平成21年12月


12月31日(木)

●今日も仕事に追われる人、ゆっくり家の掃除に精を出す人、のんびり過ごす人—。生活はそれぞれだが、あと十数時間の中で、一年に感謝するひとときを持つのは同じだろう。今日は大みそか▼この日の夜、地域や家庭は、さまざまな年越しの行事でにぎわう。富山生まれのコラム子が子どもころ、父は年神を迎えるため、一晩中起きていたことがあった。早く寝ると白髪になるという俗説があるらしいが、父の髪は真っ白だ▼3年前のきょう、函館市内の妻の実家に行き驚いた。夜は重箱に入っている料理が置かれ、カニも出た。「大みそかでこんなごちそうなら、正月のおせち料理はどんな豪華なのだろう」▼しかし元旦、初詣でに出かける前の食卓には夕べの残りが並んだ。義母に尋ねたら「おせちは昨夜に食べたでしょ」と、くじら汁が出てきた。これにも驚いたが、北海道では大みそかからおせち料理を食べることを初めて知り、カルチャーショックだった▼仕事納めの日、会社で年越し料理が話題になった。帯広出身者は「大みそかは必ず口取りとおせちを食べる」。秋田出身者は「一年で一番のごちそうを食べるのは大みそか」であった▼除夜を迎えられることは幸せで、祝う気持ちはそれぞれだが、2010年の大みそかは、誰もが「来年こそは絶対に平和で、景気回復を」と嘆かず、心底から「良い年だった」と喜び、料理を楽しむことを願う。(R)


12月30日(水)

●大みそかの「第60回紅白歌合戦」で、サブちゃんが大トリを務める。国民的歌手となった北島三郎さんは、知内町生まれ。地元出身者の活躍をテレビで見ながら1年を締めくくる。ぜいたくなことであり、地元民の1人として素直にうれしい▼北島さんは今もふるさとを大事にしている。6年ほど前のこと、本紙で「函館駅物語」と題した企画記事を掲載した。その1回目に登場してくれたのが、北島さんだった。事務所を通した間接的なインタビューだったが、本人は快く応じてくれた▼記事は、改築によって先代のJR函館駅舎が取り壊される時期に企画。北島さんは知内から函館の高校に列車通学した際の思い出を語った。毎朝、母親が用意してくれた弁当は、白米の上に黒砂糖の塊をのせただけのもの。冷えた弁当箱をストーブの上で温めると、溶けた黒砂糖がごはんと混じり合う。それはまるで出来たてのおはぎのようだったという▼母親への感謝とふるさとへの愛情がこもったインタビュー記事には、飾らない北島さんの人柄がにじんでいた。今年最後の日、その北島さんにテレビを通して会えるのが楽しみだ▼ちなみに歌合戦の紅組のトリ「DREAMS COME TRUE」のボーカル吉田美和さんは、十勝管内池田町出身。期せずして道内出身の2組が1年を締めくくることになった。「来年は北海道の年」。そんな期待を抱かせる年の瀬である。(K)


12月29日(火)

●地震、地割れ、倒壊するビル群、突風、噴火、火山弾、大津波で水没する街…最新のCGを屈指した破滅映像。古代マヤ人の予言を受けて、3年後に地球が滅亡するという映画「2012」を見た。世界終末の日、60億の人類は救えるのか…▼マヤ文明は高度な数学と天文学の知識を持っており、精密な暦を使って火星や金星の軌道も計算していた。この暦が2012年12月21日あたりで終わっているとされ、地球の終末を示唆しているという▼それでなくても、青い地球は自然破壊によって、地球温暖化によって、核戦争などによって痛めつけられている。温暖化には太陽の電磁波なども大きく影響するといわれる。地上の二酸化炭素排出よりも太陽の異変で温暖化しているという説があるほどだ▼もう一つ、12月22日に惑星が太陽に衝突するかも知れないという説。地球にも小惑星(いん石)が何度も衝突し、文明を破壊している。単純なストーリーの「2012」。たかが映画というけれど、迫力満点の壊滅シーンを見せつけられては、心配は増すばかり▼マヤ文明の予言は「地球破滅に追い込む温暖化防止に徹底せよ」と警鐘を鳴らしているのかも。地球の危機はキリストも釈迦も救えない。仏教では56億7000万年後に釈迦に次ぐ救世主・弥勒菩薩が出現するというが、そんなに待てない。地球人が懸命に努力して、傷を癒やした青い地球の初夢が見たい。(M)


12月28日(月)

●フィギュアスケートの浅田真央が、最終選考会を兼ねた全日本選手権で4連覇を飾り、ようやく五輪初出場を決めた。ここ数年、世界のトップに君臨し続けた彼女が、国内選考でここまで苦しむとは誰が想像しただろうか▼並み居る強豪を抑えてグランプリファイナルを初制覇し、トリノ五輪に出場すればメダルは確実と騒がれながら、年齢制限に87日足りず日本国内がため息に包まれたのが4年前▼その後も順調に進化を続け、「バンクーバーでの金メダルは間違いなし」と期待は高まった。しかし、浅田の笑顔の裏には想像を絶するプレッシャーとの戦いがあった▼何より、最大のライバルである韓国の金ヨナの急成長ぶりが脅威だった。高得点を稼ぐために、リスクを承知で難度の高い技にチャレンジし続けた。当然これまで考えられなかった大舞台でのミスも目立つようになり、そのことが浅田から自信を奪っていくという悪循環に陥った▼これまでの実績を考えれば、今回の最終選考会で上位に食い込めなくても、浅田の五輪出場は間違いない状況であった。しかし、何よりも自らの勝利で代表切符を手にしたことが、彼女に自信を取り戻させる最良の薬になったはず▼果たして五輪で頂点に立つのは浅田か金か、それとも安藤か。いや、だれが表彰台の最上位に立つかで気をもむより、最高の舞台での最高のライバル同士の熱い戦いを満喫しようではないか。(U)


12月27日(日)

●今年もあとわずかで終わる。「数え日」は年内の残りの日を指折り数えること。あまり聞かなくなったが、昔は「もういくつ寝るとお正月…」と歌った。子ども心にも新年を迎える高揚感があった▼正月にはたこ揚げに興じた。子どもの楽しみはそのうちゲームに変わった。テレビゲームはない時代である。それでも、手動の“野球盤”などに飽きることはなかった。娯楽の選択肢は少なかったが、当時の少年少女にとって正月はやはり特別な存在だった▼現代っ子の場合はどうか。余暇の楽しみ方は多種多様で、個別化が進む。自分なりの遊びを心得た子どもたちが増えたことで、「正月だから」という意識は薄れがちだ。物や情報があふれ、生活に季節感がなくなったことも、正月が特別視されなくなった一因かもしれない▼そもそも、この時期に街を歩いても、年の瀬の慌ただしさを感じることが少なくなった。年末年始用の食品はスーパーでいつでも買い求めることができる。市場は昔ほどの活気を失いつつある。家族や近所が総出で行うもちつき。当たり前の光景だったが、今はそれもない▼一方、最近は函館を中心にした道南各地で、もちつきのイベントが相次いで開かれるようになった。町会や保育園などが主催し、子どもたちに伝統の催しに触れてもらおうという試みという。自分がついたもちの味は、特別な正月を迎えるのにうってつけだ。(K)


12月26日(土)

●正義を取り上げた文科省の道徳副教材「心のノート」をめぐり、行政刷新会議の仕分け作業で校長経験者が「正義の押しつけだ。あるべき心の見本市で気持ち悪い」と批判、事業は縮減された。なぜ気持ち悪いのか、理解に苦しむ▼08年度の子どもの暴力行為が3年連続で増え、約6万件にのぼり過去最多。うち約4万3000件が中学で発生。小学生の暴力も3年前に比べて3倍近い。普段おとなしい子が突然、同級生や教師を殴る、教室の机など壊す‥。陰湿ないじめも増え自殺事件も起きている▼授業が始まっても廊下で遊んでいた子が教室に入るよう声をかけた子の顔をたたいた。意思疎通がうまくいかず、話す前に手が出てしまう。「手加減する」という知恵も浅い。そこで、徳育のが叫ばれ、道徳感を少しずつ学べそうな「心のノート」などが必要なのではないか▼授業中に廊下で缶チュハイ3本を無理やり飲ませ、急性アルコール中毒にさせた中2男子。顔を赤くし、ふらふら。「酔っぱらった様子が見たかった」とは‥。徹底的に「悪いことは悪い」という指導が消えてしまった▼子どもを見守る大人の責任も重い。中学生にたばこを売った79歳の女性は「たばこを吸っても立派な成人になれば」と供述。自分の娘の裸を撮った児童ポルノを売っていた母親もいた。急増する子どもの暴力は「人の命の感覚や心身の痛みを理解する心」の徳育を求めている。(M)


12月25日(金)

●子牛を産んだ母牛の初乳は免疫が高いため出荷されず、5日間は子牛に与えられる。ただ、母乳は哺乳(ほにゅう)瓶に取って、人間の手で与えられる。それはなぜか。授乳で母子のきずなが作られると、親子を離す際、泣き叫んで大変だからという▼函館市内の生産農家から以前、こんな話を聞いた。母牛だって、直接わが子に授乳したい。その本能を奪う代わりに、農家は愛情を持って子牛のmノやりや牛舎の清掃などをする▼横浜市内の病院に1歳の女児が心肺停止状態で運ばれ、窒息死と判明した。母親は「泣きやまないので箱の中に入れた」と話している。女児は自宅にあるベニヤ製の小さな箱に入れられていた。親に抱っこされ、あやされ、子守歌を聞き、ふとんの中で眠る。それが女児の一番の揺りかごのはずなのに▼虐待や育児放棄が疑われる事件が後を絶たない。虐待を受けた子は、親になってもわが子の虐待に走る「連鎖」があるとの報告もある。さらに、母性本能は神話だ、崩壊しているケースもあるといった意見もある▼乳牛の生産者は言った。「母牛の代わりに愛情を持って育てると、牛も人間が本当の親だと思うようになるのです」。産みの親より育ての親という言葉もある▼しかし乳牛の場合は無理やり引き裂かれた母子の関係であるのに対し人間は…。泣きやまないので箱に入れられた女児は、涙声で何を叫び、息絶えたのだろうか。(P)


12月24日(木)

●マニフェストは、こうも軽いものなのか。衆院選挙中、鳩山首相が「財源はあるんです」と声を張り上げていた演説が、むなしく脳裏によみがえってくる。それから3カ月あまり、実は財源が足りません、では言葉を失ってしまう▼大々的にうたい、国民との約束、とまで言ったガソリンなどの暫定税率の廃止が、事実上ほごにされた。形式的には廃止する、だが名目を代えて同税額を確保するというのだから、実態的にはまぎれもない維持。税率を下げるならまだしも、それもない▼暫定税率の廃止には、運輸や流通などの面から経済の活性化を促す視点もあったはず。その経済刺激論はいつの間にか財源論議にかき消された。同じマニフェストに盛り込まれながら、予算の削減見通しで揺れ動く高速道路通行料の無料化もしかり▼確かに税収の落ち込みはあった。それは選挙時にはある程度、予測されていたことだが、広げた風呂敷はたためなかった。そのつけとも言えるが、物分かりのいい国民性があるとはいえ業界団体などは、そうも言っていられない。一斉に反発したことが如実に物語っている▼9月の内閣発足時、各閣僚の表情は輝いていた。最近は心なしかさめて映り、発言からも一時の勢いが伝わってこない。そんな雰囲気の表れか、暫定税率判断前の内閣支持率も全国紙世論調査で5割レベル。鳩山政権の行方にマニフェストが重く立ちはだかっている。(A)


12月23日(水)

●寒い日に屋外でたばこを吸うのはつらい。それなら吸わなければいい、と言われそうだが、悲しいかな喫煙に依存している身は、寒さに耐える方を選択してしまう。嫌煙の波が押し寄せる中、喫煙者が弱い立場にあることは十分承知している。それでもなお、最近のたばこ増税論議には割り切れない思いが残る▼「健康の観点から消費を抑制する」。政府税制調査会(税調)は税制改正大綱の中で、たばこ税の引き上げ理由をこう明記した。健康、健康と連呼する政府の主張はもう聞き飽きた。たばこ税の収入にこれまで頼っておきながら、今さら「消費を抑制する」とは一体どういう論法か▼政府の健康論に対し、以前この欄で「大きなお世話」と書いた。税調による大綱に触れ、その思いはますます強くなった。「寒いなら吸わなければいい」の発想は「(価格が)高いなら吸わなければいい」という物言いに通じる。要するに喫煙者への目線が高いのである▼今でも安くないと感じるたばこ税が、来年10月1日から1本当たり3・5円引き上げられ、販売価格ベースで5円程度の値上げになるという。欧米並みの高額になるのも時間の問題、というのが実感だ▼喫煙者の感情論に終始したが、一方で、たばこの段階的な値上げはやむを得ないのではという思いもある。政府が本気で「消費抑制」を唱えるのであれば、喫煙者が納得できる、正直で簡潔な説明がほしい。(K)


12月22日(火)

●今年も残すところ10日ほど。人間の記憶はいいかげんなもので、今年はどんなことがあったか、と聞かれても、すらすらと答えられるほど頭に浮かんでこない。でも、資料を手繰ってみると、大変な1年だったことを教えられる▼近年は様々な形で1年を振り返る企画が少なくない。知名度のある流行語もそうだし、漢字一文字もその一つだが、ちなみに今年の新語・流行語大賞は「政権交代」で、今年を表す漢字は「新」、創作四字熟語は「一票両断」。いずれも政局絡みの言葉だった▼当然と言えば当然、予想された答えである。長年にわたり衆院で第一党の座にあった自民が8月の総選挙で壊滅的ともいえる敗北を喫し、民主党主体の連立新政権が生まれたのだから。最も特筆される出来事だったことに異論をはさむ余地はない▼それを裏付けるように、新聞之新聞社による在京社会部長が選ぶ今年の十大ニュースでも「脱官僚・マニフェストで政権交代」として第一位に。続いては裁判員制度スタート、足利事件・菅家さん釈放、新型インフルエンザ大流行、高まる雇用不安など▼このあと新聞各紙が選んだニュースが次々報じられるだろうが、次なる関心は「政権交代」後の政治の行方。子ども手当など主要公約の達成度や普天間の問題など難しい判断や政権運営を迫られているから。来年も政治から目を離せない年となることだけは間違いない。(A)


12月21日(月)

●孔子が泰山のふもとの道ばたで泣いている婦人に理由を尋ねたところ、「夫たちが虎に食い殺され、今また子が食い殺された」と答えた。「そんな恐ろしい土地をなぜ離れないのか」と尋ねると「ここには過酷な政治がないからです」▼年賀状書きが追い込みに入った。来年の干支は寅とあって、「虎」の入った四字熟語を調べたところ、なんと40個もあった。同じ類のものが互いに引きつけ合う「雲竜風虎」、乗りかかった舟でもう後には引けない「騎虎之勢」、危険を冒さないと大功は挙げられない「虎穴虎子」▼2010年の寅は庚寅(かのえとら)で、財運・闘争心・家族愛・権威のシンボルとか。冒頭の孔子の問答から出た四字熟語は「苛政猛虎(かせいもうこ)」で、むごい政治が人民を苦しめることは人食い虎よりもっと恐ろしいということ▼GコやGサなども多くの人が言えば事実であるかのようになってしまう「三人成虎」もある。羅針盤が機能せず、普天間沖に漂流している船長不在の“鳩山丸”。1人の号令で、国民と約束したガソリン税の暫定税率、子ども手当などでマニフェスト違反を冒そうとしている▼「事業仕分け」などで財源確保に四苦八苦なのに、温暖化対策の途上国支援に1兆3000億円の拠出を決めた。そんな大金があるのなら国民生活に回すべきだ。「人民を苦しめる過酷な政治をなくします」という孔子の年賀状を届けてほしい。(M)


12月20日(日)

●「空車」の灯をともしたタクシーの列が延々と続く。酔客の姿は少ない。夜の繁華街では、こうした光景がもはや当たり前となった。こんなことだから、車中での会話も弾まない。乗務員は不況をぼやき、客はもっぱら聞き手に回る▼「函館交通圏タクシー特定地域協議会」が発足した。ここでは供給過剰なタクシー台数の適正化や需要を伸ばすための策を探る。この地域の実態は厳しい。観光客や人口の減少でタクシーの需要が減る一方、規制緩和の影響で台数だけが増えている▼本紙19日付の記事には「適正台数は2、3割減」の見出しがついた。函館運輸支局が示した数字が興味深い。9月末現在で953台が走る函館交通圏(南茅部地区を除く函館市、北斗市、七飯町)での適正台数は、現在より18・2%—29・8%少ない669—780台という▼タクシーの需要が減ったのは確かに観光客や人口の減少が主因だろうが、決してそれだけではない。その一つが運転代行業の存在。飲酒後でも自分の車と一緒に帰宅できるなど、“代行”には便利な点が多い▼その代行業も業者間の過当競争が進んでいる。適正台数という意味においては、タクシーと同じ悩みを抱えているといっていい。負の包囲網の中、タクシー乗務員の年収は200万円に満たないこともある。台数適正化への動きは個々の生活維持、ひいては業界の存続をかけた戦いでもある。(K)


12月19日(土)

●ある酒席でのこと。突然の腰や首の痛みにどう対処するか、という話題になった。今だから笑って話せる—という前提付きである。場は盛り上がったが、その痛みを知る同病者も多く、心なしか受け手の反応も遠慮がちだった▼第一関門は朝に訪れる。目覚めてから起き上がるにはどうするか。腰痛持ちの人は言う。あおむけの状態をうつぶせに換えてから、徐々に身を起こす。首が痛い人はもっと痛々しい。利き手で自分の髪の毛をわしづかみにして、無理やり首を枕から離すという。「つかめるだけの(髪の)量があって良かった」。回顧談にはオチまでついていた▼腰や首の痛みは、無理のない日常動作から起こることがある。発症の直接原因が思い当たらないという人もいるらしい。雪道での転倒事故が多くなる季節。ただし、この場合は痛みの原因がはっきりしている。自衛できることがせめてもの救いだ▼雪道、特に凍りついた路面を上手に歩くには—。諸説あるが、小さな歩幅で靴の裏全体をつけて歩くというのが一般的。急ぎ足はもちろん、氷の上を走るなどという行為は厳に慎むべきだろう▼そうはいっても、時間に余裕がないときは焦る。前述の酒席に向かう途中にも数回滑り、冷や汗をかいた。近くを歩く人が転び、悲鳴を上げた。こういうときこそ、ゆっくり慎重に。頭を強く打つようなことがあれば、笑い話では済まされない。(K)


12月18日(金)

●民主党のマニフェスト(政権公約)が揺らいでいる。選挙は、単に勝てばいいというものではない。国民への約束を守ってこそ、初めてその政党が真の評価を得たことになる。「公約違反」との批判は党にとって大きな痛手であり、それが複数の項目に及ぶことになれば、次の選挙への影響は計り知れない▼同党マニフェストのうち、一般の注目度が高い1つに「子ども手当」がある。子ども1人当たり月額2万6000円(初年度は1万3000円)を中学卒業まで支給する。これがもともとの公約。この1点に期待して、民主に票を投じた有権者も少なくなかったはずだ▼今さら財源確保が難しいと言われても、世の母親たちは戸惑うばかりである。所得制限を設ける方向で検討しているようだが、線引きどうするかなど、調整には曲折も予想される▼子ども手当の支給に当たって、党は「地方に新たな負担増を求めない」と言う。これに対し、地方自治体の関係者は「当たり前のこと」と憤る。仮に地方に負担を強いることになれば、国が財源を賄うことを前提としたマニフェストの意味が失われてしまう▼中宮安一七飯町長は町議会で、子ども手当に疑問を投げ掛けた。「現金そのものを支給するのはどうか」という答弁には、選挙戦略としての“ばらまき”を暗に批判する響きがある。それは、子育てへの支援策を本気で考えてほしい、という願いにもつながる。(K)


12月17日(木)

●「うつ病患者が遂に100万人台に」。今月初め厚生労働省の調査結果として公表された。1億総ストレス社会の到来が言われ始めたのは、わずか10年ほど前。一向に回復しない経済情勢など多々要因があるにせよ、なんとも由々しき現実▼うつ病は気分が塞ぎ、気力が萎え、不安や焦燥感に陥る症状の病気。幾つか自己診断できる基準があり、毎日のこととして、例えば食欲の減退、不眠や睡眠過多、思考力や集中力の減退など。そのうつ病の中で大半を占めるのが「気分障害」で、厚労省調べによると…▼1999(平成11)年に44万人だった患者数が、その後、急激な増加に転じて2002(平成14)年には71万人、2005(平成17)年には92万人となり、今回公表の昨年は104万1000人。確かに、その人たち全員が重い症状というわけではない▼最近は自覚症状を覚えると、早めに受診する人が増えているという。啓発活動等が浸透し、医療機関に専門の診療科が増えてきたことなどが促している現象で、それはいい傾向だが、だからと言って患者数100万人超という現実が軽減されるわけでない▼一般的に発症し易いタイプとして繊細、生まじめ、責任感の強い人などが挙げられる。世の中の速い変化、競争が激しく消耗する企業活動、希薄になった人間関係など、病んでいる今の社会の姿を重ね合わせると、いつ誰がそうなったとしても不思議でない。(A)


12月16日(水)

●日本国中が去就を注目していた「ゴジラ」こと松井秀喜外野手の来シーズンの所属先が、大リーグのエンゼルスにようやく決まった。しかし年棒は今季の1300万ドル(約11億4000万円)から650万ドル(約5億7000万円)とほぼ半減。契約年数も1年と予想以上に厳しい内容となった▼ここ数年にわたって故障に苦しめられ、一時は選手生命さえ危ぶまれた松井だが、今季はレギュラーシーズンで28本塁打を放ち復活をアピール。ワールドシリーズでも、MVPに輝く大活躍でヤンキースを9年ぶりの大リーグ王者に導いた立役者となったが、守備面での不安が大きなマイナス評価につながったようだ▼年俸面を考えると大リーグに残ることに固執せず、日本球界に復帰したほうが松井にとって得策だったかもしれない。しかし渡米後7年にわたって第一線の場で強じんな外国人選手と対等に渡り合い続けてきた野球人としてプライドは、異国の地で挑戦し続けることを選ばせた▼日本人メジャーリーガーとして数多くの金字塔を打ち立てた元投手の野茂英雄さんは、全盛期の投球ができなくなってからもアメリカ球界に自分の活躍できる場を探し求め続けた▼願わくば松井にも、どんなにぼろぼろになっても最後まで異国の地で踏ん張り続ける“サムライ”としての姿を見せてほしい。いや、新天地で再び全盛期の輝きを取り戻すことを信じよう。(U)


12月15日(火)

●平安の宮廷酒宴は神と人とがともに酒を飲む儀式の場だった。民衆も1人で飲むものではなく、災いの神をしずめたり、豊作を神に感謝しながら集団で飲んでいた。このなごりか、忘年会も“1人酒”より集団で飲んだ方が楽しい▼“からみ酒”の気配のある藤原道長らが飲んでいた酒は少し甘くトロリとした感じで、濃い味のわりにはアルコール度は低く、カクテルのように美しい琥珀色だったという。甘い酒は酒を腐敗させる微生物が育ちにくく腐敗防止にもなっていた▼ウイスキーがお好きでしょ〜 女優の小雪の笑みに誘われてか、ウイスキー派が増えてきた。しかもハイボール。ウイスキーをソーダー水に割ったシンプルな酒。忘年会の二次会でも若者のハイボール派が目立つ。臥牛子の若い頃はハイボールしかなかった▼昭和30年代。氷を少なめに静かに飲むのが英国風、冷やして清涼飲料のようにグビグビやるのが米国風‥。口当たりがよく、気取って飲んだものだ。最近は“女子飲み”なども広がっているが、昔は老若男女が集まって飲むものだった▼ハイボールを飲んで懐古談。酒はときに人を慰め励まし、人と人との運命を結びつけ、誕生から最期までの暮らしを彩る。紫式部をからかった藤原道長のようなセクハラはごめんだが、女性がお酌に気を使わない忘年会は大歓迎。酔って四つんばいになり手がつけられない「虎になる」ご仁はもってのほか。(M)


12月13日(日)

●澄んだ師走の夜空を見上げれば星の輝きが一段と美しい。清少納言の「枕草子」に出てくる『よばひぼし』は流れ星だという。「よばひ」には「結婚を求めて呼びかける」という意味があり、流れ星に願いをかける風習につながった▼世界天文年の今年は華やかな流星群など夜空にくぎ付けになる機会が多かった。10月のオリオン座、11月のしし座に続いて、今月13、14日は、ふたご座に流星が舞う。約100キロ上空を秒速50キロの速さで横切って流れる▼また、新しい巨大惑星も発見された。こと座の方向に地球から約50光年離れた恒星を回る天体で、研究チームは500個の太陽型恒星を調べ「第二の太陽系」を探す。星の大半は連星として育つが、250光年離れた、へびつかい座で連星が成長していく瞬間の撮影に成功▼46年ぶりに皆既日食もあった。日本の探査機が謎の裏側まで探査した月が太陽を隠してしまった。米の探査機が月に大量の水があることも突き止めた。地下の巨大な溶岩トンネルに通じる縦穴も発見され、将来天然の基地として活用できるという▼地球から約3億光年離れた宇宙に太陽の80億倍の明るさを放つ超新星も確認された。世界天文年は宇宙のベールが次々とぬがされる。最後の天体ショーは両日とも深夜から明け方にかけ、南から西寄りの空、金星の上方でみられる。師走の夜空に「景気回復をめざす政治ショー」を願いたい。(M)


12月12日(土)

●景気の回復感が乏しく、トンネルから抜け出る気配なし。今の景況に対する実感だが、それを裏付けるように、各経済指標にも厳しい数字が並ぶ。政府の追加経済対策が出されたにもかかわらず、「二番底」が懸念されるなど先行きはなお不透明▼8日に発表された内閣府の11月景気ウオッチャー調査は、急激に悪化を示し、3カ月前に比べ7ポイントの低下。雇用も改善の兆しがなく、新卒の内定率も氷河期状態。国全体でそうだから、地方になると、さらに大変。函館・道南も地域経済は冷え切ったまま▼せめて来年はなんとか、と願う気持ちだが、同じ8日に発表された北洋銀行、10日の北海道銀行の来年度経済予測も、そんな期待感を打ち消す内容。実質経済成長率は北洋銀がマイナス0・4%、道銀がマイナス0・1%▼滅入ってくるが、その矛先は勢い国(政府)に向けられる。発足から約3カ月、政府が十分な経済政策を打ち出してきたかどうか評価が分かれるところだが、すったもんだしながらも、ようやく総額7兆2000億円規模の追加経済対策が決まった▼経済が停滞すると、税収をはじめ雇用、生産、消費すべてに影響が及び、国民生活につながる。経済政策が政治の最優先課題とされる理由はそこにある。追加経済対策はその目に見えるメッセージだが、もっと大事なのは政治への信頼。連立で、閣内で不協和音を出している場合ではない。(A)


12月11日(金)

●芝の浜で大金の入った財布を拾った魚屋が酒を飲んで寝てしまう。女房に「夢見たんだよ」と言われ、酒を断ち、仕事に打ち込んだ3年後の大みそか、ウソをついたという女房に心うたれ許した。久しぶりに酒を勧める女房…▼師走に演じられる落語の人情噺「芝浜」の「人間は1人では生きていけない」という夫婦愛に感動。でも、平成は「結婚は個人の自由だから、してもしなくてもよい」(70%)「結婚しても必ずしも子供を持つ必要はない」(42・8%)と考えている=内閣府調査▼不況で右肩上がりの収入増が期待できないという経済的な不安が渦巻いており、結婚や出産をあきらめているのかも。しかし、「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」(45・9%)という要望が過去最高。共稼ぎが不可決を示している▼「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきだ」の考えにも55・1%が反対しており、最近は育児する父親“イクメン”が増え、夜泣きにどう対応するか、オムツの替え方など勉強しているという。しかし、保育所の待機児童が増えているのも事実▼熊本の病院に設置された赤ちゃんポストには51人が預けられた。預けた理由は生活困窮、未婚、不倫などで、約7割の親が分っている。このように追い詰められないためにも「子ども手当」も必要だが、芝浜の夫婦愛のように、若者に「子供がほしい」と言わせるような環境づくりが欠かせないのでは。(M)


12月10日(木)

●年俸制と聞いて、真っ先にプロ野球選手を思い浮かべる人は多いだろう。北海道日本ハムファイターズのダルビッシュ有投手。その年俸が、3億円を突破したという。大金には無縁の庶民にも、その額が超一流選手の証しだということぐらいは想像できる▼ただ、野球に限らずプロスポーツの選手寿命は短い。30代、長くて40代までに生涯食べていけるだけの蓄えができるとは思えない。けがなどで早くに選手生命を絶たれることもある。コーチや解説者の誘いがあればいいが、多くはその世界から身を引くことになる▼言うまでもなく、年俸制では成果、実績が問われる。それがすべてと言い換えてもいい。ある意味で非情な世界ではあるが、日本の企業でも社員の年俸制を採用するところが増えている▼初めに人事評価制度があり、それが成果主義に傾くことでやがて年俸制へ。これが年俸導入への一つの流れとすれば、サラリーマンの世界も決して「気楽な稼業」などと言っていられない。実績を挙げなければ即刻解雇。こんなことが近い将来、企業の常識になるかもしれない▼はこだて求職者総合支援センターの相談員による巡回相談窓口が、ハローワーク函館に開設された。早速、求職者が大勢訪れ、厳しい雇用状況を強く印象づけている。せめて働く場をという悲痛な叫びの中では、年俸制だの月給制だのという本欄のテーマがむなしく感じる。(K)


12月9日(水)

●企業間の競争が激しくなればなるほど経済事犯は増える。すでにその現実に直面しており、北海道も例外でない。不当廉売や景品表示などに関して公正取引委員会に持ち込まれる相談や申告件数が、それを物語っている▼公取委道事務所が受け付けた独禁法、下請法、景品表示法に関する相談は、過去5年、いずれも年間1400件以上。2008年度も1463件(うち景品表示法関連が948件)を数え、小規模事業者が訴える不当廉売では135件に注意が発せられている▼こうした相談や訴えに何より求められるのが、迅速な対応であり処理。というのも違反や被害の認定が長引くと、その時間分だけ被害、影響が膨らんでいくことになるから。「早い判断を」。かつて申告の当事者になった際に味わった思いもそうだった▼これからの時代、相談や申告は、増えても減ることは考えられない。そうした認識に立って、より現実的に即した対応を、という観点からの法改正も進んでいるが、その一方で事務作業現場の体制充実は不可欠で、鍵を握るのが人である▼現在、公取委の審査官は440人とのことだが、もっと増やすべき。それも府省庁の職員見直しの中で。改めて指摘するまでもなく、定数は既得権でない。その時々の業務のウエートに応じて多忙、必要な部署に職員をよりシフトさせていくのは当然のこと。公取委を取り巻く業務環境は、霞が関にそう提起している。(A)


12月8日(火)

●失政で借金ができてしまったので帳消しにする証文を取ったが、それじゃ世間が許さないということか。大阪高裁は、市長への公金返還請求があった場合、市が請求権を放棄する条例は認められないとする判決を出した▼問題となったのは、神戸市が外郭団体に派遣した職員の人件費。補助金や委託金の名目で人件費を支出したことに、大阪高裁が違法判決を出した。市に損害を与えたとして、市長に命じられた公金返還請求の額は55億円余り▼派遣職員に給料を返還させるのは難しいし、市長が自腹を切って払える額ではない。だから神戸市議会は事前に、市長への請求権を放棄するよう条例を改正した。しかし大阪高裁は「住民訴訟制度を否定するもので、議決権の乱用にあたる」として、議決を無効とした▼神戸市は上告したが、函館市も「対岸の火事」では済まされない。判例を参考に、函館市は本年度限りで市文化・スポーツ振興財団や市住宅都市施設公社への派遣職員を引き揚げることを決めた。だがもし今後、住民訴訟で同様の判断がされ、市長に公金返還請求が命じられたら、一体誰が支払うのか▼事業仕分けが一定の評価を得るなど、税金の使い方に対する住民の目は一段と厳しくなっている。全国の行政に警鐘を鳴らした重い判決。行政目的の実現のために公益法人を作り、職員を派遣している自治体は、のど元に刀剣を突きつけられている。(P)


12月7日(月)

●五人組という組織が江戸時代にあった。近隣五戸を一組として、火災や盗難などの取り締まりに当たった。相互扶助という一面では現代の町内会や自治会に通じるが、当時はキリシタン宗徒も取り締まりの対象だったというから、背後に幕府の強制力があったことは想像に難くない▼身近な単位で互助の精神が根付くと、外部の手助けがむしろ迷惑と感じることがある。この一方、小さな集合体だけでは手に負えない難題も少なくない。非常時には外の力に頼らざるを得ないのだから、それを迎え入れる通用口は常に開けておくべきである▼「営業再開に市民の力」という見出しの記事が、6日付本紙に載った。函館市営熱帯植物園(湯川町3)の温室壁面のガラスが11月の強風で割れ、その後、ボランティア13人が片付けを手伝った。本来は施設を管理するNPOの仕事だが、一般市民が加わることで作業がはかどり、営業再開が早まったという▼割れたのは大型ガラス約70枚。飛び散った細かなガラス片はピンセットやはしで丁寧に拾い集めた。考えるだけで気の遠くなるような作業だ。「何か手伝えることがあれば」と駆けつけた皆さんに敬意を表したい▼日本のボランティアは、その活動範囲を海外にまで広げている。危険なガラス片を一粒残らず拾い集めようという市民の思いは、その原点といえる。複雑化する世相の中、五人組の力だけで生き抜くことは難しい。(K)


12月6日(日)

●五稜郭タワーの展望台から目に飛び込む箱館奉行所の復元工事現場。ある女性が「あれは博物館になるのよね」と言う。市民や観光客が函館の歴史を学べるのだから、博物館といえばそうなのか▼計画では、当時の趣を感じてもらおうと、建物内に調度品を配置し、奉行所の歴史的経緯や機能を解説する模型などを展示するという。数々の史料を基に精密な復元が行われた中で、伝統技術が継承されてきた▼タワーの中では絵図や年表、模型が並び、五稜郭の歴史やドラマが学べる。しかし、箱館戦争、堀で作られた五稜郭氷などの資料は主に、市立函館博物館が所蔵する。タワーからほど遠い函館公園の中だ。そう思い歩くと、眼下に市北洋資料館が見える▼五稜郭の向かいにある館内には、北洋漁業に関する資料が集まる。国際水産・海洋都市構想を掲げる市として、重要産業であった資料が海辺にあらず、この地に入ることは、建設当時に物議があったという▼函館山に残る函館要塞跡。函館産業遺産研究会の富岡由夫会長は、長年にわたり調べた資料の展示場所が山やふもとにあればと願い「近くに資料があれば歴史を実感できる」と話す▼多くの地域に足を運んでもらうか、集約させることで充実した観光を楽しんでもらうか。五稜郭、北洋、要塞…函館の観光客減に対する案として箱物の管理以前に在り方を一考するのも価値あるのではなかろうか。(R)


12月5日(土)

●「函館市は町会活動の先進地」。その歴史は明治にさかのぼり、戦後も先陣を切った都市であることが言わせる言葉だが、今も他市町村から一定の評価を受けていることも事実。それは本紙の「いきいき町会」に掲載の記事なども裏付けている▼町会が地域で大きな役割を果たしていることは誰もが認めるところ。親睦や助け合いをはじめ防火の啓もう、犯罪への目配り等々、町会の活動はいわば住民活動の原点であり、その活動の一つひとつが生活の安心、安全につながっている▼なのに、価値観の問題か社会意識の問題か、悩みも抱えてきている。加入率の落ち込みや役員の高齢化などだが、役員の人たちをはじめ関係者がとりわけ危機感を抱いているのが加入率の問題。減少は活動の幅が狭まることを意味し、影響力も弱まるから▼先日、ある会合で町会連合会の敦賀敬之会長から話を聞く機会があった。話はその歴史から始まって、締めくくりが加入呼びかけへの協力要請だったが、かつて83%を誇った加入率は、今や63・9%。道内の主な都市に比べても劣るという▼介護保険料の節約による世帯分離が他都市より急増している事情がある、ということだが、それを差し引いても…。じわじわと高齢化社会が進むこれからの時代、町会の担う役割が増すことは想像に難くない。だとしたら、改めて考えよう町会の意義を。函館市の加入率はそう語りかけている。(A)


12月4日(金)

●アフガニスタンのシルクロードからテロ根絶を目指すオバマ米大統領は3万人の米軍追加増派を行い、来夏に撤退を開始すると言明。高まる厭戦(えんせん)気分、帰国しても戦争の後遺症に苦しむ若い兵士…▼仏法を求め三蔵法師がシルクロードを通りオアシスにたどり着く「仏教伝来」。先日亡くなった平山郁夫さんが仏教の世界を初めて描いた絵。広島で被爆し原爆症に苦悩しながら「入涅槃幻想」「三聖人 平和の祈り」や「アフガニスタンの砂漠を行く」など制作▼平和記念資料館で撮った「広島生変図」を再見した。業火の町の右上に不死鳥のように立つ不動明王。「逃げる負傷者の群れに生き地獄を見た。熱線を浴びて全身火傷、爆風で眼球が飛び出し、異臭、救いを求める絶叫…」の惨状がにじむ▼仏伝シリーズは苦行する釈迦の姿に被爆の後遺症に苦悩する自身の姿を重ね、シルクロード・シリーズは砂漠とラクダを通して東西文化の交流を描いたといわれる。タリバンが爆破したバーミアンの大仏保護やアンコールワット遺跡などの保存活動にも尽力▼「悠久」を意味する群青色が持ち色。被爆体験と平和への祈りが絵画創作の原動力で、治安が悪く過酷なアフガンのシルクロード取材も乗りきった。いつも「宗教家が争い合うなんて悲しい」と嘆いていた。浄土で「平和なシロクロード」を創出して、アフガンの民衆も米軍も救ってほしい。(M)


12月3日(木)

●「脱官僚」を掲げて「政権交代」を果たした民主党。早速着手した「事業仕分け」はまずまずの評価だが、人的財産を仕分けする「派遣切り」はいっこうに収まらない。「新型インフルエンザ」にも負けない「こども店長」の活躍に、大人にも仕事をという失業者からの「ぼやき」が聞かれる▼今年の世相を反映した言葉に贈られる「2009ユーキャン新語・流行語大賞」。前述の一文のうち、かぎかっこの部分はいずれも受賞語としてトップテン入りした。ちなみに年間大賞は「政権交代」だった▼明るい話題での受賞が少なかったことが今年の特徴という。確かに、安くて手軽な衣類などを指す「ファストファッション」は長引く不況の表れとも取れる。この社会現象が最近のデフレ傾向の端緒とすれば、「ファスト—」を手放しで推奨することには遠慮が交じる▼同賞にノミネートされた中には「年越し派遣村」もあった。昨年の大みそかに東京都内に出現した同村は、ホームレスや非正規雇用の人たちであふれた。あれから1年。雇用状況は好転するどころか、深刻の度を増している。「派遣村」が二年越しの流行語にならないことを願うばかりだ▼「政権交代」が生み落とした恩恵を実感できる日はいつのことか。責任政党としての真価が問われるのはむしろこれからだろうが、もどかしさが残る。来年の流行語が明るい政治の話題であふれますように—。(K)


12月2日(水)

●政府与党は今臨時国会を、4日間延長し、閉幕させる。歴史的な政権交代が実現し、攻守ところを変えて迎えた初めての国会。国民が求めたのは新鮮な、向き合う論戦だったが、どちらかというと期待はずれの感が否めない▼10月26日に召集されて1カ月余、子ども手当、高速道路の無料化等々、国民の関心事についても然り。本当に実行するのか、財源はどうなのか…。「事業仕分け」に主役の座を奪われた格好で、国会という表舞台からは、ほとんど見えてこなかった▼せめて党首討論ぐらいはしてほしかったという思いもぬぐえない。野党の党首時代、鳩山首相も積極開催派だったように記憶しているが、どこで軌道修正したのか、いつの間にか「国対に任せている」となって、受けて立つ姿勢が伝わってこなかった▼日程などを含め国会運営の主導権は与党が握る。党首討論にしても野党が求めているのだから、あとは与党次第。でも、敢えてかどうか、結局は見送られた。新政権が誕生し、何かが変わるはず、との思いも、不完全燃焼のまま終わろうとしている▼もっと言うなら、与野党の立場が代わっても、国会は旧態依然で変わらないということ。金融経済不安が生じている今、その緊急対策もさることながら、より問われるのは政治の信頼。それを生み出す舞台はほかならぬ国会なのだが、その答えはまだまだ出してくれてはいない。(A)


12月1日(火)

●今年で60回目を迎える「NHK紅白歌合戦」。過去には80%を超える視聴率を記録したお化け番組も、ここ最近は40%前後と半減。それでもレンタルビデオやインターネットの普及でチャンネル争いのライバルが急増する中でのこの数字は驚異的と言える▼紅白の影響力の大きさを改めて実感させたのが、2006年に秋川雅史によって歌われた「千の風になって」。テレビの前のほとんどの視聴者にとって初耳だったこの曲は、一夜にして国民的名曲に変身。七飯町大沼もこのおかげで「千の風になって」誕生の地としてクローズアップされるという、うれしい後日談も加わった▼気になる今年の紅白出場メンバーが先ごろ発表された。芸能マスコミ的には、これまで2組の出場が慣例だったジャニーズ枠が一気に4枠に増えたことが話題になっている▼残念なのは、初出場有力とうわさされていた井上陽水と矢沢永吉の名前がなかったこと。昨年ようやく初出場したミスターチルドレンも姿を消してしまった▼それでも北島三郎や石川さゆりらの重鎮から、木村カエラやFUNKY MONKEY BABYSなどのフレッシュな初出場組まで幅広いジャンルや年代のアーティストが並ぶのは紅白ならでは▼もしかしたら今年も「千の風」に続く新星が生まれるかもしれない。歴史的瞬間を見過ごさないように、数年振りに最初から最後まで通しで見てみようか(U)。