平成23年12月


12月31日(土)

●世の中には、与えられた環境の中でひたむきに頑張る人、ひたすら努力する人は大勢いる。その輝く姿から伝わってくるのは何ともさわやかな空気感。刺激を受ける一方で、さらなる頑張りを期待し、応援したくもなる▼「川内優輝」。この名前を覚えている人はそう多くないかもしれない。ただ、教えられると、あの人だ、と分かるはず。今や日本の陸上競技界に新風を送り込んでいる人である。埼玉県庁職員(高校の事務職員)で、公務員ランナーと呼ばれるマラソン選手▼アマスポーツの一流選手は、ほとんどが実業団に所属し、専念できる環境の下で練習している。資金の心配はなく、時間も確保されて、スタッフもついている。一方の川内さんは、と言えば、ないないづくし。通常の勤務をしながらの競技生活である▼そのマラソン歴は3年弱で、注目されるようになったのはここ1年ほどにすぎない。ゴール後に倒れ込むほど死力を尽くす姿が印象的だが、強じんな体力に加え、逆境から生み出された精神力たるや感心するばかり。しかも驕(おご)ったところもない▼「大会が練習」みたいなものと言うに及んでは、専門家の常識も形無し。12月も4日(福岡国際)と18日(防府読売)に連続出場した大会で日本人一位。来年はオリンピックの年だが、こうした選手こそ出場させるに相応しい。それなりの実績もある。(A)


12月30日(金)

●消費税をめぐり離党者が出るなど混迷している民主党。野田佳彦首相はインドの産業大動脈構想に3500億円の拠出を約束した。そんな金はどこにあるのか。消費税が「上がったつもり」で年金の財源にしようというのに…▼あれを買った「つもり」で貯金する…。お茶がお酒のつもり。たくあんが玉子焼きのつもり。貧乏「長屋の花見」は何でも本物のつもりで頂くのが大家と店子の約束。そのうち「みんな先送りして解決したつもり」「財政立て直したつもり」と言う「つもり」か…▼震災から「復興したつもり」、原発事故は「収束したつもり」とまで言い出しかねない。貧乏長屋の花見ならお茶で酔っ払う芸も許されるが、「消費税が上がったつもり」の交付国債は「とらぬタヌキの皮算用」ではないか。「つもり」が「つもった」先には…▼すきま風が吹く仮設住宅で正月を迎える住民は怒り心頭、とても「豊かなつもり」にはなれない。大晦日に除夜の鐘を撞いて煩悩と四苦八苦を吹き飛ばすしかないのか。ちなみに寛永寺の除夜の鐘が初めて放送されたのは84年前▼家にいながら由緒ある寺の鐘の音が聞けると評判は上々だったという。ついでにNHK紅白歌合戦もこの年、有楽町の日劇から公開放送された。除夜の鐘を「撞いたつもり」、紅白を「聞いたつもり」…。「つもり」政策に、お年玉を「もらったつもり」で駄菓子屋に飛びこむ子どもが出てくるかもしれない…。(M)


12月29日(木)

●東日本大震災から9カ月余り。救援物資は被災地に行き渡っていることだろう。そんな安易な思い込みが、関係者の一言で吹き飛んだ。確かに生活雑貨や飲料水などは現地のスーパーなどに並ぶようになった。しかし、一方では「それを買う金に困っている住民も多い」という▼福島県相馬市で被災者支援の活動を展開する「NPO法人相馬はらがま朝市クラブ」が、支援を求め函館市を訪れた。メンバーは普段、朝市開催に加え、仮設住宅をリヤカーで回って物資を届けている。1500世帯あるというから大変な苦労だ▼公平に物資を配ることの難しさにも直面した。大勢が詰め掛ける中、多くもらい過ぎた住民が隣の住民に分け与える。それを見た同クラブ理事長の高橋永真理事長が男泣きに泣いた。住民互助の精神は、全国から訪れる支援団体の関係者を常に驚かせる▼津波と原発事故の影響で漁ができない日が続いている。原料の魚がなければ水産加工業者も仕事にならない。関係者は「経済の津波」と嘆く。幸い、相馬で捕れる魚の種類は函館近海のそれに似ている。今回、函館朝市で買い付けた魚は、相馬における経済復興の第一歩になるという▼松前町の水産加工振興協議会が、松前漬けの原料となるスルメとコンブを相馬市に贈った。同クラブが「相馬版松前漬け」の商品化に乗り出した。自立を促す松前の計らいは、一つの支援の形である。(K)


12月28日(水)

●北海道新幹線の札幌延伸が近く認可され、来年度に着工する運びとなった。JR新函館(仮称)—函館の経営分離という、大きな代償を払っての決定だ。より大きな目標の実現のために、函館が犠牲になっていいのかという声が根強い中、工藤寿樹市長は政治判断をした▼誰だってJR北海道に運行してもらいたいと思っている。だが、JRはそれをしないと言っている。そして例えるならば、王手飛車取りのごとく、新幹線か在来線のどちらかを捨てろと迫る。両方残したいが、そういう選択肢はなかった。そこが今回の問題の本質だろう▼市と函館商工会議所は最後まで対立した。しかし、札幌延伸が固まったからには、地域の発展のために再び手を携えるべきだ。官民一体の取り組みを抜きに道新幹線の着工が実現しなかったことを考えれば、その必要性は明白だろう▼4年後には新青森—新函館が開業する。現在の渡島大野駅に降り立った乗客を、いかにスムーズに函館や他地域に迎え入れるか。そのために国や道、各市町は道路網の整備や観光拠点づくりを進めている▼目指すのは、乗客が止まって、訪れる街。24年後とされる札幌延伸後には、函館近辺を新幹線で通過する乗客が間違いなく増える。これを新函館駅で降車させ、呼び寄せる街づくりができれば、函館の将来は決して悲観ばかりでない。その魅力や実力は十分ある街なのだから。(P)


12月27日(火)

●全国の高速道路が無料になったらマイカーで別府温泉に行こう、子ども手当が出たら孫を塾に通わせよう—期待していた民主党のマニフェスト(政権公約)が総崩れとなった1年だった。マニフェストには実現できないことを書いてはいけないのに…▼マニフェストに掲げたことは国民に対する約束ごと。受けのよいことばかり書いて、いざ実践となると「予算がない」。政権を奪回する前は「無駄遣いを削減したら16兆円から20兆円の財源はできる」と豪語していたのに…▼その一つ、復興財源に充てられる国家公務員給与削減案が見送られ、さらに「コンクリートから人へ」の理念の象徴だった「八ツ場ダム」建設中止が建設再開へと公約を撤回した。八ツ場ダムを突破口に見直し対象の全国のダム事業も継続が続出する懸念も▼借金漬けの“ドロ舟”に乗った夢を見た。来年度の政府予算案は国債発行が税収を上回る3年連続の異常事態で国の借金は1000兆円を超える。そのツケは子や孫に回ってしまう。身を削って財政再建を目指す意気込みはどこへ行った…▼お年玉は小学低学年で2350円とか。子どもの健やかな成長を願う「龍」の凧を買って、悪霊が嫌がる龍が風を切る音を聞かせよう。年金が減らされれば孫に小遣いもやれぬ。「ユーロ危機」の警告を受け止めて、税金の無駄遣いをなくするマニフェストの原点に戻って、新年を迎えたい。(M)


12月26日(月)

●失政の付けは「民」に。あまりにもよくある話だが、押し付けられる「民」はたまったものでない。今、懸案とされている65歳までの再雇用義務化も、その典型的な一例。政府は来年の通常国会にも改正法案を提出しようとしている▼定年は大方60歳だが、気力や体力はまだまだ現役世代。だから定年65歳時代という捉え方も説得力があり、再雇用の道を開くべきという考えはいわば当然。ただ、純粋にそうしようというのなら少しも異論はないのが、裏があるから素直になれない▼義務化は政治の付けそのものだから。何を隠そう、のっぴきならない現実を招いてしまった年金財政の危機である。支給開始年齢の繰り下げと支給開始までの雇用義務化は、いわばその帳尻あわせに過ぎない。何とも楽な政治というほかない▼経済が低迷を続ける中で「民」はそれぞれ個別の事情を抱えている。特に経営状態。非正社員の割合が過去最高の34%と厚労省が発表したばかりだが、それも厳しい経営環境の中で人件費を抑制しようという表れ。かと言って、将来を考えると、従業員の年齢バランスも無視はできない▼そもそも雇用問題は画一的な尺度になじまない。国が税収か何かでフォローするというのならともかく、鍵はあくまで「民」が握っているのだから。法の改正は65歳までの雇用実現とイコールではないし、国も100%保証すると言ってはいない。(A)


12月25日(日)

●国民的アイドルに上り詰めたAKB48、とどまるところを知らないK—POPブーム、震災支援に多くのアーティストが尽力、話題豊富だった2011年の芸能界。その中でも特に活躍ぶりが光ったのが、わずか7歳の女優・芦田愛菜ちゃん。今や彼女の姿をテレビの画面に見ない日はないと言ってもいいだろう▼大晦日には、歌手にとってあこがれの舞台である紅白歌合戦に、鈴木福君とのコンビで史上最年少で出場。おそらく年末年始の特番にも引っ張りだことなることだろう▼これまでも時代を象徴する子役スターは数多く存在してきた。古くは天才の名をほしいままにした美空ひばりに始まり、「おしん」の小林綾子、「北の国から」の吉岡秀隆、「家なき子」の安達祐実、「渡る世間…」のえなりかずきなど、思いつくだけでもこれだけ挙がる▼いつの時代も子役たちの屈託のない笑顔は、社会に明るい光を照らしてくれる。その一方で「子役は大成しない」というジンクスから、早くも愛菜ちゃんの将来を心配する声も出始めている▼確かに、子役時代と成長後のイメージギャップに悩み芸能界を去った人は少なくない。しかし前述の子役出身者の多くは、今も個性派俳優として活躍を続けている。大事なのは、周りの大人たちが長期的展望で彼女の成長をサポートできるかどうか。もちろん我々視聴者も温かい目で見守っていきたい(U)


12月24日(土)

●「何をいまさら。驚くには値しない。当然でしょう」。冷ややかな言葉を浴びせられるに違いないが、それにしても…。大学の受験料の話である。唸ったのはインターネットからの出願だと激安のネット割引が出現したというから▼今月初めの全国紙で報じられていた。確かに航空機などの手配をはじめネット割引は珍しくもなければ、知らず知らずのうちに生活の中へ入り込んでいる。まさに否定できない現実であり、そのぐらいの認識はネット音痴な団塊の世代でも持ち合わせている▼だが、大学の受験料まで、その割引率も尋常でないときては…。紹介されていたある大学の場合、来年が2年目ということだが、1回の受験だと5000円引きで、センター試験など3回分を組み合わせると最大7万円が2万5000円という▼受験生は歓迎し、大学も事務処理が軽減される、それは分かる。結果も大学の読み通りだったようで、初年目受験者の9割がネット出願し、受験者が3000人も増えたそう。これだけ受験料を割り引いても、受験者が増えれば御の字ということである▼ネット出願は当然の流れとして、消せないのが大幅な割引率への疑問。デフレとはいえ、大学である。「正規の受験料の重みをどう考えているのか」。そう問いたくなるのだが、そんな思いを抱くこと自体が時代遅れと言われれば、もはや言葉はない。(A)


12月23日(金)

●函館ロケの映画「キッチン」(1989年)をDVDで見た。市電や西部地区の町並みが幻想的に映え、絵画のように美しい。森田芳光監督が函館をロケ地に選んだ理由が分かったような気がした▼その2日後に森田監督の訃報を聞いた。函館を慕う監督の強い思いが、市民の1人に古い映画を見させた—。個人的な感傷が偶然を必然に変えることだってある。函館を舞台にした森田作品は多い。急死の直前に見た映画はそのうちの1本だった▼84年の「ときめきに死す」を皮切りに、「キッチン」「海猫」「わたし出すわ」と続く。どの映画を撮る時も、森田監督は函館市民との触れ合いを大切にしたという。「兄のような存在」「地元の人を大事にしてくれた」。本紙記事で紹介した市民の声からは、一映画監督と住民という関係を超えた絆の強さが伝わる▼森田監督ばかりでなく、函館は映画、テレビドラマ、コマーシャルのロケ地に選ばれることが多い。はこだてフィルムコミッションのホームページがその作品群を紹介している。興味のある方は一覧をお薦めしたい▼最近では、映画「海炭市叙景」、NHKドラマ「坂の上の雲」などが話題になった。撮影地に函館の名が浮上するのは、発信者が長年積み重ねてきた実績と信用があるからだ。森田作品はその先駆的な存在だった。死を悼む言葉はいろいろだが、森田監督には「ありがとう」が一番似合う。(K)


12月22日(木)

●1粒の涙…。いや、かつて「葬儀には茶碗一杯の涙を流すものだ」と聞いたことがある。茶碗一杯の米粒は3250粒くらい。喜怒哀楽で流す1粒の涙は茶碗いっぱいになり「煩悩の道」から立ち直らせてくれる力がある▼50日以上も姿を見せなかった北朝鮮の名物女性アナが「革命に一生をささげた」と金正日総書記の訃報を涙で報じた。デパートの店員はエスカレーターにすがって号泣、銅像の前では伏して号泣、子どもたちも拳で地面を叩いて号泣…▼号泣の映像が世界に流れた。北朝鮮に詳しい人は「泣くふりをしないと連行されるから…」「国営テレビで悲しむ人民のほとんどは演技」という。嘘泣きをして、悲しむふりの瞳から嘘の涙を流す演技。あわれで気のどくな光景▼総書記の父、金日成主席は「すべての人が等しく白米の飯と肉のスープを食べ、絹の服を着て…」と呼びかけたが、二代目は核実験強行などで危機を演出する「瀬戸際外交」「先軍政治」で世界を揺さぶり、人民から「白米の飯」を取り上げ、トウモロコシすら与えず、飢餓に追い込んだ▼北アフリカと中東の独裁国家が民衆の抵抗で次々倒れた。北朝鮮の総書記は列車の中で心筋梗塞で倒れた。横田めぐみさんら拉致被害者を帰さぬまま。後継者の三代目は拉致被害者にまで「号泣」を強要するな。親たちが、これまで流した悲しみの「涙の粒」は茶碗何杯分になるだろう。(M)


12月21日(水)

●フグを買って来て、刺身や鍋を楽しみたい。だけど毒が怖い。さてどうするか。落語の世界ならともかく、こんな思案をする人は今どきいない。「おいしいけれど危険」の代名詞は昨今、生の肉や内臓に譲った感がある▼今春、生の牛肉を使うユッケで4人の命が奪われた。腸管出血性大腸菌「O111」が原因だった。そして今、規制の対象候補として俎上(そじょう)に載っているのが、牛の生レバー(肝臓)だ。発症時の原因菌は同じく大腸菌の「O157」。番号の違いは菌の発見順に過ぎず、最悪の場合は人命をも奪うという危険性に変わりはない▼厚生労働省は生レバーの提供を禁止するかどうかの検討に入った。全国の食肉衛生検査所で調査した結果、173頭中2頭で肝臓内部からO157を検出したという。決して低い確率ではない▼日本医師会によると、O157の感染力は非常に強く、体内に入った菌の数が比較的少ない場合でも病気を引き起こす。特に、子どもやお年寄りは要注意という。「子どもの大好物だから」と生レバーの刺身などをむやみに与えるような行為は厳に慎みたい▼私事になるが、数年前までは飲食店で普通に“レバ刺し”を注文していた。無知を反省しつつ、規制の動きがこれまでなかったことへの不信が募る。「規制は食文化の否定」などといった声はいったん棚上げし、安全最優先の論議に期待することは言うまでもない。(K)


12月20日(火)

●自分の命はどこまでさかのぼれるのか。2人の親がいて、2人に必ず2人ずつ親がいて、4人の祖父母が…。10代さかのぼると合計2046人、30代さかのぼると総計21億4700万人の出会いがある▼もっとさかのぼったら、ものすごい数。1人でも欠けていたら…。自分の命の背景には不可思議な「無限の命」がある。「この命は宇宙からきたのだ」という説を裏付けるような天地創造と人類創造のナゾの粒子が存在する可能性が発表された▼運動不足になる冬に入り、体重が増えて体の動きが鈍くなった。逆に「動きが遅くなるから重くなるのだ」という。物理学では宇宙ビッグバン直後、空間を満たした「ヒッグス粒子」が、光速で飛び交う素粒子にからんで遅くして「質量」を持たせた▼京都大なども参加する国際研究チームがスイスの世界最大の円形加速器で素粒子を衝突させる実験をしたところ、理論上想定されていた存在確率が98・9%だった。存在確認まではあと1年ほどのデータ蓄積が必要という▼物質を小さくした粒が素粒子。その素粒子に質量を与えたのがヒッグス粒子。素人では想像を超す話だが、広大な宇宙も、小さな地球も、さらに小さな人類もヒッグスのおかげで存在するのか。この「神の粒子」がなかったら、21億の1人でも出会っていなかったら…。やはり「無量寿の命は宇宙からきた」のだ。(M)


12月19日(月)

●この国に本当の「政治家」はどのぐらいいるのだろうか。国会の姿を見ていると、こんな素朴な疑問が頭をもたげてくる。ほとんどが「政治屋」の類では、と言っては語弊があるのかもしれないが、そんな思いを払拭できないのも現実▼「政治家」と「政治屋」。漢字が一文字異なるだけだが、その持つ意味は天と地ほど違う。インターネットで検索すると「政治家」は国の繁栄と国民の幸せを考え、その実行に努力する人で、「政治屋」は人気を得ることに力を注ぎ、自分の利益を考えている人▼先日のテレビ番組で、民主党の藤井裕久税制調査会長(元財務相)も、歯に衣を着せずに語っていた。「政治家」は次の時代を考えて行動する人、「政治屋」は選挙ばかりを考えて行動する人、と。その違いが分かった上で、改めて冒頭の質問だが…▼答えはやはり「残念ながら」か。大震災の復興はもとより内政、外交とも、将来に向けて課題は山積状態。財政は大丈夫なのか、年金などの社会保障はどうなるのか、国民生活に限っても先々の不安は高まるばかり。なんとか今を取り繕ったにしても…▼付けは今の子供世代に回すことになりはしないか。増税を喜ぶ人はいない。だが、付けを後世に押し付けるのは忍びない。大事なのは、ごまかさず、先送りしないこと。現実はどうだろうか、これまでにも増して「政治家」が必要とされている。(A)


12月18日(日)

●年の瀬になると、新聞やテレビは決まって「今年1年の出来事」を企画する。「重大ニュース」「10大ニュース」などとも言う。本紙も例外ではない。1年分の新聞をひっくり返し、担当者が選定作業に追われている▼しかし、今年はいつもと様子が違う。言うまでもなく、3月11日に発生した東日本大震災の扱いの難しさである。言葉は悪いが、震災を「別格」とすることに異論はあるまい。甚大な被害を出した函館・道南もしかり。では、それ以外のニュースは—。思い起こそうとしても、未曾有の大災害の前にどれもがかすんでみえる▼明るい話題がなかったわけではない。むしろ、例年より朗報は多かった。ミシュラン旅行ガイド日本編で函館山からの眺望が「三つ星」に輝いた(5月)。函館市縄文文化交流センターのオープン(10月)や、道央自動車道落部—森間の開通(11月)なども記憶に新しい▼忘れがちだが、函館は今年、素晴らしいスタートを切った。1月5日に東京の築地市場で行われた初競りで、戸井産のクロマグロが1本3249万円の史上最高値で競り落とされた。あの時の驚きと誇りをいま一度思い返してほしい▼震災に負けるな—。地元住民の心を温かくしたニュースを振り返り、それを地域活性化につなげることもまた“復興”の一つの方法だ。この1年を明るい気持ちで締めくくることは、飛躍の1年への始まりでもある。(K)


12月17日(土)

●今月2日の新聞紙面に、こんな解説見出しが載った。「証拠開示が扉開く」。これだけでは何のことかと訝(いぶか)る向きもあろうが、法曹界はもとより社会的に持つ意味は大きい。公正な裁判にかかわることだから▼「証拠の開示によって、新たな事実が現出されて、その結果、再審開始が導かれた」。担当弁護士もこうコメントしている。ことは今から25年前に福井市で起きた中三女子生徒殺害事件。表に出ていなかった供述調書などが開示されて、新たな展開に▼一般論として、不利になる証拠は往々にして隠されがち。そこに冤罪を生む要因があるとの指摘もあり、この裁判もそうだが、裁判所が開示を勧告して開示が実現した。その証拠が今回の決定(再審開始)につながった、とあっては、看過できない▼証拠の開示問題、実は当社も経験している。公取委が法に規定のない裁量で証拠の全面開示を拒否したため起こした行政訴訟。地裁、高裁と勝訴し、それが本筋の訴訟を動かす原動力の一つになった。ちなみに公取委が上告した最高裁も同じ判断だった▼それほどに重みを持つが、刑事裁判となればなおさら。なのに現状は…。させるか否か、その判断は裁判所に委ねられているが、必要なのは法的な後ろ盾。「法制化の議論、検討を急ぐべき」。この事件の再審開始決定も、そう主張しているように聞こえてくる。(A)


12月16日(金)

●「漁師さんの森づくり」「森は海の恋人」などの著書で知られる宮城県気仙沼市の漁師・畠山重篤さん。無関係にも思える漁師と森を結び付けるものは何か。先に放送されたテレビ番組がその答えを教えてくれた▼NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」は、カキ養殖名人と呼ばれる畠山さんの半生を追う。赤潮の発生を防ぐために1人で始めた植林が、今では地域を挙げた取り組みに発展。その成果が、東日本大震災による養殖被害から立ち直る契機にもなった。「森は海の恋人」と言い切る理由がここにある▼漁師は海と川、さらに森との深い関係を経験的に知っているという。伐採で衰退した山を蘇らせる。決して容易なことではない。気仙沼市のような市民運動への転換に加え、息の長い取り組みが何にも増して求められる▼道産苗木100%で渡島半島のブナ林を再生しようという試みが、行政機関の間で進んでいる。本紙の記事では、成功すれば都府県の広葉樹林再生のモデルになると伝えた。乱伐の反省から植樹、そして“育樹”へ。森を一からつくり直す取り組みに遅いということはない▼これとは別に、函館市女性センターは「函館どんぐり銀行」への協力を呼び掛けている。子どもたちが集めたドングリで森を育てるという活動だ。“通帳”にある「環境預金」の文字が目を引く。各種運動が相乗効果を生み、元気に芽吹く日が待ち遠しい。(K)


12月15日(木)

●自公政権は退場させたが民主党もひどく、いよいよ我々の出番ということか。次期衆院選で共産党は2009年の前回選挙の戦略を見直し、300小選挙区すべてで候補者を擁立する方針を示した▼共産党は前回、選挙区候補を152人に絞り込み、比例選に集中する戦略を取った。しかし結果は小選挙区全敗、比例も現有議席の維持にとどまり、伸び悩んだ。批判票の受け皿となり、選挙区と比例候補が連動して得票を押し上げる従来の戦いが十分できず、政権選択の中に埋もれた▼前回は道8区でも選挙区候補の擁立を見送り、党函館地区委員会は「民主党を応援するわけではないが、自公政権の退場を願う有権者の気持ちは健全」と、支持者が民主に投票することもやむなしとした。その結果、民主党の逢坂誠二氏は自民党と無所属の2候補に圧倒的な差をつけて当選。共産票の多くが逢坂氏に流れたことは想像に難くない▼そして今回、志位委員長は「国民は自公、民主両政権を体験し、両方に怒りと批判を募らせている」と一転。民主党と全面対決する方針を示した。政権交代後も、沖縄、震災、原発、年金、増税と確かに共産党の攻めどころは満載だ▼与党への失望から共産党への期待が高まっているといつも声高に言うが、近年は低迷が続いている。本当に待望されているかは選挙結果を見なければ分からず、ここで存在感を示せるか注目したい。(P)


12月14日(水)

●ズル休みを取る時、どんな言い訳を考えますか。あるサイトには「お腹の調子が悪い」「ギックリ腰気味」など、有給休暇がなくなったら「妹が病気で…」「おばあちゃんが亡くなった」などを挙げている▼先日、米国で休みがほしくて、まだ元気な母親の訃報を新聞に掲載して忌引をとった45歳の男が逮捕された。記事を読んだ親類が新聞社に問い合わせて発覚、母親も新聞社に出向いて健在ぶりを証明したという▼日本でも「親類が死んだ」と職場を休んだ公務員が懲戒処分になったが、逮捕の例はない。映画「釣りバカ日誌」の浜ちゃんも親類全部を忌引にしたっけ。「おばあちゃんは何回死んだ」と突っ込まれるような後味の悪い言い訳はやめた方がいい▼米国の大半の雇用者は病欠の言い訳を信用しているが、うち3割は電話で確認、医者の証明を提出させているという。ボウリングの穴から指が抜けなくなった、ゴミ箱に足が挟まった、湖でボートの燃料がなくなった…こんな言い訳も▼かたや、2大臣の問責決議が可決された国会は再延長を断念して早々と“冬休み”に入った。公務員人件費を7・8%引き下げ、年間2000億円を復興財源に充てるという国家公務員給与削減案などを先送りして。冬休み入りの言い訳は「2大臣の首が大事」だからか。前年より多いボーナスもすんなり受け取った。世相を映す漢字「絆」が嘆いている。(M)


12月13日(火)

●「のんびり、ゆっくりと旅行をしたい。日本一周や海外にも。できれば客船や寝台列車で」。子どもも育った、家のローンも払い終えた…定年で退職する人の多くが描く第二の人生への思いで、実際にそんな旅行を楽しんでいる人も少なくない▼そこに見え隠れするのは長年、速い、便利の中に身を置いてきた気持ちの裏返し。「もう急ぐ必要はない」。道外への旅行の足として航空機と新幹線がしのぎを削っているが、それも東京を中心とした主要路線でのこと。それも札幌中心である▼函館・道南はさらに制約が多い。海路は青森の2港、陸路も東京方面だけ。北陸の富山、石川、福井などを経て大阪までとなると、青森で寝台特急「日本海」への乗り換えを伴う。札幌と大阪を結ぶ寝台特急「トワイライトエクスプレス」は、五稜郭駅まで来ていながら停車だけ▼現在は「日本海」が準直通列車としての役割を担っている。覚えていようが、その「日本海」(現青森—大阪)は2006年まで函館駅の発着だった。それが青森駅発着となって、来春のダイヤ改正で遂に廃止されるという。空路も、海路もない。北陸が遠くなっていく▼函館・道南には出身者も多い。少なからず観光需要もある。とすると、「日本海」の廃止は函館にとって無関係の話でない。改めて五稜郭駅での「トワイライトエクスプレス」の乗降を求めたい。新幹線開業後は改めて状況判断するとして。(A)


12月11日(日)

●新生プロ野球チーム、横浜DeNAの初代監督に、「絶好調男」こと中畑清氏の就任が決まった。その明るいキャラクターとガッツあふれるパフォーマンスでジャイアンツの中心選手として人気者だった中畑氏。恩師である長嶋茂雄氏のように、ドラマチックな野球で新風を巻き起こしてほしい▼ところで当初、DeNAの監督候補には工藤公康氏の名前が挙がり、ほぼ就任決定と見られていた。しかし、高田繁GMとの考え方の相違によって白紙になったとされている▼実は工藤監督誕生を熱望していたのは、DeNAのフロントサイドと言われている。すでに現場で実績を重ねているソフトバンクの秋山監督、西武ライオンズの渡辺監督に続き、西武黄金時代のスーパースターがまた一人監督として新たな道を踏みだすということでも、大きな注目を浴びたのは間違いない▼しかし、高田GMが工藤氏が要望する人事案を却下したことで、工藤氏は監督就任を断念することに。結果的にはフロントが希望した人事よりGMの判断が優先されたことになる▼ここで疑問に思うのは「GMというのはフロントより偉いのか?」。この答えは、チームの人事権においては「イエス」である。それだけGMには大きな権限と責任が与えられているのだ。ただし日本には、GM制度を採用していながら、最終決定権はフロント上層部にあるという不思議なチームも…。(U)


12月10日(土)

●知内町が元気だ。決して知名度の高いまちではない。演歌歌手・北島三郎さんの出身地というほかは、町外にアピールできる材料が少なかった。ではなぜ元気なのか。苦労して育てた“知内ブランド”のニラが、2年連続で販売額10億円を突破した。気勢が上がらないはずがない▼同町のニラ生産は1971年に始まる。携わった農家はわずか8戸。寒さの厳しい北海道にニラは不向き、という大方の予想が当たった。以来、ビニールハウスでの寒さ対策や使用種の品種選定といった苦労が長く続く▼それも今では、「北の華」のブランド名で首都圏にまで販路を拡大。同町だけでなく本道の特産と呼ばれるまでに成長した。その中核となる知内町ニラ生産組合が創立40周年の節目を迎えた。わが子を見守るように精魂を込めた生産農家の感慨はひとしおだ▼元気なまちは、ほかにもある。特産のタラコで知られる鹿部町。このタラコを採用した中華料理メニューが、全日空の国際線の機内食で提供されている。さらに、函館産のガゴメコンブやブランド米「ふっくりんこ」なども全国進出を狙う▼「共同作業を通じて仲間づくりを育み『人の和』による組織活動を行います」。知内町ニラ生産組合が掲げる理念は、“新特産”を売り込む関係者共通の目標でもある。「おいしさ」を育てる気風が芽生え、それがやがて人の和に。元気なまちはこうして生まれる。(K)


12月9日(金)

●漢字の「幸」は象形文字の「手枷(手錠)」からきている。首かせ、胴かせ…一番緩いのが手枷だった。「ほかのに比べれば手枷のほうがましで、しあわせだな」ということで、危険から免れることもあって「幸」となったという▼幸福度世界一のブータンに見習ったのだろうか、内閣府の経済社会総合研究所が幸福度の“物差し”試案を作った。生活費の不安、男性の子育て参加への女性の満足度、困ったときに助けてくれる人の有無、放射線量への不安など、物差しの項目は132も▼意外と幅広く、子どもの貧困率、うつ、DV件数などの項目も含まれており、国内総生産が世界3位なのに、リスク面も少なくない。モノがあふれているのに、ブータンのように「心の中の竜」は大きく育っていない▼法政大の研究グループがブータンの幸福度を参考に「生活・家族」「安心・安全」などを分析した「幸せ度ランキング」では、なぜか福井、富山、石川の北陸3県がトップ3に。幸福度は地域性によっても見方が違ってくるのだろうか▼象形文字によると、思いもよらぬ運に恵まれたことから、手枷が幸運・幸せへと広がっていった。辛いことがあってこそ、健康や環境を重んじてこそ、幸福度は倍加する。地域にも生かせる幸福度指標を作ってほしい。クリスマスマスファンタジーの「幸せを呼ぶモミの木」に感動し、家族・絆・希望…年の瀬に自分の幸福度を見つめ直そう。(M)


12月8日(木)

●主人公は暴れん坊の柔道家。師匠に一喝され、何を思ったか、凍える池に飛び込む。水に浸かりながら見た満月とハスの花に感動し、柔道家そして人間として目覚める。黒澤明監督の映画「姿三四郎」の一場面だ▼柔道は精神に通じる。畳を下りても自らを律し、高めることが求められる。講道館柔道の創始者である嘉納治五郎は「精力善用」を説いた。心身の力で相手をねじ伏せたりせず、世の中のために使う。この実践があってこそ、日本の柔道家たちは世界の後進から尊敬されてきた▼五輪男子柔道の金メダリスト、内柴正人容疑者(33)が、教え子の女子柔道部員に乱暴したとして、準強姦(ごうかん)の疑いで逮捕された。本人は否認しているようだが、全日本柔道連盟の一部役員は「火のないところに煙は立たない」と聞く耳を持たない▼連盟は同容疑者の黒帯はく奪、柔道界永久追放も検討中という。容疑の段階での拙速な対応が、後に禍根を残すこともある。ただ、柔道関係者の憤りは素人目にも理解できるし、「精力善用」の精神が不動であることの一つの表れとも取れる▼「スポーツ選手は聖人君子たれ」とは言わない。その時代に合った選手像があってもいい。ただし、後に続く子どもたちはその背中を常に見ている。函館・道南にも大勢の柔道少年・少女がいる。その目が見据える背中の主は、やはり三四郎であってほしい。(K)


12月7日(水)

●素晴らしい、それでいいと感じ、思っていたことが、いつしかそうでなくなる。誰もが経験のあることだが、背景にあるのは物にも心(気持ち)にも共通する価値観の変化。何か違和感を覚える、その変化は現状の否定から始まる▼政治意識も然り。11月の大阪知事・市長選挙で垣間見えたのも一つの断面。「既成政党に政治理念がない」。橋下代表にこう言わしめた地域政党「維新」の旋風が吹き荒れた特殊事情があったにせよ、既成政党の否定という側面は否めない。しかも、この流れは今に始まったことでない▼無党派層(支持政党なし)という表現は日常的に使われ、今や第一党の存在。その言葉が最初に使われたのは1995(平成7)年の東京、大阪知事選と言われる。青島幸男氏と横山ノック氏に既成政党候補が敗れた選挙といえば年配者なら思い出すはず▼「既成政党に期待を持てない、新しい流れを」。このあたりを機に既成政党の支持率は下降をたどり、この20年ほど政権政党とて支持率は30%以下。11月の調査(NHK放送文化研究所)でも民主、自民とも20%そこそこなのに対し無党派は常に50%前後▼既成政党離れも極まれりの感が無きにしも非ずだが、裏返すとそれだけ政治不信が大きいということ。税と年金、沖縄の問題など内外に課題が山積している。だが、先行きに抱える不安…無党派層を安心させる流れは少しも見えてこない。(A)


12月6日(火)

●師走。先生が走る、お坊さんが走る…。重い雪が降る商店街で自転車に乗った高齢者が雪にハンドルをとられて歩行者と接触した。悪天候の冬に自転車で走るなとは言わないが、やはりマナー違反ではないか▼これまで自動車と自転車や歩行者が交通事故を起したら大半は自動車の運転手が罪に問われた。先ほど、大阪で起きた交通事故を巡って自転車に乗っていた男性に禁錮2年の実刑が言い渡された。男性は「どうして俺が悪いのか」と不満げだった…▼男性は交通量の多い国道を自転車で横断。これを避けようとした自動車が左車線に回避したが、後続のタンクローリーが歩道に突っ込み、2人が死亡した。裁判では自転車の横断に問題があったとされ、男性が起訴された。他の運転手は不起訴▼歩行者や自転車は横断歩道を渡るのが交通ルール。このところ、通行が認められていない歩道を猛スピードで走ったり、携帯電話を使いながら走ったり、2人乗りで傘を差したまま走ったり…。マナー違反が目に余る。先の男性は反省したのか控訴を断念したという▼最近はブレーキの効かないピストという競輪用自転車が増えているようだ。市販車のブレーキを故意に外す若者もいる。もちろん、ノーブレーキは道交法違反。冬の北海道では師走のマチを自転車で走る機会は少ないが、実刑を言い渡されない乗り方をお願いしたい。(M)


12月5日(月)

●長万部町の公式キャラクター「まんべくん」が、「ネット流行語大賞2011」(実行委主催)の10位に入った。ちなみに金賞は、震災後のテレビCMで頻繁に流れた「ポポポポ〜ン」。選考基準など詳しいことは知らないが、まんべくんのランク入りは意外だった▼まんべくんはツイッター(短文投稿サイト)で人気者になった。今夏の戦争発言で一時は“失脚”したが、11月には晴れて活動を再開している。ただし、ツイッターは当分お預け。着ぐるみでの活動に制限され、持ち前の“毒舌”復活を望むファンからの声も根強い▼まんべくんは、ツイッターで名を上げた。大げさに言えば、インターネットが生んだ新時代のキャラクターである。だからこそ流行語にも選ばれた。問題発言は確かに反省材料だが、その後の知名度アップを考えると怪我(けが)の功名という側面も見逃せない▼では、話題にさえなればどんな言動も許されるのか。答えは否である。町の公式キャラクターをうたうのであれば、その発言に責任が生じるのは当然。町側の認識の欠如が“謹慎”という今回の事態を招いた▼ツイッターは札幌の企業が運営していた。特定の層にせよ、熱烈な支持者を獲得し、長万部の名を全国に広めた手腕は評価していい。今度はプラスイメージの流行語として、まんべくんが再び登場することだってあるはず。ツイッターの再開を待ちたい。(K)


12月4日(日)

●日本では北海道にのみ生息する絶滅危惧(きぐ)種の「シマフクロウ」。世界最大級のフクロウで、大きな羽を広げた雄姿は「森の番人」にふさわしい貫禄だ。貴重なシマフクロウを守り、育てよう—。こうした住民運動が生息地域の一部で本格化している▼サッカーJリーグ2部(J2)のコンサドーレ札幌が、4年ぶりの1部(J1)昇格を決めた。同チームのマスコット「ドーレくん」は、シマフクロウをモチーフにしている。この“地域密着”のシンボルが大きく羽ばたいた。道産子の1人としてうれしくないはずがない▼コンサドーレはJリーグ発足以来、J1とJ2を行き来する浮沈の歴史に甘んじてきた。J1時代に札幌ドームの試合を観戦した。声を枯らして応援するファンと、全力プレーでそれに応える選手たち。J2の低迷期に比べ、放出するエネルギー量がけた違いに大きい▼プロ野球の北海道日本ハムファイターズは人気、実力ともに真のご当地チームに成長した。一方、J1が舞台となる来季のコンサドーレは、ホームゲームの観客数増などが期待できる。野球とサッカーのダブルによる経済効果が楽しみだ▼コンサドーレは函館でも毎年ホーム試合を行う。チームに対する地元ファンの愛着はひとしおで、J1昇格を祝福する気持ちはどこにも負けない。“シマフクロウ”を守り育てる。地元ファンあってのご当地チームである。(K)


12月3日(土)

●この一年を一言で表現するとしたら、色々あっても「激動の年」は外せない。肝心な政治経済は今なお国内外ともに揺れ動いたまま。エジプトやリビア、チュニジアなどで民主化運動の勝利が象徴的だが、さらにユーロ圏では深刻な財政危機▼ギリシャに端を発し、イタリアなどでも現実問題に。その影響は円高となって我が国にも押し寄せ、厳しい財政運営、経済環境を強いられている。まさに政情不安であり、経済不安だが、その課題処理は来年以降へ。内政面で山積している課題も然り▼一方、社会現象に目を向けると、今年は大規模な自然災害に見舞われた年でもあった。多くの日系企業も水没したタイの大洪水もそうだが、国内では大雪、大雨、大地震…。年末年始に鳥取・島根を襲った大雪で漁船380隻が沈没、国道では千台の車が42時間も立ち往生▼9月初めには三重や和歌山、奈良県で、土砂崩れダムという新語が物語る記録的豪雨があった。それより何より3月11日の東日本大震災である。誘発された大津波は沿岸の街を次々と飲み込み、1万5800人の命を奪い、行方不明の人はなお3600人余り▼多くの人が仮住まいを強いられている。さらに東電・福島第一原発の崩壊による放射能汚染の直接、間接の被害は広がる一途。復興の動きも緒についたばかりである。ちょっと気が早いが、来年は…こう願わずにいられない。「災害のない年に」。(A)


12月2日(金)

●トラピスト修道院(北斗市三ツ石)でぼやがあった。2階客間のじゅうたんを焦がしたほか、2人の神父が軽症を負った。礼拝堂など他の建物への延焼はなかった。同修道院の歴史は古く、観光名所としても知られる。語弊があるかもしれないが、大事に至らなかった今回の事故を不幸中の幸いとしたい▼1896(明治29)年、フランス人ら9人の修道者が来日し、渡島当別の原野に修道院を開設。こうして国内最初の男子修道院となるトラピスト修道院が誕生した。その後、ホルスタイン種の乳牛をオランダから輸入するなど、道南における酪農の礎となった▼そんな矢先、同修道院の建物が火災に見舞われる。1903年3月29日。過熱した台所の煙突から天井と屋根に火が燃え移り、先人の苦労を知る施設を瞬く間に焼き尽くした▼修道者たちの落胆は想像に難くない。それでも再建は早かった。火災から5年後には新しい修道院本館が完成。チェコ出身の建築家、J.J.スワガーが設計したゴシック風の美しい建物は、今も遠方からの観光客らを温かく迎えている▼今回のぼやでは、火が出ているのを見つけた神父が消火器で消し止めたという。全焼火災の過去の苦い経験が、時代を経て教訓として生かされた。函館・道南の発展の足跡は、度重なる火災との闘いの歴史でもある。貴重な建造物は住民自らが守る。防災を再考する機会にしたい。(K)


12月1日(木)

●物があふれ、便利になるにしたがって、人間の思いは「手軽」「身近」へと走る。忙しい現代、物が身近で簡単に手に入るなら、それに越したことはない。気がついてみると、いつの間にか、その道を選び、手間ひまかけなくなっている▼こんな話を持ち出したのは、以前に聞いた話題を思い出したから。食べるまでに手がかかる果物や野菜が敬遠されがち、という話である。端的なのはレトルトや冷凍食品の台頭だが、確かに皮をむく、煮る、ゆでるは必要なし。しかも味や質も悪くはない▼そのキーワードは「手っ取り早さ」。実際に果物で売れ行きが伸びているのはバナナとキウイで、そのほかは消費が低迷気味という。確かにバナナは容易に皮がむけ、キウイは半分に切りスプーンですくうだけ。お手軽である。そんな中、バナナに関してはこんな話も▼自動販売機の登場である。定番の清涼飲料水やたばこのほか、生鮮物として地方で見かけるのは卵だが、バナナとは驚き。ニュースでも紹介されていたが、昨年、東京の渋谷にお目見えし、つい最近、東京駅の地下にも設置され、改めて話題になっている▼今の技術だから品質管理は万全。1本130円、1房390円とか。多少の割高感はあるが、朝の通勤時など、立ち食い同様のお手軽さが受け、結構利用があるという。大都会が故の需要だが、その裏からは忙しい今の時代の一つの断面が透けてくる。(A)