平成23年3月


3月31日(木)

●時間の問題とは思っていたが、大震災の発生に伴う大津波、福島第一原発の大事故から2週間余りで、それが現実となってしまった。「風評被害」。BSEや鳥インフルエンザなどが発症した際にも起きてはいたが、それと比較にならないほど事態は深刻▼懸命の注水作業などにもかかわらず、原発の状況に不安が広がるばかりだから。住民には避難を強(し)い、電力は不足し、水道にも懸念が起き始め、さらなる影響は農業に。農作物で許容基準値を上回っては出荷停止も仕方ない▼問題はそこから。仕方がないのだが、人間の心理が入り込むや…。「あの野菜が駄目なら他の野菜も」「あそこも(出荷)制限された地域と近いよ」。それがだんだん、あそこの県の作物は避けた方がいいのでは、となって、拒否反応に▼店は売れないから仕入れない。農業者は仕入れされないから収穫しても、となる。漁業者も同じだが、「安全」なのに「安心」が失われたところに置かれた、いわば間接的な被災者である。畑やハウスでは行き場のない作物があふれている▼いつまで続くのか、その不安も半端でない。国は制限や規制する権限と役割を担う。その見返りとして補償はあるにせよ、放射性物質の汚染が故に問題の根は深い。消費者の冷静な対応は必要である。だが、一方でどう「安心」を誘導していくか。それを出来るのも国なのだが、今のところ呼びかけの域を出ていない。(A)


3月30日(水)

●漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」(集英社)は、1968年に創刊された。「男一匹ガキ大将」「ハレンチ学園」…。その過激な表現を嫌う大人たちを尻目に、毎週1回の発売日を心待ちにする少年がいかに多かったことか▼あれから半世紀近くがたつ。月日がめぐり時代が変わっても、この漫画雑誌の人気は衰えを知らない。今を支える「ONE PIECE(ワンピース)」(尾田栄一郎)の連載が始まったのは97年。単行本の記録的な売れ行きなど、社会現象の一つとしてメディアに登場することも多い▼そのワンピースが、少年たちの前から姿を消した。東日本大震災の発生後、被災地の書店に雑誌の最新号が届かない。そんな時、仙台市内のある書店が1冊のジャンプを「立ち読み用」に置いた。ワンピースの続きを読んだ子どもたちが、安心した表情で帰っていく。表紙はもうぼろぼろだ▼出版社も粋な計らいをみせた。集英社がジャンプ(第15号)のネット無料配信を始め、講談社も「週刊少年マガジン」などをパソコン上で読めるようにする。回し読み用の1冊すら用意できない地域にとって、うれしいニュースに違いない▼「被災地でネットは使えない」。出版社の対応に批判的な意見もあるが、「一人でも多くの子どもたちに」という関係者の願いを素直に受け取りたい。こんな時だからこそ、主人公の冒険譚に心躍らせる瞬間があっていい。(K)


3月29日(火)

●ついに福島第1原発事故で作業員3人が被ばくする事態となった。今度の大震災で死者・不明者は2万8000人を超えたが、みんな力を合わせて懸命に立ち上がろうとしている。放射性物質漏れの中、「天罰」など“無神経な言葉漏れ”が相次いだ▼大阪府議会議長が府庁舎前面移転が見直されていることを受けて「大阪にとって天の恵みという言葉は悪いが、本当にこの地震が起こってよかった」と発言。その前に、石原慎太郎東京都知事は「天罰」と言い切った▼「津波をうまく利用して我欲を洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う。被害者の方々はかわいそうですよ」。被災地の首長は「一生懸命働いている人たちが、天罰なんて受けるはずがない」と怒り心頭▼「片言隻句をとらえて批判するのは報道として卑劣だ。福島県民に罪はない。国民全体の罪だ」とも。2人の発言は無神経で想像力を欠いた言葉。「人は仲間に支えられることで困難を乗り越える。生かされている命に感謝し、全身全霊でプレーします」。センバツの選手宣言を見習え▼「乳児に飲ませるな」「代わりの水がないなら飲ませてもいい」…「飲ませても飲ませなくてもよい」ことか。あいまいな指示が母親たちを混乱させる。岩手県の避難所で小学生が「肩もみ隊」をつくった。気持ちよさそうに目を細めるお年寄りと、子どもたちの笑顔が勇気を与えてくれる。がんばろう、日本。(M)


3月28日(月)

●春の高校野球、甲子園球場で熱戦が繰り広げられている。大会のたびにドラマが生まれ、感動を与えるのは、ひたむきな姿勢がストレートに伝わってくるから。東日本大震災直後の今大会は、被災者を思いやる気持ちが加わっている▼被災地同士の対戦もあった。青森県の光星学院と茨城県の水城高校(25日)。試合もさることながら、真摯な態度に胸を打たれた。両校の主将は試合後、こう語っていた。「この大変な時に出場できる環境をつくってくれたことに感謝したい」▼宮城県の東北高校は、直前なのにボランティア活動を行ったという。開会式の選手宣誓(創志学園主将)も、多くの人の胸を熱くした。「私たちは16年前、阪神淡路大震災の年に生まれました。今、東日本大震災で多くの尊い命が奪われ、私たちの心は、悲しみでいっぱいです」▼「被災地ではすべての方々が一丸となり、仲間とともに頑張っています。人は仲間に支えられることで、大きな困難を乗り越えることが出来ると信じています。私たちに今できること。それはこの大会を、精いっぱい元気を出して戦うことです」▼「『がんばろう!日本』。生かされている命に感謝し、全身全霊で正々堂々と…」。被災地では、身内を亡くし、悲しみや辛さ、将来への不安を胸にしまって頑張っている高校生らの姿がある。被災地から、甲子園から頼もしいメッセージが次々と。そこに日本人の底力が垣間見える。(A)


3月27日(日)

●統一地方選の皮切りとなる道知事選が告示された。東日本大震災の傷口が生々しい中での選挙戦。各政党による選挙活動の一部自粛…。異例づくしの展開に、関係者の戸惑いが募る▼その懸念が、早々と表出した。道内被災地の復旧・復興、道防災計画の見直しなどが争点の一つとして浮上するのはいい。気になるのは、震災関連の各候補の政策に、付け焼刃的な印象を受けることだ。勉強の時間がないことを差し引いても、アピールにはもう少し具体性がほしい▼「原発は道内にいらない」と言うのは簡単である。大震災に伴う福島第1原発の事故後だけに、確かに有権者には耳障りがいい。ただ、現実から離れた主張は、公約や政策とは呼ばない。震災の恐怖が癒えない住民がいま求めるもの。それは具体的で実効性のある道しるべであろう▼函館・道南と東北の関係は深い。「新幹線時代を前に、東北抜きに函館振興は考えられない」。函館市長選(4月17日告示)の立候補予定者による公開討論会での発言には、この地域に求められる復興対策のヒントが隠されている▼住民の行動は早い。道南における支援の輪が広がりをみせ、東北との絆が日に日に強くなっている。そして、民間の善意をより実のあるものにするのが公共による支援であり、それをつかさどる政治の力がいま試されている。その鍵を握る有権者が、統一地方選に無関心ではいられない。(K)


3月26日(土)

●大震災発生から2週間が経ち、わずかながらではあるが、復興に向けた光明も伝えられるようになってきた。連日緊迫した状況が続いている福島第一原発事故も、関係者の命がけの努力による復旧作業がすすめられている▼その一方で、震源地から離れていながら、都市機能がまひしたままの地域がある。。首都圏のベットタウンとして知られている千葉県の浦安市だ。メディアではほとんど取り上げられていないが、多くの道路に陥没やひび割れが発生し、現在も全域で断水や停電が続いているという▼同市が今回の地震で観測したのは震度5強。決して弱い揺れではないが、通常はここまで大きな被害には至らない。東京都湾の埋め立て地で地盤が弱いため、振動により地表付近の土地が沈みこむ「液状化現象」が発生したのが原因だという▼浦安といえば、国内で最大の人気を誇るテーマパーク「ディズニー・リゾート」も存在する。こちらの被害も甚大で、震災以来休園となったまま、現在も再開のめどは立っていないという▼「こんな時期に、遊興施設を話題にする必要があるのか」とお叱りを受けそうだが、万全の管理状態に置かれているはずの場所が、このレベルの揺れでダメージを受けた事実は見過ごすことができない。今後首都圏に近い場所で大地震が発生すれば、埋立地を中心に壊滅的ダメージを受けることを暗示しているとも見える。日本の防災都市計画を根本から見直す時期なのかもしれない。(U)


3月25日(金)

●東北関東大震災の発生から2週間を迎えた。あまりの惨状に未だ悪夢を見ている思いを拭い去れない。船を、家を飲み込みながら怒涛のごとく押し寄せた津波…青森から千葉まで広範囲に及び、死者・行方不明者数は2万6000人を超えた(24日現在)▼避難者は30万人以上。着の身着のまま、道路は寸断され、港も使えない。救出はヘリ頼み。暖房用の灯油はない、水はない、薬はない、食料もない。寒さと不眠に耐え、必要物資が届くまで10日…ようやく支援活動が機能し始め、一部で復興の動きも▼「出来たら何かお手伝いしたい」。そんな気持ちに駆られている人が大勢いるに違いない。だからといって、今、医師らを除いて現地へ行くには躊躇する。ボランティア活動は、このあと必要なことが解り、それなら自分も出来る、と知ってからで遅くはない▼ただ、自宅にいながら出来ることがある。義援金への協力、支援物資の提供などもそうだが、何より忘れてならない大事なことは「思いの共有」。被災者の気持ちを察し、一緒に悲しみ、一緒に復興へ歩むという気持ちになることである▼何も難しくはない。ガソリンや灯油を大事に使い、電池など買い占めに走らない、極力節電する、風評に惑わされないことなど。電気をはじめ生活に、企業に、興行に必要な“資源”は無限でない。今、問われているのは緊急時にどう分け合っていくか、ということ。そこに例外はない。(A)


3月24日(木)

●野菜など食べ物は1円でも安いスーパーで買う。新聞を見て驚いた。仙台の露店で大根1本800円、キャベツ1個600円、白菜は4分の1で200円…。東日本大震災の影響で入荷が激減、軒並み2〜5割も高くなった▼食べ物から福島原発から漏れたと見られる放射性物質が検出されたことが拍車をかけている。福島、茨城、栃木、群馬の4県のホウレンソウとカキナ、福島県産の原乳から暫定基準値の3〜7倍を超える放射性物質がカウントされたのだ▼人間は自然に被ばくする1年間の放射線量2・4ミリシーベルトのうち、0・35ミリシーベルトを食べ物から取り込んでいると言い、摂取量が微量なら心配はない。政府は「食べても人体に影響を及ぼす数値ではない」としながらも、4県に出荷停止を指示した▼そう言っても、チェルノブイリ原発事故では、汚染された牛乳を飲んだ子どもたちが甲状腺がんにかかっている。子を持つ親にとって、日本でも同じ事態が起こるのではと心配するのは当然。「食べても影響がない」とする根拠の説明が十分なされていないのでは▼大気中に放出された放射性物質が風にのって遠く広く散らばっていく。福島県をはじめ、東京、埼玉、千葉、新潟などの水道水や海水からも放射性物質が出ている。農作物を買い控えたり、飲料水を買いだめしたら、物流が混乱する。風評被害も防がなければならない。(M)


3月23日(水)

●「トモダチ」「ヤシマ」「ウエシマ」─。この3つに共通するのは、東日本大震災の被災者支援に関する作戦名である。そのほか、企業や団体がさまざまなプロジェクトを立ち上げ、世界でさまざまな活動が展開されている▼「トモダチ作戦」は在日米軍による災害救助活動。海軍、海兵隊、空軍が連携している。支援物資の輸送路を確保しようと、仙台空港の復旧に着手。大型輸送機が離着陸できるようになった▼「ヤシマ作戦」はテレビアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」に登場する。攻撃兵器の電力を集めるため、日本中を停電状態にしたという。これは節電を呼び掛けている▼「ウエシマ作戦」は、買い占めをしない、譲り合いなどを意味する。お笑いトリオ・ダチョウ倶楽部のネタで「俺が、俺が」と権利を争うものの、やはり考えを改め「どうぞどうぞ」と譲り合うオチ▼大震災を受け「何かをしなければ」という気持ちは函館でも多く、子どもたちの募金活動から、支援物資の提供と多様化している。道内で節電しても首都圏の電力不足が緩和されることはないが、本社やわが家でも「ヤシマ作戦」を進めている。蛍光灯の本数を減らすなど、通常の省エネの実行だ▼ただ、わが家には、節電協力を求める「チェーンメール」が来た。電力会社で働く友人がいるので節電を広く呼び掛けてほしいという内容だった。全国では義援金詐欺も横行している。注意を。(R)


3月22日(火)

●食料は別にして現代生活は電気、ガス、石油、水、通信(電話)を欠いては成り立たない。というより、その恩恵の上に成り立っているのだが、慣れは恐ろしいもの。次第に依存症になっていることを自覚しないようになり、あるのが当然と…▼戦後の復興期からしばらく、生活のすべてがアナログだった。暖房を例にとっても石炭か薪のストーブで、電気は不要だった。電話も然り。家庭では照明とラジオなど若干の家電程度で、定期的な停電も生活に支障はなかった。それが今や大変なことになる▼暖房は灯油が主流の座を占め、電話も携帯が登場し、固定はファクス兼用が一般的。さらにトイレも水洗化され、ひとたび電気が止まるやお手上げ。便利と危険は背中合わせであることを痛感するが、まさに落とし穴。いずれも電気がなければ機能しないのだから▼東京では数時間の停電で右往左往している。マンションではエレベーターは動かず、水も止まる。数年前の台風時に一日余り停電生活を経験した。それ以来、ロウソクや電池、カセットコンロ、使い捨てカイロなどを常備、トイレ用の水を常に保存している▼北国にとって厳しいのは冬。東日本大震災の被災地は電気と暖房とも止まってしまった。精神的な疲労に、暖房用の灯油がないことからくる寒さが追い討ちをかけている。被災者の痛みを共有する術は節電意識である。一時しのぎの思いとして終わらせてはならない。(A)


3月21日(月)

●小児甲状腺がん、白血病…。チェルノブイリ原発事故で被ばくしたベラルーシの子どもたちを取材した。ホームステイのかたちで道内に招かれ、健康回復をはかって「北海道のきれいな空気を吸って元気が出ました」と笑顔を見せていた▼目に見えず、においもなく、音もなく、風にのって近づく放射性物質。地震と津波に破壊された福島原発。ECCS、シーベルト、燃料棒…。分からぬ専門用語が飛び交う中、事故の深刻さを示すレベルが4から5に上がった▼原子炉建屋の爆発や放射能漏れを見れば当然のこと。旧ソ連のチェルノブイリ事故に次ぐ米スリーマイル島事故と並ぶレベルになった。フランスなどは6相当と見なす。四つの原子炉で深刻な事態が続き、約6万人が避難した▼原子炉を冷却し被害拡大を防ぐのが急務。自衛隊や消防庁などが遠距離大量送水装置や屈折放水搭車を使って放水。高さ60㍍から放水できる圧送機も駆けつけた。シーベルトの数値が下がったという。次は電源を復旧させ、徹底的に冷却し、放射性物質を閉じ込めたい▼何度も耳にする「想定外」という言葉。想定外だからこそ災害が起きる。電力会社は、函館の市民団体などが安全対策を求めている大間原発の建設休止を決めた。泊原発にも抜本的な防災対策強化が求められている。三重苦の被災地。子どもが苦しむベラルーシを再現させないように、みんなで力を合わせて苦難を乗り切ろう。(M)


3月20日(日)

●散乱する魚箱や陳列台、水に浮く魚介類、泥水をかぶった車や食器、むき出しになった下水管…。三陸沖の被害に比べると軽微だが、函館市のベイエリアでも目を覆うような津波被害が出た▼今回の震災を受けて函館市は、津波ハザードマップの増刷を決めた。2009年に作製した防災地図で、津波が襲った際に予測される被害区域を色分けし、避難の経路や場所を示している。再配布を望む市民の問い合わせも多いという▼海抜が低いベイエリアは、低気圧や台風でたびたび越波による浸水被害を受けるが、津波による広範な被害は1960年のチリ地震以来。津波の恐ろしさは分かっていても、いざという時の冷静な行動は難しい。災害時にどう避難誘導し、被害を最小限に抑えるかは、行政の大きな課題だ。そして両輪として欠かせないのが、住民1人1人の防災意識▼しかし、今回の津波で壊滅した三陸沿岸の市町村を見ると、自然の猛威に住民の力は無力に近いことを感じずにはいられない。防波堤をいくら築いても、全速力で避難をしても、ジェット機並みのスピードで襲ってくる黒い波には勝てない▼自然は美しい。同時に怖い。人間の力など到底及ばない。しかし、それでも人間は天災に備え、闘わなければならない。これから全精力と英知を結集して未曾有の国難を乗り越え、復興を遂げていくのもまた、人間の力だ。国史に残る試練への力を信じる。(P)


3月19日(土)

●♪そうだ うれしいんだ 生きるよろこび たとえ 胸の傷がいたんでも—。大震災の被害状況を刻々と伝えるラジオから突然流れた「アンパンマンのマーチ」。地域FM局やNHKラジオによる計らいに、予想以上の反響があった▼避難所からは「涙が止まらない」「勇気をもらった」などの声が寄せられ、何よりも「子どもたちに笑顔が戻った」という、うれしい報告も。地震報道に絞ったテレビ番組、各種イベントの中止・延期…。自粛ムードの広がりの中で、本当に被災者が求めるものは何かについて考えさせられる出来事だった▼もちろん優先順位はある。命をつなぐ食料、水、暖房燃料すら届かない避難所も多い。「助けて」という被災者の悲鳴を耳にしながら、手を差し伸べることができない。足止めされた救援物資が山積みされた映像に、いら立ちと無力感が募る▼歌や音楽がほしい。被災者が心からそう欲するまでには、時間がかかるかもしれない。まずは支援物資を配り、空腹や寒さをしのいでもらう。子どもたちがアンパンマンから勇気をもらうのは、それからでも遅くない▼食品、燃料、防災備品などの買いだめ傾向が全国的に顕著になっている。国民が冷静さを失うことは、被災地をさらに苦しめる結果につながる。必要以上に電池を買い求めた人が、「恥ずかしい行為だった」と返品を申し出た。今できることは、こうした小さな心掛けである。(K)


3月18日(金)

●「母を背負ひて…軽(かろ)きに泣きて 三歩あゆまず」。テレビは東北の被災地で石川啄木が詠んだ沈痛な光景を映し出した。白髪の母を背負った男性が泥の中を歩く。細い竹をツエがわりに…▼岩手の三陸地方には『命てんでんこ』という言い伝えがある。「家族がてんでに(手に手に=めいめい)になっても、自分の命は自分で守れ。高いところに全力で逃げろ」という。テレビは津波の語り部で86歳になる田畑ヨシさん=宮古市=の無事も報じた▼「家ながされて諸人は海のもずくと消えていく」。“津波太郎”と称される田老町で8歳の時、大津波で母と兄を失った。小さいころから、祖父から「一人でもいいから山に逃げろ」と言い聞かされた。紙芝居を作り、子どもたちに津波の恐ろしさを伝えている。今回も高台に逃れ助かった▼五兵衛は海水の異様な動きを見て津波が来るのを予感した。危険を知らせるために高台に走り、収穫直後の稲むらに火をつけた。火事だと思った村人は消火に駆けつけ、辛くも災難を免れた。津波から命を救ったのだ(戦前の国語教科書「稲むらの火」)▼今回の大津波警報による道民の避難率は15・6%。昨年のチリ津波警報の6・5%の倍以上が避難したが…。東北では隣人が気になって引き返した人も。「津波が来たら逃げようという人もいたのでは」と田畑さん。警報が出たら、まず『命てんでんこ』だ。懸命の救出活動は続く。(M)


3月17日(木)

●自然の脅威の前には、人間の力など無に等しい。地震は場所や規模によって津波を引き起こす。頭で解っているが、いざ発生するや身を守るしか術はない。それでも猶予を与えてくれるならまだしも、時としてそれすらも許してくれない▼東北関東大地震(東北地方太平洋沖地震)から間もなく一週間が経とうとしているが、今なお死亡した人、行方不明の人を把握し切れないでいる。その多くは逃げ場所を失い、家屋などとともに津波に飲み込まれた人たち。まさに一瞬の悪夢である▼過去に津波被害をもたらした大地震はあった。この110年ほどの間でも、1896年の明治三陸地震で2万2000人が亡くなり、1933年の昭和三陸地震でも3000人余りが。さらにチリ地震(1960年)、近年ではジャワ島沖地震(2006年)など▼道民としては奥尻島を襲った北海道南西沖地震を忘れることはできない。押し寄せる波の威力が想像を絶することを思い知らされたが、惨状が再び脳裏によみがえってくる。東北は海岸線が入りくんだ地形的条件があったにせよ、10メートルの高さで来られては…▼「津波は怖い」。誰にも共通した認識だが、だからこそ「逃げる」に加え「速く」が求められる。それでも間に合うかどうか。今回の地震がそうだった。テレビから流れる強烈な映像がすべてを教えている。地震が起きたら津波が来る、改めてそう頭に叩き込んでおきたい。(A)


3月16日(水)

●どこまで増え続けるか分からない大震災の犠牲者については、ただただご冥福を祈るしかない。命を取り留めた60万人を超える住民のみなさんは、いつまで続くか分からない避難生活のことを思うと、不安でいっぱいだろう▼16年前の阪神・大震災では数多くのボランティアが被災直後から現場入りし、避難住民をサポートとしたと言われる。取りあえず現場に向かったものの、混乱を極める現場で右往左往する「ボランティア難民」が社会問題化した▼ライターなどとして活躍する乙武洋匡さんがツイッター上で、阪神大震災の被災者の言葉として「自称ボランティアは邪魔。逆に少ない食品を消費していく始末」とつぶやいた。すぐさま「この内容を取り消して」「個人の感想でボランティアを否定しないで」との批判が続いた▼しかし乙武さんは「多くの被災者から同感の声をもらっている。取り消す気はない」とゆずらない。実際に発言を支持する声が圧倒的だった。気をつけてほしいのが、“自称”という表現。乙武さんは決してボランティア自体を否定しているのではなく、「ボランティア難民」の再来を危惧し、あえて刺激的な書き方をした▼連日伝えられる悲惨な現場に、飛んでいきたくなる気持ちも分かる。混乱が一段落した段階で、組織的なボランティアの呼びかけが行われるはず。今は義援金や節電などできることから実行するのが先決では。(U)


3月15日(火)

●テレビは、瓦礫で埋まった東日本巨大地震の被災地で両親を探していた娘さんに駆け寄った、ふっくらとした犬を映していた。娘さんに抱かれて頬ずり。地震の前は家族を癒していたのだろう▼自治医大などの研究グループによると、飼い犬に見つめられると、相手とのきずなを強めるホルモンが飼い主の体に増加する。このホルモンは哺乳類の母子関係の形成などに関係しているという。目は口ほどに物をいうわけ▼わさわさした白い毛を身にまとい、その姿に思わず頬がゆるんでしまう秋田犬のわさお。ふさふさの毛を風になびかせ、町に現れて「みんな精いっぱい懸命に生きている」と、人々の心に勇気と希望を与える(映画「わさお」)。わさわさは「生き生きしている」様子▼長い間、自宅軟禁に置かれたミャンマーのアウンサンスーチーさんも「ある野良犬が台所で子犬を産んだ。子犬たちはあまりにも愛くるしく、夢にまで出てきたほどだった」と、孤独を癒やす触れあいを書いている(毎日新聞)。また、ラブラドルレトリバー「きなこ」は7度目の挑戦で警察犬に合格した▼被災地には海外から援助隊が続々と入り、懸命の救助活動に当たっている。メキシコ、フランス、スイスなどから多くの救助犬、捜索犬も駆けつけた。まだ、数千人が救助を待っている。優れたセンサー「臭覚」を持つ援助犬、捜索犬、それに警察犬。1人でも多く発見してほしい。(M)


3月14日(月)

●海水が引いていると聞いて、豊川岸壁に駆けつけると、海底に魚がはねていた。「津波が来るぞ」と逃げた。函館桟橋駅や旧中央郵便局、七財橋、金森倉庫群、十字街の電停まで水浸し、怖かった▼津波は豊川町にある支局の机まで来た。駆け出しの記者だった51年前、無我夢中で取材し原稿と写真を本社に送った。地球裏側のチリで起きたM9・5の大地震による大津波が太平洋を越えて5、6メートルの高さで押し寄せた▼列島崩壊、日本沈没を思わせる東日本大地震。プレートの岩盤が南北500キロ、東西200キロもずれた日本で最大級の地震で、専門家は「1000年に1度起きる巨大地震」という。繰り返す津波、建造物破壊、コンビナート火災、原発停止…▼地震、雷、火事…。一番怖い地震に「原発震災」が加わった。福島第1原発の原子炉建屋で爆発が起き、外壁が吹っ飛んだ。国内初の炉心溶解が発覚。半径20キロ以内の17万人に避難勧告。バスで避難中の住民ら多数の人が放射能性物質で汚染されたという▼父よ母よ、わが子よ…。激震に揺れ、つぶされ、燃えて、流されて…。何十万、何百万の人が悲鳴を上げ、助けを求めたことか。地球の数十秒の身震いに尊い命が次々と奪われた。1万人の消息が分からないという情報も。半世紀前にチリからの大津波来襲を再現した函館は、朝市近くで男性の死亡が確認された。全国民が総力をあげて、この大震災を乗り越えなければ。(M)


3月13日(日)

●2011年3月11日、そして12日は、わが国の歴史に刻まれる日となった。地震の規模もさることながら想像を絶する規模の津波…11日午後に発生の東北沖地震がもたらした被害はあまりにも甚大。テレビに映し出される惨状は目を覆いたくなるほど▼思わず神戸を襲った阪神淡路大震災や奥尻島の津波被害の映像が頭に蘇ってきたが、改めて地震、津波の脅威を見せつけられた思い。多数の人命を奪い、家を押し流し、さらには火災を誘発し、ライフラインや交通網を容赦なく寸断した▼しかも余震や津波は翌12日も断続的に。長時間にわたって緊張を強いられた被災地域の人たちの疲労と苦悩は他人事でない。函館・道南でも亡くなった人が出たほか、ベイエリアや朝市、函館駅は海水に見舞われ、JRが止まるなどの被害を蒙っている▼そんな中、12日には九州新幹線が開業し、北は青森から南は鹿児島まで新幹線で結ばれた。新橋—横浜間に鉄路が誕生して138年、東海道新幹線が登場して50年。まさに記念すべき一頁だが、4年後には北海道が開業し、さらなる歴史を刻むことになる▼この日は東北新幹線が地震の影響で運休。残念ながら列島縦断の接続初日とはならなかった。被災地に配慮し、記念セレモニーを自粛しての出発を余儀なくされたが、それも仕方ない。東北沖地震は未曾有の災害であり、国を挙げての救助、支援、対策が求められる事態なのだから。(A)


3月12日(土)

●特殊撮影を使った映画の一場面のようだった。被災者からすれば、それは不謹慎な感想かもしれない。ただ、そうとしか映らない地獄絵図が、次々とテレビ画面で繰り返される。マグニチュード8・8という国内過去最大の巨大地震は、容赦なく住民の生活を奪い去った▼各地を襲った大津波が車、漁船、建物を押し流す。石油コンビナートが爆発しながら炎上。首都圏の交通網は完全に寸断され、徒歩で帰宅する人の波が続く。「東北地方太平洋沖地震」の特徴は、被害が広い地域に及んだことだ▼道南の各地も大きく揺れた。だが、被害報告がない。一安心していたところに津波が襲った。冠水は函館市内の西部地区など広い範囲に及び、JRの陸路が完全にまひ。国道5号も通行止めとなり、道南は文字通りの“陸の孤島”に▼「18年前の悪夢がよみがえった」という人も多い。1993年7月12日午後10時すぎ。奥尻島に壊滅的な被害をもたらした北海道南西沖地震。奥尻町のホームページ(HP)によると、津波の第一波が同島に来襲したのは、地震発生からわずか2〜3分後のことだった▼多くの死者などを出した人的被害のほとんどが津波によるものので、「集落はまるで戦争の跡地のように何もかもなくなってしまった」(同HP)。悪夢の再現となった今回の地震の被害状況は、まだ全容が分かっていない。教訓と呼ぶにはあまりにも過酷な試練である。(K)


3月11日(金)

●三陸沖を震源とする9日の地震で、遠く離れた東京都庁(第一庁舎、48階建て)のエレベーター40基が停止した。周期の長いゆっくりとした揺れである「長周期地震動」が、都内で発生したことが原因という▼高層ビルは震度2(新宿)でも大きく揺れる。地震のメカニズムの一端が広く周知された。今回の地震が残した教訓の一つだ。地震の発生は時を選ばないし、被害は震源地の周辺だけに限らない。そのことをあらためて肝に銘じたい▼この日は宮城県内で震度5弱を観測した。道南でも函館市内の一部などで震度3の揺れを記録。振幅の大きい揺れがゆっくりと、そして長く続いた。下から突き上げられるような直下型も怖いが、今回のような揺れ方には不安を増長する不気味さがある▼揺れの瞬間、別の恐怖がよぎった。そんな人も少なくなかったようだ。ニュージーランド・クライストチャーチ付近で起きた大地震。その記憶はあまりにも生々しすぎる。三陸沖の地震を伝えるニュースの合間に、ニュージーランドで日本人の死亡が新たに確認されたという速報が流れた。これもなにかの因縁か。1日も早い全員の発見を願う▼道南の住民は地震に敏感であってほしい。奥尻島などで大きな被害を出した北海道南西沖地震を忘れてほしくないからだ。防災意識の保持や対策を怠っていないか—。世界で頻発する地震は、足元を見直す機会を与えてくれている。(K)


3月10日(木)

●雇用は厳しい、収入は増えない…庶民の増税感は、いっこうに和らぐ気配がない。菅総理は「せっかく景気が回復しつつあるのだから」という認識を示しているが、その実感も伝わらず、一方で国の財政はひん死の状態▼政権が変わって、事業の見直し、無駄の排除によって財源は捻出できる、と思わせたものの、今やその勢いも色あせて。だからと言って掲げた子ども手当や高速道路料金問題などの看板政策は撤回できない。早くも暗礁に乗り上げた感が無きにしも非ず▼結果として議論の行き先は「税負担のお願い」ということで、ターゲットは消費税。わが国に新税として導入されたのは1989年というからすでに20年余。当初の3%が、8年後に5%となって現在に至っている。その税収額は国と地方合わせて12兆円▼確かに大きい。ただ素直になれないのは、消費税の税率アップで財政の健全化が図られる保証がないこと。問題を抱える年金や医療を保っていくためにはやむを得ない、という論は否定しないが、この状況を生み出した見通しの甘さ、責任を明らかにしてから、というのが筋▼とはいえ、放ってもおけない。その思いは読売新聞の世論調査(63%が財政再建、社会保障制度維持に消費税引き上げは必要と回答)から読み取ることが出来る。「政治の信頼」が担保という条件付きだろうが、政治の現状はというと…。あまりに心もとない。(A)


3月9日(水)

●女の子の成長を祝う、ひな祭りの日。3歳になった清水心(ここ)ちゃん=熊本市=も保育園で昼食のちらしずしを食べ、みんなで「うれしいひなまつり」を歌った。夕方、家族4人でスーパーに行き、20歳の男子大学生に殺された…▼心ちゃん。最初はなんと呼ぶのだろうと思っていたが、『ここ』と聞いて、その穏やかな響きに感激。最近は言葉も覚えて「とても活発で明るい子。クラスの友だちとも仲良くしたり、元気に過ごしていた」という▼卑劣極まる冷酷非道な犯罪。殺害現場はスーパーのトイレ。大学生は「女の子の口を片手でふさぎ、もう片手で首を絞めた。遺体処理に困って川に捨てた」と供述。大学では水俣病などを学び「障害者を手伝う仕事がしたい」と言っていたのに…▼子どもが殺害された主な惨事は10年前の池田市の小学校侵入事件以来、9件目。警察は心ちゃんを殺害した大学生宅から少女への強い興味を示す物品を押収し、わいせつ目的だったと、ほぼ断定した。「悪い心」が幼い「善い心」を抹消していく現代病が悲しい▼和を大切にする「日本の心」が失われていくと言われて久しい。心ちゃんも成長して、入学式や就職、結婚など人生の節目ごと「心と書いて『ここ』と読みます」と説明するはずだった。そんな未来が奪われた。大学生は「事件を起こして申し訳ありません」と謝罪しているが、もう遅い。心ちゃんは帰らない。(M)


3月8日(火)

●議員先生は「選挙になると…」とやゆされる。見事なまでに態度が変わるということだが、確かに満面の笑みを浮かべ、容易に約束もしてくれる。「必ずやお役に立ちます」。腰を折れるだけ折って、頭も下げられるところまで下げる▼冒頭の「選挙になると…」という思いは、当選後の姿勢に疑問を抱かせる議員が少なからずいるから。特に国会だが、そんな議員が一桁どころでないのだから、そう思われても仕方ない。結果として多過ぎる、報酬が高過ぎると映って、有権者の不信を募らせている▼当選後も期待に応えてくれるならまだしも…。自分たちの身に降りかかることになると、守りに入る。端的な事例が定数の削減であり報酬の抑制。体裁をつくろう議論はあっても進みは遅い。ところが、その問題が選挙の争点になるや、判断や状況が一変する▼注目の名古屋市の市議選挙がそれを如実に語っている。「報酬半減」という市長提案の否決などが引き金になった選挙である。すると、どうだろう。朝日新聞のアンケートに、立候補者138人のうち73%の101人が賛成の回答をしたという▼市長と対立した前職でも賛成が増えているというから、選挙の威力は大きい。まさに踏み絵であり、当選のためにはなりふり構わずの姿が浮かんでくる。国会も自分たちで決められないのなら、世論を次の選挙の争点にしてはどうか。名古屋市が投じた一石は軽くない。(A)


3月7日(月)

●両目を大きく見開き、叫ぶ。「芸術は爆発だ!」。かつてのテレビCMの印象は強烈だった。そのせいか、芸術家岡本太郎(1911—96年)はタレント性の強い、一人の“人間”としてとらえられることが多い。その太郎の作品や生き方が今、若者の間で静かなブームになっている▼未知の芸術家のどこに惹かれるのか。岡本太郎記念館長の平野暁臣さんは、次のように解説する。「先の見えない閉塞的な時代。保身ばかりの大人たちには突破力がない。そんななかで嘘のない太郎の生き方が眩しくみえるのは当然です」(芸術新潮3月号)▼今年は、太郎の生誕100年。NHKはドラマ「TAROの塔」を放映中だ。幼少時代のエピソード、破天荒な言動の数々、創作への真摯(しんし)な姿勢など、ドラマの展開の中に“人間・太郎”の骨格を垣間見ることができる▼一時行方不明になっていた太郎作の巨大壁画「明日の神話」(幅30メートル、高さ5・5メートル)。発見、修復後は東京渋谷駅の連絡通路に展示されている。数年前にこの絵を見て、むき出しのまま飾られていることに驚いた。ガラスケース越しの展示を嫌った太郎の遺志を継いだ措置という▼露出展示へのこだわりは、ありのままを貫いた太郎の生き方に共通する。「若者たちにとって太郎は過去ではなく未来」(平野さん)。太郎が生きていたら、その目にどんな未来が映っているのか聞いてみたい。(K)


3月6日(日)

●値上げで控えていた喫煙ぶりが戻ったようだ。たばこが人の体に悪いことは知っている。灰皿のある待合室に出入りしていた猫からリンパ腫が見つかり、数日後に死んだという記事を見た。受動喫煙の影響が大きかった…▼昨秋、たばこが大幅に値上がり。愛煙家は平均100日分を買いだめ。2割が禁煙に挑戦したが、年末には半数が脱落したという。買いだめの在庫も底をついて、たばこ税を再び払い始め、値上げ前に戻った…▼税引き上げの影響を受け、たばこ税収は11月は65・3%減、12月は10・4%減に落ち込んだが、1月は0・7%減の764億円だった(財務省)。2月は前年実績を上回る可能性が高いという。販売が1月から回復したわけ▼一服至福…紫煙の誘惑に負けそうだが…。臥牛子が禁煙したのは5年前に「人体の不思議展」の人体標本を見てから。病気のコーナーで黒く変色した喫煙者の肺標本にびっくり。ヘビースモーカーの知人にも見るよう勧めたものだ。「吸う人も吸わない人も心地よい世」にならないものか▼たばこ離れは予想ほどではなかった。ある調査では顧客スペースの禁煙・完全分煙実施率は54%。子どもの隣席で平気で吸っている姿はいただけない。せめてマナーを守って、税金が上がった分を節煙したら。今月はコーヒーなど食品値上げの月。6日は虫が這い上がる啓蟄だが、“紫煙の虫”と“値上げの虫”は歓迎できない。(M)


3月5日(土)

●覚えられない公式や単語など、テストに出題される可能性のあるものをメモし、筆箱などに忍ばせた。昔はテストのカンニングは日常茶飯だった。人の間違えた解答をカンニングしたこともある▼京都大などの入試問題がインターネットに投稿された問題で仙台市の男子予備校生が逮捕された。質問サイトに投稿すると、それを見た別のサイト利用者が解答を書き込む仕組み。京大の入試では解答の大半が試験時間中に届いたという。前代未聞の「携帯カンニング」▼6年前に韓国の大学能力試験で携帯電話を使った組織的な集団カンニングが発覚している。今回もネットに頼ったカンニング。学校側は携帯を封筒に入れて預かる、試験官を増員する、巡回回数を増やす、トイレに行く受験生を記録するなど不正防止にあの手この手▼入試問題に限らず、電脳空間の見知らぬ他人に助けを求める若者が増えてきた。しかも罪悪感が希薄だともいう。かといって「受験生を見たら泥棒と思え」とは言えない。子どもを信じて育てるのが教育の基本。道徳教育こそ再発防止の特効薬▼中国では6世紀ごろからカンニングが行われ、罪も厳しく、カンニングが発覚した一家全員が死刑になったとも…。予備校生は「合格したかった」「自分一人で投稿した」「申し訳ない」などと供述している。逮捕まで至ったのは新手の不正のせいだろうか。参考書の持込なら、退場ですんだのに。(M)


3月4日(金)

●正月早々、日本海側を襲った豪雪が大きな被害をもたらすなど、今冬は雪に悩まされた地域が多かった。その今冬は終わっていないが、幹線道路の通行止めのあり方など、改めて提起された課題が幾つか。それは函館・道南も例外でない▼先日の本紙は、函館市議会での除雪議論を伝えていた。2月末現在、市民から市に寄せられた除雪に関する苦情は3162件。特に2月中旬の降雪時には5日間で1100件というから尋常でない。要は除雪が十分でなかったということである▼函館市は地形的な制約もあって、道路の形状が変則。しかも幹線を除いては、夏場でも車同士がすれ違うのに苦労するところが多いなど、幅員の狭い道が少なくない。それが雪道となったら…。轍(わだち)ができ、危険な状態になりかねない▼そんな経験をした人が少なからずいようが、転勤族だった筆者もその一人。最初の冬は戸惑いの連続だった。当然来るはずの除雪車がこない、だからザクザクの路面となって、深い轍ができてしまう。事故の危険性はあるし、どうやって緊急車両が入ってくるのだろうか、と▼それ以降もたいして変わらない。それもそのはず市の除雪基準が圧雪深で25センチ以上、除雪後に残す雪の深さが10センチというのだから。確かに今冬は降雪が多く、気温が低かったかもしれないが、その一言で済ませては…。これだけ多い苦情件数は再考を促す声である。(A)


3月3日(木)

●室内で飼う小型犬が人気を集める中、古来の日本犬も変わらぬ存在感を示している。日本犬は秋田犬、甲斐犬、紀州犬、柴犬、四国犬、北海道犬の6種を指すことが多い。飼い主に忠実なことが特長という▼日本犬の中で最近の出世頭は、何といっても北海道犬の「カイくん」だろう。携帯電話のCMで「お父さん犬」として登場するタレント犬だ。CMの性格上、あえてとぼけた味を出しているが、実際の北海道犬はもう少しりりしい▼筆者の生家でも長年、北海道犬が家族の一員だった。人懐こさの一方で自尊心も強く、飼い主以外にむやみに尻尾を振ることはなかった。クマやシカの狩猟に同行した“マタギ犬”が、北海道犬のルーツとされる▼時には人命を懸けなければならない狩猟の場合、犬との強い信頼関係は必須の条件となる。秋田犬の祖先もまた“秋田マタギ”の山岳狩猟犬として、人との絆を培ってきた。その末裔(まつえい)の一匹が、有名な「忠犬ハチ公」であり、人と犬の親密な関係を立証するのにこれほど適した存在はない▼ハチは1935年、13歳で死んだ。その死因の一つが、肺と心臓のがんだったことが新たに分かった。この事実がニュースになること自体、ハチが長く愛され続けている証しである。渋谷駅のハチの銅像前は今、喫煙エリアになっている。肺がんで苦しんだであろうハチが、銅像になって煙に包まれている姿は見たくない。(K)


3月2日(水)

●「春は名のみの風の寒さや〜」 草木の芽が出てくる弥生に入ったというのに、まだ凍てつく。卒業シーズンでもある。知人から、またカタカナ文字を一つ教わった。職などが決まらず不安な生活を送る「プレカリアート」▼身分も所得も安定しない階層の総称のようだ。不安定を意味するイタリア語の「プレカリオ」に労働者階級「プロレタリアート」を足した造語のようで、イタリアの路上の落書きから生まれたといい、日本では5年ほど前から広まった▼フリーター、派遣、契約社員など非正規雇用、零細事業者、小規模農・漁業従業者、ワーキングプアの正社員…。それに、超氷河期真っただ中で「どこでもいいから内定がほしい」と就活に駆けずり回っている大学生・高校生は最大の予備軍ではないか▼就職内定率は「甘く見ても50%台前半がやっと」との見方も。就活にかける費用もばかにならない。北海道は平均9万円を超え、東京などの2倍かかると聞く。現代学生百人一首(東洋大学主催)に「温暖化結局熱くなるのなら融かしてほしい就職氷河」(高2)というのがあった▼就活も長期化しており、内定したとしても社会の荒波に向かうスタート台に立てるとも限らない…。働く場所がなければ列島はプレカリアートであふれる。私利私欲に没頭している政権には悲痛な叫びは届かない。もう一句。「泣きながら内定決まり一番に電話したのは大切な祖母」(高3)。(M)


3月1日(火)

●今の時代を象徴する言葉は何か、と聞かれたら、上位にこの言葉がランクされるに違いない。「閉塞感」。意味は読んで字の如しで「閉じ塞がったように先行きが見えないさま」。暗い思いを抱かせる言葉である▼その「閉塞感」という言葉は、世の中というか社会的な視点でも使われれば、個人の内面的な思いでも。社会的で最も解りやすい事例分野は政治。わが国の現状がその状態を端的に物語っている。そして、しわ寄せが社会に広がるや、今度は人の内面に▼大人ばかりではない。一億総ストレス社会と言われて久しいが、子どもや若い人たちのストレスは社会への不信を募らせ、結果として生まれるのが「閉塞感」。先日、そんな現実を懸念させる調査(日本と米国、中国、韓国の高校生の意識比較)の結果が報じられた▼財団法人日本青少年研究所などによる調査だが、そこから浮かんできた姿も、一言でくくりつけると然り。例えば情緒。わが国の高校生は他の3国に比べ「憂うつ」「むなしい」「寂しい」といった思いを抱いている率が高い。加えて自己評価も極端に低い▼「自分は価値ある人間」と答えた率は米国57%、中国42%などに対し、わが国は7.5%。「自分は優秀」に至っては4.3%でしかない。自信を持てない、希望を持てない。社会に対するそんなメッセージにも聞こえてくる。この「閉塞感」…果たして打破できる日はくるのだろうか。(A)