平成22年4月


4月30日(金)

●「揺りかごから墓場まで」は、社会保障を語る上で理想的な姿と言える。現実はどうか。振幅の激しい混乱期の日本政治には、できることは限られている。安心して生み育て、老いて安らかに死んでいく。残念ながら、こんな社会が一朝一夕に出現するとは思えない▼いま安心して暮らせているのは、むしろ犬や猫などのペットたちではないか。格差社会であえぐ人たちがうらやむほど、ペットの多くは飼い主の愛情を一身に受けて育つ▼そんな飼い主たちに冷水を浴びせるようなニュースだった。埼玉県内の山林に犬などの死体が大量に不法投棄された事件がそれだ。廃棄物処理法違反で起訴済みだったペット葬儀業の被告が27日、詐欺容疑で再逮捕された▼発表によると、被告が犬の死体を預かった際、不法投棄するつもりなのに、火葬して返すと約束、別の犬の骨を渡して現金をだまし取った疑い。家族の一員として育ててきたであろう愛犬家の心理を逆手に取った犯罪であることは、被害者の会結成の動きからもうかがえる▼一方で、ペット葬祭業の在り方が問われている。現在はペットの火葬や埋葬業の届け出などは必要ない。トラブルが相次ぎ、条例で許可制度を設けている自治体もある。許可制については国も新制度を検討する姿勢だ。遅きに失した感は否めないが、こうした対策が、ひいてはペットの安らかな眠りにつながることを願いたい。(K)


4月29日(木)

●「5月までに決めましょう」。沖縄で今「無理だ」という思いを伝える表現として使われているという。先日の朝日新聞が報じていた。鳩山首相が米軍の普天間飛行場移設問題で再三表明する決着時期を比喩している▼沖縄の人たちがそう言いたくなるのも当然。日米で合意し、渋々ながら地元も落ち着いた話なのに、新政権が県外移設を公言して期待を抱かせたのだから。それから半年、伝わってくる客観情勢は不信を募らせるばかり。気持ちは急速に裏返しになって…▼その表れが25日の反対集会だった。5月末までに県外をどう実現させるのか。最有力候補地とされた徳之島も厳しい。県外どころか政府、地元、米国3者の合意は無理という認識が次第に広がっている。しかも、この普天間問題は、他の政治課題をすっかり隠してしまってもいる▼「政治と金」の問題、年金問題はどうなったのか。5月判断といえば高速道路の料金問題もある。国会に下駄を預け、それでも6月実施に「心配はいらない」と鳩山首相は言い切った。その自信に満ちた発言に、反比例するかのように国民の間には閉そく感が▼「5月までに…」に続いて今度は、どうなるか分からない、という意味で「心配はいらない」が使われかねない。冗談半分みたいな話だが、その裏に隠されている意味は深刻。少なくとも普天間は、手を尽くしたが駄目だった、では理解が得られない。(A)


4月28日(水)

●北京五輪に続き、中国が国家の威信をかけて準備を進めている「上海万博」の開幕直前に、突然沸き起こった「PRソング盗作」事件。被害者(?)側の岡本真夜さんが、曲の使用を許諾したことから事態は沈静化するとみられたが、当の作曲者が「盗作ではない」と公式に反論するなど、混乱は続いている▼音楽における盗作をめぐる争いは、遠い昔から繰り返されている。ドイツの大作曲家ブラームスの交響曲第1番の終楽章には、彼が尊敬するベートーベンの交響曲第9番の歓喜の歌によく似たメロディーが使われている▼元ビートルズのメンバー故ジョージ・ハリスンがソロとして放った全米ナンバー1ヒット「マイ・スイート・ロード」は、60年代のポップスソング「いかした彼」の盗作であると提訴され、ジョージ側が敗訴している▼ブラームスの場合は数小節にわたるメロディーラインの動き、ハリスンの場合は曲全体の構成が言われてみれば確かに似ているが、この程度で盗作と認定されるのならば、ここ最近のポップス作品の中にはもっと怪しい例が少なくない▼しかし、今回のPRソングに関しては、曲の冒頭からつなぎ部分、サビの細かい動きまで、類似部分の多さはケタ外れ。なぜ著名な作曲家がここまで分かりやすい盗作を行ったのかは理解に苦しむ。まさか、この騒動自身が万博のPR活動なんてことはないだろうが…。(U)


4月27日(火)

●函館市内の五稜郭タワーで、こいのぼりが元気に泳いでいる。30年以上前から続く風物詩だ。約70メートルの高さで風にはためくその姿は、地上からだと小さく見える。それでも吹き流しなどは体長が約12メートルもあるという。新タワーの完成に合わせ、約2メートル大きく新調した▼江戸時代の端午(たんご)の節句。「家の前に柵を結い、冑(かぶと)、薙刀(なぎなた)、毛槍、吹き流しなどを幟(のぼり)とともに立てた」(新日本大歳時記、講談社)。こいのぼりは幟の一つで、出世魚である鯉(こい)を模して男児出生を祝い、その子の立身出世を願ったという▼「やねよりたかい こいのぼり」と歌われるように、こいのぼりは人の目につきやすい高い場所に飾り付けるのが通例。五稜郭タワーの高さは別格だが、数十年前までは多くの家で屋根より高い位置にこいのぼりがひるがえっていた▼今はどうか。アパートやマンションが多い住宅事情では、こいのぼりを飾る場所を見つけるのが難しい。少子化も進み、勇壮に泳ぐ姿を街角で目にすることがめっきり少なくなった▼民主党は少子化対策の一助として子ども手当をマニフェスト(選挙公約)に掲げ、各自治体が支給作業に追われている。この種の手当を全否定するわけではないが、安心して子どもを生み育てることのできる社会制度の整備が先決である。こいのぼりが街のあちこちを彩る光景をもう一度見たい。(K)


4月26日(月)

●韓国の首相が来春から使用される竹島の領有権を明記した日本の教科書に関して「小学生にまで竹島(独島)についてウソの内容を教えようとしている」と非難した。竹島は島根県に属する日本領土ではなかったか▼その小学生の教科書に古事記に出てくる神話「因幡の白ウサギ」が復活する。大風で島に流されたウサギが故郷に帰りたくなり、ワニザメに「あなたの仲間と私の仲間とどちらが多いか比べっこしよう。あの岬まで並んだら私がその上を飛んで数えるよ」▼あと1匹で渡りきる時、「故郷に帰りたかっただけ。ウソだよ」と言ったところ、最後のワニザメに皮を剥がされ、丸裸にされた。通りかかった神々から「塩水をかけると治る」といじめられ、最後の大国主(おおくにぬしの)神に治療法を教えてもらった▼♪大黒様(大国主)は憐れ神、きれいな水で身を洗い〜 小学低学年の時、国語読本と小学唱歌で「因幡の白ウサギ」を習って、「親や友だちにウソをついたり、だましてはいけないよ」「ウソは泥棒の始まり」と厳しく言われたものだ▼ある中3女子はブログで「小学生からずっとお母さんにウソつきを続けている、クセになっている…」と悩む。ある調査では、泥棒行為をしたことのある人の90%が「ウソをついたことがある」と答えているという。「因幡の白ウサギ」など徳育の復活は「脱ゆとり教育」にもつながる。親子で読んでほしい。(M)


4月25日(日)

●「時代」は次々と新たな「病気」を生み出す。豊かで多様化する食生活が肥満や高血圧、糖尿病を増幅させているのは分かりいい例だが、近年、重くのしかかってきているのが精神疾患。うつ病・そう病の実態はすでに社会問題の域▼安定した精神状態で仕事や生活するには、人間が本来的に持つ適度な生理リズムがある、と言われる。それを超えると乱れが生じ、心のバランスが崩れることに。現代はどうか、増す一途の競争社会はリズムオーバーの状況をもたらし、まさに黄信号の様相▼“1億総ストレス社会”という言葉が頭によみがえってくるが、うつ病・そう病患者の急増背景もそこに。10年前の44万人でさえ驚きなのが、5年前には92万人になって、今や100万人を超えているというのだから▼とりわけ気になるのは現役世代、それも若い世代にも増加の傾向がみられること。確かに、ちょっとした規模の企業なら一人や二人、通院や休職の社員がいて不思議でない。その予備軍も少なくないと推定される実態に、国も対策に乗り出さざるを得ない▼厚労省は今年1月から具体的な検討に着手している。その有力案が毎年、企業が行う健康診断にメンタルヘルスも項目に加える策という。懸念されるのは病院側が全国的に等しく対応できるか否か、どの程度の効果が望めるかどうかだが、だからと言って否定しては始まらない。早期実施が待たれる。(A)


4月24日(土)

●民俗学者の宮本常一が戦後間もない1950年、対馬を訪れた。伊奈という村で、村の取り決めなどを定めた古文書を見つける。宮本は古老に拝借を願った。その可否は村の寄り合いにかけられ、長い協議を経て許された▼著書『忘れられた日本人』(岩波文庫)で記している。伊奈に限らず対馬では、何かを決める際には必ず寄り合いを開き、何日かけても納得するまで議論した。賛成があれば反対もある。しかし、最後は最高責任者が決をとり、納得する。「村落共同体の一員ということになると発言は互角であった」▼旧戸井町の瀬田来部落会の寄り合いも、そんな感じではなかったろうか。51年当時の会議録が発見された。昆布繁殖のための段取りをどうするかなど、日常生活の取り決めが会議に諮られたという記録が残っている▼例えば道の補助金を使った工事では、生活に苦労している人を優先して雇用することなども会議で決められたのである。地域のことは地域で議論し、自分たちでできることは自分たちでやる。そこから、相互扶助の精神も生まれる▼対馬や旧戸井町で続いていた合議に、住民自治の原点を見る思いがする。だが現実問題として、現代社会では即断即決が求められ、普天間の問題のように誰もが納得する住民合意などはできないのが実情だ。しかし、皆が意見を出し合い決めるという理念までも「忘れられた日本人」にしてはならない。(P)


4月23日(金)

●先日、目的なくぶらりと函館市内の大型電器店に入ったところ、ここ最近では見たことのない客の多さにびっくり。中でもテレビ売り場の人口密度は高く、久しぶりの活況に店員の商品説明も熱を帯びていた▼消費不況の中でも、大型テレビの売れ行きは好調だ。昨年から導入されたエコポイント制度も後押ししているのだろうが、何よりもとどまることを知らない価格競争による値ごろ感が一番の理由▼ちなみに2006年11月の経済誌による「薄型テレビの価格競争激化」の記事では、「1月に42型テレビの平均単価が約32万円だったが、10月には早くも30万円を切った」と急激な価格低下に驚いている。それが今では同タイプで10万円を切る製品も珍しくないのだから、“暴落”としか言いようがない▼もちろんメーカー側もこの緊急事態に対処するため、ハードディスクやブルーレイを内蔵するなど付加価値により単価アップを試みている。ここに登場した救世主が3Dテレビだ。映画「アバター」の世界が家庭で楽しめるというのだ▼価格は40型前後で20万円程度と意外に手ごろ。と思いきや、3Dソフトを再生するための専用プレーヤー(15—30万円程度)とセットでそろえなければ楽しむことはできないという。ようやくノーマルの大型テレビを手に入れた我々が3Dに乗り換えられるためには、再び価格暴落が起きる必要がありそうだ…。(U)


4月22日(木)

●「腹案」は、ひとたび漏れると「腹案」でなくなる。米軍・普天間基地の移設候補地問題も本意か否かは別にして、あっという間に「腹案」でなくなった。温め過ぎとも、表に出すタイミングを逸するとこうなるの一例▼「腹案」とは辞書をひもとくまでもなく、前もって心の中で密かに考えておくこと。この言葉が永田町で聞かれたのは3月の末。「(移設先の)腹案を持ち合わせている。閣僚もその認識のもとで行動している」。口にしたのは党首討論の場で鳩山首相だった▼つい口をついたのだろう。それから3週間。周辺取材から徳之島説が流れ、一方で与党協議は難航し、表に出せないまま時は経過して限界に。この間、察知した現地で開いた反対集会に1万6000人も集まられてしまった。こうなっては…▼官房副長官が動いた。3町長に電話で「官房長官と会ってほしい」と。その瞬間に「腹案」は「腹案」でなくなった。というのも、徳之島が「腹案」になかったのなら集会の様子を確認する必要も、官房長官との面会を打診する必要もないはずだから▼逆説的だが、徳之島が「腹案」だったと認めたことを意味している。「政府案は決まっていない」。鳩山首相がいくら弁明しても時すでに遅く、官房長官も事実上、認めざるを得なくなって万事休す。ただし救いの道がないわけでない。「腹案」は一つとは限らないからだが、その有無も来月には明らかになる。(A)


4月21日(水)

●アイスランドの大噴火による火山灰が欧州を凍らせている。西暦79年のベスビオ火山の大噴火で埋もれた古代都市「ポンペイ遺跡」では、石こうで固まった人々や作りかけのパンまでも無残な姿で残っている▼そのポンペイ遺跡で当時、軽食など提供していた飲食店「バール」の修復が終わり、25年ぶりに公開されたという。今のバールのような立ったまま飲食できる石造りのカウンターがあり、店の奥には家族らが座って食べれるスペースも▼ブドウの搾り汁や、小麦粉、チーズ、蜂蜜などを使った古代菓子も再現された。フレスコ画を見ながら、水や蜂蜜を混ぜたワインと一緒にたしなんでいたという。函館の「バル街」は6年前に「スペイン料理フォーラム」のイベントの一つとして西部地区で取り入れた▼「立ち飲み」「立ち食い」といえば、北洋漁業華やかしき頃の大門広小路の「屋台」が懐かしい。赤ちょうちんに裸電球。木製の腰掛はあったが、大半は立ったまま。「隣同士で小皿〜」すぐ仲良くなり、隣の屋台へと飲み歩いたものだ▼西部地区の「春のバル街」は23日に開催。今年は西部地区以外からも出店する8店を加え64店が参加する。弘前市のフランス料理店も並ぶという。「昼バル」に「あとバル」と多彩。数件のバルをはしごするのが楽しい。大噴火の前夜まで銀製のカップを手に「立ち飲み」していたポンペイの人々に思いをはせながら。(M)


4月20日(火)

●現政権は「政治主導」を標榜している。わが国の政治は「官僚主導」と言われてきた歴史がある。その対極にとらえると「政治主導」ではなく「政治家主導」なのだろうが、政治を司るのは政治家、いわば当然の話である▼その本来の姿に戻すということだが、「官僚主導」になったのは政治家が官僚への依存を続けてきたから。能力を発揮できる関係は発言力も強め、その積み重ねは自ずと主導権に及ぶことに。国民の批判もあり「政治家主導」は格好の旗印だった▼そして生まれた現政権。政策協議は政務三役で、事務方に会見はさせず、公開での事業仕分けはその印象づけに貢献した。確かに、変わろうとしている姿の片鱗はうかがえるが、決定までのプロセスが見えない、説明が足りないという声も▼高速道路の通行料問題は解りやすい身近な事例。もともと全面無料化の約束が、対象路線は選別し、その他は上限設定とした。としたら、まず説明すべきは、なぜ無料化できないのか、ではなかろうか。大臣の会見でも、その大事な前段が欠けていた▼「この内閣は説明責任に欠けている」。高速道路会社に出資している埼玉県の上田知事が厳しく糾弾したのも頷ける。言うまでもなく「政治家主導」は決定までのプロセスが短く、その分、より丁寧な説明が必要となる。それが欠けると、出てくる答えは明白。現状は、残念ながら不十分の域を抜け出ていない。(A)


4月19日(月)

●今は「スイーツ」と言う。「洋菓子」よりも若い人にはむしろ通じがいい。ケーキやプリンなど甘い菓子の総称がスイーツと思えば間違いないが、塩味を売りにしたチョコレートなどもあるからややこしい▼有名人の中にも甘党は多い。文人では森鴎外、夏目漱石らがその筆頭という。当時はケーキを頻繁に食べていたとは思えないから、おそらく饅頭といった類の、あんものがお好きだったのでは。和菓子を“和スイーツ”と言い換える現代をどう思うか、鴎外に聞いてみたい気もする▼洋も和もスイーツとすれば、9月初めに開かれる「第1回はこだてスイーツフェスタ」はさながら“お菓子の国際博”だ。市内の菓子店などを中心にした実行委がこのほど旗揚げし、委員長には五島軒社長の若山直さんが選ばれた▼道内の菓子といえば、小豆や牛乳など原料に恵まれた十勝が知られるが、函館も負けていない。和菓子にしても洋菓子にしても、古くて新しい函館の街並みや人々の間にすんなり溶け込んでしまうから不思議だ▼「スイーツフェスタ」の実行委員には市や渡島総合振興局、函館商工会議所などの代表者も名を連ねる。官民を挙げたこの種の催しは、菓子王国の十勝にもない。各菓子店の個性が強く、横の連携を取りにくいことが、十勝の弱みでもある。その点、函館の取り組みは大きな意義を持つ。同業者間の連携は、そう甘くはないのである。(K)


4月18日(日)

●ビュウウウ 「いやー すごい風だね」「やんやゆるぐねっけ」「寒いし本当に春なのかな」 ヒュー 「あっ ズーズー君とばされちゃった…」 本紙の四コマ漫画に時おり出てくるスズメが先日、異常気象を嘆いていた▼北極の寒気が放出と蓄積を繰り返すといわれる「北極振動」で、今は寒気が放出されやすい時期に入っているといい、列島を襲っている異常低温はしばらく続きそう。道南でも2月の寒波に続き、3月は台風並みの強風と雪に見舞われた▼この異常低温と日照不足で春野菜が大打撃を受けて先月から品不足。関東でキャベツが平年の約2倍、レタスは1・7倍、ネギは1・5倍など軒並み値上がり。函館でもネギが2倍に、ホウレンソウやキュウリなど葉物野菜が2割以上の高値になっている▼主要14品目の平均は過去5年間の平均より42%も上昇し、小売店はキャベツ1玉を半分にするなど販売に四苦八苦。農水省は「ネギやピーマンは5月中旬まで、キャベツやホウレンソウは5月の大型連休まで高値が続く」と言い切る。「これ以上高くなったら手がでない」と家計簿は嘆く▼道南で生産されている春野菜の出荷は1週間から10日も遅れている。20日は二十四節気の一つの「穀雨」。春の温かい雨が降って穀物の芽が伸びる頃。農業にとって欠かせない雨なのに。函館公園、五稜郭公園などの桜開花も遅れそう。「北極振動」の沈静化を祈るのみか。(M)


4月17日(土)

●北海道観光もいよいよシーズンイン。大沼公園では遊覧船が営業態勢に入り、函館の西部地区にも観光客の姿が目立つように。ここ数年、入り込みが芳しくない函館・道南だが、今年は箱館奉行所のオープンなどで期待が広がる▼観光産業は“水もの産業”と言われる。景気やブームなどに左右されるからだが、それは裏返すと“呼び水”が大事ということでもある。その実践例として函館のクリスマスファンタジー(12月)があるが、地域外で今夏、注目を集めそうなのが「北海道ガーデン街道」▼静かな人気を呼んでいる花を売りに、旭川—富良野—帯広・十勝を結ぶ総距離約200キロのいわば広域観光新商品。旭川の上野ファーム、テレビドラマの舞台となった富良野・風のガーデン、清水の十勝千年の森、中札内の六花の森など7カ所をネットしている▼旭山動物園などを組み合わせて、十勝の温泉に宿泊するもよし。運営する協議会は「ドライブにも格好な距離」と個人旅行へのアピールにも力を入れ、既に4カ所に入園できる共通券(1600円)を発売中▼近年、観光志向が変化している。団体から個人へ、見学型から体験型へ、はよく耳にするが、この「北海道ガーデン街道」は、加えて広域型。単体での集客には限界がある、ならば連携することで…。この提案はまさに大事な“呼び水”であり仕掛け。観光関係者が関心を寄せる理由もそこにある。(A)


4月16日(金)

●昨年暮れ、米オハイオ州で薬物注射で男性の死刑が執行された。従来の薬物3種(麻酔、筋肉まひ、心臓停止)に対し1種(麻酔)だけで執行したため「痛みが少なく人道的」「人体実験だ」と死刑を巡る論議が沸騰した▼死刑執行には絞首刑、薬物注射、電気いすなどある。死刑大国といわれる中国で6年ほど前に死刑執行の写真がネットで出回った。まだ10代とみられる女性が群集の中を引きずり回され、銃で頭を吹き飛ばされるところまで撮影されている▼中国では薬物(覚せい剤)犯罪の罪が最も重いという。アヘン戦争以来、麻薬の惨禍をなめてきた中国にとって覚せい剤は「毒」なのだ。先週、覚せい剤密輸の日本人4人が立て続けに死刑になった。日本では覚せい剤で死刑はありえないが…▼日本はアジア最大の覚せい剤消費国と言われ、北朝鮮などから中国経由で入って来る。逮捕されて裁判で「預かっただけ」と主張しても「密輸の行為犯」として重罪が言い渡される。日本人で初めて死刑を言い渡された67歳の男性は約1・25㌔を隠し持っていた▼「定年退職して生活に困って“運び屋”になった」と言い、20万〜30万の報酬で請け負っていた。麻薬関連犯罪で30人が拘束されている。犯罪に対する量刑は、その国の先決事項だが、「減刑嘆願」しかないのだろうか。薬物汚染は中学生にまで広がっている。なんとか「消費大国」の汚名を返上しなければ。(M)


4月15日(木)

●札幌すすきのを訪れると、ニッカウヰスキーの大看板が迎えてくれる。酔客ならずとも、多くの道民にとってなじみ深い光景だ。北海道生まれのニッカは洋酒メーカーという枠を超え、親近感をもって道産子に受け入れられている▼ニッカの前身は「大日本果汁」。スコットランドでウイスキー製造を学んだ竹鶴政孝らが、1934年に余市町で創業した。事業が軌道に乗るまでにかなりの年月を要したが、竹鶴の妻リタも苦労を共にした一人だ▼リタの故郷はスコットランド。言葉も知らない日本での生活は平穏とはほど遠かった。戦時下は特高警察に見張られ、スパイ容疑もかけられた。それでも明るく振る舞うリタは地域の老若男女から慕われ、今は竹鶴とともに余市の丘の上に眠っている▼竹鶴とリタの波乱の人生は「リタの鐘が鳴る」(早瀬利之著、朝日ソノラマ刊)に詳しく、漫画「バーテンダー」(長友健篩著、集英社刊)の第16巻(北海道編)でもリタの人柄にスポットを当てている。興味のある方はぜひご一読を▼そのニッカが書店の丸善と連携し、ウイスキーと書籍をセット販売するキャンペーンを25日まで実施している。残念ながら販売は東京限定だが、世界最高賞を受賞したウイスキー「竹鶴」は道南・函館でも入手可能。後は自分の好きな本と組み合わせればいい。琥珀(こはく)色の逸品を横に、竹鶴とリタの人生に思いをはせるのも一興では。(K)


4月14日(水)

●揺りかごのうたを カナリアが歌うよ ねんねこ ねんねこ〜 赤ちゃんをあやしたり、寝かせる時に口ずさむ子守り歌。でも、赤ちゃんの頭を2秒間に5、6回も激しく揺すったらどうなるのか…▼自分の頭を自分の力で支えられない赤ちゃんは、頭を激しく揺さぶられると、脳が頭蓋(ずがい)骨の内側に打ちつけられて損傷するという。柔らかく、成長過程にある脳組織が壊れ脳内出血を起こし、視力や知能に障害が起き、命を落とすこともある。いわゆる揺すぶられ症候群▼児童虐待に多く見られる。先ほど、大阪市で26歳の父親と27歳の母親が1歳10カ月の娘を激しく揺さぶり、死なせたとして逮捕された。1日中揺すぶられ意識不明になり、脳腫瘍(しゅよう)で死亡した。平手で頭部を100回もたたく暴力も受けていた▼「お茶をこぼしたり、落とした食べ物を食べたことに対するしつけだった」と供述しているが…。大東市で21歳の父親は6カ月の赤ちゃんの頭を蛇口に激しくぶつけ、くも膜下出血で重傷。「育て方がわからず、イライラした」と。母親は虐待に気づかなかったという▼揺りかごの歌を歌って、赤ちゃんの首を腕で支え、優しく揺らす程度では脳損傷はあり得ない。揺さぶられ症候群など育て方が分からなければ、祖父母や保健所などに相談すればいい。両親が一緒になって。「あやして喜ばせること」が逆効果にならないように。(M)


4月13日(火)

●9日から日本公開された、レオナルド・ディカプリオ主演、マーティン・スコセッシ監督の米映画「シャッター・アイランド」が、「超日本語吹き替え版」によるロードショーで話題を呼んでいる。字幕での洋画上映が主流だった日本にとって、新たな潮流となる可能性を感じる▼日本ではこれまで、子ども向けの作品以外で劇場用の吹き替え版が制作されることはほとんどなかった。これは映画ファンの多くが、オリジナルの俳優の声そのものを楽しみたいと思っていると考えられてきたからだ。ところが実際には「字幕を読むのは疲れる」「字幕がじゃまで画面に集中できない」と、劇場に足を運ぶことをためらう人も少なくないという▼確かに、俳優本来の声で映画の世界に没頭したいという気持は理解できる。しかし、字幕を読むことに気を取られて重要な場面を見落としたり、逆に肝心なセリフを読み落としてしまっては本末転倒だ▼特に本作品は、多くの複線を張り巡らせた謎解き型ミステリーのため、映像とセリフを細かくチェックしていないと楽しめないことから、これまでにない、より自然な吹き替えへの挑戦が試みられたそうだ▼テレビの大型化により家庭で映画を楽しむ人が増え続ける中、「アバター」に続く3D作品のヒットと、吹き替え版の普及によって、長期低迷が続く映画業界に新たな風が吹くかも知れない。(U)


4月11日(日)

●トイレの花子さんの話。紙が切れる寸前に「紙ならある。赤い紙と青い紙。どっち?」。赤い紙というと血だらけになり、青というと死んでしまう…(ある中学生のブログ)。子どものころ、母屋から離れた便所に行くのが怖かった▼水洗式になった今の学校のトイレは“いじめの密室”にもなっている。その中高校生たちに大ブレークしているのが植村花菜さんが歌う「トイレの神様」。おばあちゃんっ子だった植村さんは祖母が亡くなっても“教え”は守った▼♪ トイレには それはそれはキレイな女神様がいるんやで だから毎日キレイにしたら 女神様みたいに べっぴんになるんやで〜 反抗しながらも小3のころから「べっぴんになりたくて」トイレをピカピカに磨き上げた▼昔は厠(かわや)と言った。屋敷神、竃(かまど)神、箒(ほうき)神など家族を守ってくれる神様がいるが、厠神は一番最後に家に入ってきたため、トイレしか空いていなかった。女性がトイレを清掃すると良縁に恵まれ、きれいな子どもが生まれるという▼約10分間の長〜い「トイレの神様」は家族のすばらしさを訴えている。トイレは母と子を守る神様が住んでいるのだ。決して鬼や幽霊なんか住んではいない。植村さんの「おばあちゃんの世界」があれば家庭崩壊なんかない。ほのぼのとした躾(しつけ)と教育があるだけだ。まして友だちをいじめる“恐怖のトイレ”にしてはいけない。(M)


4月10日(土)

●政治に対する信頼を判断するバロメーターの一つに「支持政党なし」、いわゆる「無党派層」の増減がある。その尺度から推し量ると、現実の姿は悲しいかな落第点。全国紙などの世論調査結果がはっきりと言い切っている▼読売新聞の調査では、3月初旬に36%だった「支持政党なし」が、4月初旬ではなんと50%。内閣や政党支持の落ち込みに反比例して急増の動き。民主党(連立)に政権が託されて半年余りしかたっていないのに、この「無党派層」が今や最大の政治勢力に▼連立も含め長年続いた自民党政権に、国民がノーを突きつけたのは、紛れもなく変化を求める民意だった。ところが、ふたを開けてみるとマニフェストは揺れ、首相や党幹事長らには政治と金の問題…。しかも党としてのけじめもない▼政治課題でも米軍の普天間移設問題などが影を落としている。期待が高かった分、落胆も大きいということだが、自浄作用があればまだしも、下がる支持率が現実をすべて物語っている。となれば、自民党にとって、またとない起死回生のチャンスだが…▼未だ変わった姿を示すことができずに旧態依然。まさにどっちもどっち。「無党派層」50%を生み出している責任は、この二大政党にあり、と言われても仕方ない。信頼回復の第一歩は「無党派層」が発しているメッセージを正面から受け止めることだ。7月には参院選挙が控えている。(A)


4月9日(金)

●牛丼デフレ戦争—。函館市内にも出店する「すき家」「吉野家」などの安売り競争が、熾烈(しれつ)を極めている。牛丼の並盛りがわずか250—280円。たばこ1箱が400円を超そうかという時代、牛丼の新価格は“底値”に達したと言っていいだろう▼低価格戦争は、業界の疲弊(ひへい)を生む。事実、牛丼の値下げも期間や地域を限定したものが多い。他チェーンより10円でも安くという対抗手段にはおのずと限界がある。消費者の側も、低価格を甘受できる期間には限りがあると思うことが賢明だ▼そもそもデフレ(デフレーションの略)とは何か。釈迦に説法というおしかりを覚悟でおさらいすると—。「物価が持続的に下落すること。企業の倒産、失業者の増大など不況や社会不安を伴うことが多い」(広辞苑)▼一昔前に言われた「価格破壊」がデフレを招く。さらに、エスカレートした低価格競争が、業界内の“勝ち組”と“負け組”を生む。従業員の給料の下落やリストラ、ひいては企業倒産にもつながるなど、デフレの問題点は多い▼こうした経済の基本を知っていても、安い牛丼や衣料品などに飛びつく。これが消費者感情というものだろう。買う側、食べる側には決して罪はない。デフレによる連鎖的な悪循環から脱却する手立ては、やはり政治の力である。景気回復で収入が上がり、通常価格の牛丼の味を楽しむ。経済の理想からはまだ遠い。(K)


4月8日(木)

●「これは駄目だ」。思わずつぶやいてしまった。3日午前10時半ごろ、場所は五稜郭公園。たまたま近くを通りかかったので、工事中の奉行所の近況を、と足を運んだのだが、そこで出会ったのは観光都市とは思えない光景だった▼4月に入って、休日などには観光客の姿が目につくように。五稜郭公園は主要スポットで、この時も台湾とおぼしき人たちを交え十数人の人が訪れていた。だが、奉行所は、というと遠巻きに工事用のフェンスで頑丈に囲まれたまま▼しかも防犯カメラが設置され、ご丁寧に「フェンス内は作動しています」との但し書きまで。足を運んだ人たちにどう報いるかという思いは、いったいどこに。記念写真もままならない上、気持ちを逆なでしてもおかしくない一文のおまけ付きである▼桜もまだ先、見ることが出来るのは、オープン前とはいえ奉行所だけ。足場は外れ、外観は姿を現している。としたら、せめて観光客の多い土日ぐらい、警備員を配置して、1カ所でもいいからフェンスを開け、記念写真をどうぞ、の配慮があって当然▼函館観光に必要なのは、ホスピタリティーと言われる。それは「訪れた人たちに喜んで帰ってもらう」こと。その精神に照らすと、対応の是非は明らかであり、どんな理由があるにせよ、率先すべき官の姿勢として糾弾されて仕方ない。ちょっとした配慮、それが大事なのに。次週からでも遅くはない。(A)


4月7日(水)

●中学生になった孫娘の入学式を見てきた。みんな学校が決めたセーラー服(制服)で、すがすがしい。学校側は、制服によって生徒管理ができるというが、昔のように束縛された空気はない▼セーラー服は163年前の英海軍の水兵服がルーツ。先ごろ「女学生のセーラー服の起源は京都か福岡か」が話題になった。福岡女学院が89年に導入しセーラー服の発祥と主張していたが、平安女学院がそれより1年前に取り入れたというのだ▼制服は女子受験生の学校選択の要素の一つ。当時の福岡や京都では「セーラー服は入学希望の理由となるほど好評だった」という。最近はデザインをはじめ色など豊富。スカートのほかに、防寒や防犯、機能性を考えてスラックスを取り入れている学校も▼同じ制服でも、欧州ではイスラムの女性が全身を覆う「ブルカ」を巡って賛否両論。フランスは「女性の人格否定につながる」といい、ベルギーは公共の場で「顔をすべて、または、ほとんど隠す衣装」の着用を禁じた。トルコの大学では逆にイスラムの女生徒に学内でのスカーフの着用を認めている▼外国の制服論争は宗教ともからんで複雑だが、孫娘のセーラー服姿を見ていると「制服のぬるま湯につかっている日本は平和だな」と思う。同級生から「与謝野っているよ(髪が乱れている)」と言われるのはまだよいが、「制服も心も乱れているよ」と言われないように勉強してね。(M)


4月6日(火)

●移住で人気が高く、官民が力を入れているのは沖縄や長野、そして北海道だ。年中暖かいか、冷涼で自然豊かな地という印象がある。それは函館市が移住者に実施したアンケートでも明らかだ▼回答者の6割強が移住して満足と答え、函館に決めた理由の1位に「気候、食べ物、自然環境」を挙げている。本州人から見れば、函館の夏は天然の弱冷房。冬は寒いが、それでも豪雪地帯ではない▼そして食。函館の食の魅力は全国が認めるところである。豊かで新鮮でおいしいうえに安価。まさに北の大地の恵みである。自然環境もまたしかり。美しい自然やレトロな街並みに引かれ、全国から観光客が訪れる▼こうしてみると、函館には天の恵みがそろっている。だからこそ、移住後の満足度も一定のレベルにあるのだろう。ただ、それに安住していては道内はもとより、国内他地域との競争に負けてしまう▼移住者を増やすために必要なことは、との質問に多かった回答は、「働く場所がある」「コンサートや講演会の招致、商店街の再生」など。経済基盤がなければ勤労世代の移住は難しいし、文化や娯楽がなければつまらない▼行政はみな、住みよいまちづくりを目指す。誰にとっても住みよいまちは、移住者にとっても住みよい。仕事があれば若者が残り、移住者も増える。「移住戦略は、自分たちの街を住みやすくするのがスタート地点」という原点に立ち返ろう。(P)


4月5日(月)

●2勝8敗1分と、まさかのパ・リーグ最下位独走を続ける日本ハム。しかし、3日に札幌ドームで行われた対西武戦では、エース・ダルビッシュ投手がようやく今季初勝利を収めるなど、巻き返しへ向けての準備は着実に整っている▼実は昨年の開幕日がまさにこの4月3日だった。今年のペナントレースは約2週間早い3月20日にスタート。南国でキャンプを行い準備万端で迎えたはずの公式戦だが、まだ春遠い北海道のチームにとってはこれまでの2週間はまだ冬眠状態であり、ここからが真の“開幕”と考えたい▼それにしても今シーズンは、絶対的守護神・武田久投手の大乱調、驚異の9番打者として打線の起爆剤的活躍を見せてきた金子誠内野手のケガによる戦線離脱、鉄壁を誇った守備陣による信じられないエラーの連発と、悪夢のような出来事が続出▼それだけに、先発ダルビッシュと新守護神ウルフの継投で勝ち取った白星は、だれもが待ち望んでいた日ハムらしいゲームの復活を印象づける内容だった▼チームがピンチを迎えている今こそ注目したい選手がいる。超高校級スラッガーとして鳴り物入りでプロ入りし、3年目を迎える中田翔外野手だ。梨田監督の積極的な起用に応え、救世主的活躍をすれば一気に評価は高まるはず。かつて自分も活躍したセンバツ甲子園大会での高校球児の姿を刺激にして、ハムのニューヒーローとして飛“翔”してほしい。(U)


4月4日(日)

●名前を読み上げられると、代返を頼まれた学生が友達に代わって返事。同じ学生が2回も3回も返事をすることもあり、狭い教室ではバレてしまう。授業で出欠をとる学生の代返風景はどこかユーモラスだが…▼こちらは国会議事堂で「代返」ならぬ「身代わり投票」。参院本会議で高校無償化法案など10件の法案の賛否のボタンを押す際、隣席議員のボタンに手が。自民党の若林正俊元農相が途中退席した臨席議員の採決ボタンをこの日だけで10回も押したという▼押しボタン投票が導入されたのは12年前。各議席には「賛成」「反対」「取り消し」の3つのボタン付き投票機。結果は自動的に集計され、各議員の賛否は議事録に。押しボタンは隣接からも手が届く。一般的に選挙で投票を代行したら選挙違反になるのでは▼まして国会での代行投票は前代未聞。「魔が差した」と議員を辞職。広辞苑によると「魔が差す」とは「悪魔が心に入りこんだように、ふと悪念を起こす」こと。引退を間近にしたベテラン議員がどんな悪念に取り付かれたのか。今回の10件だけというが、以前もあったのではと疑いたくなる▼学生の代返と同列に論じたくないが、代返防止システムを導入する大学も少なくない。今度の押しボタン代行は国会の議決システムをゆがめる行為。国の将来を左右する国会のボタンを押す国会議員は信頼回復めざして自浄努力せよ。(M)


4月3日(土)

●社会が病んでいる、そんな思いを抱かせる事象が多々報じられる。表に出る話もさることながら、懸念されるのは内面の、いわば心理の変動。若い人の間にも起きているようで、最近もそれをうかがわせる調査結果が▼4月、新入社員が社会人生活のスタートを切った。この時期は希望に満ちあふれ、将来は会社を背負って立つ、といった高揚感に包まれていて不思議でない。チャンスがあれば転職もいとわず…。少なくとも、かつての時代はそうだった▼そうあってほしいと密かに期待したいところだが、現実は必ずしもそうでない。経済の低迷と雇用不安は、まぎれもない心理変動をもたらしているようで、一言で言うと萎縮した状態。明治安田生命の新入社員調査結果からもはっきりと読み取れる▼「会社の選択基準は安定性」「生涯一企業を望む」「昇進も、役職にも興味がない」「重視するのは職場内の人間関係」。転職も、出世も望まず、求めるのは経済的、精神的な安定という。預貯金計画もしっかり考えている▼この背景にあるのは年金問題に象徴される将来不安。だから気持ちが守りに入る。現実の問題として表面化しただけで、若い人たちの本来的な価値観が根底から変わったわけではない。強いて言うなら今の政治や社会が押し付けた仮の姿ということになる。何とも罪な時代だが、そこから抜け出す日が早く来ることを願わずにいられない。(A)


4月2日(金)

●流行の「ゆるキャラ」とは一線を画している。かわいさ、癒しとは無縁で、ぎょろりとした目を持つ表情などはむしろ怖い。役回りは函館の街を破壊する悪者。このキャラにとって「怖い」はほめ言葉である▼イカをモデルにした函館発のキャラクター「イカール星人」が全国区の人気という。この“異星人”を生みだした「project Ika—R」(シンプルウェイ、猫乃手堂、函館市)が、デジタル技術などを競うコンテストで入賞した。地方発キャラクターの代表格として、全国的なお墨付きを得たことになる▼市は新年度、イカール星人の売り出しに本腰で取り組む。新作動画、着ぐるみ、名刺用デザインなどに要する約500万円の予算を組んだ。早速、東北地方への遠征を予定している▼財政難のこのご時世に無駄金を—と言うなかれ、この種のキャラクターは今やれっきとした「観光ブランド」である。せっかく金をかけるのであれば、東北に限らず列島制覇を狙ってほしい▼全国区といえば、函館市電の女性運転士をモデルにしたフィギュアもその一つ。玩具メーカーのトミーテックが手掛ける「鉄道むすめ—鉄道制服コレクション—」のシリーズ第10弾となる。「たかが人形、されど人形」。マニアにとっては希少な逸品という。イカール星人と同様、時代の求めにあえて逆らわないこと。これが観光振興の奥義なのかもしれない。(K)


4月1日(木)

●「春の夢みてゐて瞼ぬれにけり」(三橋鷹女)。「春の夢」は春の季語であり、前述のように情緒的な句に使われることが多い。ちなみに夏の夢、秋の夢、冬の夢という季語はない。そのせいか、「春」に寄り添う夢の存在が、違和感なく読み手に伝わる▼きょう1日から新年度。子ども手当の創設、高校授業料の無償化など、民主党の目玉政策が目白押しだ。身近にも「子ども手当の支給は本当に助かる」といった声がある。日々の暮らしに追われる家庭にとっては、さながら春のプレゼントといったところか▼4月からの変化はこれだけではない。後期高齢者医療制度、国民年金の保険料がそれぞれ引き上げられるなど、国民の負担は増す。「選挙対策のばらまき」との反対派の批判を背に子ども手当の支給に踏み切る一方、取れるところからは取って手当の財源に充てる。こんなうがった見方を全否定する余力すら、現政権から感じ取ることはできない▼米軍基地移設問題、郵政改革法案をめぐる閣内不一致などで連立政権の屋台骨が揺らいでいる。子ども手当の支給が2年目、3年目も同様に続くという保証はない▼仮に支給があったとしても、その財源はどこから捻出するのか。素朴な疑問に対する明快な回答はいまだにない。支給を受けた家庭が巡り巡って、別の負担を強いられることはないか。子ども手当が「春の夢」に終わらないことを祈るばかりだ。(K)