平成23年6月


6月30日(木)

●市民創作函館野外劇の季節がやってきた。7月8日の開幕に向け、練習も始まった。劇は「戦争や大火といった困難を乗り越えた函館の復興の物語」と関係者。東日本大震災の被災者を勇気づけたい—。今夏の野外劇は、例年に増して特別な意味を持つ▼「火勢劇烈を極め、瞬時にして他に延焼拡大していった」(函館市史)。昭和9年3月21日夜に発生した函館大火は、翌朝までに全市の3分の1を焼いた。死者2166人、焼失建物1万1105棟。まちとしての機能を考えると、ほぼ壊滅的な被害といえる▼そこからの再興の足跡は、同市史に詳しい。復興計画では災害に強い道路の再整備に重点が置かれた。幅員を増やす一方で、防火線の目的を持つ新路線を設置。さらに、東西に市街を縦断するグリーンベルトの新設が目を引いた▼注目すべきは、復興計画に国が深く関与していること。内務省の担当職員がその指導力をもって道庁や市を「積極的にリードした」(同市史)。“函館復興の物語”という野外劇の骨格を形成するエピソードの一つだ▼国による強いリーダーシップが函館の復興を早めた。今回の震災対応はどうか。残念ながら、国は復興への先導役を十分に担っていない。菅首相は、復興相と原発相の新設に伴う閣僚人事を決めた。首相退陣を前提とした四面楚歌の内閣に何ができるのか。そんな不安を抱えた、復興への“船出”である。(K)


6月29日(水)

●女子W杯に出場している「なでしこジャパン」は、親指の赤から緑、黒、黄、青の順で手の爪を五輪マークの5色で彩っているという。初戦をテレビで観戦。諦めず「積極的な守備」でニュージーランドに競り勝った▼試合開始前に両チームの国歌が流れた。なでしこジャパンは胸に手をあてて、神妙に「君が代」に聴き入った。口ずさむ選手もいた。国歌を通じて遠い日本から強力な声援が送られているのだ。ニュージーランドの選手は全員が大きな声で歌っていた▼少し前、入学式などで君が代を歌う際、不起立を巡る裁判で最高裁は「校長らによる起立と斉唱の職務命令は合憲」とする判断を下している。「思想・良心の自由に対する間接的な制約となる面がある」とも述べているが…▼ただ、大阪府のように起立斉唱を義務化する「君が代条例」まで制定する必要があるのだろうか。知事は「国旗国歌を否定するなら、公務員を辞めればいい」とも言っており、違反した教員の処分基準も検討されているようだ。「口パク」禁止令もでるかもしれない▼国歌も含め世の歌は心の中から出てきてこそ、自然と愛国心が芽生える。五輪など対外のスポーツで歌う国歌はチームの心をひとつにしてくれるものだ。ニュージーランドの監督も「日本は目の覚めるようなプレーをした」と褒めちぎった。7月はドイツから「なでしこ旋風」が起こりそう。「君が代」と「日の丸」で応援しよう。(M)


6月28日(火)

●政治の世界にとって日本語ほど便利な言語はない。というのも、どうとも解釈できる表現、逃げの表現が可能なのだから。国会の議論を聞いていても、やるのか、やらないのか、少しも定かでない場面に出くわす時がある▼表向きは「やりますよ」というニュアンスを持たせながら実は…。こうした逃げ言葉も横行する。よくも捻り出すな、と驚くほどだが、最近の例では1カ月ほど前、菅総理のあの「一定のめど」もそう。不信任案を巡る民主党の議員総会での退陣表明である▼「震災の対応に一定のめどがつくまで私に責任を果たさせてほしい。その後は…」。一般的には、その時期はほど近くやってくる、という認識を与えるが、玉虫色なのはその判断である。なんとなく思わせて、言質は与えない。したたかな計算がのぞく▼さすが政治家、だが感心してはいられない。どう解釈されようと、その判断権を握っているのは自分だから、まだ「一定のめど」が立っていない、と言えば、何時までも続けられる。受け止めが甘いと言われればその通りだが、政界では珍しいことではない▼困った時のぼかしと言えば「2010年代の半ばごろまでには」も然り。先週、民主党の社会保障と税の一体改革調査会が示した消費税税率アップに関しての表現だが、来年なのか、3、4年後なのか、まさに逃げの典型例。これらに共通しているキーワードは…「その場しのぎ」である。(A)


6月27日(月)

●国際線ターミナルがオープンし、国際定期便の本格就航が始まったのは昨年10月。それから8カ月しか経っていない先日、新たな拡張計画が明らかにされた。確かに利用者の利便性は上がるが、こんなに早い段階で、という思いも無きにしも非ず▼空港の存在は、その時々の置かれた環境に左右される。この十数年をみても、関西地域では関西空港、中部地域では中部空港が主役の座を奪い、新千歳は国際線ターミナルを拡張した。時代の要請への対応だが、首都圏では…▼国内線は羽田、国際線は成田と一応のすみ分けがあった。乗り換えの不便さはいかんともし難く、海外からも羽田への期待が大きかったことは事実。新滑走路(D)の完成が大きな鍵を握ったが、その一方で、壮絶な歴史を背負って誕生した成田が生き残りを強いられている▼「羽田には限界がある」。その矛先を向けられたのが成田であり、成田闘争(三里塚闘争)の記憶は新しい。それが今や茨城に空港が開港し、羽田がこうして拡張できるのなら、あの出来事は何だったのか。ふと、そんな思いが込み上げてくる▼「空港の国際競争力を高めるため」。確かに羽田の国際化には時代が求める大義はある。なぜ、あの時に…。当時、そこまでの将来展望を持てなかったのだろうが、それほどに政治のつけは大きいということでもある。東日本大震災の復興対策はそうならないように。切に願いたい。(A)


6月26日(日)

●公言していた引退を撤回してまでも、今年4月の東京都知事選に急きょ立候補すると、圧倒的な得票率で4選を果たした石原慎太郎氏。「78歳の御大を駆り立て原動力は何だったのか?」という疑問に答えるかのように、このほど2020年の夏季オリンピック誘致活動を宣言した▼2016年夏季五輪争いに敗れたのは2年前の秋。この時は、当初から都民の反対運動が活発化し、莫大な招致費用に対する批判も少なくなかった。さすがの石原氏もすっかり懲りたと思ったのだが、その熱意は冷めていなかった▼今回このタイミングで再度五輪誘致を掲げたのは「大震災からの復興に向かう日本の姿を世界にアピールしたい」と理由付けがある。この大義は意外にも受けがよく、ある情報番組のアンケートでは実に都民の3分の2が今回の誘致を支持していた▼振り返れば前回(1964年)の東京五輪は戦後の高度成長の大きなきっかけになり、72年の冬季五輪は札幌を北日本最大の都市に成長させた。ただ、98年の長野五輪によって建築された箱物の維持が、地元財政に大きな負担としてのしかかっていることを忘れてはいけない▼五輪が、人々を魅了する世界最大のスポーツイベントであることを否定するつもりはない。経済的な見返りを求めることなく、純粋にアスリートの活躍を見守る場にするのであれば、石原氏の夢を積極的に応援していきたい。(U)


6月25日(土)

●「藁(わら)にもすがる」というのは、こういう心理を言うのだろう。東京都内の医師の男らが、臓器売買などの疑いで逮捕された。医師は自ら腎不全を患っていた。知り合いに1000万円を支払って腎臓の提供者を探してもらったものの、すがった相手が暴力団員だったことが話を複雑にした▼日本における臓器の生体移植は、本人間の合意の下で行われる。ただし、報酬目的での移植を避けるため、提供者は原則として親族に限定されている。逮捕された医師は、暴力団員から紹介された別の元暴力との間で養子縁組を偽装していた▼世界の一部の国では、臓器売買がビジネス化している。最近では、中国の男子高校生が自分の腎臓の一つを臓器密売人に売り、その報酬で多機能端末「iPad2」を購入したと告白した。中国は2007年に臓器売買を正式に禁止したが、闇の取引は後を絶たない▼日本の患者が海外で非合法の臓器移植を受けるケースも相当数に上るという。金をだまし取られる事件も少なくない。今回の日本の医師の場合も臓器提供側から現金をさらに要求されている▼藁にもすがりたいという患者心理に付け込んだ悪質な事件は、国内でも今後増える可能性がある。腎臓の場合は生体移植がほとんどで、その売買に暴力団が絡むことの怖さを、今回の事件が教えている。臓器売買のビジネス化は、移植医療の信頼失墜と同義である。(K)


6月24日(金)

●シーベルト、ベクレル…。福島第一原発の事故で放射性物質が放射線を出す単位だが、「63京ベクレル」の数値が表示されたことがあった。兆の上で10の16乗で0が16個。普段は使わない縁遠い単位▼2年前、政府の事業仕分けで「世界一でないといけないのか。2位ではだめなのか」とクレームをつけられたのが「京(けい)」と命名されたスーパーコンピューター。開発は一時「凍結」されていたが、科学者らの反発で開発予算が復活した▼そのスパコン「京」が計算速度で堂々の世界ランキング一位になったニュースが飛び込んできた。1秒当たり8162兆回で、2位の中国の3倍以上の速度を達成したという。まだ開発途中で、完成すると1秒間に1京回(1兆の1万倍)の計算能力を備える▼想定される「京」の使用は、精密な計算が必要とされる天気予報から製薬などに及ぶ。地震や津波のシミュレーションも手がけさせたら、減災にも役立つという。学生たちの授業にも利用できれば研究の幅が広がるのでは▼学術や産業の振興・発展につなげていくことが大事。仕分け事業で予算が凍結されていたら「世界一」の快挙は生まれなかった。事業仕分けに当たった大臣は「どうやって将来の明るい夢につなげるか期待したい」と評価したが、遅い。子供の成績だって「クラス一」「学年一」「学校一」がよいに決まっている。科学技術こそ資源の少ない日本の力だ。(M)


6月23日(木)

●「スルメイカ(マイカ)」をインターネットで調べていると、活イカの調理法が動画で紹介されていた。その包丁さばきは豪快かつ繊細だ。調理されたことに気づいていないのか、イカは刺身になってもなお、盛んに足を動かしている▼残酷と感じる人がいるかもしれないが、生きたイカの味は格別だ。イカの大量消費に憤る「イカール星人」の怖さも、つい忘れがちに。海の恵みに感謝しながら、ほぼ半年ぶりの美味に舌鼓を打つことになる▼ところが、今年はやや様子が違っている。肝心のイカが捕れない。それもそのはず、正確には道南にまだ泳ぎ着いていないのだ。本紙既報によると、漁解禁日(今月1日)から20日までの函館市水産物地方卸売市場でのスルメイカの取扱量は42トン。前年同期の約3割に過ぎないという▼不漁の原因は海水温の低さとみられる。ひと足早く5月から漁期に入った本州の一部でも、漁師が「こんな年は初めて」と悲鳴を上げるほどスルメイカが捕れない日が続いた。水温の上昇とともに、群れの北上が待たれるところだ▼逆に昨夏は、猛暑による海水温の上昇が不漁の原因となった。居酒屋で注文した活イカも値段が高かった。観光客の多くが「函館の味」と認めるイカが不漁であってはやはり困る。おいしいイカを食べた観光客が二度、三度と函館を訪れる—。それを期待させるのにふさわしい、魅力ある食材なのだから。(K)


6月22日(水)

●科学技術の進歩は著しい。誰しも日々の生活の中で実感していることだが、そこに終わりはない。間もなくデジタルに移行するテレビ、携帯端末などは分かりやすい例だが、その進歩の一方で、課題も提起されている。「環境」もその一つ▼地球環境の温暖化は放っておけない現実にあり、対策は国際的な共通テーマ。省エネや排出規制などは待ったなしだが、取り組みが進んでいる分野に自動車がある。「ガソリンから電気へ」。各社がその開発にしのぎを削り、実用化の時代を迎えている▼とはいえ、現状は価格や走行距離、充電対応などに難しさを抱えている。政府の購入補助をつけても約300万円、充電場所も十分でない。だが、そうした悩み解消もそう遠くではなさそう。三菱自動車は実質負担が200万円を切る電気自動車を今夏、発売すると発表した▼現在より100万円ほど安く、その電池を家電製品に使えるオプション装置の販売も。大きな前進だが、この三菱自動車の発表の直後、宇都宮市のベンチャー企業が発表した開発が、注目を集めている。短時間で自動車に充電できる大型蓄電器である▼今は30分ほどかかる充電が、このシステムでは5分。しかも一度に複数台の充電が可能という。どう知恵を絞っていくか…今ここへきて電力の将来展望が気になるところだが、二社の発表は、電気自動車の時代が現実となったことの宣言にも聞こえてくる。(A)


6月21日(火)

●そう、街角に『クローバーマーク』を付けた車が目立つ。「車がなければ買い物にも病院にも行けない」という高齢者が多いためか、被災地では中古車が売れているという。後期高齢者になった臥牛子も付けなければ…▼そう、高齢ドライバーが車に表示するよう道交法に定められた『もみじマーク』が「枯れ葉や落ち葉のようだ」と不評を買ったため、新しいシンボルとして考案された。でも、どんなマークであろうと、記憶力や判断力が衰えると安全運転がおろそかになるのでは…▼そう、先日、東京で乗用車が歩道に突っ込み、5人が死傷する惨事が起きた。運転手は81歳の男性で、アクセルとブレーキを踏み間違えたらしい。75歳以上のドライバーによる交通事故は10年前に比べて2・2倍に▼そう、歩行者としての高齢者は車や歩道を駆け抜ける自転車の脅威にさらされているが、かたや死亡事故の中で、責任が一番重い「第一当事者」になった割合は21%にも上る。視力や反射神経などの低下も拍車をかける▼そう、運転のベテランという過信や油断は禁物。四つ葉のマークは安全に運転できるように、周囲のドライバーも配慮するもの。幅寄せや割り込みは5万円以上の罰金がとられる。ちゃんと適正診断を受けて、買い物や病院に出掛けよう。四つ葉のクローバーに付いたシニアの「S」はセーフティーの「S」でもあり、幸せの「S」にしたいものだ。(M)


6月20日(月)

●選抜総選挙で世間を騒がせたAKBが、今度は究極の新メンバーを登場させ物議をかもした。並み居る人気メンバーを差し置いて、テレビCMでフロントの位置に立つ彼女のルックスは、文句のつけようのない美しさ。「これほどの逸材をなぜ今まで隠し続けていたのだろう」と疑問に思った人は少なくないだろう▼種を明かせば彼女はCGによって作られたバーチャル(仮想空間)アイドルとのこと。これもまた秋元康お得意のサプライズなのだろう▼これで一件落着となるはずだったのだが、ネット上では“新メンバー”のファンサイトが立ち上がるなど、さらにヒートアップしている様子。確かにCGの完成度は非常に高く、もしかしたら正式にメンバー入りし、史上初のリアルとバーチャルの混成アイドルグループに発展するかもしれない▼それにしてもここ10年ほどのバーチャルテクノロジーの進化は、想像を超えている。CGや3Dを駆使した映画はごく当たり前の存在になっているし、グーグルアースを使えば、だれでも簡単に地球上の好きな地域を旅することができる▼一方、リアルの世界では列車がトンネル内で炎に包まれたり、飛行機が単純ミスで墜落寸前に陥ったりと「進化」どころか「退化」しているような事故が頻発している。まもなく我が町にも新幹線がやってくるが、今一度その安全性をしっかりと検証してもらうことを切に願う。(U)


6月19日(日)

●人の命を預かる仕事は多い。大量輸送を担う公共交通機関もその一つ。そこで働く従業員は当然、緊張感を持って日々の仕事に臨んでいると思っていたが、すべてがそうではないらしい。重大事故が相次ぐJR北海道の体質には、ただただ閉口するばかりだ▼トンネル内の特急脱線炎上事故から2週間余り。同じJR石勝線で今度は信号機トラブルが発生した。原因とされる配線ミスを修正するため、特急列車の大幅な遅れや普通列車の運休が18日現在も続いている▼信号機が青のまま赤に変わらない。この故障について国土交通省は、鉄道における重大インシデントと位置付けた。「インシデント」は、アクシデント(事故)になる一歩手前のミスのことを言う。大勢の人命が失われる恐れのある故障だけに、同省の判断は当然である▼JR北海道の不手際は脱線炎上、信号機故障にとどまらない。走行中に煙が出た普通列車があったし、快速列車の運転士が居眠りをするという極め付きの“事件”も。JR幹部は「管理体制の甘さ」を認め、OBやベテラン社員らによる社員研修を実施する方針という▼ただ、社員に当然備わっているはずの緊張感が欠如しているとすれば、研修会の実施などと悠長なことは言っていられない。職業人としての資質と、その適性判断の徹底にまで踏み込んだ対応が必要ではないか。そこで初めて利用者は安心して列車に乗ることができる。(K)


6月18日(土)

●昨年暮れ、政府は2011年度の税制改正大綱に法人税の5%引き下げを盛り込んだ。ざっと1兆5000億円の減収になるが、菅直人首相は、浮いたお金で企業が国内投資や雇用拡大などを図り、減収に見合った経済効果があることを期待した▼経済界は一様に歓迎したが、3月11日の震災で、すべて吹き飛んだ。民主、自民、公明3党が税制改正法案の修正に合意し、法人税減税は見送られる。国の税制改正の目玉ですら、あっという間に方針転換を迫られる震災後のいま。地方の不透明感はなおさらだ▼函館市の工藤寿樹市長が、公立はこだて未来大学への医学部設置構想を、従来の主張通り白紙に戻した。開設前年度に21億円、施設整備などで77億円、開学後も毎年20〜30億円もの負担が派生するという。課題は財政面だけではないが、国の支援や制度は不透明だし、市が簡単にのみこめる額とは言い難い▼医学部は、ないよりはあった方がいい。問題は投資に見合った効果が見込めるかだ。経済効果や知的人材の集積、医師不足の解消、医療と情報技術の融合などメリットは確かに多いが、その前に財政負担で函館が倒れたら本末転倒だろう▼しかし、苦しい時代だからこそ、地域の未来を開く重点投資が必要だ。それがなければ、衰退に歯止めは掛からない。前市長はその投資を医学部にかけた。政策としては整理されたが、地域再生の課題は残る。(P)


6月17日(金)

●ばんえい競馬で一頭の馬が話題を集めている。現在14歳、人間で言うなら還暦世代だそうだが、その名は「ゴールデンバージ」。3年前に引退したものの、調教師の熱意で昨年の7月に現役復帰するや、年齢を感じさせないレースっぷり▼ばんえい界の「中高年の星」とも呼ばれ、人気は急上昇。12日も3歳馬7頭などを相手にして貫禄を見せつけた。真っ先に第二障害を越えるや独走の態勢に入り、2着馬を大きく引き離しての圧勝。最高齢馬の勝利記録を更新した▼どの世界にも「がんばる姿」はある。その姿は見る人、聞く人を感動させて、刺激を与えてくれる。何としても夢を実現させたい、とりあえず年金を受給できるまで働こうか、人生観や価値観は人さまざまだが、「がんばる姿」に接した時に抱く思いは一緒。応援したい、となる▼「ゴールデンバージ」は、そんな存在の一例。第二の人生の年齢なのに、現役バリバリなのだから、羨ましいというか、お前も「まだまだ」と励ましてくれているというか…伝わってくるのは、還暦世代は現役なんだよ、というメッセージ▼そして今、最も「がんばる姿」を見せているのは、東日本大震災の被災地の人たち。家族を、家を失い、3カ月を経た今も不自由な生活を強いられ、将来に不安を抱えたまま。多くの人がそんな過酷な環境の中で頑張っている。辛い、なんとか一日でも早く…解消してほしい「がんばる姿」である。(A)


6月16日(木)

●仮埋葬地で身元不明者の墓標が雑草で見えづらくなっている、お寺にDNA鑑定で兄と分かって遺骨を引き取りにきた女性、行方不明の児童の捜索が続く小学校の献花台を見つめる少女、福島原発近くの住民が一時帰宅で開いた慰霊祭…(毎日新聞)▼東日本大震災から3カ月過ぎ、18日に「百か日」を迎える。行方不明者はいまだに8000人超。懸命の捜索が続いているが、遺体が見つかっても、死亡届などがはかどっていない。このため、法務省は死亡届受理の要件緩和を被災自治体に通達した▼死亡届が受理されないと法律上の死亡が認められず、相続や生命保険などの受け取りに支障が出ていた。従来は目撃情報などが必要だったが、当時の所在確認などができれば自治体の判断で受理ができるようにした▼「哭」は人の死亡を悲しんで泣き叫ぶ様相。仏教では亡くなってから100日目を「卒哭忌(そっこくき)」と呼んでいる。「卒」はやめること。遺族の悲しい想いに区切りをつける意味。いつまでも泣いていると、涙で遅れている復興への“怨念の灯”も消えてしまうということか…▼大震災発生のから3カ月目の11日に福島県の酪農家の男性(50代)が「仕事をする気力がなくなった。原発さえなければ…」と書き残して自殺した。避難区域でないため補償はないだろうと悩んでいたという。また一つ悲しみが増えた。盛岡のお寺では宗派を超えた「百か日」法要が行われる。(M)


6月15日(水)

●名古屋に住む友人が、自転車で日本1周を目指し、函館に到着。まずは北陸、秋田などの日本海の海岸線を走り、20日目に本道上陸。本道一周後は太平洋側を走るが、東日本大震災の影響でコースは未定という▼震災で中止も考えたが、今年しかチャンスがないと決行。旅の思い出話は各地域の節電の様子。特に東京電力柏崎刈羽原発のある新潟の節電は徹底されていると感じたという。名古屋も中部電力浜岡原発の停止に伴い、夏の節電が求められており、事態の大変さを知ったと語った▼函館山要塞、摩周丸を案内した。函館山の展望台で、道南の児童が歓声を上げていたが要塞には立ち寄らない様子に「山の歴史を学ばせないなんて」、摩周丸で洞爺丸事故の詳細を知り「この施設に修学旅行生が少ないのはおかしい」と話す。さまざまな遺産が残る函館に改めて感心したという▼五稜郭や大沼も連れていったが、外国人など観光客が多くいた。4月中旬まで、ほとんど人を見なかったので、観光客の回復ぶりに安心した。福井の東尋坊でも、春の大型連休後から外国人観光客が戻ったという▼夜は妻と3人で料理店へ。ここも観光客で混雑。待ち時間のうえ、テーブルに着いて注文を取りに来るまで数分掛かった。普段なら1分も待てない妻が「函館に人が戻ってくれたのだから、いいじゃない」。被災した観光地にもこんな言葉が早くあふれてほしい。(R)


6月14日(火)

●人間の行動は、いつの時代も安くて便利な方へとなびく。当然といえば当然なのだが、今の消費動向にそれが色濃く表れている。高速道路の利用も然り。時間や安全度を考えると、無料なら既存路線は高速にかなうはずがない▼高速道路の料金問題は曲折を重ねている。政権与党が選挙公約を守ったか否かは別の論議として、社会実験の名の下に一部地方路線で実施されてきた。道東道(道央と道東)もその一つだが、無料化と同時に交通量が急増。逆に競合する国道274号は…▼日勝峠は素晴らしい景観だが、山は山、天候は変化する。安心、安全という面から、無料なら高速に軍配が上がる。誰の目にも明らかだが、実際もその通りで、国道の交通量は激減し、にぎわった道の駅も閑散とした状況と聞いたことがある▼先日、その光景を目の当たりにした。峠越えに要する時間は通常で40分ほど。午前9時過ぎに十勝側から上り始めて下るまでの間、対向車こそ十数台あったものの、最後まで前後の視界に車の姿は入らずじまい。日高町日高の道の駅に停まっていたのも数台だけ▼報道もされていたが、それにしても…。無料化実験が19日で終了すると、道央と道東を結ぶ主役の座は、再び国道へと移るに違いない。東日本大震災の復興財源捻出が理由だが、知りたいのは「将来的にはどう考えているのか」の一点。道の駅の姿は、そう問いかけているように見えた。(A)


6月12日(日)

●昔のカメラで事故現場の写真を撮ったつもりがフィルムを入れ忘れていた。支局の記者は自分で撮った写真を暗室で現像、印画紙に焼き付ける。肝心な部分を拡大するなど、構図を整えることを「トリミング」と呼んでいた…▼先の集団中毒で、焼き肉店などで生肉を扱う際、大腸菌が付着しやすい肉の表面をそぎ落とすこともトリミングと呼ぶと知った。ユッケの関係者は肉のロスが出るのを惜しんで、食品の安全性までトリミングしたのか…▼大腸菌の大半は無害だが、今回検出されたO111やO157は腸管出血性大腸菌と呼ばれ、体内に入ると毒性のたんぱく質(ベロ毒素)を出して、出血性の下痢や激しい腹痛を起こす。抵抗力が弱いと死亡するといい、今回も4人が亡くなっている▼欧州でもドイツを中心に腸管出血性大腸菌O104の感染が広がり、米国を含む13カ国で死者は20人を超えている。大腸菌はゴミ箱に捨てられたキュウリから検出されたり、モヤシなどの新芽野菜が感染源とも言われるが、裏付ける証拠は出ていない…▼先ほど発生した「かにめし弁当」の食中毒は黄色ブドウ球菌によるものだった…。ユッケやレバ刺しなどは焼き肉店の人気メニュー。この大腸菌は75度で1分以上加熱すると死滅する。中までしっかり火を通したほうが安全。もちろん、細菌が付いているかもしれない肉のトリミングを忘れずに。生肉は控えたほうがいい。(M)


6月11日(土)

●工藤寿樹市長と能登谷公市議会議長は、ともに61歳。函館発展のかじ取り役を新たに担う2人は、気心の知れた仲だ。市と市議会が“両輪”であるとすれば、その両トップの関係はまちづくりへの大切な要素となる▼函館の喫緊の課題は地元経済の立て直しであり、特に2人が口をそろえる「駅前・大門地区の再生」への注目度は高い。全市的な広い視点で取り組むべき経済施策と、地域を絞った一点集中型の再興策を両立させる。この場合、後者の対象はやはり“大門”であってほしい▼同地区は今も昔も本道における陸の玄関口であり、中心市街地の盛衰をその目に焼き付けてきた。駅前・旧市街地の空洞化は、全国でも多くの自治体が抱える課題である。再生のモデルケースになるような施策が函館の地で展開される。こうした明るい将来像を夢見る市民は少なくない▼ただ、その道のりが険しいことも事実だ。食べる気、買う気を起こさせない価格設定と商品構成。散見される強引な客引き行為。一部のこうした現実が、地域全体のイメージを悪くさせる。一般市民も足を運ぶ繁盛店はあるが、そうでない店との較差が縮まることはない▼一朝一夕で解決できない問題だけに、一方ではやりがいもある。言いたいことを言い、互いに甘えを許さないのも“同級生コンビ”の長所であるはず。大門再生への工藤市長と能登谷議長のやる気に期待したい。(K)


6月10日(金)

●「選挙の特別輸送態勢は取らないのか」。そう問われてドキッとした。選挙があると、新聞社は締め切りを遅らせ、新聞の輸送時間を繰り下げる。だが、統一地方選は終わったし、差し迫った首長選挙もなかったはず。相手を見ると、いたずらっ子のように笑っている▼何のことはない。選挙とはアイドルグループ・AKB48の「第3回選抜総選挙」のことだという。いい大人がこんな会話を交わすぐらいだから、この「選挙」をめぐる若者の熱狂は想像に難くない▼さて、実際の政局に目を移すと—。内閣不信任決議案をめぐる先のドタバタ劇の後、衆院解散・総選挙は回避されたようにみえる。ただし、それはあくまでも表面上のことであり、政党間の思惑が交錯する底流部分では、先の読めない状況が今も続いている▼その一つが、「子ども手当」の扱いをめぐる攻防だ。民主党は2009年衆院選マニフェスト(政権公約)の見直しに向けた検証委員会の論議をスタートさせたが、焦点の同手当については、結論を持ち越した。「ばらまき予算」という批判の一方で、この手当を評価して民主に一票を投じた有権者も少なくなかった▼マニフェストの大幅見直しは、「公約違反」との批判につながりかねない。「国民に信を問うべき」との解散論がある一方で、「優先すべきは震災復興対策」との声も依然根強い。総選挙はAKBに任せておく。これが妥当な選択かもしれない。(K)


6月9日(木)

●大阪府議会が議員定数の大幅削減を議決した。現行の109から21減らして新定数は88議席で、これほど大幅な削減はまれ。橋下知事率いる地域政党が議席を増やしたという事情があるにせよ、定数論議に一石を投じたことは確か▼議員の定数に客観的な妥当性はない。違うというなら、何人なら本当に民意を反映できるのか、の質問に答えなければならない。多いほど妥当性は高まる、そうだとして単に増やせば済むという話でもない。もちろん少なくていいとも片づけられない▼ただ、そこで忘れてならないのは、数(議員数)もさることながら質(見識)という視点。今の国会が分かりいい。大震災の対応が急がれる時に、政権与党は主導権争いの体たらくである。しかも続編まで見せられては、怒りを通り越して冷めた思いになる▼これでは…。「半減してもいい」という思いを抱かれて不思議でない。なにせ衆参合わせ722人(公職選挙法)である。少数政党にとっては迷惑な話だが、大政党の情けなき永田町茶番劇は、政治不信を増幅させるばかり。その結果として質論議を招いている▼削減要求は政治不信に比例する。それは(こんなレベルでは)削減しても支障がないと思われているから。事実、減らして問題が生じたという話は聞かない。恐らく大阪府議会もそうだろうし、国会ならなおのこと。要は「数より質」。今の永田町は現実の姿でそう教えている。(A)


6月8日(水)

●福島第1原発の正門から約1・7キロ離れた土壌に放射性物質のプルトニウムが含まれていた。今回の原発事故の影響とみられる検出は初めて。このところ、飲み友だちとの会話は大震災の対応に対する“愚痴”ばかり▼友だちが怒っているのは東電の加納時男顧問の発言。「低線量の放射線は『むしろ健康にいい』と主張する研究者もいる。私の同僚も低線量の放射線治療で病気が治った」(朝日新聞)。顧問のいう低線量はどんなシーベルトなのか▼がんになった友だちは確かに放射線治療を受けたが、これは医師の管理のもとで微量の放射線を照射するもの。毎日、高濃度の放射線を浴び続ける原発近くの住民にとって『むしろ健康にいい』なんて言い難い。友だちは「がんでない人には体にいいわけない」と怒り心頭▼こんな無神経な発言をするから、「放射能を体外に排出する水」とか「放射能を取り除くドリンク剤」「放射能を除去する浄水器」などを売り付けたり、太陽光発電の訪問販売トラブルも起きる。原発推進を主張してきた人物の“いいぐさ”だ▼校庭や畑の表土の除去も始まった。「硬い土をスコップ1本で掘る。1日働いて、やっと畑1枚の表土を3センチ取りました…」。土壌は大丈夫か、消費者は買ってくれるだろうか…。「大地も海も放射性物質で悲鳴を上げている時、東電や政府から、もっと安心・安全の言葉がほしい」という友だちに同感。(M)


6月7日(火)

●子供のころ、小屋の中から戦前の紙幣や証券類、古銭の束を見つけたことがある。その瞬間の心臓の高鳴りと高揚感を忘れることができない。古銭の種類を調べると、意外に価値のあるものもあり、しばらくはコレクターになった▼金銀財宝を積んだ沈没船から金塊が引き揚げられたり、工事現場から小判などの埋蔵金が発見されるニュースがあれば、やはり胸が躍った。お宝発見の話題は、そこにある歴史やエピソードに想像を巡らせるだけで楽しみが広がる▼知内町で出土した涌元古銭から、14世紀のベトナムの古銭「開泰元寶」(かいたいげんぽう)が見つかった。函館高専の埋蔵文化財研究会の発見で、しかも日本では初出土という。古銭の種類から、埋められた年代や理由を推測することができるが、それにしてもなぜ、道南からベトナムの古銭が出土したのか▼同研究会顧問の中村和之教授(東洋史)は「室町時代に南蛮船がもたらしたものが、日本海から津軽の十三湊などを経由し北上してきたことが考えられる」と語る。だが、不明な点も多いといい、「古銭から見える歴史にロマンを感じる」とも▼その時代に、何らかの経済基盤を持った人々が道南で暮らし、まとまった貨幣を用意する事情があったということだろう。目的は築城か、交易か、果ては何かの軍資金か宗教上の儀礼か…。古銭の来歴が語る道南の歴史ロマンに、尽きせぬ思いをはせる。(P)


6月6日(月)

●原発事故も誘引して未曽有の災害となった東日本大震災。間もなく発生から3カ月を迎える。穏やかな生活を奪い、多くの企業が苦境に陥れられ、なお避難所生活を余儀なくされている人たちが多いなど、被害は尾を引いたまま▼その苦しみは新聞社とて例外でない。広範囲に読者をもつ大手の新聞社はともかく、被災地を発行エリアとする地域紙にとっては死活の環境。機器類を復旧させ発行を続けられるとホッとしたのも束の間、待ち受けていたのは読者の激減という現実▼3週間ほど前の本欄で石巻日日新聞の話を紹介したが、一方で休刊を余儀なくされた新聞社も。宮城県釜石市に本社を置き、宮古市などもエリアとしてきた岩手東海新聞社はその一つ。津波に巻き込まれながら写真を撮り続けた記者がいた、と紹介された新聞社である▼社員2人が死亡、輪転機などは水没したといい、60年余にわたって続けてきた歴史にピリオドを打つしかなかった。休刊、解雇…。しかし、地域に対する熱い思いは、元社員を新たな新聞の発行へと動かした。釜石新聞社を立ち上げたのである▼11日からの発行が予定されている、その新聞の題字は「復興釜石新聞」。新規発行は大変ということを分かった上で、敢えて。被災地だからこそ…そんな心意気が伝わってくる。頑張ってほしい。そして願うは題字から一日でも早く「復興」の2文字がとれる日がくることである。(A)


6月5日(日)

●函館では2回目となる「第16回全国朝市サミット」の開催日程が、このほど10月14〜16日に決定した。3月の東日本大震災により一時は中止も検討されていただけに、関係者および市民はほっと胸をなで下ろしていることだろう▼前回、函館サミットが行われたのは2001年。つまり21世紀の最初の開催地だった。この時の分科会では「インターネットとその活用」がテーマのひとつとして取り上げられ、これをきっかけにいち早くネット販売事業に取り組む業者も登場した▼朝市の魅力といえば、対面販売による人と人とのふれ合いであることは間違いない。その一方で頻繁に足を運ぶことが難しい遠隔地の住民や高齢者にとっては、ネット環境を通じてコミュニケーションを図ることも、大事な要素になってくる。10年前にこの部分に着目していた事実は意義深い▼さて今回のサミットの具体的な内容についてはまだ明かされていない。もちろん函館朝市自身も含め、震災被害にあった各地が一致団結して復興へ向けたのろしを上げることが中心テーマであることは間違いない▼その一方で、4年後の北海道新幹線開業に向け、未来への展望を見据えることも忘れてはならない。昔ながらのノスタルジーを楽しむシンボル止まりになるか、新たなチャレンジを忘れない常に前進する存在になるか、このサミットが朝市にとって重要な岐路になるかもしれない。(U)


6月4日(土)

●JR石勝線の特急脱線・全焼事故では、喜多龍一道議会議長も1号車で事故に遭遇した。「全員が無事だったのは奇跡」。地元紙のインタビューで、乗客の冷静な行動をたたえた▼トンネル内で止まった列車に煙が入りこむ。乗客同士の助け合いはここから始まった。破ったカーテンに水を含ませ、煙を吸い込むのを防ぐ。車内販売の水も分け合った。「(足手まといになるので)置いていって」という高齢の女性を連れて逃げた。名前も知らない人たちの気持ちが一つになる、そんな瞬間だった▼忍耐力と互助の精神が際立った例はほかにもある。東日本大震災の被災者たちの対応だ。壊滅的な打撃を受けながら辛抱強く、冷静に立ち向かうその姿に、世界各国から賞賛の声が寄せられた。互助精神に富んだ国民性に誇りを感じたという人も多かった▼ところが、こうした美徳からかけ離れた茶番が国会で繰り広げられた。菅内閣不信任決議案をめぐる各党の対応からは、震災後の難局を助け合って乗り切ろうという「オール日本」の意識がみじんも感じられなかった。まさに国民不在の政治だ▼足の引っ張り合いで分裂寸前の与党。衆院解散も辞さないと開き直った菅首相。代案のない政府批判に終始する野党…。国会がこの調子では、緒に就いたばかりの震災復旧・復興対策に多くを期待できない。震災を政争の具にしないで—。せめてもの国民の願いである。(K)


6月3日(金)

●水無月なのに寒い日が続く。雷が鳴ると思えば太陽が落ちるとひんやり。昔は鳴神月(なるかみづき)や涼暮月(すずくれづき)と呼ばれたいわれに納得。国会議事堂や永田町にも、この雷鳴がとどろいた…▼未曾有の東日本大震災、収束の見通しが立たない福島原発事故への対応の遅れを巡って、野党から内閣不信任決議案が提出された。「お辞めになってはどうか」(党首討論)など政争の具に終始。被災者不在、国民不在の“貧弱な政治”▼内閣不信任案は衆院本会議で反対多数で否決されたが、菅直人首相は、その前の民主党代議士会で「対応が不十分だった」と陳謝し「震災の復興基本法を成立させ、二次補正予算のメドがついた段階で若い世代に責任を継ぎたい」と首相辞任を表明した▼「日本の首相の任期は1年」というルールが定着した? しかも鳴神月の6月はリーダーが代わる月。戦後は4人の首相が交代している。阪神大震災の復興基本法は発生から36日後に成立しているが、今回はスピード成立を願いたい▼菅首相は「辞めたら松山の五十三礼所から八十八番礼所まで、お遍路を続ける約束も残っている」と付け加えた。被災地は弘法大師が言う「郷里の縁者を離れ、子でもなく臣でもなく、ただひとり貧しさ」に苦しんでいる。被災地が「鳴神の追い打ち」を受けないように、政治家は与野党の別なく、列島に垂れ込める梅雨空を晴らしてほしい。(M)


6月2日(木)

●健康志向からジョギングの愛好者が増えている。函館・道南でも五稜郭公園などで朝夕、走る人の姿が見られるが、全国的な傾向。東京では皇居を一周するコースなどが人気を集め、その様子は話題としてテレビなどで取り上げられている▼定期的に続けることで体が作られ、走る距離は延び、時間も縮まる。それが自信となって大会にも出てみたいという気持ちが生まれてくる。この域に達すると、紛れもない市民ランナー。その舞台となるのが市民マラソン(大会)で、今や全国各地で▼先駆的存在は1967(昭和42)年スタートの青梅マラソンであり、象徴的な存在にのし上がってきたのが東京マラソン。陸連公式の大会でもあるが、市民ランナーの出場枠が多い点で市民マラソンの趣旨を残している。そして地方に目を向けると、かなりの数に▼その一つが宮城県の松島ハーフマラソン大会。既に34回を数える歴史を持ち、景勝地の松島の眺めを堪能しながら走るということで人気が高く、昨年は6000人が出場している。ところが、3月の東日本大震災…。中止の観測も流れた中、関係者は敢えて開催を決めた▼20キロのコース設定は見送られるが、こんな時だからこそ開くべき、と。多くの市民ランナーに復興の様子や頑張っている姿を見てもらいたい、という思いもあろう。10月9日の松島路は、必ずや市民ランナーの笑顔であふれるに違いない。「がんばってます東北」。(A)


6月1日(水)

●福島第1原発の作業拠点となっている免震重要棟は水素爆発で放射性物質が入りやすかった。当然、呼吸や飲食などで放射性物質を体内に取り込み、体内から放射線を浴びる。大量の内部被ばくは、がんになるリスクが高い▼恐れていた内部被ばくの実態が明るみになった。第1原発で復旧作業に当たっていた東電の男性社員2人の累積被ばく量が、上限250ミリシーベルトを超える「内部被ばく」を受けていた。中央制御室などで働いていたが、蓄積を妨げるヨウ素剤を服用していなかったという▼31人が死亡したチェルノブイリ原発では事故処理に当たっていた消防士や発電所職員の大半は内部被ばくを受けた。放射性物質を含んだ蒸気やチリが発生し、衣服が濡れ、それを通して体内に沈着したのだ。30キロ圏内の住民も被ばく線量を超えたという▼特に甲状腺への被ばく線量は子供のほうが高かった。大気中に放出された放射性物質は空気や食物連鎖によるミルクなどを介して乳幼児に摂取されることが多い。胎児や乳幼児、小児の健康を害し、25年経った今も甲状腺がんなどで苦しんでいる▼福島原発の周辺住民も内部被ばくした可能性があるといわれる。海底の土からも通常の数百倍に当たる放射性物質が検出された。文部科学省は、子供が年間に浴びる放射線量を「当面、1ミリシーベルト以下を目指す」とした。早く放射能で汚染された衣服から衣替えしたい。(M)