平成22年9月


9月30日(木)

●老後をどう有意義に過ごすか。言うまでもなくそれは、おのおのの心掛け次第だ。趣味を楽しむ。人生の経験を子どもに伝える。社会奉仕に精を出す…。どれも健康あっての行いだが、中には元気余って警察に厄介をかけるご仁も。やはり老後の生き様は千差万別と言わざるを得ない▼ストーカー容疑の72歳の男が広島県内で逮捕された。同じ年齢の女性に付きまとい、携帯電話に21回電話を掛けた。警察からの警告を2度にわたって無視したという。また、東京都内では女性用の下着約2000点を自宅に隠し持っていた71歳の男が逮捕された。男は約5年前から下着の窃盗を繰り返していた▼少年犯罪の凶悪化が進む一方で、高齢者犯罪の急増が社会問題として浮上している。超高齢時代の到来と社会構造の急変は、一部の高齢者を社会というレールから置き去りにした。そこには骨抜きになった「老後の人生設計」だけが残された▼定数オーバーの留置場や拘置所、刑務所が全国で増えている。高齢者犯罪の急増とも無縁ではない。留置場を食事付きの住居代わりにするため、微罪を繰り返す高齢者もいるというから驚きだ▼函館市内の町会館に、異世代交流を目的とした「サロン」が開設される。これだけで高齢者を取り巻く諸問題が解消されるとは思えない。だが、まずは他人と触れ合うこと。そこには老後を生き生きと過ごすためのヒントが隠されている。(K)


9月29日(水)

●「折れた煙草の吸い殻であなたの嘘がわかるのよ〜」 灰皿の押し付け方で分かる…。他人への迷惑を考えない時代、たばこは場を演出する小道具でもあった。値上げになっても、ふかす紫煙に会話の語彙を求める人も少なくない▼たばこの値上げが決まって5カ月。1箱あたり60円から140円という値上げ幅は過去最大。マイルドセブンが300円から410円に。「1箱1000円になったら禁煙する」と言っていた愛煙家にとって、この出費は想定内だろうか▼自己責任で吸うのは自由だが、たばこには発がん性の化学物質が43種も含まれており、副流煙や受動喫煙など他人に迷惑をかけることを忘れてはいけない。先日、高校の同期会の二次会で1本吸ったら「やめなさい」と怒られた▼愛煙家の肩身はせばまるばかり。来月の値上げまであとわずか。スーパーやコンビニには予約した客が殺到、ごっそりまとめ買い。火を使わず、スパスパ吸っても煙が出ない「無煙たばこ」が大受け、ニコチン成分を含んだガムも引っ張りだことか▼「ベッドで煙草を吸わないで〜」 こんな歌もあった。火事の原因の大半は「煙草の火の不始末」だった。吸い続けるか、縁を切るか。愛煙家はさらに“値上げ”と“嫌煙権”の二重苦に追い込まれる。吸わない人にとって、紫煙がいかに不快で害をもたらしているかを頭にたたき込まなければ。「折れた吸い殻」のポイ捨てもやめよう。(M)


9月28日(火)

●今年は国勢調査年。その調査期日10月1日(厳密には午前0時)が近づいている。既にほとんどの家庭が訪れた調査員から、記入の説明を受け、調査票を持っているはず。提出は国民の義務であり、確実に、と願いたい▼というのも、結果は選挙区の画定(議員定数の基準)や地方交付税の算定根拠となるほか、各種の政策や、学術的な資料として活用されるから。加えて今回は「少子高齢化の進展と本格的な人口減少社会に転じて初めて」であり、その側面からの注目も▼なかでも重視される一つが年齢別の人口構成。解りやすい例として、子どもの数は教育政策、高齢者の数は福祉政策、就業者の数は年金や労働政策の基礎となる。つまり我々の生活とかかわり合いを持つ調査であり、いかに重要か、理解できる▼正確を期すためには毎年行うに越したことはない。ただ調査の規模が他の統計調査の類でなく、要する経費も半端でない。調査員の人数は全国で70万人(今回)といい、配布される調査票の数も全国で7700万枚(前回)レベル。というわけで5年ごとに▼提出に当たって今回からはプライバシーに配慮し封入り提出が実現したほか、郵送も可能に。その結果は人口と世帯数(市町村別含め)が来年2月、年齢別構成、世帯人数、就業者数などは6月にも公表される。「未来への はじめの一歩は 国勢調査」(中学の部総理大臣賞標語)。くれぐれも忘れずに。(A)


9月27日(月)

●北方領土・国後島を訪れた日本の調査団が、白いヒグマの撮影に成功した。川でカラフトマスを捕食する成獣は、顔の周りと下半身の一部が黒いが、他は白い。以前から生息が知られており、国後島のヒグマの約1割にこうした変異がみられるという▼松前藩の家老、蠣崎波響が描いた「夷酋列像(いしゅうれつぞう)」の中にも、白と黒の子グマ2頭を引き連れたアイヌの有力者の絵がある。国後島からウルップ島にかけてラッコ猟をしていた厚岸のアイヌ・イニンカリで、白いヒグマは権力の象徴との説もある▼白いヒグマが生息していた北方の地。アイヌの交易や往来の舞台はサハリンや大陸まで至り、イニンカリはロシア風のマントを羽織っていた。現代の写真と約200年前の絵から、はるかなる大地と豊かなオホーツクの海に、さまざまな思いがかきたてられる▼その夷酋列像の原画は幕末の混乱期に散逸し、フランスに渡った。列像を題材にした小説を書いた宇江佐真理さんは「描写が細密。小さな絵の中に大きな世界がある」と語る。彩色豊かな絵図から、歴史群像が無限に広がるようだ▼その世界を確認する旅になるだろう。松前高校の生徒2人が、夷酋列像の見学などを目的にフランスへ出発する。宇江佐さんらから事前学習を積み、イメージを膨らませた。松前から広がる世界を見つめ、フランスから歴史の輝きや郷土の誇りを再発見してほしい。(P)


9月26日(日)

●「危ない!」。ブレーキを踏んだ時は既に遅かった。幸い、けがはしなかったが、車は路外に落ちて、エンジンはかかるものの頑として動かない。外は真っ暗。周りに人家らしきものもない。携帯はあったが、1人で心細い▼そこに1台の車が通りかかり、止まってくれた。若い夫婦で、JAFに連絡をとってくれた上、到着まで心細いでしょう、一緒に待ちましょうか、と言ってくれたという。「そこまでは」と断ったそうだが、「人の親切が身に染みた」。知人はそう語っていた▼美談の話を書こうとしているのか、と思われようが、それは本稿の趣旨でない。実はこの知人、車を運転して日高地方の国道を走っていてシカと衝突したのだ。気になったシカの姿はなかったというから、命は助かったのだろうが、互いに災難というほかない▼道内ではシカがかなり増えている。52万頭と推定され、捕獲しなければ年2割増えていくという見解も。「1970年代、道東を中心に生息数を拡大。渡島半島はそれとは別に南部を中心に分布を拡大しつつある」(道の検討報告書)▼近年は農林業被害も問題になっているが、増える車の衝突事故も悩み。注意標識があっても道東では年間500件とも。郊外や山道などでは、車が少ないから、とアクセルを踏みがちになるが、それは危険との背中合わせ。シカはあっという感じで飛び出してくる。速度は抑え目に、対策はそれしかない。(A)


9月25日(土)

●別れテープにドラが鳴る〜 青函連絡船に初めて乗ったのは56年前の9月。洞爺丸惨事が起きる3週間ほど前。青森駅のホームから200メートルほどある桟橋を連絡船乗り場まで徒競走のように駆け足。学生だったので、安い三等室(船底)へ▼荷物を置いて食堂で腹ごしらえ。和定食、洋定食、ランチをはじめ、ビーフカツレツなど17品目くらいあったが、金がないのでカレーライス(120円)が目当てだった。ライスだけ頼んで、ソースや塩だけかけたことも▼台風のため函館港で待機していた洞爺丸。惨事の数時間前の調理場では乗客の注文が相次ぎ、大わらわ。米、肉、ハムなど食材を急きょ追加注文したという。惨事が起きた時、三等室に海水がどっと流れ込んだ…▼救命胴衣を奪い合い、転んだ人を踏みつけて逃げ場を探す。転んで起き上がれなかった老人が念仏を唱える。さっきまで食事をとっていた少女は、この地獄絵を見て「怖いよ、助けて!」と大粒の涙を流して泣きだしたという…▼瞬間最大風速は58メートル。連絡船を飲み込むかのように襲ってくる高波。列島を震撼させ、多くの尊い命を奪った国内最大の海難事故。「沈没の悲劇を風化させない」と、26日の慰霊堂で行われる法要で、大妻高校生らが洞爺丸メニューを再現する。エビフライ、ポークカツレツ、ビーフステーキなど6品目。少女たちへの供養の気持ちを込めて、食したいものだ。(M)


9月24日(金)

●左党の楽しみの一つに、はしご酒がある。接待客や上司が相手だと少しつらいが、気の合った友人の時などはついつい午前様ということも。2軒、3軒、4軒…。はしごの段数は多ければ多いほどいい、というつわものもいる▼当然、1軒の“滞在時間”は限られる。じっくり腰を落ち着かせてという酒仙には不向きだが、店から店を短時間で渡り歩くはしご酒にはそれなりの魅力もある。一つは、同じ酔客との出会いの場が増えること。もう一つは、1軒当たりの出費が小額で済むこと▼それらの長所を生かした「函館市西部地区バル街」が人気だ。2004年から年2回のペースで行われ、先の第14回には過去最高の74店が参加。地元住民に定着したバル街は今、まちおこしイベントの成功例として全国から注目を集めている(本紙23日付1面で詳報)▼バル街はスペインが発祥の地。居酒屋と喫茶店を兼ね、店内にいすはない。客は立ったまま飲み食いし、会話を楽しむ。そもそも数軒をはしごするようにできているので、たくさんの凝った料理や過度のサービスを必要としない▼そんな手軽さが受けたのか、函館版バル街の人気は大分や宮城、山形、兵庫、福岡などに波及。好敵手として互いを磨く関係にある。元祖・函館の場合は、西部地区の歴史的な街並みが売りだ。バル街の基本である「ふらりと立ち寄る」という雰囲気の分、函館に一日の長がある。(K)


9月23日(木)

●「改ざん」にもいろいろあるが、郵便不正事件に絡む検事の行為には、開いた口がふさがらない。逮捕された大阪地検特捜部の主任検事は、同事件の被告宅から押収したフロッピーディスク(FD)のデータを、自らの都合に合わせて書き換えていた▼検察側が描いた事件の構図が、事実と符合しない。ならばFD内にある記録に手を加えてしまおう。こんな幼稚な発想が、法の番人である検察側から出てくることが情けなく、腹立たしい。しょせんは子供じみたつじつま合わせ。初歩的な証拠隠滅が発覚しないと信じていたとすれば、その方がむしろ不思議だ▼改ざんの被害は別の方面でも頻発している。ホームページ(HP)へのサイバー攻撃がその一つ。最近では、徳島県内の2町村が標的にされた。HPの地図情報の表示が「中国漁船」「釣魚島」などと中国語で書かれたページに改ざんされていた▼尖閣諸島沖の日本領海内での中国漁船衝突事件をめぐり、両国間のあつれきが激しさを増している。HPの改ざんは、中国側からの攻撃と判明したという。瞬時に情報が行き交うインターネット社会は、一方で有事に脆弱(ぜいじゃく)性を露呈するという現実を突きつけている▼証拠のもみ消しとサイバー攻撃。改ざんの質は違っても、手を下す側の焦りやいら立ちが底流にある。そこには、何事も思い通りに—という現代病が潜んでいるような気がしてならない。(K)


9月22日(水)

●「人づくり、まちづくりは先人を知り、学ぶことから始まる」。まさにその通りだが、幅広く意識を醸成して、地域に定着させていくのは容易でない。ともすれば能書きで終わりがちだが、松前町が着実に実践し、注目されている▼同町は歴史と文化の町。松前藩家老で画家の蠣崎波響、書家で近代詩文書の提唱者である金子鴎亭らを生み出した町としても知られる。こうした先人の精神、足跡を学んでいくことこそ、まちづくりの原点、ととらえた象徴が2年前に制定した教育指針条例▼「今、この地に生きる私たちは、先人から引き継いだ歴史や伝統、文化を大切にし、次の世代へ継承していく責任がある」(抜粋)と明記。さらに松前高校の教育方針をみると「松前学、書道教育、国際教育を柱に…」とうたわれている▼「松前学」。それは地域の歴史や文化を知ることであり、学び、考える機会も求められる。2年前に開催した北前船寄港地フォーラムは歴史の視点だが、今年は文化の視点で。10月15日に北海道地域創造フォーラム「博古知今セミナー松前」を計画している▼PHP総合研究所などの協力事業で、道内3番目の開催。『ふるさとの先人を、まちづくり、心そだてに活かす」をテーマに作家、童門冬二さんの記念講演などのほか、小中高校生が作文を発表する。教育を基盤に、こうした積み重ねが人を、まちをつくる、松前町の考え方はそこに凝縮されている。(A)


9月21日(火)

●京都に住んでいた学生時代、一度だけ桂離宮を訪れた。言うまでもなく二つの満月が同時に見れる月の名所。月見台に向かって昇る月、池の水面に優しく揺れる月、船の上から見る「歩み月」…観月の最高の舞台▼桂と月は切っても切れない縁がある。古来の中国では月には桂の樹があると信じられ、不老長寿の象徴だった。桂離宮は帝たちが不老長寿を願って、桂川から水を引き、造ったという。そういえば紅茶などに含まれているシナモン、ニッキは桂の皮を粉にしたもの。生薬にも使われている▼竹取物語の絶世の美人・かぐや姫が生みの親の月に帰ったのが中秋の名月の夜。翁の引きとめを断って、帝の求愛を断って…。悠に1200歳を超えている。桂の樹のお陰で存命だろうか。行方不明の超高齢者も連れて行ったのだろうか▼月見は十五夜と十三夜(10月20日)の2回行うのがしきたりで、片方だけを見るのは「片見月」と忌む風習もある。お年寄りが元気に暮らせるように、列島にもっと桂の樹を植えよう。かぐや姫は彼岸に蒸発した超高齢者を連れて帰っているかもしれない▼新涼とは初秋の涼気、新鮮な涼しさのことをいうが、猛暑のせいか、ヒガンバナの開花は遅れている。やっと二度目の開花をみた民主党のヒガンバナは“景気回復”と“沖縄の安全”という「二つの満月」が映える舞台を造ってほしいものだ。22日は「中秋の名月」。(M)


9月20日(月)

●「B—1グランプリ」というイベントを知っているだろうか。全国各地のB級グルメが自慢の味を競いあう晴れ舞台で、18、19両日に神奈川県厚木市で行われた第5回大会では、山梨県の「甲府鳥もつ煮」が見事に初優勝を飾った▼年々注目度が高まっている同大会に、今年は2日間で約43万5000人が会場に足を運んだ。計46団体がグランプリ獲得を目指し、様々なパフォーマンスで参加者にアピールしたという▼大会の影響力の高さは、過去の歴代グランプリを見ると分かる。「富士宮やきそば」(静岡県富士宮市)、「厚木シロコロ・ホルモン」(神奈川県厚木市)、「横手やきそば」(秋田県横手市)のいずれも、グランプリ獲得により全国的に注目を集め、まちおこしにも大きな役割を果たしている▼ところで、このブームの火付け役となったのが青森県八戸市であることをご存じだろうか。2002年の東北新幹線八戸駅開業に合わせ、青森県の家庭で食べられていた「せんべい汁」を観光客に提供。これが口コミで人気を集め、06年の第1回B—1グランプリ開催につながった▼では5年後に新幹線開業を控えている道南からも、B級グルメを発掘してみよう。「やきとり弁当」「チャイニーズチキンバーガー」「いかめし」などが浮かんだが、ポピュラーすぎるかもしれない。それでは「ごっこ」を使ったインパクトのある料理で勝負するのはいかがだろうか。(U)


9月19日(日)

●プロスポーツ界では、記録に残る選手と記憶に残る選手の二通りがある。プロ野球では、巨人の王貞治が前者、同じく長嶋茂雄が後者として引き合いに出される。その点、大相撲の千代の富士(現九重親方)は記録にも記憶にも残る名横綱だった▼福島町出身の千代の富士は1970年に初土俵。小兵力士ながら、鍛え抜いた筋力を生かした速攻相撲でファンを沸かせた。特に、三役から横綱昇進までの快進撃は、今も目に焼き付いて離れない▼千代の富士の相撲人生は数々の記録にも彩られている。通算1045勝、幕内優勝31回。そして88年には53連勝の大記録を打ち立てた。昭和以降で歴代2位というこの記録は当分破られることはないだろう。多くのファンがそう思っていた▼その意味でも、今場所における横綱・白鵬の好調を福島町民が複雑な思いで見守っていたことは想像に難くない。ところが、白鵬が郷土の大横綱の記録を抜く54連勝を達成した後の町民の反応は、意外とさばさばとしたものだった。「おめでとう白鵬」という素直な祝福は、すがすがしくて気持ちがいい▼野球賭博問題などで屋台骨が揺らぐ大相撲を、一人横綱の白鵬が支えている。昭和の相撲界を担った千代の富士の苦労を知る福島町民だからこそ、白鵬に寄せる祝福は特別な意味を持つ。「横綱の里・福島」。このまちは、記録にこだわらず相撲界全体の発展を願う真のファンを生んだ。(K)


9月18日(土)

●函館山の麓に美しく威厳をもって佇む「旧函館区公会堂」。国の重要文化財として、函館市の歴史的、文化的財産として、さらには函館観光の要の建造物として異彩を放つ存在だが、その公会堂が20日、築100年を迎える▼地元の人は知り尽くしている話だが、誕生物語は1907(明治40)年に遡る。大火で町会所が焼け、その再建資金は保険金でまかなえず、寄付を募った。多くの協力はあったが足りず、豪商・相馬哲平氏が協力の要請に応えて実現した、と伝えられている▼その金額は、現在の貨幣価値で10億円とも言われる5万円。こうして1910(明治43)年9月、「左右対称のコロニアルスタイルとブルーグレー、イエローの色が特徴の美しい建物」(ホームページ)が完成。以来、さまざまな歴史を刻み込んできた▼当時は地方の鹿鳴館とも呼ばれ、一方で皇室の宿泊・休憩施設としての役割も担った。建築技術の高さ、保存状態などの評価から本館が重要文化財に指定されたのは1974(昭和49)年。その後修復工事に入り、1982(昭和57)年に復元された▼今や年間10万人以上が訪れる観光資源としてのイメージが強いが、コンサート会場などとして市民にも身近な存在。その姿は紛れもなく元町のランドマーク。バルコニーからの景観も素晴らしい。築100年を機に改めてその歴史に触れてはどうか。記念イベントが開かれる20日は、無料開放される。(A)


9月17日(金)

●ぼくには夢がある 希望がある そして持病がある〜 子どもも口ずさむ最近のCMソング。「私には夢がある」—キング牧師がワシントン大行進で何度も繰り返した名文句。民主党代表選挙の両候補も使っていた▼高齢者の夢は、元気に100歳を迎えることか。厚生労働省によると、全国の100歳以上の長寿者は4万4449人(15日時点)に上り、前年より4050人増えて、40年連続で過去最多を更新。道南の長寿者は函館90人、渡島61人、檜山32人。最高齢は女性106歳、男性105歳▼全国の最高齢は男女とも113歳。120歳まで生きた徳之島の泉重千代さんは「好きな女性のタイプは」と聞かれ「年上のひと」と笑わせた。今は笑い話で済まされない“超長寿現象”が出て、各地で重千代さん以上の江戸期生まれの「年上のひと」が続出▼戸籍上では、十三代将軍・家定と同じ年に生まれた「186歳」が生存しているというから驚き。来月の国勢調査では厳しいチェックが必要。まして、死亡届を出さずに、年金詐取なんて最悪だ。敬老精神はどこへ行った▼ある高齢者はブログに「何カ月か年金を払っていない時期があったのか、もらっていない。残りの人生、人並みに年金で食いつなぐことが夢です」と書き込んでいる。痛々しい夢だ。記念品より、年金を早く出してほしい。持病があっても、前向きに生きるのが高齢者の願い。20日は「敬老の日」。(M)


9月16日(木)

●売る側と買う側が同じ空間、同じ目線に立つ。対面販売が当たり前の時代には、商品をめぐるトラブルが少なかった。商売人としてのプロ意識と良心を持って客と接すること。それは地域に根付くためのコツであり、欠かせない条件でもあった▼やがて店員との会話がいらないスーパーが急増、さらにカタログやテレビ、インターネットを通じて買い物をする新スタイルが登場する。後者の場合、客は直接手に取って品選びをすることができない。それでもこの“仮想店舗”が急成長しているのは、昔の対面販売とは違った形の信頼関係が、売る側と買う側の間に成立しているからだ▼足の折れた粗悪なカニなどを販売したとして、札幌市内の海産物販売業の男が逮捕された。容疑は、商品購入者に契約関係の書類を送らなかった特定商取引法違反。電話勧誘で約1400件の契約を結び、2000万円以上を売り上げていたという▼商品を「送った」という事実を残して、キャンセルや苦情には応じない。これでは地道に良心的な商売を続ける業者はたまらない。事実、函館では「北海道の品が粗悪と思われては心外」と風評被害を心配する声も▼函館市漁協はスルメイカの不漁でふるさと小包の発送を延期した。「良質のものだけを」という思いの表れだ。顔が見えないことをいいことに、儲けだけを考える輩(やから)には理解できない「プライド」がそこにある。(K)


9月15日(水)

●がっぷり四つに組んだ力相撲も、土俵際の攻防で地力の差が出た。だが、この白星に満足している余裕はない。取り巻く環境は満身創痍(そうい)の状態であり、それを立て直すことが喫緊の仕事だ。地道に実績を重ね、信頼を勝ち取っていく以外に道はない▼民主党代表選で菅直人首相が、小沢一郎前幹事長を大差で退け、再選を決めた。その姿が、大相撲の“出直し場所”で一人横綱の重責を担う白鵬関と重なる。参院選の敗北で人心が離れた民主党にとって、代表選後のこれからが出直しの第一歩。政策面での黒星はもう許されない▼そのことは菅首相自らが痛感しており、荒波に向かう決意は代表選後のメッセージにも表れた。「いま日本は困難の中にある。元気な日本にもう一度つくり直し、次の世代に渡していきたい」▼この下りを「命を懸けてやる」と結んだが、心意気とは裏腹に、具体的な施策がみえてこないという、もどかしさも残る。当面は円高対策など日本経済の不安払拭が急務だ。一方で、雇用や社会保障など、市民生活に身近な課題も山積している▼野党が参院で過半数を占める“ねじれ国会”をどう乗り切るか。代表選で亀裂が入った「挙党態勢」をどう修復するか。内閣改造、党役員人事がその試金石となるが、国民には「内輪のもめごと」に付き合っている余裕はない。土俵際の粘り腰を一刻も早く、今度は政策実現の場面で見せてほしい。(K)


9月14日(火)

●列島に記録的な猛暑をもたらした異常気象は、道南のスルメイカや本州のイワシ、カツオなどの漁獲にも影を落としている。見た目が風変わりだったり、サイズが規格に合わなかったり、傷ついたり…“未利用魚”の商品化も進んでいる▼函館沖などで実施したスルメイカ資源調査によると、分布密度は、ここ10年で最低水準。イカ釣り機1台の1時間当たりの漁獲数は1・2匹と昨年(36・5匹)より激減。イカの生息に必要な海水温12〜23度の層が薄かった(函館水産試験場)▼山口県では、この時期にほとんど獲れないカツオが獲れている。猛暑で例年になく海水温が高かったので、東シナ海から日本海沿岸に入ってきた。また、千葉県では脂の乗った大型のイワシが豊漁。これも海水温のせいだという▼一方、野菜のように、見向きもされなかった“規格外の魚”も見直されている。破棄されたり、飼料に回されていたシマガツオがフライや揚げ物に変身。傷ありのタチウオやアジも頭や骨を取って子ども、お年寄り用に加工。安値で老人施設、学校給食などに出荷されている▼異常気象は秋の味覚の主役も変えようとしている。不漁のサンマに代わって、トロイワシが食卓を独占するのか。いや、北海道はやっぱりイカとサンマ。少し高くても今夜もイカ刺しにしよう。民主党のみなさんも、サンマとイカを腹いっぱい食べて、早く“政治の空白”を埋めてほしい。(M)


9月12日(日)

●「国際映画祭」の名を掲げるイベントは、世界に数多い。このうちベルリン、カンヌ、ベネチアは三大映画祭と呼ばれ、各国のスターやスタッフが一堂に集う世界的祭典として有名だ。そしてこれらに続くのが、モントリオール世界映画祭(カナダ)。ここでは近年、日本の作品や俳優が脚光を浴びている▼今年のモントリオールでも、一人の日本人女優が話題を独占した。映画「悪人」のヒロインを演じ、最優秀女優賞に輝いた深津絵里さん。現地の公式上映でスタンディングオベーションに包まれ、授賞発表後には世界の視線を集める実力女優の仲間入りを果たした▼映画は日本で公開されたばかり。原作となった小説「悪人」(吉田修一著)の評価が高いだけに、映画がどこまでその出来に迫ることができるか。「悪と善の境界」という原作のテーマがどう表現されているか、など楽しみは尽きない▼東京国際映画祭もまた、世界が注目する映画祭の一つだ。思春期を過ごした函館を舞台に辻仁成監督が制作した「ACACIA—アカシア—」が同映画祭のコンペティション部門に出品されたことは記憶に新しい▼そして今年も“函館発”の映画が同部門で披露される。市民が深く制作にかかわった「海炭市叙景」。物語は地味だが、函館の素顔の映像表現に成功した秀作という。ゆくゆくは世界に発信される映画に—。完成に尽力した関係者の共通の願いである。(K)


9月11日(土)

●大正時代、還暦を迎えた1人の数学教授が東大で歴史を学び直し、奈良時代の人口を推計した。当時の文献から村の平均人口を割り出し、別の史料から全国の村の数を把握し、600万人台という結論を得た。兵士の数や租税など他の記録から計算しても、同様の値だったという▼全体値が把握できない場合、一部のサンプルから推計する手法が取られる。最近では内閣府が、全国の「ひきこもり」は70万人、その予備軍は155万人と発表した。学校や職場の人間関係になじめず、自室や家に閉じこもる若者が増え、社会問題となっている▼一方で高齢者。100歳以上の所在不明者は全国で250人以上ともいわれ、年金の不正受給で逮捕者も出た。そして厚生労働省が85歳以上の年金受給者をサンプル調査した結果、全国で800人が不正受給している可能性があるという▼函館市が2008年度に5町1地区で実施した高齢者見守り事業では、889人の単身高齢者のうち26人が孤立状態と判断された。介護施設の利用や民生委員の見守りなどで社会とのつながりは持たせたが、市全体の孤立者の把握と対策が急務だ▼「平成22年版高齢社会白書」は指摘している。「社会的孤立は孤立死を招くだけでなく、生きがいや尊厳といった内面にも深刻な影響をもたらしている」。人ごとではない。人は誰しも老いていくのだから。弱者を見守る社会をなくしてはならない。(P)


9月10日(金)

●「20年後ぐらいには、北海道が米の一大主産地になっているかもしれないよ」。10年ほど前だったろうか、ある人から、こんな話を聞いたことがある。品種の改良や栽培技術の進歩に加え、理由の一つに温暖化があったのを覚えている▼あいまいに相槌を打ったが、その話がどうも夢から現実になりつつある。米の栽培には生育に合った気象など様々な条件が必要。かつての北海道は冷害に苦しみ、結果として長年、ともすると生産不適地として扱われ、国の評価も厳しかった▼40年前、生産調整が始まるや、真っ先に標的にされたことが物語るが、全国平均を大幅に上回る減反規模を強いられた。当時、農政担当(札幌)として、その現実に向き合った。北は遠別、東は女満別、そして南では江差、厚沢部などでも取材した▼生産現場から共通して伝わってきたのは米作りへの強い思い。作りたくても作れない、それは悲しい叫びだった。今も各地で転作畑が目につくが、北海道の米の作付面積は半減し、渡島では昨年、3000ヘクタールを割っている。それでも頑張ってきた▼努力は報われる。近年、道産米の評価は変わった。気象メカニズムの変化の一方で、品種の改良技術の進歩は食味の向上を導き出した。今では「ほしのゆめ」「ふっくりんこ」…。今年は「ゆめぴりか」も本格デビューするという。ここまできたら紛れもない生産適地。期待を担った“出来秋”に期待が膨らむ。(A)


9月9日(木)

●「成り済まし」が横行している。宅配業者に成り済ました犯人に金品を奪い取られる。肉親に成り済ました犯人から電話で現金の振り込みを要求される。こうした犯罪とは別に、実は社会の身近なところにも雑多な成り済ましが潜んでいる▼民主党代表選に立候補している小沢一郎氏が、簡易ブログ「ツイッター」を始めた—。これが民放テレビによる誤報だったことが判明。小沢氏に成り済ました人物の影に気付けなかったことが原因という。本人やその周辺に確認すれば済む話だが、速報性を競う報道姿勢にありがちな落とし穴である▼アフガニスタンで誘拐後、解放された日本人ジャーナリストが「ツイッター」で犯行グループの特徴や監禁生活の様子を明らかにした。本人の意思で発信される貴重な情報であり、“ニセ小沢氏”のケースとは情報価値という点で対極を成す。裏を返せば、ツイッターの優位性と危険性が表裏一体であることの表れでもある▼ツイッターに限らず、インターネット上にはこの種の成り済ましがあふれている。その気にさえなれば、性別や年齢、職業などはいくらでも詐称できる。匿名性の強いネット世界の怖さがここにある▼では、成り済ましに翻弄(ほんろう)されないためにはどうすればいいか。うそを見抜く力を養う。危険な情報には近づかない—。残念ながら、自衛する以外に情報の波を泳ぎきるための妙薬は見つかっていない。(K)


9月8日(水)

●親が「ぷーっ」とやって、子どもが「臭いっ」と顔をしかめた瞬間、親の大腸菌が子どもの鼻の穴についているという…。その大腸菌などに入り込み、抗生物質が効かない新種の細菌が国内でも確認された▼ベルギーで新種の細菌(NDM1)に感染した男性の死亡が報告されたのは先月中旬。英国、ベルギー、オランダ、ドイツ、カナダなど相次ぎ感染が確認され、拡大する恐れがあるという。インドやパキスタンで手術を受けた人に多い▼英医学誌によると、NDM1という遺伝子を持ち、抗生物質を拒否するスーパー耐性菌。死亡した男性はパキスタンで交通事故に遭い、現地の病院で手当てを受け、ベルギーに戻った時には感染していた。先日、その恐ろしい耐性菌が栃木県でインド渡航歴のある男性から検出された▼新種細菌は大腸菌や病原性の高いサルモネラ菌などにもうつりやすい。また、帝京大病院で9人が亡くなった多剤性アシネトバクターによる院内感染。土や水、人の皮膚に存在し、免疫力が弱くなった人が感染すると死亡するという▼人や物がグローバルに動く時代、ウイルスや細菌はまたたく間に広がる。新型インフルエンザの流行もそうだった。抗菌薬を使い続けると、それに負けない耐性菌が出てくる。子どもに「ぷーっ」と、怖い菌をふきかけないように、厚労省、自治体、医療機関が連帯し合って、まん延防止と対策に万全を尽くしてほしい。(M)


9月7日(火)

●「快適な生活を送る」。そこに欠かせないのは、行政的に言うところの生活環境、都市基盤。道路や公園の造成、緑化、さらには上水道や下水道の整備などが含まれるが、どこの都市でも市街地での整備はかなり進んでいる▼遅れた下水道も今や整備されていて当たり前の時代。そこには戦後の復興が進んだ昭和30年代から50余年の歳月があった。当時の整備目的は、どちらかと言うと浸水対策。台風や豪雨のたび市街地でも洪水が発生し、毎年、大きな被害が繰り返された▼国が1961(昭和36)年に、9月10日を「全国下水道促進デー」として制定したのも、立春から220日ごろが台風の襲来時期というのが理由。この昭和30年代には全国的に事業が本格化するが、函館は1948(昭和23)年から手がつけられている▼「…生活環境の悪かった北部地域について、浸水対策を重点とした自然流下の合流式で菅きょのみの整備に努めました」。市水道局のホームページでは、こう説明されているが、それから事業は本格化し、浸水対策という初期の目的をクリアして水洗化も…▼まちづくりの重点としてきた函館の処理人口普及率は、今日では90%レベル。普段考えもしないが、台風などによる浸水被害は格段に減り、水洗化もここまで普及した。「下水道は快適な生活への貢献度大」。この思いを大事にしたい。ちなみに10日だが、現在は「下水道の日」に衣替えしている。 (A)


9月6日(月)

●大学進学時に東京で初めて食べた「吉野家」の牛丼の味は今でも鮮烈に記憶に残っている。さっぱりとしていながらこくのあるタレが、ほどよい脂身が入った薄切り肉にしっかりとしみ込んでいて、何杯食べても飽きのこない味わいだった▼当時の並盛りの値段は確か360円。20年以上たった今でも380円で購入できるのは驚きかもしれない。しかし、ライバル「松屋」の320円、「すき屋」の290円という驚異的な価格設定の前に、かつての王者は大苦戦を強いられている▼実は低価格路線を主導してきたのは吉野家自身だった。ハンバーガーなどの安売りに対抗すべく、2001年に牛丼並を400円から280円に大幅値下げ。既存店の売り上げはプラス2ケタ台に転じたという▼牛丼界のみならず外食産業界全体で天下取りも見えてきた吉野家をどん底に突き落としたのが、04年のBSE問題による米国産牛肉の輸入停止。他社が豪州産などに素早く切り替えたのに対し、米国産にこだわり続けた吉野家は、大きくシェアを落とすことに▼輸入再開後も仕入れ価格が大きく上昇したことで、以前のような大胆な低価格路線に転じることは困難に。今月2日には起死回生を図ろうと280円の新商品「牛鍋丼」を発表したが、牛丼の値段は据え置いた。「安易に値段を下げることで看板商品の品質を落としたくない」とのことだが、果たしてこの判断は吉と出るか…。(U)


9月5日(日)

●ロシアサハリン州ユジノサハリンスク市。プロペラ機・アントノフは滑るように着陸した。「パイロットには旧ソ連時代の空軍出身者が多い。その技術は折り紙つき」。同行者の説明を納得して聞いたことを思い出す。函館とユジノの交流が本格化した1990年代後半のことだ▼ユジノ訪問は取材目的だったが、サハリンの市民生活や文化に触れる旅でもあった。インフラ整備の遅れが目につく一方で、街中には食料品や衣料品があふれ、洗練された服装の若者が目立った。少なくともこのときは、両市における経済、文化交流の促進を疑わなかった▼ロシアのサハリン航空が10月中旬にも、函館空港支店を閉鎖する。函館—ユジノ線の利用実績の低迷が理由という。定期便とチャーター便がすでに休止されていたとはいえ、支店撤退の凶報に地元関係者はショックを隠せない▼サハリン交流では逆に稚内市が元気だ。ネベリスク、コルサコフ、ユジノサハリンスクの3市と友好都市の関係にあり、コルサコフ間にはフェリー航路も。市役所内にサハリン課が置かれ、市内には「ホテル サハリン」という名の宿泊施設もある▼函館、稚内の対サハリンの取り組みを単純に比較することはできない。ただ、今の函館市民からサハリン交流への熱意を感じ取ることは難しい。ユジノ線と支店の存続を求めるのであれば、交流が始まったころの初心に帰る。このことが先決だ。(K)


9月4日(土)

●9月だというのに、うだるような暑さが続いている。本紙が掲載した企画のタイトル案も、当初の「猛暑 2010夏」から急きょ、「酷暑—」に変更した。気まぐれな天気の神様は、よほどいたずら好きとみえる。いや、初秋を盛夏と勘違いするくらいだから、物忘れが激しいのかもしれない▼暑さは体力を消耗させ、胃腸の働きを鈍らせる。こういう日はあっさり、さっぱりとした食べ物に目がいきがちだ。冷たいめん類、スイカ、アイスキャンデー…。そうめんのつゆが品薄状態と聞いても、今年に限っては驚かない▼ただし、体が求めるままの食事は要注意。肉、魚のほかに野菜もしっかり取りたい。一説によると、函館・道南では海に近い農地が多く、ここで収穫される野菜はミネラル分が豊富なのだという。地の利を生かさない手はない▼8月31日は「野菜の日」だった。函館市内のビルで野菜の試験販売を行っていた市内の人材育成会社は、9月以降の継続販売を決めた。市内のレストランなど6店では、オリジナルの創作野菜料理を4日まで提供している。いずれも地元関係者の発案という▼異常な暑さは野菜価格にも影響し、特に葉物の値段が高騰している。こんな時こそ、前段で紹介した野菜食支援の活動を利用したい。その土地で栄養を蓄えた“命の恵み”を、同じ土壌で育った地元住民が食する。ある意味で、理にかなった暑さ対策かもしれない。(K)


9月3日(金)

●9月だというのに、うだるような暑さが続いている。本紙が掲載した企画のタイトル案も、当初の「猛暑 2010夏」から急きょ、「酷暑—」に変更した。気まぐれな天気の神様は、よほどいたずら好きとみえる。いや、初秋を盛夏と勘違いするくらいだから、物忘れが激しいのかもしれない▼暑さは体力を消耗させ、胃腸の働きを鈍らせる。こういう日はあっさり、さっぱりとした食べ物に目がいきがちだ。冷たいめん類、スイカ、アイスキャンデー…。そうめんのつゆが品薄状態と聞いても、今年に限っては驚かない▼ただし、体が求めるままの食事は要注意。肉、魚のほかに野菜もしっかり取りたい。一説によると、函館・道南では海に近い農地が多く、ここで収穫される野菜はミネラル分が豊富なのだという。地の利を生かさない手はない▼8月31日は「野菜の日」だった。函館市内のビルで野菜の試験販売を行っていた市内の人材育成会社は、9月以降の継続販売を決めた。市内のレストランなど6店では、オリジナルの創作野菜料理を4日まで提供している。いずれも地元関係者の発案という▼異常な暑さは野菜価格にも影響し、特に葉物の値段が高騰している。こんな時こそ、前段で紹介した野菜食支援の活動を利用したい。その土地で栄養を蓄えた“命の恵み”を、同じ土壌で育った地元住民が食する。ある意味で、理にかなった暑さ対策かもしれない。(K)


9月2日(木)

●秋暑、秋暑し、残る暑さ…。秋暑(しゅうしょ)とは「秋の気配を感じさせないではないが、同時に蒸すような残暑」というように、今頃の時期に使うが、猛暑日が続く今年の暦はちょっと遅れ気味▼それでも、初秋の草花は季節に敏感で、秋の七草のススキが近郊の野原一面に揺れている。ススキにも花言葉がある。「勢力」「活力」「悔いのない青春」「心が通じる」「生命力が旺盛」など、意外と多い。すくすく伸び(すす)て萌え出る(き)からだろう▼稲を刈る月を意味するイナカリヅキになった9月に、注目されるのは次の首相を決める民主党の代表選挙(14日)。「(空海と)同行二人」と書かれた金剛つえを支えにして歩く四国巡礼。菅直人首相は沿道の信者が差し出した冷たいトマトを口にしながら24番札所まで巡礼▼囲碁に強い小沢一郎前幹事長。お互いに1目を取り合っている時、すぐに取り返せない「劫(こう)争い」。何度も相手の急所に打って…。選挙戦に長けていると言えども、まずは国民が納得できる「政治とカネ」問題の説明責任がある。菅首相を支えたのはトマトを差し出した住民だった。2人とも国民から目線をそらしたら、金剛つえは墓標にもなりかねない。今度こそ、死語に等しい権力闘争、党利党略はやめて、ススキの花言葉のように、景気回復へ「活力と生命力」を与え、国民と「心が通じる」国づくりに全力投球してほしい。(M)


9月1日(水)

●「正義とは何か」。答えが一つではないところに、この問答の難しさがある。例えば、1人を殺せば5人が助かる状況の中で、あなたはその1人を殺すべきか—。こうした例題を基にした哲学講義が人気を集めている▼仕掛け人は米国・ハーバード大学のマイケル・サンデル教授。講義には毎回1000人以上が出席し、その様子を収録した「ハーバード白熱教室」もNHKテレビで放映された。教授の著書「これからの『正義』の話をしよう」の翻訳本は、30万部を超すベストセラーになっている▼東京大学での特別講義にも学生らが大勢詰め掛けた。「日本は東アジアに謝罪すべきか」「オバマ大統領は広島、長崎への原爆投下に責任があるか」。さらに、複数の命を救うために、1人を殺すことは許されるか—との問いにも、学生からさまざまな意見が出た▼人命をめぐる問答については、死刑制度をめぐる最近の議論と重なる部分がある。それぞれの持つ大義の意味合いは異なっても、人の命を奪うという選択肢に違いはないからだ。あるとすれば、死刑制度の存廃には国家的な判断を要するということだろう▼法務省は東京拘置所の刑場を報道機関に公開した。このことが今後の死刑議論にどう影響するかは未知数である。死刑制度の存廃という二者択一の究極論には限界がある。制度の段階的な見直しを含む論議という、第三の選択の道があることも念頭に置きたい。(K)