平成24年3月


3月31日(土)

●カーネーションを手に母親の深い愛に包まれた幼子。日常的な平和を象徴する絵図は観る人の心をなごませる。小さな花を中心に聖母とイエスを描いたレオナルド・ダ・ヴィンチの「カーネーションの聖母」▼感謝を込めて「母の日」に贈るカーネーション。赤色の花言葉は「母への愛」「情熱」…白は「尊敬」「わたしの愛は生きている」など。題を「カーネーション」としたNHKの朝ドラは今週末の最終章「あなたの愛は生きています」で終章▼岸和田のだんじり祭りから始まり、糸子が「女にしか出来んことを見つけて自由に生きたい」と裁縫を覚え、3姉妹を育てる涙と笑いの奮闘記。足踏みミシンを踏みながら、戦後の闇市などで威勢のいいタンカも切る▼敗戦、復員、焦土…混乱の世を駆ける男性に比べ、女性は現実的。糸子は闇市でパーマネントの女を見つけ、敏感に今後のヘアスタイルを感じとった。狙い通り大流行。幼いころ、母親もパーマネントに走ったことを覚えている。食べ物も十分なかったのに…▼糸へんに半分と書いて「絆」、糸へんに吉と書いて「いいこと結ぶ」。この二つで糸子は生き抜いた。食糧難と停電は日常茶飯。今の列島は地震、津波、原発事故、風評被害、余震の5重苦。最近は原発事故で節電、節電というが、朝ドラは「贅沢な今」を反省させる。糸子は最後に「絆で結ばれた震災復興の絵図を実現して」と叫ぶだろう。(M)


3月30日(金)

●「説明責任」。政治や経済ニュースなどで耳にする言葉だが、その意味は読んで字のごとし。国語的には説明すべきことを責任をもって伝えること。世情的には政府や企業などが住民や消費者に権限行使をする場合に必要な理由などの説明▼さらに噛み砕くと、現状を変える際に欠かしてはならない手続き、となろうか。それが十分に尽くされ、申し訳ないという気持ちが伝わったら理解が広がる。つまり「説明責任」を果たしたことになる。逆にそうでないと受け止められたら…▼民主党の消費税議論、東京電力の電気料金値上げ問題は残念ながら後者。消費税問題は賛成、反対派とも、何故、という疑問に答え切っていない、理由の説明が十分でないから、いくら否定したところで、党内政局の動きとしか映ってこない▼東電の場合は明らかな欠如。あくまで推測の域だが、原発事故があった、補償に金がかかる、代替発電のコストが増える、だから値上げするしかない、ということだろうが、問題は…。値上げに行き着く前に、どれだけ身を削り、誠意をもって説明したか、ということである▼8割以上の企業が同意していない現実が、すべてを物語っている。大きな負担を強いる問題ほど、理解を得るための姿勢や努力が求められて当然。その前提にあるのが「説明責任」で、二つの事例は、それをないがしろにしては付けが回る、と教えている。(A)


3月29日(木)

●鶴竜の大関昇進で話題を集めた大相撲春場所。その一方で、昭和の名大関が一人、相撲協会を定年退職する。研究熱心なことから「相撲博士」の異名で知られた旭国、のちの大島親方である▼小兵だが、記憶に残る大関だった。強じんな足腰と敏捷な動きの中から繰り出す投げやひねり技の数々。食らいついたら離れない姿から「ピラニア」とも呼ばれ、下位力士相手には取りこぼしがほとんどなかった。しかし、後半の大関、横綱対戦になると負けが込み、優勝は一度もなかった▼それもやむを得ないだろう。当時の大関には貴ノ花や魁傑、のちに綱取りする三重ノ海と若三杉(若乃花)、そして横綱に北の湖、輪島がいたのだから▼はり治療で体中にばんそうこうを貼った姿がまぶたに残る。満身創痍という言葉がぴったりで、内臓の病気で入院しているのに、病院から本場所に通ったこともあった。医者が止める中で「土俵で死ねるなら本望」とも語った。そんな名大関の、傷だらけの賜杯姿を一度見たかった▼鶴竜の昇進で、大関は史上最多の6人。大関が多いと星のつぶしあいもし烈になる。それで面白くなるか、皆小粒に見えてつまらなくなるか。鶴竜は伝達式で「稽古に精進し、お客様に喜んでもらえるような相撲を取りたい」と述べた。そのためにはまず、命をかけて名勝負を繰り広げた旭国のように、根性あふれる土俵を追い求めてほしい。(P)


3月28日(水)

●ロンドン五輪の開幕まで4か月。国内では男子サッカーがアジア予選を勝ち抜き出場権を獲得。花形競技であるマラソンも、男女それぞれ3つの代表枠が発表されるなど、いよいよ夢の幕開けが近づいてきたことを実感させられる▼アスリートにとって世界最高峰の舞台は、国内や地域のライバルとの戦いに勝利して出場資格を得ることが至難の技。女子マラソンの金メダリストで、2大会連続で日本代表に選ばれた野口みずき選手でさえ、最終選考レースで敗れ、3度目の五輪出場をかなえることはできなかった▼そんな中、2人の芸能人の五輪挑戦が話題となっている。男子マラソンの猫ひろしと女子ボクシングのしずちゃんこと山崎静代だ。どちらも短い競技歴ながら、猫はライバルの少ないカンボジアに国籍を取得し見事に代表の座を獲得。しずちゃんは、5月の世界選手権でベスト8入りすれば五輪出場を果たすことができる▼この2人の奮闘に対し、世間の声は意外に冷たい。ネット上では「芸人が片手間に五輪を目指すなんて、これまで頑張ってきた一般選手に失礼」などと厳しい声も▼しかし、芸能人であることがメリットにもならない世界で正々堂々と戦い続けている彼らに、第三者が文句をつける筋合いはない。他の日本選手同様に、結果が出たときは賞賛の拍手を送り、だめだった時は「よく頑張った」とねぎらってあげたい。(U)


3月27日(火)

●古くて新しい課題、それは幾つもあるが、若者の離職もその一つ。新規就職後一年、三年以内に辞める若者が多いという統計に出会ったことがあるが、今も状況は同じ。そして国の対策は、というと、これまた同じで、決め手を欠いたまま▼政府は先日、新たな調査データを公表した。「まさか」。あ然とした思いで受け止めた人も多かったに違いない。というのも、離職に加え、安定した立場で働けている人の割合が、あまりにも低かったから。あくまで推計とはいえ、これほどとは…▼「大学や専門学校を卒業、中退後に正社員など安定した仕事に就いている人の割合は48%」という。新卒市場は依然として狭き門、望む仕事は叶わない、でも採用された。だが、気持ちが持続しない、となって離職へ。一方で非正規雇用が増えている▼この調査では2010年の大学・専門学校卒業者の分析もされているが、3年以内(残り1年)の推定離職率は、驚くなかれ35%。人数にして20万人という。高齢者も然りだが、労働市場はともかく閉塞感に包まれた状態が続いている▼その根っこにあるのは低迷、混迷が続く経済情勢。経済政策に勝る雇用対策はないと言われるが、ゆえに批判はあれども頼る先は国。6月をめどに総合対策をまとめるとしているが、小手先の、気休めの対策とならないように…残念ながら、そう期待するしか術はない。(A)


3月26日(月)

●稚魚の不漁でウナギが高値を付けている。万葉集で「夏痩せに良し」と詠まれ、平賀源内が土用の丑の日を宣伝した話などウナギは夏場に食べるものだと思っていたが、土用の丑は春、秋、冬にもある▼最近、スーパーなどでも四季ごとウナギの効用を紹介して売り込んでおり、久しぶりに鰻重(うなじゅう)を食べたが、今年は極度の不漁のためか、すっかり高値の花。稚魚のシラスウナギの回遊のピークが大きく遅れているのも原因の一つ▼回遊は海流の影響が左右し、特にエルニーニョの年は稚魚の数が激減すると指摘されている。かば焼き店向けの親ウナギの出荷値は標準的な5匹で4500円、前年の倍近くにはね上がり史上最高だという。小売価格は3倍にもなるようだ▼東大などの研究チームは天然のニホンウナギの卵を世界で初めて公開した。西マリアナ海嶺で透明な膜に覆われた卵を採取。新月の数日前に異なる塩分の海水が混じる場所で産卵しており、産卵環境を分析すれば養殖による量産化も可能というが…▼ウナギ代打で、天ぷらの食材で知られるマアナゴの稚魚も沖ノ鳥島南の海域で採取され、産卵場所が特定された。日本人はウナギが大好き。ウナギには、たたりなどを引き起こさない霊力が宿っているとも。だから無病息災を願って四季ごとに食するのか。「ウナギあるか」に「ないよ」という寂しげな声は聞きたくない…。(M)


3月25日(日)

●戦中の軍隊や一昔前の体育会系大学ならいざ知らず、いまどきの虐待や体罰はれっきとした犯罪である。無抵抗の相手を痛めつける。とがめる者がいなければ、その行為は際限なく繰り返される。痛める側の内面に悪魔が住み着いたとしか思えない▼函館市内の要介護施設で、従業員による入居者への虐待があった。40代の女性従業員2人が要介護認定を受けている男女5人に対し、後頭部を平手打ちし、部屋の入り口に自転車のチェーンロックをかけた。「死ね」と言ったり、土下座を強要することもあったという▼高齢者に対する虐待は増加傾向にある。市は虐待をする原因として、介護負担などの精神的ストレスや家族関係の悪さなどを挙げる。しかし、今回の函館のケースは市の認可施設での出来事であり、そこに常駐するのは“介護のプロ”たちだ。「精神的ストレス」などという甘えがそこに存在していいはずがない▼一方で、子どもに対する虐待も後を絶たない。1歳の娘に暴行を加えて死亡させたとして、傷害致死の罪に問われた両親の裁判員裁判が大阪地裁であった。両親に下された判決は懲役15年だった▼虐待の多くは家庭や施設内といった“密室”で行われる。第三者の目につきにくい分、未然防止は難しい。ただ、家族や関係者などがアンテナを高くすることはできる。要はお年寄りや子どもを見守る、という意識の持ちようである。(K)


3月24日(土)

●市営住宅への入居希望者は多いと思っていたが、必ずしもそうとは限らないようだ。函館市の中堅所得世帯向けの市営住宅「特定公共賃貸住宅」(特公賃)は空き家が目立つという。このため市は4月から、初めて家賃の引き下げに踏み切る▼市内の特公賃は4カ所。本紙の記事によると、今回は「弥生団地」(弥生町5)と「豊川団地」(豊川町3)の2カ所が値下げの対象となる。弥生は1997年、豊川はその前年に建設された。いずれも凝ったデザインの外観と、機能的な内装が際立つ存在だった▼私事で恐縮だが、弥生の特公賃が完成した直後から数年間、この団地に入居したことがある。記事を引用すると、「元町公園や旧函館区公会堂から徒歩5分。港が見える閑静な住宅街に立地する」。景観を含む周辺環境の素晴らしさは、「住んでよかった」と思わせてくれた▼ところが、数年前に同団地前を通り掛かって驚いた。外から見えるドアはさびつき、雑草も目立つ。空き家は傷みが早いというが、それを差し引いても手入れが足りないことは一目瞭然。市は本当に新たな入居者を探す気があるのか—と首をかしげざるを得なかった▼西部地区への定住化の促進は、函館市の懸案の一つだ。なぜ特公賃の家賃引き下げをもう少し早く決断できなかったのか。理由はあるのだろうが、荒れた居住環境を見る限り、定住促進への市の本気度が問われても仕方がない。(K)


3月23日(金)

●春を告げる我が国の“緑遺産”と言えば「桜」。一週間たらずの短い間だけ咲き乱れ、その美しさとはかなさは、愛でる人たちを魅了して止まない。冬の低温気象から開花が遅れ気味の今年も、その季節が訪れようとしている▼日本さくらの会が定めた「さくらの日」(3月27日)も間近である。東京が開花から満開を迎える時期と重なるが、制定日の裏に深い理由はなく「さくら」と「3(さ)×9(く)=27」の語呂合わせ。それはさておき、4月に入るや東北へと北上してくる▼日本気象協会によると、今年の開花は軒並み1〜4日遅れということだが、この「桜」の時期を一つのターゲットに「東北観光博」が開幕した。東日本大震災で厳しい環境に置かれている中で、企画した経済復興の起爆剤としての期待を乗せて▼「東北ぜんぶが博覧会場」をコンセプトに、来年3月末まで。「東北の美しい風景と心に触れてほしい」との願いを込めての開催。特に首都圏の人たちには観光面でまだまだ未開拓であり、ある意味、東北の良さを知ってもらう格好の機会でもある▼ちなみに「桜」の開花予想は、北上が4月22日、弘前や盛岡が23日、角館(仙北)が24日。さらに夏は夏、秋は秋で観光資源がたくさんある。函館・道南は東北と親戚のような関係にある。訪れよう東北を。元気を出してもらうために。新たな発見があるかもしれない。(A)


3月22日(木)

●日本の水はおいしくて安全で安い。外国からきた観光客はレストランや喫茶店でも水が無料で出てきて、お代わり自由なことに驚くという。欧州では水はコーヒーやビールと同じく有料らしい▼子ども1人が生きるためには1日にバケツ2杯(20リットル)が必要。よくアフリカの少女が遠くまででかけて水を汲んでくる映像を見かける。途上国では不衛生な水で年間190万人の子どもが命を落としており、世界の人口の40%が水不足に直面している▼長い歳月をかけて森林をくぐってきた地下水や伏流水。森林は貴重な水源。数年前から日本の水資源を狙って海外資本が蝕手を伸ばしている。北海道では香港の企業に羊蹄山ふもとで57ヘクタール(東京ドーム12個)の森林が買収された。中国では干ばつなどで420万人分の水が不足している▼ユニセフは「安全な水」を世界の貧しい人々に提供しようと訴えているが、日本の森林が買い占められたらたまらない。高橋はるみ知事は、水源地域の売買に事前の届け出を義務付ける「水源地条例」を道議会に提出▼22日は「世界水の日」。18年前、水資源の管理・保護を強化しようと国連総会で決まった。この日は仙台の東北大と藤沢市江ノ島、東海村の3会場をインターネツトで結び「世界水の日子ども議会」が予定され、被災地の子どもたちが世界に届けたい水への思いを発表するという。「安全な水」を守ろう。(M)


3月21日(水)

●2005年公開の「シスの復讐」でシリーズが完結した映画「スターウォーズ(SW)」が、3D版としスクリーンによみがえり大きな話題を呼んでいる。今後は6部作すべてがリニューアルされるというから、またまた人気が再燃しそうだ▼SWの記念すべき第1作目が公開されたのが1977年(日本では78年)。小学生だった筆者は、大スクリーン上の宇宙空間で展開される華々しい冒険活劇に完全にノックアウトされた▼当初9部作(のちに6部作に変更)と発表されたシリーズだが、1983年の「ジェダイの復讐」で最初の3部作が完結すると、その後は続編の話題が途切れてしまう。誰もが新作をあきらめかけていた97年に、まずは旧3部作の特別編が発表されると、99年からついに待望の新3部作が始動。再びSW旋風が世界を包み込んだ▼何よりSWが凄いのは、世代を超えて幅広い人たちに支持されているということ。筆者のように旧3部作時代に若者だった人たちが、今は自分の子どもたちと一緒に劇場に足を運んでいるのだ▼DVDなどを使って簡単に昔の映画を楽しめる時代になったが、SWの場合、定期的に新作やリニューアル版が登場することで、何度も大スクリーンでその感動を味わえるのが大きな強み。今回の3D化によって平成生まれの世代にも、筆者が子ども時代に体験した迫力の大絵巻を体全体で感じとってほしい。(U)


3月20日(火)

●震災被災地のがれき処理が進まない。被災3県のがれきの量は約2250万トン。各自治体が自前の処分場で処理するには数十年かかるという。そこで東京都の石原知事が受け入れを表明して広域処理が始まり、環境省も全国の自治体に協力を呼び掛けている▼ただ考えなくてはならないのは、放射性セシウムの濃度が1キロ当たり8000ベクレル以下であれば、通常の埋め立て処分をしても差し支えないとする環境省の基準。その一方で、同100ベクレル以下であれば放射性廃棄物として扱わないとする別の基準もある▼今回の原発事故では、正しい情報公開、危険に対する甘い評価が繰り返し問題となっている。函館・道南でも、官民で受け入れを検討する動きがあるが、各自治体や住民は「放射性物質の安全性」に対し疑心暗鬼になっているのではないか▼仮に首長が強い意志で、受け入れを表明したとする。互助の精神から支持する住民も少なくないだろう。一方で首長は、住民の生命と財産を守る責務があり、強い反対に遭うのも目に見えている。住民を二分する争いになったらまちづくりにも影響する▼しかし、震災後に世界が賞賛した「日本人の絆」を後退させてはならない。日本全体でがれき問題に向き合い、何が協力できるかを考え、国難を乗り越えていきたい。国も国民が納得できる安全基準を早期に示し、正しい説明することが必要だ。(P)


3月19日(月)

●「本が読まれなくなった」。そう言われて久しい。裏付けるように書籍類の売り上げは低迷し、調査データからも読書量の落ち込みははっきりと。月に1冊も読まない人も少なくなく、全年齢平均で40%台という報告があるほど▼特に懸念されているのが子どもたち。読書は洞察する力など、いわゆる国語力を養う原動力の一つだからだが、遊びの多様化などが本離れをうながし今日に。かつて本が楽しみの柱という時代があった。小中学生向け別の月刊誌なども人気だった▼それらも一つひとつ姿を消して、1990年代、小中学生の平均読書量は月1・3冊まで落ちた。親自体が読まなくなって、家庭でも口うるさく読書を勧めなくなった。危機感を抱いたのは学校現場であり、「このままでは」と試みられたのが「朝の読書」▼以前にも本欄で触れたことがあるが、授業が始まる前に、読書のための時間を設ける取り組み。全国的推進組織が行った2月の調査では、高校を含めた実施率はほぼ4校に3校の73%。ちなみに北海道は小学校63%、中学校65%、高校41%▼逆に90%台の県も幾つか。佐賀県の94%を最高に鳥取、山梨県92%、島根、秋田、福井県91%など。広がる取り組みの成果もあろう、子どもの読書量が若干ながらも回復の基調にあるという。何事もそうだが、大事なのはきっかけづくり。さらなる「朝の読書」が望まれる。(A)


3月18日(日)

●北京五輪の開会式で9歳の少女が歌った国歌(革命歌曲)は「かわいらしく上手」とほめられたが、別の7歳の少女が歌った「口ぱく」だったことが暴露された。トリノ五輪でもテノール歌手の熱唱が「口ぱく」だったという▼卒業式などで歌う国歌「君が代」の場合はどうなるのだろう。先ほど、大阪府立高校で君が代斉唱の際、教頭らが教職員の起立に加え、君が代を実際に歌っているかどうかを口の動きでチェックしていた。3人のうち1人が「口ぱく」を認めたという▼大阪府で全国初の君が代の起立斉唱を教職員に義務づける条例ができた。府教委は学校側に「起立斉唱を目視で確認せよ」と指示。これまでも14高校の教員17人が不起立を理由に戒告処分を受け「職務命令に従う」誓約書に押印しているという▼学生のころ「校則は破られるためにある」とか「例外のない校則はない」などと騒いだもの。かつて中学生が丸刈りに反対して「長髪は子どもの権利条約…」と言うと「校門をくぐったら憲法より校則優先だ」と一蹴された話もあった▼大阪府の条例は同じ職務命令を3回違反したら免職にするとも定められている。確かに条例、校則、ルールの厳守は必要だが、口を動かさなくても胸のうちで斉唱しているかもしれない…。今は歌番組でも「口ぱく」が盛ん。中国少女の真相は分からないが、「口元監視」は教育環境をグレードアップさせるだろうか…。(M)


3月17日(土)

●—あの日のことは、思い出すのさえつらく、苦しい。でも同時に、多くの人に、忘れずに憶えておいてもらわなくてはなりません。なぜなら、震災はいつかまたどこかで起こるかもしれないから(東日本大震災3県4紙合同プロジェクトの特集紙面から)▼決断までには葛藤(かっとう)もあっただろう。「3・11」から1年。岩手日報(岩手県)、河北新報(宮城県)、福島民報・福島民友新聞(福島県)は、被災地の「あの日」と「いま」をあらためて伝える紙面を発行した。計8ページ。津波被害の生々しい写真や、「死者・不明多数」などの見出しが目を引き、当時の記憶がよみがえる▼日本新聞協会は「メディア接触・評価調査」を実施した。新聞を読んでいる人は87・3%。東日本大震災後の新聞の印象については、「地域と密着している」「世論を形成する力がある」と感じている人が6割以上いた▼地区別に見ると東北地方は、「新聞の情報は正確だと感じた」(66・1%)、「新聞の役割を再認識した」(60・7%)など、いずれも全国平均より10ポイント以上高くなった▼「時とともに、震災の記憶の風化も進んでいる」「震災を忘れず、震災から学ぶ」。東北4紙合同プロジェクトは、新聞づくりに携わる者すべての思いを代弁する取り組みである。新聞は万全、万能ではない。が、読者の暮らしに添い続けることはできる。これまでも、これからも。(K)


3月16日(金)

●この10数年、月に一度はJR北海道を利用する。ビールを飲みながら本が読める、至福の時でもある。それにしても思うのは、本数(特急)が増え、速くなり、乗り心地も良くなったこと。そう、忘れてはいけない、サービスも▼乗車前に買い込まなくても、弁当や飲み物などは売りに来てくれる。そして、座席には各地の話題や紀行などが掲載された社内誌が。今月号には客室乗務員の話が掲載されていた。いわゆる紹介記事だが、北海道では22日で満15年になるという▼デビューは1997(平成9)年、道東に振り子が導入された時。車内サービスを行う専門のスタッフとして誕生し、晴れの一期生は16人だった。現在は約120人が道内を走る特急に1人か2人乗務し、丁寧な接客と笑顔が社内の雰囲気を和らげている▼交通機関として最も求められるのは「安全」である。定時運行も含め信頼の柱だが、さらに挙げるなら「速さ」と「心地よさ」だろうか。その心地よさの範ちゅうには、きれいな車内環境はもちろん、客室乗務員が果たしている役割も入れていい▼紹介記事は「改めて“客室乗務員のおもてなしの形”をアピールします」と結ばれていた。そして記念のロゴシールには「お客様の笑顔のために走り続けます」との添え書きが。爽やかな響きを伴ったメッセージだが、その大前提はあくまで「安全」。改めて言うまでもない。(A)


3月15日(木)

●「見上げてごらん 夜の星を〜」 この歌で被災地は励まされた。その夜空に無数の「宇宙ゴミ」が漂っている。ソフトボールより大きいものだけでも約2万個。いつ地球に落ちてくるか分からない…▼宇宙ゴミは弾丸より速い速度で飛び交い、飛行士らが困っている。そこで、スイスの大学が「ゴミ回収衛星」の打ち上げを計画。アームで宇宙ゴミを集め、大気圏に突入させて燃焼処分にしようというもの。日本でも魚網メーカーが宇宙ゴミ回収網の開発を進めているとか▼今、星を見上げる列島で問題となっているゴミは大震災から出た瓦礫(がれき)処理。岩手、宮城、福島の3県で発生した瓦礫は推計2253万トン。このうち最終処分済みは6・7%。瓦礫処理の受け入れを表明したのは11都道府県、32市町村だけ(NHK調べ)▼「東京電力が出した汚染物質をなぜ九州で受け入れないといけないのか」「放射能を浴びていない瓦礫は国民みんなで負担しないといけない」—瓦礫受け入れの決議案を可決した北九州市議会の傍聴席は、賛否の怒号が飛び交った▼北海道は「放射能をクリアすれば積極的に受け入れたい」(高橋はるみ知事)。政府は震災から1年経ってようやく重い腰を上げ、全国の自治体などに再生利用を含め広域処理を指示した。「処理の絆づくり」を構築しよう。いっそのこと、宇宙ゴミのようにロケットに積んで大気圏で燃焼させますか…。(M)


3月14日(水)

●『元女性自衛官「セクハラ話したらパワハラ」』。読売新聞の13日付インターネット版にこんな見出しの記事が載った。これだけでは何があったのか分かりづらいが、記事を読んで合点がいった。事の経緯は次の通りである▼上司からパワー・ハラスメント(職権による人権侵害)で退職に追い込まれたとして、陸上自衛隊真駒内駐屯地に勤務していた江別市の元女性自衛官(23)が、国に約1130万円の損害賠償を求めた。その第1回口頭弁論で女性の意見陳述が行われた▼「(上司の)セクシュアル・ハラスメント疑惑について真実を話したのに、迫害を受けた」。女性はこう訴えた。セクハラについて話したことがあだとなり、逆にパワハラを受けたという主張だ。口頭弁論で国側は請求棄却を求めたという▼同じく13日付の本紙。「法務局なんでも相談」でパワハラへの対処法が紹介された。パワハラの定義は難しい。「上司に怒鳴られた」という今回の相談者に対する法務局の答えはこうだ。叱責に加えて「うわさ通りの役立たずだな」「仕事しなくていいから帰って寝てろ」などの言動が日常的に続けばパワハラ行為となる▼時代は変わった。昔は素通りだった上司の言動が問題視され、裁判にまで持ち込まれる。「自分のミスだから」「仕事だから仕方がない」と一人で悩まず、相談を—。法務局の呼び掛けが耳に届くことを願いたい。精神的に追い込まれる前に。(K)


3月13日(火)

●無用な政党間の駆け引きは勘弁してほしい…そんな思いを抱くことが多々あるが、子どもに対する育児給付の問題も然り。「手当」に異論はないが「児童」はだめ、「子ども」はだめ、と。名称はその趣旨が解ればいいだけなのに▼子どもは国の宝。だから国家、社会も子育てのお手伝いが必要と給付制度が設けられて40年。自民党政権時は「児童手当」という名称で。そして今、民主党政権は「子ども手当」。中身では歩み寄っているのに、大政党にとっては名称が重要らしい▼民主党が前回総選挙で目玉に据えたのが、この「子ども手当」だった。「児童手当」への対抗で、所得制限を撤廃し、給付額も倍増に。そこまでは良かったが、財源の問題から現実はご存知の通り。減額を余儀なくされ、所得制限もせざるを得ない状況に▼何に使われるか定かでない現金の給付より、育児施設の増設や経費負担、さらには学校給食費の無料化などをすべき、といった議論もある。だが、現金給付は途中で止めるのが難しい。変更しても制度の継続に当たって大事なのは中身である▼なのに名称に拘る。「子ども」を守りたい民主党、「児童」を譲れない自民党など。「子どもための手当」「児童成育手当」「児童のための手当」が、出ては消えるという状況。はっきり言って、どうでもいい議論。そこから伝わってくるのは政党の面子争いの姿でしかない。(A)


3月12日(月)

●自害したとみられる高齢者の弔いに出かけた。「子どもが寄りつかなかった」—いろんな噂が出て、悲しくなった。自殺者が最も多い3月は自殺対策強化月間。そのキャッチフレーズに「あなたもGKB47宣言」というのがあった▼標語は分かりやすく覚えやすいのがいいに決まっているが、人気アイドルグループ「AKB48」をもじった造語には違和感を覚えた。若い人たちの間にはゴキブリを意味する言葉で、彼らは「ゴキブリ(GKB)は死にな(47)」と読んでいる▼自殺対策とアイドルグループとの語呂合わせは月とスッポン、水と油の差。国会でも「遺族が聞いたらどう思うか。信頼を失う」とヤリ玉にあがり、野田首相も「私も違和感を感じていた」と見直しを指示。代わる標語は「あなたもゲートキーパー宣言!」▼ゲートキーパーは「門番転じて見守る人」。悩みを抱える人に気づき、一声かけてやる人を指す。47都道府県のみんなが「命を見守る人」であるべきだ。深く考えないで付けた官庁流標語のポスター25万枚を破棄処分。約300万円がムダ使い▼こうボヤいている今も日に80人超が命を絶っている。悩みを持っていても自治体の相談窓口に行く気力もない「心配な人」がたくさんいる。地域住民も危険に気づくセンサーを養うゲートキーパー研修が必要かも。被災者に寄り添って「ひたすら耳を傾ける」だけでも、効果があるものだ。(M)


3月11日(日)

●賛否両論、ときに反対論が根強い中で押し切るのが政治判断である。国民の多くが反対するからそちらの側に立つ、では政治はいらない。例えば増税。誰だって嫌だが、将来の社会保障などを見越せば、今のままでいいとは多くの国民が思っていない。だから政治が判断する▼定期検査で停止中の原子力発電所の再稼働について、政府は地元に合意を求める前に、首相と主要閣僚が政治判断をするという。地元と合意後、再び国が判断する流れで、大局的な見地から再稼働を考えていくということであろう▼政治が果たす重い役割だが、安全性の確保を何より優先することを願う。経済や生活を支える電力の安定供給は大事だが、命にかかわる安全性をないがしろにしてはならない。福島の人たちがどれだけ涙を流し、人生を狂わせられたことか▼函館市の対岸、青森県大間町で建設が凍結されている大間原発は、世界で初めて全炉心で混合燃料を使う。いずれやってくる建設再開をめぐる判断でも当然、安全性が優先されなければならない。原発神話が崩壊した中で、それをどう証明できるのか▼東日本大震災からきょうで1年。償いきれない多くの財産を黒い波がのみこみ、これまでの価値観がひっくり返された。そして命や絆の大切さが見つめ直された。未来を築くのは、人。その命をもう失わせないことを心に刻み、犠牲者への鎮魂としたい。(P)


3月10日(土)

●道南農試の農業新技術発表会が今年も開かれた。目まぐるしく変わる国の農政の中で、北海道農業を今日のレベルまで押し上げた要因は多々ある。農業者の地道な努力、営農指導の体制もそうだが、忘れてならないのは品種開発や技術改善▼いずれも根底で支える、地道で時間のかかる研究であり取り組み。厳しい気象条件の中で質の向上や安定生産のためには、地域に適した新品種を生み出し、一方で施肥や防除などの新技術は不可欠。その一翼を担う存在に農試がある▼数々の研究成果はどう農業者に届くのか。農業改良普及員を通して、という流れが一般的だったが、それだと時間がかかる。「新しい情報は早く現場に」。研究機関と現場の距離を縮める体制が求められ、具体化させたのが、こうした研究成果を直接、説明する機会▼20数年前だった。当時勤務していた新聞社が初めて企画した農業者向け発表会を担当した経験がある。道東にある農試の協力を取り付け、発表内容の概略をまとめた冊子を製作。迎えた本番、心配をよそに300人が訪れ、安堵した記憶がある▼同農試の発表会開催は14回目。今回は中央農試との共同開発による水稲の「空育172号」や黒大豆の「中育63号」などの新品種が報告されたという。近年は農業者にも試験場が身近になってはいるが、さらに…。北海道農業の明日につながると思うから。(A)


3月9日(金)

●午前2時。いつものように起き出した父は、停電で真っ暗な作業場に懐中電灯をつるした—。父の仕事は新聞販売店の店主。「今日は配らなくても…」と思わず声に出した自分に、父は手を休めずに言った。「今はラジオか新聞しかないんだ」▼岩手県内に住む17歳の少年が、大震災発生翌日の様子をこうつづった。日本新聞協会が募集した「第18回新聞配達に関するエッセーコンテスト」で最優秀作の一つに選ばれた。新聞は作るだけでは完結しない。常に配達する人たちの使命感と誇りに支えられている▼東北の新聞社を舞台にした「河北新報のいちばん長い日」(文藝春秋)。同紙は震災の非常時にも休まず新聞を発行し続けた。関係者の闘いの様子はドラマ化され、先日放送された。新聞の配達準備を優先し、津波の犠牲になった販売店主の姿が涙を誘った▼あれから1年。本紙は、被災者の肉声を伝える連載企画を皮切りに、函館朝市の復興への道のり、各界各層の防災への取り組みなどを紹介してきた。今後も課題などを掘り下げた検証企画などを予定している。取材へのご協力を引き続きお願いします▼出来上がった新聞をお届けするのは、言うまでもなく販売店、販売員の仕事である。「ご苦労さま」の一言でいい。配る側にとってそれは、万言にも勝る励ましになるだろう。作る、配る、読むの反復は続く。あの悲劇を忘れないためにも。(K)


3月8日(木)

●レストランやホテルなどを星の数で格付けする「ミシュランガイド」の北海道版が4月に刊行される。この計画が発表されたのは昨年10月のこと。「函館・道南からはどの店が掲載されるか」。自慢の舌で独自の格付けを楽しむ地元食通もいる▼国内では東京版、関西版に続き3シリーズ目。調査員が道内各地の飲食店やホテルなど数百施設を匿名で訪れた。新鮮な魚介類を扱う道南の名店はぜひ掲載してほしい。さらに、ラーメンなども評価の対象というから、味に自信の地元大衆店にもチャンスはある▼ここ道南は「食材の宝庫」として不動の地位を築いた。ただ、新鮮なだけというのでは芸がない。独自の地域ブランドとして売り込める逸品を—。その発想から生まれた成功例がガゴメコンブと大粒大豆のタマフクラだ▼これらに続くブランドの確立に渡島総合振興局と桧山振興局が号令を掛けた。2012年度から3カ年計画で取り組む「道南ブランドステップアップ事業」がそれだ。道南の一時産品67品、加工品108品、飲食店36店舗が近く紹介される▼両振興局は「南北海道食彩王国」として事業をPRする。それはそれでいいが、道南がイタリアの形に似ているからといって「北海道のイタリア」をうたうことには違和感を覚える。他国のイメージに頼る必要はない。臆(おく)することなく、自信を持って道南の味を売り込めばいい。(K)


3月7日(水)

●1カ月ほど前に、ずさんな対応、として政府が批判を浴びた問題があった。記憶に新しいであろう、東日本大震災後の各種対策会議で議事録が作られていなかったことだが、明らかにされた反省のない続編には、ただただ呆れるばかり▼内閣府にある文書管理委員会なる組織が2月末、議事録未作成委員会の関係者から行った聞き取りの結果を公表した。読売新聞に概略が報じられていたが、その調査から浮かび上がったのは役所の論理。聞きようによっては開き直りとも映る▼経験のないほどの非常事態。緊迫した状況のなかで対応に追われ、多忙だった事情は分かる。だからと言って、正当化できる話でもないが、認識が欠けていた、手が回らなかった、と言うならまだしも、違和感を感じるのは、そうした姿勢が伝わってこないから▼例えば緊急災害対策本部。こう説明したという。「公文書管理法上、作成義務が課せられていないものと理解している」。つまり法的に問題はなく、批判は当たらないのだ、と。見方を変えると、平常時も非常時も同じ対応姿勢ということである▼法的にどうかと指摘されている訳でない。非常時のことだからこそ「今後のためにも記録(議事録・議事概要)が必要だったのでは」と言われているだけ。難しい話ではないのに、その認識が持てないのか、敢えてなのか、問われている意味は未だ理解されていない。(A)


3月6日(火)

●弥生の啓蟄(けいちつ)に大地から虫たちが這い出した。その大地を大地震が裂き大津波が襲い、原発の放射性物質で汚染されてから1年。「今、私にできること」と言いながら『3・11』は自分勝手な「我がまま」な根性を浮き彫りにした…▼特に放射性物質による土壌汚染。住宅地、田畑、森林など軒並み。森林の落ち葉や枯葉に付着したセシウムは森林の汚染物質の7割を吸収。表面全体をはぐことは膨大な汚染土壌が出るため森林の境界から20㍍を目安にした▼被災地の瓦礫処理も進まない。全国の自治体が分担して引き受けるはずだったのに「放射線が検出されなくても危ない」とか「放射能の拡散だ」など住民の反対で、引き受けているのは埋立地に使う東京などわずか。汚染焼却灰も宙に浮いたまま▼未曾有の自然の脅威に「絆」と「共助」の精神で国民で助け合う約束だったのでは。いざ我が身に降りかかれば「被災地に閉じ込めて処理して」と見て見ぬふりの態度…。「自分さえよければ」という「我がまま」に縛られて…▼枯葉の下から草木が芽を吹く大地に這い出した虫たちは「今、私にできること」のフレーズに「なぜ全国民が助け合って震災復興に全力投球しないの」と嘆いている。新聞で『3・11』に生まれた宮古市の女児「さくらちゃん」が元気にハイハイする写真を見た。両親は「人を助けられる人になってほしい」と願っている。(M)


3月5日(月)

●ロンドン五輪開幕まで5カ月弱。各競技では、し烈な代表選考争いが繰り広げられている。中でも男子マラソンは、東京、びわ湖毎日と2週連続で選考対象レースが行われ、昨年の世界選手権、福岡国際を含めた計4レースの結果を総合し、いよいよ3つの代表枠が決定される▼ところでマラソンの代表選考といえば、様々な物議をかもしだしてきた。1988年のソウル五輪では、輝かしい実績を持ちながら、選考対象だった福岡国際にけがのため出場できなかった瀬古利彦さんに、陸連は急きょ別の選考レースを設定。これに救われた瀬古さんだったが、世間からは激しい非難を浴びた▼1992年のバルセロナ五輪では、世界陸上で4位に入ったものの、けがで国内レースに出場しなかった有森裕子さんが、彼女を上回る好記録を残した松野明美さんを抑えて代表権を獲得。この時も抗議の声が殺到した▼これらの騒動の要因は、選考レースが複数にまたがるということと、タイムだけではなく、過去の実績や勝負強さなどを選考基準に加えていることが大きい▼メダル獲得が目的である陸連にとって、たまたまいい記録を出した選手より、安定感のある勝てる選手を選びたいのはよく分かる。しかし、五輪そのものが4年に一度の一発勝負のはず。選考レースをひとつに集約し、選手にも応援する我々にも納得のいく方法がベストではないだろうか。(U)


3月4日(日)

●金でも物でも貸し借りの「期限」は「約束」。それは社会における暗黙の基本的ルール。もし、守れない状況が生じた時には…。その旨を連絡して了解を求めるのは当然であり、それができなければ、非常識な人、ルーズな人と言われる▼でも、現実には、この約束が守られないことが少なくない。特に相手が官の場合などだが、一つの事例が2月末の本紙で報じられていた。図書の延滞の多さであり、ついに利用制限の措置を強化せざるを得ない、という函館市の話である▼通常の貸し出し期間は2週間。借りる人も納得した上で借りていく訳だが、そこに成り立っているのは「その期間内に返してください、返します」という約束。ところが、現実の問題として期間が過ぎても返さない利用者が結構いるのだという▼中央図書館によると、返本の督促数が年間、なんと6万回。休館日を除いて1日ざっと200回も督促していることになる。さらに貸し出されて3年が経過して返されていない本が昨年度426点あるとのこと。まさかの世界で、ただただ驚くばかり▼函館市に限ったことではないと言って片付けられる話ではない。そのために人件費や通信費などの経費もかかっている。利用制限を強化したのは当然であり、むしろ遅きに失した感がある。一つの警告として、この措置を受け止める…延滞改善の道はそこから始まる。(A)


3月3日(土)

●「へそくり」は、夫より妻の方が多いのは疑問の余地がないところだったが、驚くのは…漏れてきたその額である。妻も夫も平均で100万円以上というのだから。自分と照らし合わせると、思いは複雑だが、感心するしかない▼説明する必要もなかろうが、へそくりは夫や妻に内緒で貯めたお金であり、言い方を変えると、自分の懐の奥深くしまってある隠し金。一般的に言われるのは、何かあった時のために、という大義の妻のパターンだが、夫も結構あるようで▼2月末の本紙に小さな囲み記事が載っていた。オリックス銀行のへそくり調査の結果(インターネットで回答2000人)である。読み忘れた人のためにおさらいをすると…。へそくりをしている人の割合は、妻が69%で、夫が64%というから、おおむね3人に2人▼理由はいずれも「自分のため」で、その平均額は妻が170万円、夫が112万円という。単純に計算すると、一家に280万円ほどの秘密の金があることになる。当然のことながら、年齢に比例して額は上がり、60歳代の妻は平均で246万円なんだとか▼共有認識のある預貯金でもそんなにないよ、という声が聞こえてきそうだが、それも一方の現実。ただ、ものは考えようで、へそくりも一つの甲斐性か。少なくとも浪費されていくよりはまし。そのお金がいつ、どう生かされるのか気になるところではあるが。(A)


3月2日(金)

●大量の雪が解け始めたら、今度はザクザク、デコボコの悪路が待っていた。今冬の函館・道南はどこまでも雪、雪、雪…に悩まされる運命のようだ。「自然現象だから」というあきらめの半面、「何とかなったのでは」との行政不信も市民に根強い▼2月下旬の大雪で函館の積雪が91㌢となり、これまでの最大記録に並んだ。ほかにも道南5カ所で記録を更新。この雪で木古内町民プールの屋根がつぶれた。ビニールハウスの全半壊が相次ぐなど、農業被害も徐々に拡大している▼ここ数日は一気に雪解けが進んだ。除雪が追いつかなかった道路上の雪が解け、公道のあちこちが池や川のようになっている。積もる一方だった厳寒時と同様、物流や市民生活に与える悪影響は何ら改善されていない。車がすれ違えない場所も多い。市民に根付いた譲り合いの精神だけが救いだ▼ただ、行政側は市民に我慢を強いるだけでいいのか、という疑問は依然として残る。予想外の降雪量だったし、除雪車両もフル稼働させている。分かってはいても市民の不満が消えることはない▼今季は関係車両の不足が除雪の遅れにつながった。一方で、最大の積雪量に合わせた車両配備は無駄—といった意見も一部にある。いま求められるのは、行政など関係機関による大雪対策の検証作業だ。市民の辛抱に頼ることが常態化しないよう、論議の開始は早い方がいい。(K)


3月1日(木)

●「ものづくり日本」の盛衰を映すニュースが続いた。半導体「DRAM」製造メーカー・エルピーダメモリの倒産が一つ。もう一つは映画保存用の高品質フィルムを開発した、富士フィルムの米アカデミー賞(科学技術賞)受賞。くっきりと明暗を分けるあたり、ものづくりの神様はいたずらだ▼かつて世界を席巻した「日の丸半導体」だが、韓国メーカーの台頭や超円高には勝てなかった。エルピーダはNEC、日立製作所、三菱電機の連合体による切り札だった。その倒産は半導体産業の厳冬期を告げるものであり、製造業全体への影響も計り知れない▼一方の富士フィルムは、地道な研究が実った稀有なケースだ。受賞対象となったフィルムは画質が美しく、保存期間も約500年と長い。需要は映画産業に限られるものの、久々に「ものづくり日本」の意地を見せつけた▼直木賞受賞の小説「下町ロケット」(池井戸潤、小学館)は、ロケット開発の最先端特許を巡る中小企業と大企業の闘いを描いた。ベストセラーとして支持されているのは、この本が「ものづくり」に対する日本人の熱い思いを代弁しているからだろう▼道南の自治体でも「ものづくり」をサポートする各種事業が展開されている。製造業の再興は地方から。ひいてはそれが「人づくり」「まちづくり」につながる。長引く閉塞感から抜け出すには、“オール日本”の取り組みが不可欠だ。(K)