、クリスマス・ミサは2年後。明治初期にはホテルでパーティーも始まった。その頃のサンタクロースは「北国の三田九郎」と呼ばれた▼クリスマスは人々の苦悩を一身に背負って十字架にはりつけにされたキリストの誕生日。この日が近づくと赤、緑、白色があふれる。赤は「血と愛と寛大さ」、緑は「永遠の命」、白は「自由と純潔」を意味し、ツリーの星は「希望」、松ボックリは「豊かな実り」を表す▼クルミには神の御心が宿り、サンタのプレゼントは救いの成就と隣人への愛で、天使は天国から吉報を運び、ジングルベルは天国からのごあいさつだ。クリスマスに比べ、諸行無常を悟った釈迦の誕生日、国を興した神々の誕生日を“商戦”にのせて祝う慣習のないのが少し寂しい▼同じ神でも“プチ悩み”の諸人を勧誘する霊感商法の「神世界」はひどい詐欺団体だ。「祖先の因縁」などと不安をあおって、お守りや絵画、書籍などの“霊感グッズ”を法外な値段で売りつけ、「病気はヒーリングで治る」と投薬治療を止めさせたり…。2000万円分も買わされた人も▼驚くことにエリート警官が金集めに加担していた。勧誘トークで「警察がいるから安心」などと繰り返し。一切衆生を救済するのに数珠などの“釈迦グッズ”や、破魔矢などの“神さまグッズ”を高く売ることはない。今夜は大門のにぎわいに出掛けて嫌な事件を忘れ、孫にプレゼントでも買おうか。(M)


12月23日(日)

●思わず「やるなあ」とうなってしまった。「合併しない宣言」で知られる福島県矢祭町の町議会が、議員報酬を日額制に改める条例案を提案したことを知り、小さな町の議員さんたちの大きな決断に拍手を送りたくなった▼町議の定数は、前回3年前の改選時に18から10に減らした。その町議の月額報酬は20万8000円。それを日額制にすれば、仮に1日当たり3万円としても1人年約90万円に削減できるというのだ。まさに議員自ら身を削る覚悟の表れだ▼提案者の菊池清文議員(62)に電話で経緯を聞くと、日額制の話題は2、3年前から出ていたという。定例会や常任委員会など議員としての公務は年間30日程度。時間当たりの報酬額は、一般の事業所勤務の賃金に比べ格段に高い▼「税金からいただく報酬は、純然たる公務に限るべきだ」との意見が、多数となり提案に至ったという。提案は全議員で構成する調査特別委で審査されている。年内にも開かれる臨時会で、可決するのは間違いないという▼同町は、各地の議会で不透明さが問題になっている政務調査費はない。視察研修についても、議員自らの積立金で賄っている。01年に「合併しない宣言」を全会一致で可決して以来、「一円も無駄にしない」(菊池さん)が議員に浸透したそうだ▼欧米などの地方議会では、無報酬の首長や議員が活躍している例も多い。財政が苦しい道南の各自治体でも、議員報酬や政務調査費などの見直しが始まってはいる。だが、数歩先を行く矢祭町の議員たちが、なんだか大きな存在に思えてきた。(S)


12月22日(土)

●まちに流れるクリスマスソングや忘年会の賑わいとは縁がない。東京霞が関の中央省庁は、年末に向けて来年度予算関係の仕事に明け暮れる。職員は終電に間に合えばいいほう。深夜まで仕事を続け、貸布団に包まって眠ることも珍しくない▼国会議事堂近くに位置する北海道東京事務所でも、この時期が1年を通じて最も忙しい。職員は道関係の事業にどの程度の予算が付いたか情報集めに奔走する。その合間には、市町村から上京する陳情団への説明も開く▼国会議員、役人そして市町村長や地方議員たちでごった返す永田町と霞が関。年中行事が繰り広げられて予算政府案が決まる。北海道にとって関心事の開発予算は6209億円で、8年連続で減少した▼国全体の公共事業費の約1割を占め、公共事業王国と言われていたかつての勢いはない。公共事業の縮減は建設業界の苦境につながり、地域の雇用情勢を悪化させる。だが、国の財政が逼迫し、公共事業への風当たりが強まっている現状では、事業費の減少は避けられない▼もっとも事業の縮減は地方側の要望でもある。窮迫し切った地方財政では、公共事業の地元負担分が重い足かせになる。道路や下水道などインフラ整備を進めたくても、厳しい財政状況ではおいそれとは踏み込めないのが現実だ▼地元関連では、道新幹線整備費178億円が固まった。要望額とは隔たりがあるが、05年度の着工以来、工事の進捗に伴って予算額は増えている。新規事業はないが、懸案の新幹線はまあまあの規模になったというのが、予算の概観だろうか。


12月21日(金)

●「80歳はサラワラビ(まだ子ども)90歳となって迎えが来たら100歳まで待てと追い返せ」。重要無形文化財・芭蕉布で名高い沖縄県大宜味村の老人クラブが、長寿日本一を記念して建てた碑文だ▼村の人口3478人のうち80歳以上が458人、90歳以上に限っても108人いる。豚肉を湯通しして脂肪分を抜き、コンブや大根、シイタケなどの野菜と共に炊いた郷土食や温和な気候が長寿を支えてきた▼ところが最近は様相が変わってきたという。69歳以下に「メタボリックが目立ち始め、成人病の患者が増えてきた」(村福祉課の島袋経子さん)。郷土食が嫌われ、ファストフードや牛肉を好む食生活の変化が原因と島袋さんは見る▼厚生労働省が5年に一回まとめる「都道府県別生命表」で、男性は長野の79・84歳、女性は沖縄の86・88歳が平均寿命1位になった。沖縄の女性トップは75年から7回連続だ。同県にとって喜ばしいことだろうが、浮かれてもいられない事情がある▼いまの後期高齢者に続く年代の健康が、以前ほど確かではなくなっているとの心配が膨らんでいるのだ。長寿県の栄誉が揺らいでいると考えた県は、地域ごとに食生活の改善指導や検診率の向上に取り組み始めた。車に乗るよりも歩くことの奨励もその一環だ▼さて、道内の平均寿命は男性78・30歳で33位、女性85・78歳で25位だ。元気で長生きはだれもが願う。それを実現するには、心がけと努力を要する。寒いからといって車に頼ったり、家に閉じこもったりしないで、五稜郭公園一周のジョギングでもしようか。(S)


12月20日(木)

●福岡市の3児死亡事故で危険運転致死傷と道交法違反(ひき逃げ)罪に問われた元市職員について、地裁が危険運転致死罪より量刑の軽い業務上過失致死傷罪を予備的な訴因として追加するよう命令した、と報道された。飲酒運転には厳罰をというのに、なぜ…▼危険運転致死罪は飲酒によって正常な運転が困難な場合などに限って罰するとしているが、元市職員が深酔い状態だったことの立証が難しく、危険運転致死罪の認定が難しいと判断されたようだ。来月の判決は求刑の懲役25年より軽い7年半くらいになりそう▼飲酒運転による事故や認知症が原因とみられる高齢者の事故も増えている。臥牛子も相応の年になったので、免許証更新に必要な高齢者講習を初受講。ブレーキを踏むにも、停止線で止まるにしても、確かに30年前に比べて判断力や動体視力などの低下は否めない▼指導員の「危険な運転の経験はありませんか」に、ある受講者は「3車線の交差点を右折しようとしたところ、ハンドルを右に切り過ぎたのか、いわゆる対向斜線に入ってしまった。慌ててバック、幸い車が少なかったので事なきをえました」。高速道を逆走したり、線路に入ったり…▼受講中に「愛知県で3人の死亡事故(16日現在)が出て、北海道は3年連続でワーストワン返上か」というニュース。師走は先生が走るだけでいい。まして酒を飲んでの暴走は許されない。幼い3児を跳ね、救急車も呼ばず逃げるなんて。「だろう運転」から「かも知れない運転」に切り替えなければ。(M)


12月19日(水)

●「アラブの狂犬」と口を極めて非難したのは、故レーガン米大統領だ。リビアの最高指導者カダフィ大佐を指してのことだった。一国の指導者をこれほどまでに悪罵(あくば)するのは異例だった▼リビアで思い浮かぶのは、1988年12月21日、ロンドンからニューヨークに向かったパンアメリカン航空機の爆破だ。270人が死亡したこの爆破には、リビア情報機関が犯行に関与したことが明らかになった。何をしでかすか分からないテロ国家の恐怖が世界を震え上がらせた▼日本赤軍がかかわった事件にもリビアが登場する。1973年7月、パリ発東京行きの日航機が日本赤軍のメンバーらによってハイジャックされた。同機はドバイ空港からリビア東部のベンガジ空港に着陸、そこで爆破された。犯人らはリビアの保護を受け逃走した▼かつてテロ国家の烙印(らくいん)を押されていたリビアは、いま大きく変わった。パンナム機爆破犯人の引渡しや大量破壊兵器の開発放棄を通じ、国際社会に復帰。昨年、米と26年ぶりに国交を正常化した▼世界の孤児からの脱却を進める政策は、先ごろのカダフィ大佐の訪仏にも表れている。パリでは、サルコジ仏大統領と会談後、ルーブル美術館などを見学した。訪仏後は、スペインを訪れ、数都市を回った▼リビアは豊かな石油資源を持つ。日本からは遠い国だが、2年前の愛知万博にカダフィ大佐の長男が来日するなど関係も深まっている。“狂犬”の変貌をニュースで追いながら、核疑惑に包まれた隣国が、リビアのように変わることはあるのだろうかと考えた。(S)


12月18日(火)

●「背水の陣」で船出した福田康夫首相の今年の漢字は「信」だそうだ。総選挙の洗礼を受けずに政権に就いた首相にとって、近い将来に「信」を国民に問うことは最大課題だろう。なるほどとうなずけないこともない▼だが、今年の世相を最も的確に表すとして選ばれた漢字は「偽」だ。食品表示の改ざんから年金記録の不備に至るまで世の中に「いつわり」がまん延した。「偽」の文字を揮毫(きごう)した京都清水寺の貫主(かんす)は「悲憤に堪えない」と慨嘆した▼住友生命が毎年募集している「創作四字熟語」にも、庶民の憤りや嘆きがあふれている。偽装牛ミンチ事件を皮切りに日付改ざんの赤福や白い恋人、船場吉兆の原材料や日付の偽装など「連詐反応」が、食品に対する信頼を根底から損ねた▼国会で与野党の攻防が繰り広げられても「年金彷徨(ほうこう)」の行き着く先は見えず、ちゃんと納めても将来受け取れるのかと不信は根強い。急患たらい回しで「医師薄寂(はくじゃく)」は、過疎地の多い道内で特に不安が募る▼金属資材盗難の「奇怪金盗」が多発し、長崎市長射殺や佐世保のスポーツセンターでの銃乱射など「祈銃掃捨(そうしゃ)」に恐れおののいた。地球温暖化の影響は「熊氷(ゆうひょう)裂壊」を引き起こし、ホッキョクグマの生存を危機にさらす▼それでも出生率が6年ぶり上昇の「産声多数」や、コウノトリが43年ぶりに巣立った「出発進幸」の明るい話題もあった。今年も残り2週間、「郵民配達」に衣替えした郵便局では年賀状の受け付けが始まった。(S)


12月17日(月)

●特急列車で帯広から函館に向かっていた14日午後、札幌圏の全線が完全にストップしたJR北海道の過去最大規模のトラブルに巻き込まれた。帯広からの列車を降り、南千歳駅で札幌発函館行きの特急に乗り継ぐはずだったが、この南千歳駅で待つこと9時間。函館に着いたのは翌15日午前5時近かった▼緊急停止信号を発報する防護無線が作動したため、すべての列車を止めて調査している―との放送が流れるばかり。いつ運転が再開されるのかも分からず、時間だけが空しく過ぎていく▼数時間経過してもただの1本も動かないのだから、これはもうどうしようもない。駅員に「何とかしろ」と言っても仕方がない。代替バスもないし、タクシーには長蛇の列。ホテルに泊まるか、知人宅に世話になるか、いやいやそこまで行く手段もない…▼さてどうする。あれこれ考えていたところに、運転再開の知らせだ。「何時になるか分からないが、函館方面に1本は必ず動く」と駅員。待つしかない。ただただ待つしかないのだ▼影響人員11万人余という今回の事態。駅窓口に殺到した乗客の中には、慇懃無礼(いんぎんぶれい)な輩(やから)も目立った。スーツ姿の紳士然とした男が駅員に名刺を無理やり出させ、「あとで損害賠償請求する」と声を荒げたり、「お前の責任でタクシーを用意しろ」と脅してみたり▼でもね、駅員に食ってかかっても列車は動きませんよ。こんな時はあの手この手で情報を集め、どうするか自分で判断するしかない。何と品位を欠く御仁が多いことか。情けなさが疲れに拍車を掛けた。(H)


12月16日(日)

●直木賞作家の浅田次郎さんは年に2度、函館を訪れるという。1度目は夏競馬を観戦し、2度目は真冬に函館山からの夜景を眺める。香港、ナポリと並び「世界三大夜景」と称されるが、「函館こそ世界一」と絶賛する▼エッセー集「つばさよ つばさ」(小学館)で紹介している。そのまま流麗な文章を紹介しよう。「両脇を海で括(くび)られた函館の街は、まるで群青色の古代の壁に立てかけられた、螺鈿(らでん)の竪琴である」▼浅田さんの小説は、ロマンス物から歴史長編まで幅広い。読後に涙を、悲しみの中にも温かさや幸せを感じさせる筆致や構成力にはうならされる。その浅田さん、自称「新選組フリーク(心酔者)」。「壬生義士伝」は、構想20年、吉村貫一郎の生涯が、新選組元隊士によって語られる▼その後、芹沢鴨暗殺の真実に迫った「輪違屋糸里」を上梓するなど、さまざまな切り口で新選組を描いている。先日は市内で講演し、「土方歳三や榎本武揚は、函館で人生にけじめをつけた。そういうことでも函館に引きつけられる」と語り、夜景や夏競馬とともに魅力を語った▼しかし、土地に魅力があっても、住んでいる人は過小評価することが多い。函館はその典型かもしれない。新生活を夢見て函館に移住した人からも、そうした声を聞く。あこがれや印象など、函館の評価は等身よりかなり大きいが、誇りを持っていい▼浅田さんが指摘した夜景の魅力だけでも、あらためて認識してみよう。空気が澄む冬空の下に輝く「夜の竪琴」は、きっと心に温かい音色を響かせてくれるだろう。(P)


12月15日(土)

●「黒革の手帖(てちょう)」は、松本清張原作の人気ドラマだ。銀行員だった主人公が、詐取した大金を元手に銀座でクラブを開く。男を手玉にとってのし上がっていくストーリーのおもしろさが受け、テレビで高視聴率を稼いだ▼主人公がまんまと大金をせしめることができたのは、架空名義の預金者リストを記した手帳を手に入れたからだった。黒い手帳には、主人公を欲望と愛憎が渦巻く世界へ導く扉の鍵が潜んでいた▼そんなことを思い浮かべたのは、函館市内の文房具店に山積みされた手帳が、ほとんど黒い表紙だったからだ。大きさはポケットサイズからノート大までさまざまだが、カラフルな表紙は数えるほどしかない。こげ茶やワイン色がわずかにあるだけだ▼年の瀬を迎えると、来年の手帳が出回る。携帯電話を手帳代わりにしている人もいようが、アナログ人間には昔ながらのポケットサイズが手になじんで使いやすい。すでに08年手帳を使い始め、予定を記入している人も多かろう▼今年1年使った手帳を開いてみると、その時々に出あった人や出来事が思い浮かぶ。1年の過ぎこし方が、一冊の手帳にぎっしり詰まっている。だから古い手帳でも捨てられず、気が付いてみると何年分もがたまっているのだろう▼手帳は予定管理の必須アイテムであるばかりでなく、日記やメモ帳代わりにも使われる。「黒革の手帖」のように、他人には知られたくない秘密が、書かれることだってある。年の瀬に選ぶ来年の手帳が、どんな予定や言葉で埋められることになるだろうか、心が期待に弾む。(S)


12月14日(金)

●赤い靴はいてた 女の子 異人さんにつれられて 行っちゃった… 小5女児の孫が口ずさみながら「異人さんて怖い人。つれられて行ったのは誘Oサじゃない」と聞いてきた。「いや、本当は米国に行かないで、日本に残った」と答えてやった▼先ごろ、岩崎きみちゃんの母親と義父が晩年を過ごした小樽の運河公園に「赤い靴」の親子像が作られた。物語は、きみちゃんを連れて北海道に渡った母親が再婚して開拓農場に入植したことから始まる。でも、自然と闘う生活苦から3歳の娘を米国人宣教師夫妻の養子にしたのだ▼夫妻が帰国する時、きみちゃんは不治の病といわれた結核にかかって、東京の孤児院に預けられた。みとる人もいないまま、病魔と闘い続けたけれど、秋の夜、9歳の幸薄い生涯を閉じた。熱にうなされて、母の名を呼んだり、温かい胸にすがりかっただろうに…▼だから「誘Oサされて行った」のではない。異人さんに誘Oサされて、連れられて行ったのは、北朝鮮という国による拉致被害者だ。横田めぐみさんは「きっと生きている。母の胸に帰って」と絶叫する願いが実って、喜び合う親子像が早く見たいね。童謡にまつわる像は小樽で五つ目だ▼生き別れから一世紀たって親子3人が再会したわけ。孤児院があった東京・麻布で「きみちゃんの像」ができた時、足元に誰かが18円を置いたのがチャリティー募金の始まり。ユニセフに寄付され、世界中の恵まれない子供たちを助けている。今、行われている歳末助け合い募金運動の原点ともいえるかな。(M)


12月13日(木)

●「(函館には)自分のやりたい仕事が見つかりません。若者が出て行くと活気のないまちになります」。函館大学野球部1年の西村考平君が、学内で開かれた弁論大会で訴えた▼卒業まで3年あるが、就職を考えると函館にとどまることは難しいと冷静に将来を見据えている。新卒者の就職口が乏しいのは、多くの地方都市が直面している現実だ。企業誘致はなかなか進まない。かといって地元の企業は、採用枠が少ない▼希望する職種に就こうと思うと、地元を離れ、首都圏や札幌圏などを目指すしかない。ふるさとに残りたいのだが、その願いがかなうのは一部だけに過ぎないのは、目に見えている。若者の流出は、西村君の指摘を待つまでもなくまちの活気を失わせる▼函館市の人口が1年間で3000人も減ったのは、雇用機会を求めてまちを離れる人々の増大が主な要因だ。もちろん少子化の影響も無視できない。だが、求人倍率が全国平均の半分の0・5をわずかに上回る程度では、希望する仕事に就くのは至難だ▼しかも正社員での採用は少なく、アルバイトやパートなど非正規雇用が増えている。景気回復の恩恵を受けている首都圏などに比べると、賃金の開きも大きい。かくして地方から人が消え、商店が閉じ、子どもたちの歓声も失われていく▼なんだか悲しい現実ばかりが目に付く。西村君のような若者が地元に喜んで定着し、まちの将来を担う。そんな展望を切り開くことはできないのだろうか。若者たちの弁論を聞きながら、人口減を食い止める有効な手立てがないのが歯がゆかった。(S)


12月12日(水)

●携帯電話の絵文字にまで「謝罪」が出てくる。スキンヘッドの専務、バーコードヘアの社長らが深深と頭を下げる。3人目の役員が頭を下げたとたんにカツラが落ちる。このところ、日常化した会社首脳陣のおわび会見の光景ではないか▼偽装、偽装、偽装…。今年は不二家、ミートホープ、白い恋人の石屋製菓、赤福、マクドナルド、船場吉兆など食品の不正が続出。特に船場吉兆の「偽装マニュアル」は消費者を一段と欺いた。立場の弱いパート従業員に責任をなすりつけたが、最後は進退きわまって企業ぐるみを認めた▼「牛肉みそ漬け」で佐賀産や鹿児島産を「但馬牛」と偽って使用、ブロイラーを地鶏と表記、明太子やアナゴなども期限改ざん、大半の製品が偽装づけ。「食品の安全に対する信頼を裏切ったことを深くおわび申し上げます。創業者の父に申し訳ない」。和服の女将が泣き崩れて謝罪会見▼取締役の長男が「その…法の…」と詰まっている側で、女将の母親が「頭が真っ白だったんでしょう」「法令順守が足りなかったのでしょう」と、ささやく声がマイクに取られてていた。もの哀しい親心。大相撲の朝青龍、ボクシングの亀田大毅選手、謝罪の仕方も人それぞれ…▼偽装レースで両者とも敗者になった赤(赤福)と白(白い恋人)。心から謝罪・おわびして出直した「白い恋人」は、お土産店で品切れになるほど復活した。「食べ物がもったいない」など偽造の理由にするな。「食品安全」に徹して作った純粋な老舗(ブランド)製品なら、消費者は離れることはない。(M)


12月11日(火)

●〈白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり〉酒を愛し、43歳で死ぬ間際まで酒を欠かさなかった歌人若山牧水の有名な歌である。牧水は、立待岬に一族の墓がある石川啄木の臨終に立ち会ったことでも知られる▼アルコール中毒の幻覚症状に悩まされた牧水は、死ぬ日の朝も5合の酒を飲んだ。死後、3日たってもその体は生前と変わらぬ様子を保ったという。「アルコホルノ浸潤(しんじゅん)に因(よ)ルモノカ」と主治医が記していると作家山田風太郎さんが紹介している(「あと千回の晩飯」(朝日新聞社)▼牧水のように破滅的に酒に浸るのは、病的には違いない。酒は百薬の長とはいうが、度を過ごして飲み続ければ、アルコール中毒や肝硬変といった怖い病気が待っている。まあ、それでも冬は鍋物で一杯がうまい季節だ▼海の幸に恵まれた道南では、この時期になるとタラやカキ、アンコウなどの鍋物が恋しくなる。下戸であっても、湯気を上げる鍋物を前にすると、一杯ぐらいはひっかけたい気分になる。ほろ酔いに心が和らぐ至福の時だ▼夜の盛り場を歩くと、忘年会帰りの人々に出会う。原油高が波及した物価の値上がりや不況風にさらされていても、来る年への期待をつなぐためには、1年の憂さを忘れることが必要なのだろう▼酒は人肌(はだ)くらいがうまいというが、いまは冷酒やオンザロックスなど多様な飲み方ができる。80年前の牧水のころとは、ずいぶん違うだろう。だが百薬の長を生かすには、量はほどほどがよろしいかな。(S)


12月9日(日)

●ガソリンスタンドの横を通るたびに、値段表示をチェックする習慣がついた。ニューヨーク市場の原油価格が1バレル100ドルの大台をうかがう水準に張り付いたまま下がる気配を見せないこともあって、この冬の燃料代の高騰が気になる▼暖房に欠かせない灯油は、18リットルのボトルに満タンで約1700円もする。数年前は千円位だったな、と記憶をまさぐる。寒波の中で暖房を止めてかぜをひいたら困る。ガソリンにしてもレギュラー1リットルが150円近い▼家計を直撃する数字にため息をもらす道民の感情は、どうやら道議の一部の先生方には無縁のようだ。今春の道議選で、公費で賄われる選挙カーの燃料費を満額請求した候補が16人いたことが明るみに出た▼燃料は1台分のみ1日当たり7350円を限度に公費負担している。満額分を給油すると、燃費10キロの車で約600キロ前後を走った計算になる。9日間の選挙期間中、毎日600キロを走り回ることは可能だろうかと道議会で疑問が出た▼選挙カーは高速道路を走行するわけではない。低速で市街地を回るのが普通の選挙運動だ。市街地を選挙区とする候補ばかりでなく、農村部の候補だって1日600キロも選挙カーを走らせるのはあり得ないだろう▼燃料代の請求には、領収書も明細書も添付が義務付けられていない。制度自体の不備に気づいた道選管は、領収書添付や使用車両のナンバー記入などを次の道議選から求める方針だという。それにしても、もらえるものなら請求しちゃえ、という一部選良の心根は、寒々しさを募らせる。(S)


12月8日(土)

●懸命に手洗いする動作やバイキンを追い払う動作、アップテンポの曲で踊る“手洗い教室”。園児たちの間で、正しい手洗いの「バイキンBye Bye 手洗いパラパラ」が励行されているという。今、ノロウイルスとインフルエンザが過去最悪のペースで猛威を振るっている▼ノロウイルスは感染症胃腸炎の病原体。近所の高齢者は高血圧の治療中に激しい吐き気と下痢。以前、孫2人が同じ症状を訴え、治まったころに、今度は息子夫婦が同じ症状で寝込んだ。孫たちを預かった時に感染したようだ。先ごろ、渡島管内でも児童の集団感染が相次いで報告された▼この20年で最も早く猛威を振るっているインフルエンザはAソ連型。大半は集団生活を送る児童・生徒や高齢者が感染するケースだ。先月末までに学級閉鎖した学校は全国で305校。北海道は半分以上の176校で突出している(厚労省)。拡大の原因はセキやクシャミ▼かからない用心は当然だが、周囲の人に移さない“せきエチケット”も必要。地下鉄などでつり革につかまって、ゴホン、ゴホンとやっている光景は珍しくない。知り合いの医師は「飛まつは数メートルも飛びます。前にいる人は頭上からウイルスを浴びているようなもの」と警告▼ノロウイルスもインフルエンザも感染しないためには「手洗い・うがい・マスク」が最も大事。とりわけ帰宅した時の手洗い。手のひらのほか、指の間やツメ、手首なども丁寧に洗って、清潔な手で食卓を囲むことだ。園児が踊る「バイキンBay Bay…」のように、手洗い励行を。(M)


12月7日(金)

●イムノリゾートと言っても大半の人はピンと来ない。免疫を意味する英語にリゾートを付けた造語だ。日本語で「免疫保養地」と言えば、内容はともかく何となく理解できたように感じるかもしれない▼実は十勝管内の上士幌町が、イムノリゾートの先進的な事業に取り組んでいる。そのスローガンは「健康と癒し」。都会から滞在型観光客を呼び寄せ、あわよくば定住してもらいたいとの願いが事業推進の原動力になっている▼町がまず目を付けたのは、スギ花粉症に悩む人たちだった。2年前の春、スギ花粉リトリートツアーと名づけてモニターを募集したところ、10人の定員に対し首都圏を中心に276人もの応募があった。スギの木がない町の特性を生かしたアイデアだった▼町にやってきた参加者は、北大教授の協力で花粉症に関するレクチャーを受けたほか、スノーシューを履いての森林浴や地元農産物の食事を体験した。参加者の評価が高かったことに力を得た町は、大手旅行会社と提携して毎年ツアー客を呼び寄せている▼そうした取り組みが注目され、町は国の滞在型観光に関する調査地に選ばれた。年明けに調査を兼ねた一行がやって来る。人口5000人の過疎の町にとって、滞在型観光地のお墨付きを得られる絶好のチャンスだ▼道内は自然環境や食材を生かした滞在型観光の適地だ。財政破たんした夕張市では、はやりのメタボリック症候群改善を目指す健康ツアーを売り込む。道南にも大沼など滞在型観光の適地はある。地域の魅力を伝えるアイデアと発信力。認知を促す鍵はその辺りにある。 (S)


12月6日(木)

●引きずりおろされたという点では、堀達也基北海道知事のケースと似ている。堀さんは3期目を目指した03年の知事選で政党の支援を得られず、立候補断念に追い込まれて引退した。心を残しての退場だったと言っていい▼太田房江大阪府知事が来年1月に迫った知事選で不出馬を決めた経緯は、堀さんの場合ともちろん異なる。だが、意に反して追われるように知事の座を去らざるを得なくなったのは、同じだろう▼太田さんは、「政治とカネ」の問題でつまづいた。親類のマンションや実家を講演会事務所として「業務委託料」を支払っていた。さらに府の公共工事受注業者も参加する中小企業経営者らとの懇談会に出席して、毎回多額の講演料を受け取っていた▼太田さんは過去2回の知事選で自民、民主、公明各党の相乗りで当選を果たした。だが今回は各党とも、早々に推薦見送りを決めた。身から出たさびか、出馬断念を招いたとされても仕方があるまい▼太田さんは通産省(現経済産業省)のキャリア官僚出身だ。同省の女性キャリア官僚には札幌通産局長だった坂本春生さん、元外相の川口順子さんがいる。高橋はるみ知事も同省の出身だ。これら4人のキャリア官僚を同省の「4人娘」と呼んだころもあったそうだ▼キャリア官僚を「…娘」と称するのは幾分はばかられるが、圧倒的に男性優位の同省で、4人は仕事の上でも目だったということだろう。退官後も4人は食事会などで交流してきた。その1人の太田さんが表舞台から退出することを高橋知事はどう見ているだろうか、聞いてみたい。(S)


12月5日(水)

●ニュー・イングランドの小さな漁港で若いカップルが失踪。続発する類似事件に港は揺れ動く。やがて想像を絶する巨大イカの仕業と判明。海洋学者は漁のエキスパートや女性警官の協力を得て巨大イカの捕獲に出かけたが‥(映画「巨大イカの逆襲」)▼体長10メートルを超す巨大イカは水深2000メートルの深海に生息し、めったにお目にかかれないが、先ほど、函館、福島、八雲の前浜で体長1メートルを超す大きなソデイカが相次いで捕獲された。ソデイカは食用では最大級。普段は深海に生息しているが、餌を取りに前浜に来たようだ▼鮮やかな赤と白で色を変える姿を撮った写真が本格的な冬の訪れを告げている。一方、イカの生態展示を売り物にしている魚津水族館(富山県)ではアオリイカが季節はずれの産卵。アオリイカの産卵は春ごろが通常といわれ、初冬に産卵するのは珍しいという。地球温暖化の影響か▼港まつりでイカロボが踊る。イカは函館のシンボル。東京から観光にきた知人は「洋上に輝く巨大ツリーは、まるで巨大イカが深海から上がってきたみたい」と感嘆。5万個の電球を付けた20メートルの巨大ツリーは福島で捕獲されたソデイカにそっくり。暗黒の深海を照らしているように▼燃料費の高騰もあって、集魚灯を点けずに漁をする昼イカ漁が増えるなど、漁火風景も変貌。しかし、“イカ博士”を目指して「はこだてイカマイスター」認定試験が実施されるなど、イカの拠点づくりは着々。巨大イカは人を襲わない。子供たちに海のロマンと生命の大切さを教える水族館がほしい。(M)


12月4日(火)

●「ボクに羽があったなら…」(朱鳥社)は、東京葛飾区議の村松勝康さんが、自らの半生をつづった自伝だ。東京で初の車いす区議になった村松さんは、障がい者の目線で福祉を中心に身近な政治課題に取り組んできた▼1944年秋田県に生まれた村松さんは、1歳のとき脊髄性小児まひにかかった。その後遺症で両脚に障害が残り、歩くことが出来ない。小学生のころは母に背負われて通学した。トイレに困り、ウンチをもらしたことなどが、ユーモアを交えて書かれている▼東京で大学を終えた村松さんは、就職先が見つからず、食うや食わずの厳しい生活をしたことも明かしている。最初に就職した印刷会社、次の自動車教習所、さらにミシン組み立て会社を追われるように退職した▼そんな村松さんに転機をもたらしたのは、ひとつの新聞記事だったという。山口県光市の車いす市議の活動と、障がい者の地方議員連盟結成を呼びかける内容に心を動かされた。市議の紹介で横浜で開かれた結成大会に出席したことが区議への立候補につながった▼村松さんが初当選した1993年、駅前に松葉杖で立って演説していると、ある女性議員が「福祉は私たちがやっているから余計な心配することない」との言葉を投げつけてきたそうだ。ライバルの出現を阻止しようとしたのだろう▼嫌がらせにあいながらも村松さんは4期連続当選を重ねている。支えてきたのは妻と娘だ。読後感がさわやかなのは、村松さんの飾らぬ人柄のおかげだ。本を読みながら3日は、国際障がい者デーだったことを思い浮かべた。(S)


12月3日(月)

●本紙に隔週で掲載している「道南不思議夜話」。11月11日付「洞爺丸事故は天災か人災か」を興味深く読んだ。同じような話を当時の国鉄職員から聞いたことがあるからだ▼寄稿記事によると、嵐の中で沈没した青函連絡船洞爺丸の乗客に、当時の国鉄北海道総局の総支配人がいた。総支配人は東京で開かれる全国支配人会議を控えており、常に連絡船の欠航に批判的だった。そうした中、船長は出航の決定を下した…▼臥牛子が聞いた話も、骨格は同じ。道内のある国鉄局長が、本州での会議出席のため、船長に出航を促したという内容。さっそく筆者の近江幸雄さんに尋ねると、総支配人のほか、他の大幹部も東京や仙台などで開かれる会議があり、乗船を待っていたという。関係者には有名な話らしい▼近江さんは「総支配人が船長に出航を命じた」とは書いていない。運航するかどうかの権限は船長にあり、いくら道内の国鉄トップでも命令はできない。「ただ、暗黙の圧力はあったのではないでしょうか」と語る▼「なぜ随意契約ではダメなんだ」「代理店は一つだから随契でいいだろう」―。防衛装備品の調達をめぐる汚職事件で、収賄容疑で逮捕された守屋武昌・前防衛事務次官。1基6億円の次期輸送機(CX)エンジンの選定などで、担当の職員に圧力をかけていた▼1173人の犠牲者を出した洞爺丸出航の真相は、亡くなった当事者にしか分からない。かたや防衛省トップの「肩入れ」は、部下の公正な判断を歪ませた。巨大な利権構造が明らかになりつつある今回の事件。真相解明はこれからだ。(P)


12月2日(日)

●師走の正しい語源は、実は分かっていないそうだ。だが年の瀬を控え、師匠の僧がお経を上げるために走り回る「師馳(は)せ月」に由来するというのが一般に流布されている▼もっともたまたまカーラジオで聞いていた英語ニュースでは、日ごろ落ち着きと威厳を示している先生でさえ、気持ちが急(せ)いて走り回ることから来たと説明していた。こちらの解釈の方が子どもにも分かりやすい▼極月は、物価値上がりとともにスタートした。いつも前を通る函館市内のセルフのガソリンスタンドは、価格表示がレギュラー149円台、灯油95円台に変わっていた。レギュラー150円の大台を超すスタンドも珍しくない▼値上げは、他の製品にも表れている。製パン大手は食パンの希望小売価格を平均8%上げた。お菓子類も上がった。この後も即席めん、インスタントコーヒー、みそ、ビールなどが目白押しだ。原油や原材料の値上がりが製品価格にはねかえる▼救いは、スーパーなどの流通大手が、価格凍結宣言などを出し、店頭価格維持を図っていることだ。消費者にさほどの動揺がないのは、値上げの連鎖が、末端まで及んでいないからだろう。それでも消費者にとって冷たい冬になりそうな気配は、去らない▼市内は、クリスマスと歳末の華やかな飾りつけで彩られている。ホテルや高校などでもクリスマスツリーの電飾が、冬空に温かな光を放っている。ホワイトクリスマスやジングルベルも聞こえてくる。物価値上がりの心配はあっても、気持ちはどことなくそぞろになる師走が始まった。(S)


12月1日(土)

●「喧嘩(けんか)したら、殴られた方が勝つんだよ。相手はいつ復讐(ふくしゅう)されるか心配でたまらないもんだ」。益田喜頓さんの「六区のジン」という作品の一部だ(「苺ミルク」近代文藝社)▼舞台は浅草。理髪店「田島床」に働く主人公が、六区のジンの異名を持つヤクザにいちゃもんを付けられこてんぱんにやられる。ある日、そのジンが店に来る。ひげをあたってもらった後、金を払うときに主人公に気づく▼のど元をカミソリが行き来したことを思い出し、ジンは真っ青になって、店を飛び出す。それから10数年が過ぎて、田島床の一帯に地上げ旋風が吹き荒れ、立ち退きを迫られる。そのとき、建設会社の社長になっていたジンが、田島床に現れる…▼物語の結末は、読んでのお楽しみに残しておくことにして、喜頓さんの人情味あふれる語り口に引き込まれた。映画や舞台で発揮されたとぼけた持ち味の芸も忘れがたいが、文章も機転が利いていて味わい豊かなことを改めて知った▼喜頓さんは、函館市青柳町の生まれだ。芸名の喜頓は、米の喜劇俳優バスター・キートンをもじって付けたことはあまりに有名だ。函館商業学校時代に野球の才能を認められ、北海中学を経て、函館大洋倶楽部の名選手として鳴らしたことも知られている▼喜頓さんが、50年以上暮らした浅草を引き払い、故郷函館に戻ったのは1990年だった。その3年後、市内の病院で84歳の生涯を閉じた。きょうは、喜頓さんの15回目の命日だ。あのひょうひょうとした風ぼうを思い浮かべ、冥福を祈った。(S)


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