平成24年4月


4月30日(月)

●お寺の竹林の隣りに引っ越して来た侍が「武士の屋敷に勝手に生えるなんて無礼。刀にかけてやった。体はわしがとむらってやる」と竹の子の皮を差し出した。お経が読めない侍に一休さんは「お寺でお経をあげてやります」と体を持ち帰り、みんなでおいしく食べた…▼イザナキの神が黄泉から逃げる際、追ってくる勢力に頭の飾り物を投げつけると食べ物になったのが竹の子とも。今のタケノコは江戸期に中国から入って来た孟宗竹が主流。京都の下宿の奥さんが花見に作ってくれた土佐煮の質感が忘れられない▼孟宗竹の北限は青森とされているが、松前町に見事な竹林がある。約100年前に佐渡から持ち込んだといわれ、寺町の境内にもある。町内には樹齢300年のケヤキ、イチョウやサクラ、ツバキなど、緑がずらり…▼緑は木性の色。森に入ったり、植物に触れると、安らぎ、安心感、疲れを癒し、リラックスにも効果、筋肉の緊張もやわらげるとか。竹林や巨木に触れた観光客は「まるで京都にいるようだ」と感動。伸び盛りのタケノコは今が旬▼日に1㍍以上も伸びる。孟宗竹だけではない。淡竹(はちく)、真竹(まだけ)、根曲がり竹…。千葉や茨城のタケノコから国の新しい基準値を超える放射性セシウムが検出され出荷停止に。掘り出さないと竹林は荒れる。北海道のタケノコは大丈夫。一休さんも「おいしい」と食べてくれる。タケノコ狩りで迷子にならないように。(M)


4月29日(日)

●地域のシンボルは築き上げるのも大変なら、守っていくのも大変。だが、どちらが大変かと言うと、築き上げる方だろう。それに腐心している地域が北海道内にたくさんあることが証しだが、その点、函館は恵まれている▼自然と景観、それに歴史が残してくれた財産があるから。函館山・西部地区は歴史遺産と異国情緒にあふれ、ベイエリアと連動して観光客を惹きつけてやまない。天然の良港とも言われる港にもシンボルがあった。あの巨大なゴライアスクレーン…▼倒壊の危険があることを理解した上で、なお撤去を巡る議論があり、結果として姿を消した。それに代わる港のシンボルは、と聞かれると、保存されている青函連絡船「摩周丸」となろう。青函トンネルの開業に伴い、お役御免になったのは1988(昭和63)年のこと▼それから23年余。東京・お台場の船の科学館に展示された羊蹄丸は、愛媛県の新居浜で解体の運命に。残るは摩周丸と青森の八甲田丸だけ。その摩周丸の維持管理を担っているのが、指定管理者のNPO法人語りつぐ青函連絡船の会の人たち▼18日付の本紙(法人化10年)で、その活動歴が紹介されていた。苦労の跡を読み取った人も多かろうが、記事が問いかけていたのは地域のさらなる理解。摩周丸は紛れもない港のシンボルであり地域財産だから…もし無くなったら、その時、気がついても遅い。(A)


4月28日(土)

●民主党の小沢一郎元代表の囲碁の棋力は相当なものだ。一目を双方で取り返すことのできる碁形で、取られたあと、すぐ取り返すことができない「劫争い」で、最後に「白」を勝ち取った。でも、この白は「色あせた灰色っぽい白」に見える…▼政治資金規正法違反の罪で強制起訴された裁判で、裁判官は4億円もの大金を秘書らが収支報告書に記載しなかったこと、さらにその報告を小沢氏が了承したことは認定した。その上で「共謀とまでは言えない」と結論▼犯罪容疑が完全に晴れていない判決ではないか。陸山会に貸したとみられる4億円の出どころについても「浄財」「融資金」「個人資産」と二転三転。法廷では相続した不動産、本の印税、議員報酬など「もろもろのカネ」になった▼秘書らの行為についても「知らぬ存じぬ」「記憶にない」といった答えが目立った。巨額資金の動きを全く知らぬとは庶民感覚を超えている。小沢氏はウソをついていたことになるのでは。かつて「政治とカネ」の透明性確保に熱心だったのに…▼今回の無罪判決は「限りなく灰色っぽい白」の域。相手側にグーの音を出させたかった検察官役の指定弁護人は敗北した。小沢氏の周辺は復権ムードが漂い、また「壊し屋の政局」が繰り返される…。延々と続くコップの中の「劫争い」ではなく、堂々と「中押し」で「白」を取らなければ、国民の不信は募るばかりだ。(M)


4月27日(金)

●「銀の匙(さじ)Silver Spoon」という漫画をご存知だろうか。週刊少年サンデーに連載中で、「2012マンガ大賞」受賞作。単行本が3巻まで発刊されている。北海道の農業高校が舞台というユニークな設定で、ストーリーの質が高い作品だ▼大蝦夷農業高校に通う男子高校生の日常が描かれている。農業高校の漫画なんて聞いたことがなかったので、興味半分で読み進めたが、漫画ならではの笑いの中で、農業を学ぶ高校生が生き生きと描かれていた。農業・食料問題へのピリッとした指摘もあり、どんどん読み進められた▼作者は荒川弘さん。詳しい経歴は明らかにされていないが、十勝管内出身の女性で、実家は酪農業とのこと。テレビアニメ化された「鋼の錬金術師」が代表作だが、「百姓貴族」という農業漫画エッセイも好評を博していた▼連載前には十勝の帯広農業高校を訪れ、施設や実習、寮生活の様子を取材したという。登場するエピソードにリアリティを感じるのはそのせいだ。帯農高では職員室にもこの漫画を置いて教職員が読んでいるらしい▼何より素晴らしいのは、農業という地味なテーマを、漫画という手法で分かりやすく紹介したこと。TPP(環太平洋経済連携協定)の問題がヤマ場に差し掛かろうとしている今、農業とそこに携わる人たちへの関心を高めた功績は「大賞」に値する。(T)


4月26日(木)

●新聞社や通信社、放送局などの現役、OB記者らが集う組織に日本記者クラブ(東京・公益法人)がある。会員は公式発表で2800人(230社)。外国から訪れた賓客の会見などのほか、秀でた取材をした記者(組織)を表彰している▼業界では権威ある賞と位置づけられているが、昨年度の受賞者に石巻日日新聞(宮城県)が選ばれた。クラブ創設40周年記念で新設された会員外表彰の特別賞に。かねて付き合いのある社として、改めて祝福の拍手を送らずにいられない▼きっかけは当社の創刊時に遡る。通信社から記事配信を拒否され、曲折を経て読売新聞社から受ける道が開かれた際、3番目に加盟してきたのが同社だった。以来、年に一度は情報交換の機会があって、同じ地域紙として今も教えられることが多々▼今年は創刊100年という。東日本大震災はその歴史の大きな区切りの年を直前にした悲劇だった。社屋が被災、輪転機は水没し印刷が不能に。そこで発揮されたのが不屈の記者魂。翌日から印刷のめどが立つまで、手書きの壁新聞で情報を伝えた▼話は世界に伝わり、求められて現物は米国の報道博物館に。そして国際新聞編集者協会の特別賞に続く受賞。同社を支えた地域への栄誉でもあるが、復興はまだ緒に就いたばかり。発行を継続していく苦労の道も終わったわけでない。この賞が新たな励みになればと思う。(A)


4月25日(水)

●「日本書紀」や「万葉集」で『桃花鳥』と記されている朱鷺(とき)色の羽をもつトキ。江戸時代には全国で見られたが、明治期に乱獲などで減り、戦後は佐渡島と能登半島に生息域が限られ、絶滅の道をたどった…▼トキがすみ着くのは里地里山。ドジョウ、サワガニ、カエル、昆虫などを捕食する。戦後、能登に住んでいた子供のころ、祖母と水田に出かけて、カエルなどを捕まえたら、祖母に「ダメだよ。あそこにいるトキの餌なんだ」と叱られた▼「佐渡で放鳥トキひな誕生」—新聞やテレビに36年ぶりにかわいい姿が映った。ビデオには親鳥から餌をもらう様子や「ピピピピー」という鳴き声も記録されているという。しかも3羽も。新たな命は野生復帰への第一歩▼13年前に中国から贈られたペアで人工繁殖に成功し、4年前から放鳥を始めた。44羽が生存しており、今回のペアを含め10組の抱卵が確認されているといい、ひな誕生の続報も期待できそう。ひなが誕生するには豊かな自然環境づくりが大事▼佐渡住民あげて、水田がトキの餌場に戻るように農薬を減らし、冬期間も水を抜かない農法に着手。減農薬稲作の取り組みで佐渡市が「世界農業遺産」に登録された。自然界には天敵のカラスやテンなどがいる。すくすく育って、美しい舞が見たい。日々100種が絶滅しているといわれるが、「放鳥トキひな誕生」は絶滅種復活のお手本にもなる。(M)


4月24日(火)

●かつて小学校の校内放送で頭髪の薄い人をからかう歌詞の曲が流れた。男性教諭は「人の身体的特徴を笑いの対象にしてはいけない」と児童30人に土下座させ、問題になったことがあった(前橋市)▼教諭は校長に伴われて児童の家庭を訪れ保護者に謝罪したという。お笑いの世界では薄毛や植毛、ハゲ、カツラなどは笑いのネタ。熟年の漫才ヒンビで相方の薄毛の髪にふぅーと息を吹きかけると髪の毛が飛ばされてハゲ頭になってしまう…▼宮崎県の離れ小島にいる野生のサルはサツマイモを海水で洗って食べることで有名。よく「サルは人間より毛が3本足りないから知恵がない」といわれるが…。東京理科大などの研究チームによると、その「3本の増毛」に成功したという▼髪の毛は、3本前後が集まった「毛包ユニット」で生えているが、睡眠不足、喫煙、ストレスなどでホルモンバランスが崩れると薄くなる。研究チームはマウスのひげにある2種類の細胞を取り出して培養し「毛包の元」をつくり出し、他のマウスの背中に移植した▼3週間後には74%の確率で毛が生え始め、10日前後で伸び、その後、生え変わった。周りの神経や筋肉にもつながっていたという。新しい増毛法として、深刻な脱毛症や薄毛の人には朗報だが、人への応用にはまだ10年ほどの時間がかかるとか。寒風に「悲しく冷たく髪すだれ〜」と嘆かなくてもいい日が来るだろうか。(M)


4月23日(月)

●期待の裏返しは失望だが、それが国の政治となると、冷静ではいられない。その政治に費やされている税金が莫大となればなおさら。今に始まったことではないが、失望と諦めが交錯して、昨今の世論調査からは政治不信がはっきりと▼国会議員の定数削減が叫ばれるのもそれ故。選挙制度改革も含め、さっぱり各論に入らないが、何とか議員歳費の削減だけは具体化した。年間270万円で、5月から2年間で540万円の削減。その総額約39億円は東日本大震災の復興財源に▼削減幅については議論のあるところ。というのも我が国の国会議員の歳費は他の先進国に比べて高いから。この削減で歳費は年間2000万円を切るようだが、それでも…。ちなみに米国は日本円換算で約1500万円、ドイツは1100万円ほど▼イギリスに至っては何と1000万円を切るレベル。我が国では月額100万円の文書交通滞在費も支給され、超豪華で超格安な宿舎(赤坂・28階建て)も用意されている。東京の一等地、その家賃(3LDK)たるや月額8万4000円▼4月から8000円下げられての額だが、歳費減額との整合性をどう考えたらいいのか。指摘し始めると切りがないが、厳しく言われるのも、報酬や議員特権に見合った姿が伝わってこないから。この歳費削減を、当然、と受け止められている現実が、すべてを物語っている。(A)


4月22日(日)

●リボン・ヘルムさんが19日、米ニューヨークで死去した。71歳。この名前を聞いてピンと来る人は、ちょっと昔のアメリカンロックが大好きなはず。派手なスターではないが、多くの同業者に影響を与えた偉大なミュージシャンだ▼ヘルムさんがメンバーだった「ザ・バンド」は、1960〜80年代を中心に活動した。ボブ・ディランのバックバンドから始まり、ブルース、カントリーの雰囲気を感じさせる「オンリーワン」の歌とリズム、サウンドで、長年支持を得た▼大きなヒット曲はないが、「アイ・シャル・ビー・リリースト」はディランをはじめ、多くの歌い手がカバーしている。サザン・オール・スターズの桑田佳祐さんはザ・バンドの曲をよく歌う。ウルフルズのトータス松本さんも影響を受けた一人。ヒット曲「バンザイ」にその跡を感じる▼解散コンサートは「ラスト・ワルツ」(1978年)という映画になった。ディランやエリック・クラプトン、ジョニ・ミッチェル、マディ・ウオーターズ、ロン・ウッド、リンゴ・スターら縁の人たちがザ・バンドと共演した。彼らの歌は年月を経ても、素晴らしさが色あせることはない▼5人編成だったザ・バンドはヘルムさんの死去で、残るは2人となった。残念だ。ヒットや流行とは縁がなくても、長い間聴き込める歌を残せるミュージシャンがまた一人減ったことが、何より寂しい。(T)


4月21日(土)

●ニュースやスポーツを除くと、最近のテレビ番組は、娯楽化の色を濃くしている。制作費が安い、視聴率が稼げるなど作る側の論理もあるのだろうが、そんな中、引き立つ硬派番組が幾つか。その一つに「夢の扉+」がある▼TBS系(北海道ではHBC)で毎週日曜日の午後6時半からの30分番組(中井貴一らがナレーションを担当)。誤解のないように言っておくが、番宣を頼まれたわけではない。今の世の中に、こうした番組はあっていいし、貴重だという思いからあえて▼世のために役立つ研究や実践…それに取り組む名もない人たちの苦労や悩みを伝える…そんな構成の番組。15日は「被災地の仮設住宅に」と、厚さ3㌢の防音剤を開発した人だった。かつてのNHK「プロジェクトXー挑戦者たち」とだぶっても映る▼ヒットした中島みゆきのオープニング曲「地上の星」で始まった、あの番組である。2000(平成12)年3月から5年半の間に放送された秘話は187本。日本PTA全国協議会の「子どもに見せたい番組」で4年連続1位になったことも記憶に新しい▼「プロジェクトX」もそうだったが、「夢の扉+」が観る側を引きつけるのは、人間の生きざまというか、人生へのこだわりを前面に出している点。そこに説明は必要ない。見終わった後、心に伝わってくる何かを覚えるから。「親子で見てほしい番組」である。(A)


4月20日(金)

●津軽の大地主の六男に生まれた太宰治は幼少期、乳母に連れられて行った寺で地獄絵を見た。火のついた籠を背負う罪人、蛇に体を巻かれる男、血の池や針の山、舌を抜く鬼…。乳母のたけは「嘘をつけばおちる」と教育し、少年は恐ろしくて泣き出した▼「地獄」の本が、ブームという。30年以上前に出版した絵本が、インターネット書店の児童書1位となっている。太宰が見たような世界を描き、行いを正しくして、命を大切にすることを教える内容だ。子供のしつけに一役買っているという▼わが国で地獄を本格的に描いたのは、平安時代の天台僧・源信である。『往生要集』で、はかり知れぬ苦しみと時間が続く八大地獄と、極楽浄土の世界を伝えた。死後の地獄が本当にあるかどうかは分からないが、人々を善い方向に導くために描かれた方便のような気がする▼「地獄に落ちるぞ」という脅しは悪事への強力な抑止力になる。恐怖で人を縛るのはたやすい。しかし、恐怖一辺倒の教育でいいのかは疑問だ。悪いことをしたら、自分よりも相手が傷つくということを教えてほしい。倫理観を育てる道徳教育なくして豊かな心ははぐくめない▼ただ、どこかに自分の知らない怖い世界があるという認識を持つのは悪いことではないのかもしれない。大人になれば、受験地獄、借金地獄、通勤地獄…この世にいてさえ地獄がたくさん待ち構えているのだから。(P)


4月19日(木)

●息子を装い「事故に遭った。お金を振り込んで」というオレオレ詐欺やインターネットバンキングを悪用した還付金詐欺などが後を絶たない。先ほど、少女が「おじいちゃんが危篤」と現金を詐取したという記事に驚いた▼長崎の話。学生や会社員らに小学生とみられる少女が「おじいちゃんが危篤で急いでいる。タクシー代を貸して」などと声を掛けて、4人から1万円を取った。「今すぐ帰りたいがお金がない」とか「トイザらスに行きたいけど…」とも▼高校生や大学生の女性ばかりに声を掛けていた。届け出を受けた警察は少女の寸借詐欺の背景に指示する大人がいる可能性もあるとみて捜査している。子供を使って物乞いをさせたり、ひったくりをさせたりするのは、働かない親のパターン▼昨年、札幌で母親から覚醒剤を強要されて「売春で金を稼いでこい」と言われ、小学6年生から身を売っていた少女もいた。最近はゲームのアイテム欲しさにサイトのIDやパスワードを盗み取るフィッシング行為で書類送検された中学生もいる▼長崎の少女は遊ぶ金ほしさの単独行為かもしれない。警察は18日、少女を詐欺の非行事実で補導したと発表した。「おじいちゃんが危篤」と泣きつかれれば貸してやるのが人情…。「ウソつきは泥棒の始まり」と厳しく言われた。複雑なネット社会になっても「善意をもてあそぶな」の教育がほしい。(M)


4月18日(水)

●日本たばこ協会の発表によると、昨年度の紙巻きたばこの販売本数は1975億本と、統計開始(1990年)以降最も少なかった。周りを見渡してみると、喫煙者は確実に減っており、建物の中で自由に吸える場所も少数派となってきた▼市立函館保健所の統計だと、昨年の函館の喫煙率はともに減少しているものの、男性32・1%、女性13%。女性は全国平均を4・6ポイント上回り、特に20〜40代の母親世代は23%と全国より10ポイントも高い。女性に限ったことではないが、幼児、子供への影響が心配だ▼禁煙・完全分煙を実施している「おいしい空気の施設」は今年1月末で381施設が登録。市内580の公共施設で昨年実施したアンケートでは、敷地内・施設内の禁煙を実施している施設が53・3%で過半数。函館でも嫌煙社会への流れは止まらない▼ここまで書いておきながら、筆者は喫煙者。過去何度もガムやニコチンパッチを試しては禁煙に失敗し続けてきた。たばこ税の大幅引き上げで、「やめたい」という気持ちはかつてないほどに高まったが、過去の失敗が脳裏をよぎり、踏ん切りがつかなかった▼言い訳めいているが、喫煙習慣は「依存症」という病気だ。“禁煙負け組”の経験上、意志の強さに頼って断煙するのはかなり難しい。病気なのだから、医療の手助けを仰ぐことで成功率が高まるかもしれない。禁煙外来の門を叩いてみようか…。(T)


4月17日(火)

●「危機管理」という表現を日常的に目にし、耳にする。大事なことの証しでもあるが、それは個人も、社会も、国家においても。とりわけ国民の生命、財産を守るべき国家にあっては最大の課題だが、改めて信頼が揺らぐ事態に▼そう、北朝鮮の地球観測衛星という名の弾道ミサイル発射への対応を巡って。発射から1、2分で米国や韓国は感知したが、我が国は、というと、確認に右往左往の体。発表は40分も経ってから。しかも「なんらかの飛翔体が」という曖昧な言い回しで▼「危機管理」とは読んで字のごとし。「不測の事態に対して被害を最小限に抑えるためにとるべき手段」。その概念の出発点は経済分野とされるが、今では防災も加わり、軍事、政治面で重要視されるように。今回の対処は試金石でもあった▼事前に発射予告がされ、予測がついていた。迎撃ミサイルを配備し、全国瞬時警報システム(Jアラート)の準備もしていた。ところが肝心の…事態の察知、把握がお粗末ではすべてが帳消しであり、宝の持ち腐れ。国民への情報提供は時間切れだったのだから▼被害が発生していたら、と思うと背筋が寒くなってくる。当然のこととして、国会でも論議となろう。福島第一原発事故でも言われている。何故そうなったのか、何が問題だったのか…徹底的に検証すべき。政府は十分解っていると思うが、老婆心ながら一言。(A)


4月16日(月)

●花見の観光客でにぎわう京都の祇園で、痛ましい事件が発生した。歩行者7人が暴走した軽ワゴン車にはねられて犠牲となった。京都府警は殺人容疑で捜査している。学生時代から何度も通った場所だけに、現場の凄惨さがニュース映像からより一層伝わってきた▼事件は四条通りの交差点で起こった。歌舞伎で有名な南座のすぐ近くで、東には八坂神社があり、人通りが途絶えることがない。実際、今回の事件でも観光客が多数巻き込まれた。事故に遭った方々は、楽しいはずの京都が忌わしい場所に暗転してしまっただろう▼運転手は現場の近くで電柱に突っ込み、死亡した。てんかんの持病があったことなどが明らかとなり、警察が暴走の原因を捜査しているが、どんなに調べても犠牲者は帰ってこない。やるせなく、後味の悪い事件として記憶に残りそうだ▼同じ観光都市の函館でも、同様のことが起こったら…と考えると、寒気が走る。2010年の函館の観光客入り込み数は458万人。間もなく花見や修学旅行のピークを迎え、夏観光のシーズンは本番に突入する。昨年の函館観光は東日本大震災で大きな影響を受けただけに、関係者は今年に期待している▼観光客が函館で楽しい思い出を刻み、リピーターとなるためには、いろいろなホスピタリティーが必要だが、その根底にあるのは「安全」だ。京都の事件を目にして、そう痛感した。(T)


4月15日(日)

●《自分をみているだけなのに ニコーとしたり ちょっといい顔をしたり…ハダが乾いていないかしら 心はくもっていないかしら…雄弁にいまを語る》 かとうみちこさんの詩「鏡」の一節▼「軍事優先でわが国を世界に永遠にとどろかせる」と2代目から引き継いだ北朝鮮の金正恩第1書記の「3代目の鏡」に、黄海に散った「軍事ミサイル」が映っただろうか。2段目どころか、3段目にほど遠く空中分解してしまった▼首都のホテルに大型スクリーン付きの立派なプレスセンターまで設置して、打ち上げ秒読み段階のミサイルを海外メディアに異例の公開劇。発射台がある東倉里まで招待するサービスぶりだったが、《心はくもって》いた▼ミサイル発射当日に国防委員長にも就任し「新たな100年」をリードし、カリスマ性を高めるはずだったが、「祝砲」は不発。鏡には、満座の中での大恥、赤っ恥をかかされた3代目の姿と同時に飢餓に苦しみ彷徨う国民の姿も…▼1990年代には100万人を超える餓死者が出ている。今回のミサイル打ち上げに要した費用は700億円ともいわれ、1900万人の国民にトウモロコシが配給できるという。しかし「核実験の恐れなしとしない」北への世界の懸念はゼロにはならない。鏡のもう一人の3代目が諭す「《くもっている鏡》を拭きとって、愚行に走るな!」という心の鏡を見つめ直してほしい。(M)


4月14日(土)

●人間誰しも気持ちに波がある。気分が乗っていて、何かうまく行きそうに感じる時もあれば、まったくその逆も。往々にして逆のパターンが多いのだろうが、それが一個人に限らず、社会の傾向として表れる時期がある▼5月のゴールデンウイークあけ。一般的に「五月病」と呼ばれている。新年度が始まり、新入学の小学生をはじめ多くの人が新しい環境に身を置く。特に新入大学生や新社会人にとっては、精神的な親離れであり自立。その分、力も入るし期待に胸を膨らませる▼ところが、待ち受けるのは、夢の世界ではなく現実の世界。緊張もすれば神経も使う。しかも期待通りにはなかなか。現実とのギャップは、次第に広がってくる。こんなはずではなかった…気持ちが重くなったところでゴールデンウイークを迎える▼悩みながらも通学、通勤していたのが、まとまった休みを経る中で、休み癖が頭をもたげ、気力も伴ってこない。そして眠れない。いわば一種の社会現象病だが、程度の差こそあれ、結果として欠席や休学、退社へと発展しかねない。だから問題なのである▼対策は多々言われている。焦らないこと、一人で悩まないことなど。自分でそれができるなら、そうはならないわけで、手助けが必要に。家族や友人など周りの人の気配りだが、今年は悩む人が少ないように。要注意のその時期が近づいてきている。(A)


4月13日(金)

●道南のパークゴルフ場が徐々に営業を開始している。だが、今春は函館市営のパークゴルフ場が21日と異例に遅いオープンとなるなど、球春は足踏みムード。愛好者はシーズン全開を心待ちにしていることだろう▼レジャーとして定着したパークゴルフ。発祥の地は十勝管内幕別町。陸上競技の女子100㍍日本記録保持者の福島千里やスピードスケートの高校生五輪選手・高木美帆を生んだ町だ。1983年に教育委員会の職員が「何か面白いスポーツはないか」と公園に穴を掘ってコースを試作したのが始まり。最初のカップは塩ビ管で、スティックなどはグラウンドゴルフの道具を使った▼その2年後、公園を改造した18ホールのコースが初めて出来上がった。フェアウエイに木の根がそのまま残っていて、ボールがあちこち跳ねる。丘の斜面にカップがあるホールでは大叩きする人が続出した▼だが、普通のゴルフとはひと味違った「遊び心」がウケた。愛好者は爆発的に増え、コースが次々と作られた。町内の会社も独自のスティックを作り、普及を後押しした▼国際パークゴルフ協会によると、2009年時点で、コースは国内外に1200カ所、愛好者は120万人。それは大げさな数字ではなさそうだ。「遊び心」に満ちた道産競技。シーズンインは遅れたが、春の本格到来とともに道南のコースはいつも通りのにぎわいをみせるに違いない。(T)


4月12日(木)

●北海道、いや全国の野球ファンが待ち望んでいたダルビッシュのメジャー初登板は、2回までに5失点という厳しい洗礼を受けながらも、味方の強力打線の援護によって白星スタートとなった▼快刀乱麻を断つように、屈強なバッターをなぎ倒す活躍を期待していた人たちには不満が残ったかもしれないが、大きなプレッシャーの中、3回以降は自身の投球を取り戻し、責任イニングを投げ抜いた25歳の若者には、プロとしてのプライドがにじみ出ていた▼日ハム時代も、3年連続で開幕敗戦投手になるなど、開幕戦との相性は悪かった。それでも最終的には防御率1点台をたたき出す、シーズン通しての安定感こそがダルの真骨頂。メジャーのマウンドでも本来の投球ができるようになれば、確実に勝ち星の数は増えていくだろう▼唯一心配なのは大きなケガや故障。日ハム時代は肩や腰の違和感、指の疲労骨折などでシーズン中に一時戦線離脱をしたことはあるが、大手術などを必要とする深刻な故障には見舞われていない▼しかし、メジャーリーグという新たな環境の中、これまで経験したことのない負担が肉体的変化をもたらす可能性は否定できない。今は結果や数字を残すことより、新天地で自身のスタイルを確立することを優先し、シーズン通してローテーションに留まり、本当の意味でのメジャーリーガーの仲間入りを果たしてほしい。(U)


4月11日(水)

●覚えていますか。トリカブト保険金殺人事件。トリカブトの猛毒とフグの毒を相乗させ「白いカプセル」に入れて、沖縄の旅行先で3人目の妻に飲ませた。妻には1億8000万円という高額な保険金を掛けていた…▼トリカブトはヨモギやニリンソウ、ゲンノショウコなど食べられる野草に似ており、間違えて食べてしまう。特に葉はニリンソウにそっくり。しかし、植物界最強の有毒で、死に至る危険性は毒キノコより数段高い。致死量は青酸カリと大差はないという▼先ほど、函館の漁業男性(42)がトリカブトとみられる野草を食べて中毒症状を訴え、この男性と父親(71)の2人が死亡した。弟(41)も手当てを受けた。山菜採りに出かけ、採った野草を「ニリンソウだ」と言って、おひたしにして食べたという▼かじるとビリッとした痺れが走り、のぼせ、めまい、嘔吐…日本には30種ほどのトリカブトがあるが、北海道のエゾトリカブトは毒性が強いと言われている。3年前には札幌の夫婦がトリカブトを食べて食中毒を起している。かつては狩猟などの毒矢にも使われた▼自然毒の猛威を見せつけた今回の事故。トリカブトには毒のイメージから「あなたは私に死を与えた」という恐ろしい花言葉もある。食べなかった母親らは無事だった。雪が解けて、春がきて、山菜シーズン。採った野草が食べられるものかどうか、十分確認しよう。(M)


4月10日(火)

●東日本大震災は、人間社会にかけがえのない教訓を提起した。「絆」はそれを象徴する言葉として最も解りいい。というより、しっくりくるということだが、同じ意味を持つ言葉に「つながり」や「結びつき」「助け合い」などがある▼社会や家族、友人…誰しもそうだが、人間、どう強がっても一人では生きていけない。程度の差こそあれ、誰かに支えられている。そんなことはない、と言う人がいたら、単に自覚していないだけのこと。何が大切か、それは先の言葉が教えている▼大震災は気づかせてくれた。意識の変化はあった。内閣府の社会意識に関する調査結果が浮き彫りにしている。社会との結びつきを「前よりも大切だと思うようになった」人が、5人中4人までの80%もいたという。また、強く意識するようになったことでは…▼最も多かったのが「家族や親戚とのつながり」で3人中2人までの67%。「地域でのつながり」が60%、そして「社会全体で助け合うこと」が47%。地域や社会に対する認識が高まった姿をうかがうに十分なデータだが、思いと現実は別のようで▼大事なのはその思いを持続させること。熱(ほとぼ)りがさめると…時間が風化させてしまうことは少なくない。大震災はまだまだ熱りの中であり、風化はなかろうが、思いを試されるのはこれから。風評被害に遭った産物や瓦礫もそう問いかけている。(A)


4月8日(日)

●塩とごま油をつけて食べるレバ刺しの食感は絶品。知人の息子がススキノでホルモンを中心にした焼き肉店を出した。生産者と直接交渉し、1頭単位で仕入れているので安全だというが、ユッケとレバ刺しは出していない▼厚生労働省が牛のレバー(肝臓)について、生のまま提供することを法的に禁止する方針を決めた。きっかけは昨春、焼き肉チェーン店でユッケなどを食べて5人が亡くなった集団中毒事件。生食用牛肉の提供基準を厳しくするという▼ユッケなどから重い食中毒を起こす恐れのある腸管出血性大腸菌(O157)が検出されたため、対象はレバーにも飛び火した。食中毒が多くなる夏場を前に厚労省が早めに手を打とうというのが今回の判断。生の牛レバーに危険性があるのも確か▼常連客の大半がレバ刺しを注文する店主は「色や粘りを見れば、生肉の傷み具合は分かる。たとえ提供が禁止されたとしても、こっそり店と客の自己責任で出すことも…」という。近く規格基準を設け、違反すれば2年以下の懲役などが科せられる▼ただ、生レバーによる食中毒事例は食中毒全体の1%にも満たない。もちろん、抵抗力の弱いお年寄りや子供への提供は禁止すべきだが、全面禁止令になると、こっそり出す「闇レバ刺し」が横行しないか。こっちの方が危険だ。いつも抵抗なく食べている人気メニューが姿を消すのは割り切れない…。(M)


4月7日(土)

●1歳下のいとこが結婚相手と出会ったのはボウリング場だった。彼女は隣のレーンに入ってきた知人と一緒にいた男性と意気投合したのがきっかけだった▼自宅や職場以外で楽しく暮らす場所として「サードプレイス」という言葉がある。サークル、飲食店、スポーツ施設などがある。いとこもサードプレイスで新しい人生のきっかけを得た▼函館市内のボウリング場・スターボウルが今月末で閉鎖される。ボウリングは国体の正式種目で、函館ではレーンの数から唯一、全道・全国大会を開けるとあり、多くの選手を招き、地元に経済効果をもたらした▼大学で全国トップクラスの成績を収める函館大の選手も、多くはここで練習を積んだ。国体選手も輩出した。スポーツ施設が無くなることは、交流空間が無くなり、後進の育成ができなくなる。残念ではあるが長年の活躍に感謝を言いたい▼函館では2015年度オープン予定の函館アリーナがあるほか、旧函館北高校跡地がスポーツ施設に整備される。多くの大会が開催でき、市民の健康づくりにつながり、サードプレイスとして期待される▼さて、これらの施設で地元選手が優秀な成績を収めるため、競技団体や学校で選手の育成は進んでいるのだろうか。新しい施設は地元の選手の大活躍でスタートを切ってほしい。今年は五輪イヤー。選手育成の話が大いに盛り上がってくれれば。(R)


4月6日(金)

●竪琴の伴奏で日本軍の小隊が故郷を想って歌う「埴生の宿」に、包囲した英国兵士たちから元歌の「Home、Seet…」が呼応するように、敵味方を超えて大合唱。平和の尊さを象徴的に描いた名シーン▼ミャンマーに興味を持ったのは56年前に映画「ビルマの竪琴」を観てから。首都の仏教大学に留学するはずだったが、当時のウ・ヌー首相からネ・ウィン将軍が軍事クーデター。独裁政治が始まり、留学も流れた▼野党リーダーのアウンサンスーチーさんを中心に24年前の民主化決起から始まり、物価値下げ、政治犯の釈放、民主勢力との対話などを要求し、僧侶や尼僧らも2万人規模の抗議デモを繰り広げた。スーチーさんは7年ぶりに自宅軟禁から解放された▼スーチーさんは「みんな人間性という絆で結ばれている。真の民主主義を実現しよう」と、民主化運動の無言の証しである花飾りを髪に差して、国会議員の補欠選挙に出て、見事大勝。バラを主にした花飾りは英国で死亡した夫と誕生日に贈り合った愛の証し▼この花飾りパワーで初の国政参加。スーチーさん率いる野党の大躍進で、国際社会はミャンマーの民主化が進んでいると判断。日本は凍結していた政府開発援助を25年ぶりに再開。米国も経済制裁を段階的に解除する方針。国境を越えた「埴生の宿」の合唱が待ち遠しい。東南アジアで咲いた「バラの髪飾り革命」と呼ぼうか…。(M)


4月5日(木)

●雪解けが進み、ハンドルを握っていても、心なしかアクセルに力が入る季節になった。冬道からの開放感もあって、気持ちも緩みがち。それは要注意の季節ということの証しであり、この時期に交通安全運動が繰り広げられるのもそれ故▼交通事故が社会問題となって久しい。それほど多発し、多くの人が犠牲になっている現実があるということ。確かに事故死者は減少している。全国でかつて年間1万人以上を数えたのが、近年は5千人以下に。昨年は4611人(北海道は190人)だった▼道路環境の改善に加え、指導や取り締まりなどの成果だが、依然として問題なのが交通三悪。速度超過もさることながら、見過ごせないのは飲酒運転。事故に至るのはごく一部だが、道内でも昨年13人(発生222件)が犠牲になっている▼飲酒運転事故で思い出されるのが2006(平成18)年8月に福岡県で起きた幼児3人の死亡事故。福岡県はその月命日の毎月25日を「飲酒運転撲滅の日」とする一方、再違反者にアルコール依存症受診もしくは罰金を科すなど独自の撲滅条例を制定した▼交通事故を減らす究極の鍵は、一人ひとりの意識と注意。そのための啓蒙活動がさまざま展開されているが、5年前に国が定めた「交通事故死ゼロを目指す日」もその一つ。2月10日、9月30日と、そして4月10日…6日からは春の交通安全運動も始まる。(A)


4月4日(水)

●音楽コンクールで有名なブザンソンは、フランス東部の地方都市。ブザンソン美術館は“プチルーブル”と呼ばれるほど収蔵品が豊富。その中の貴重な絵画が7月に函館市と松前町にやってくる▼松前藩の絵師、蠣崎波響がアイヌの長老を描いた「夷酋(いしゅう)列像」で、松前には約220年ぶりの里帰りとなる。幕末の動乱期にフランスに渡り、1980年代に初めて確認された▼来日したブザンソン美術館のエマニュエル・ギゴン館長は、「線の繊細さを感じる」と語った。身にまとった蝦夷錦と呼ばれる中国製の鮮やかな絹織物と、野性的なアイヌの風貌もいい対比を生んでいる。さらに、なぜ海を渡ったのかという素朴な疑問、制作された際の複雑な経緯、さまざまな背景と神秘性が絵画に独特の魅力を加えている▼函館の日仏交流の歴史は彩り豊かだ。五稜郭はフランスの書から設計され、箱館戦争ではブリュネが旧幕府軍に加わった。その歴史絵巻を描いた「函館野外劇」はフランスが家元で、世界企業のミシュランは観光ガイドで函館山からの眺望などを「三つ星」に推薦した▼「多くの方々に夷酋列像を見てほしい。日仏交流の観点からも意義がある」とギゴン館長。時空を超えてやってくる日本絵画の傑作から、新たな日仏交流が生まれることを期待したい。散逸した美術品が、輝きを増して伝えられていることに感謝しながら。(P)


4月3日(火)

●♪京都にいるときゃ忍と呼ばれたの〜 ネオン川の切ない恋を歌った小林旭の「昔の名前で出ています」は、今もカラオケで人気。忍、渚、ひろみ…流れ流れて、最後は本名を名乗り故郷にたどり着く▼元オウム真理教幹部の平田満被告を匿(かくま)った元信者の斉藤明美被告は、17年の逃避行でいくつも名前を変えていた。住み込みで働いていた仙台の料亭では山口今日子、自首するまで勤めていた東大阪の整骨院では吉川祥子…▼山口今日子と名乗ったのは「山口百恵さんと小泉今日子さんが好きだった」という。2人は同じ教団で知り合って尊敬から愛に。明美だけ働いて生活を支えた。マーボー豆腐やカレーを作り、のり弁当、から揚げ弁当と質素な暮らし▼16年経って手配もなくなり、罪もなくなったと思いこみ自首。告白文で「教団は異常な世界で失望した。オウム事件の被害者の方々に深くおわびします。17年ぶりに本名を名乗り、偽りの人生は終わりにします」と改心した▼自首する前に実家に電話し「明るく美しい」名をくれた両親にわびた。裁判長は「真摯に反省し、教団とのかかわりや精神的な帰依もなく、更生が期待できる」とし、懲役1年2月を言い渡した。だが、改心は遅すぎた。子供のころ「嘘ついたら、閻魔(えんま)さまに舌を抜かれるよ」と叱られた。罪をつぐない「昔の名前で出ています」と歌えるように…。(M)


4月2日(月)

●北海道水資源保全条例が1日から施行された。重要な話として受け止められていないかも知れないが、実は大きな問題で。国の対応の鈍さに業を煮やした道が独自の規制を設けたということだが、同じ動きは他の都府県でも▼その背景は近年、急速に増えている外国資本による森林の買収。一説にはこの5年ほどの間に40件、600㌶ほどが取引されたとも。中でも際立っているのが北海道と言われる。その何が問題かと言うと、外資に渡った大半が水源かん養林と見られるから▼改めて説明するまでもないが、水源も森林の大きな機能の一つ。実際に水源地となっている所も多く、安定確保の見地から危機感が。国に厳しい規制を求める意見書を提出している自治体が10を超えている事実が、それを物語っている▼少なくとも行政が売買情報を把握し、対策を講じることができる体制にしておくべき。そういった考えに立って制定されたのが北海道の規制条例。土地所有者が売買契約を結ぶ際、3カ月前までに相手の氏名、使用目的などを道に届け出る義務を課している▼罰則規定はなく、効果を疑問視する向きがあるものの、自治体の対策としては一歩前進。逆に、それにしても、と思うのは対応が鈍い国の姿勢。国土を守る、水資源もその例外でない。なのに法整備は遅れたまま。高まる懸念…道が条例の制定に踏み切った理由もそこにある。(A)


4月1日(日)

●「今はもってる、ではなくて背負ってます」。プロ入り2年目で開幕投手に大抜擢され、見事な完投で栗山英樹監督に初勝利をプレゼントした日本ハムの斎藤佑樹投手。さわやかな笑顔で試合後のインタビューに答えていたが、その裏では計り知れない大きなプレッシャーと戦い続けていることが垣間見えた▼栗山監督が、3年連続で二桁勝利を続けている安定感のある武田勝を開幕投手に選ばなかったことについては、評論家だけではなく、日ハムファンの中でも否定的な声が多かった▼夏の高校野球で全国制覇し、六大学野球でも1年生からMVPに輝くなど、輝かしい栄光の道を歩き続けてきた斎藤投手。それでもプロの壁は厚く、1年目は6勝6敗。前エースのダルビッシュとは比較にならない▼しかし、ルーキーイヤーから1軍ローテーションに定着している事実は合格に値する。栗山監督が将来的な成長を見通し、試練の場として開幕マウンドを用意したのだとすれば、その先見性には敬意を払わなければならない▼日ハムファンが斎藤投手に中々及第点を与えない理由に、田中将大投手の存在がある。今や球界のエースとして君臨する田中投手に高校時代は投げ勝っているからこそ、過大な期待をかけてしまうのだろう。しかし斎藤投手はしっかりと「背負って」くれることを約束してくれた。黙ってその成長を見守っていきたい。(U)