平成24年7月


7月31日(火)

●4年に一度のスポーツの祭典「オリンピック」がロンドンで華々しく幕を開けた。かつてはアマチュアしか参加を認められなかった大会も、今では大部分の競技でプロも出場できるようになり、まさに人類最強・最速の座を競う場になっている▼「五輪には魔物がいる」と言われることがよくある。絶対的な優勝候補があっさり敗れたり、まったく無名の選手が栄光の座を手に入れたりするドラマが数多く繰り広げられてきた▼今大会でも、男子サッカーで日本が優勝候補のスペインを破る一方、3大会連続で2種目制覇の期待がかかった北島康介選手が100メートル平泳ぎで5位に終わるなど、予想外の番狂わせが早くも相次ぎ「魔物」の健在ぶりを示している▼一方、これまでとは少し毛色の違う「魔物」が柔道競技に登場し混乱を招いている。誤審を防止するために導入された「ジュリー制度」だ。審判を補助するためにビデオ映像によって結果を判断する方法によって、一度下された判定が覆される試合が頻発している▼2000年のシドニー五輪において篠原信一選手が「世紀の誤審」で金メダルを逃したことが、この制度導入のきっかけのひとつと言われる。しかし、あまりに映像に頼り過ぎる状況下では審判の存在意義が問われることに。まずは審判の技術向上に力を注ぎ、それを補完するためのジュリー制度であるべきではないだろうか。(U)


7月30日(月)

●「疾風に勁草(けいそう)を知る」—。後漢書(王覇伝)に記された名言。勁草は「強い草」という意味。強い草かどうかは強い風が吹いて分かる。要するに、強い風(困難、試練)に直面して、初めてその人の強さや人格が分かるということだ▼ロンドン五輪でメダルを狙う陸上競技ハンマー投げの室伏広治選手が、この一文を座右の銘にしていると知った。努力の人で知られる選手。長い間、世界のトップに君臨できた“哲学”が端的に現れていると感心した▼この格言には思い出がある。道東のある大物農協組合長が引退を発表したとき、インタビューを申し入れた。在任中の思い出などを聞いたあと、最後に「後進に贈る言葉を」と問うと、少し照れながら答えてくれたのが、「疾風に—」だった▼その元組合長は、「よつ葉乳業」の設立などに尽力し、戦後の荒廃から数々の修羅場をくぐった人物。「普段から備えていないと、強い風が吹いたとき、ちゃんと立っていられないからね」との言葉には感動した。以来、ちゃっかり自分の座右の銘にさせてもらっている▼多くのアスリートにとって五輪は最大の「疾風」だ。そのプレッシャーの大きさは凡人に計り知れない。それだけに、重圧を克服したあとの栄光には惜しみない称賛が贈られる。ロンドンからはいくつの吉報が届くのか—。夜更かし(もしくは早起き)しながら、楽しみに待ちたい。(T)


7月29日(日)

●「節電の夏」が始まった。函館では市電や函館山ロープウェイが運行間隔を空けて減便し、五稜郭タワーは函館山からの夜景に影響がない程度に夜間照明を一部消した。原発事故を契機に、無駄な電力消費をなくそうという国民意識が高まっている▼そうした中、先に来函した岡田副総理が青森県大間町で建設が中断している大間原発について「政府として建設再開を止める法的権限はない」「基本的には電源開発が地元の理解を得る努力をしてほしい」と述べた。建設再開に関し、政府として積極的に関わらない考えを示したものだ▼原子力政策が国の判断と責任で進められ、いま、函館の対岸に世界で初めて混合燃料を全炉心で使う原発が着工された。それなのに法的権限がないからその建設再開に政府は関わらないというのでは、あまりに無責任だ。函館側の反発もうなずける▼確かに法律や制度は守られなければならない。しかし不備があれば改善していくのが当たり前だし、法改正することも政治は考えるべきだ。それが多くの住民の不安解消に向けた国の責任ではないか▼原発は安定した電源だが、可能な限り減らし、依存度を下げていこうというのが政府の方針である。だから皆、節電要請にも協力している。「原理原則の人」らしい岡田副総理の発言だが、福島第一原発事故後の原点は「安全性の最優先」。副総理もそれが原理原則となるはずだ。(P)


7月28日(土)

●国会が迷走している。民主党の事実上の崩壊とも言える状況が、さらに難しくしている。参院での社会保障と税の一体改革論議も低調で、採決の時期、そして衆院の解散総選挙時期だけが焦点のように一人歩きしている▼だが、ちょっと待ってほしい。その前にけりを付けることがありはしなかったか。議員の定数削減である。いつの間にか、論議はしぼみ、0増5減、など1票の格差是正論だけ。これでは抜本的な削減なんて能書きだけだった、と邪揄されても仕方ない▼前回の総選挙で、民主党が大勝し政権を担った。その時のマニフェストで定数削減をどう約束したか。衆院比例の80削減である。有権者は拍手を送った、投票もした、それは財政再建に取り組む姿勢を示す決意に他ならなかったから▼減らした人数分だけ歳費、秘書給与、さらに政党交付金なども削減できる。もちろん負託に応える姿勢が伝わってくれば、削減要望や議論も起きてこないはず。だが、衆院小選挙区の1票の格差は違憲状態だし、今の国会を見ていると、衆院比例80減でもまだ多いと言われても仕方ない▼まず民主党が議論のまな板に乗せなければ。選挙の直近となれば、各党とも有権者の反発を恐れる。筋から言って民主党を離党した議員も反対はできない。要は決断である。永田町で抵抗があったにしても、有権者の支持は確実に得られるはずだが…答えが待たれる。(A)


7月27日(金)

●地獄にいる救済者は地蔵菩薩。三途の川の賽の河原で「一重積んでは父のため、二重積んでは母のため」と、血まみれの手で石を積む幼い子供たちに優しく慈悲の声をかけ、見守っている▼福島原発事故で収束作業の陣頭指揮を執った吉田昌郎前所長はシンポジウムのビデオ映像で、危険を顧みず行動する部下たちを「地獄の中で菩薩をみた」と話し、「原子炉の冷却作業をする人間は撤退できない」と死を覚悟していたという(毎日新聞)▼放射線にさらされる原発事故の現場は“炎熱地獄”。その収束作業を巡り、下請け会社の役員が胸ポケットの放射線の線量計を鉛カバーで覆うよう指示していたことが発覚。鉛で放射線を遮り、危険を知らせる警報音を鳴りづらくしたらしい▼不安を訴えた作業員には「線量が上がれば仕事ができなくなる」とも言ったという。一定の線量を超えるとビィーッと警報が鳴って、パンク(退避)しなければならないのに、鉛カバーの強要は健康障害防止を怠ったことで、労働安全衛生法違反の疑い▼「仕事を失いたくない」と放射能の地獄で働く下請けの作業員。誰かが「原発労働のノルマは作業量ではなく、放射線を浴びることだ」と言った。福島原発の廃炉作業は30年も40年もかかる。父母のため苦しみながら石を積む子供たちを救ったように、廃炉作業に命をかける「地獄の中の菩薩」を見守る“炎熱菩薩”が必要だ。(M)


7月26日(木)

●ウナギを焼く匂いを嗅いで、めしを食う男に、店主は匂い代を払えという。男は財布を出したかと思えば、小銭をチャリンと鳴らして「音」で払う…おなじみ古典落語。北海道も節電の夏本番入り、ウナギで夏バテを乗り切りたいが…▼北斎漫画では、巨大な3匹のウナギが鰻屋のまな板から職人の手をすり抜けて天に昇っていく…。今月に入り、ウナギが高騰して、まさに“鰻登り”。店頭では国産が2000円代、中国や台湾産が1300円代。シラスウナギが3年連続の不漁になっているのが原因▼さらに米国が野生動物の保護を目的にしたワシントン条約で国際取引を規制する検討を始めたことが拍車をかけている。すでに急減しているヨーロッパウナギは規制されている。米国の言い分通りになれば、消費の7割を輸入に頼っている日本ではウナギが底をつく▼最近はウナギの本場の浜松の業者がアフリカやマダガスカルから輸入しているという。アナゴやサンマの蒲焼きも出始めた。「土用蜆(しじみ)は腹薬」といわれ、小さな身に滋養たっぷりのシジミも夏バテに効くとPR▼ロンドン五輪が開幕する27日は「土用の丑(うし)の日」。ウナギを食べて、スタミナをつけて、金メダルを取ってほしい。ウナギ商戦も、事前予約の蒲焼きなら安くなる「早割」などで追い込み。縄文時代から夏バテをウナギに頼ってきた食文化を何としても守らなければ。(M)


7月25日(水)

●「ライトフィールダー(右翼手)、イチロー・スズキ」。大リーグのシアトル・マリナーズの本拠地、セーフコフィールドに名前がコールされた。しかし、それはなじみのマリナーズではなく、対戦相手ニューヨーク・ヤンキースの8番打者としてだった▼にわかに信じがたいが、架空の話ではない。この電撃トレードは24日に発表され、イチロー選手は移籍会見のわずか3時間後に古巣と対戦した。プロの世界はかくも非情なものなのか▼だが、その初打席で、敵となったイチローに対して、マリナーズファンが贈ったスタンディング・オベーションには胸が熱くなった。普通なら激しいブーイングがでるはずなのに。スポーツっていいなと素直に思った▼イチロー選手は大リーグに移籍した年から10年連続で200本安打を記録するなど日本人大リーガーの代表格。多くの著作を読むと、求道者のごとく自分を厳しく律してきたことが分かる。「小さいことを重ねることが、とんでもないところに行くただ一つの道」—。“イチロー哲学”を座右の銘にしている若いアスリートは多いのではないか▼注目の移籍後第1打席。観客の拍手にヘルメットをとって2度頭を下げた。涙ぐんでいるようにさえ見えた。しかし、その直後にきっちりとセンター前ヒット。さらに、すかさず二盗も。背番号は「31」に変わったが、イチロー選手のすごさは変わっていなかった。(T)


7月24日(火)

●何事にも言えるが、とりわけ商売に大事なのは信用であり信頼を得ること。言葉を代えると安心、安全を約束することだが、目先だけに目がいって、ともするとないがしろにしがち。でも、しまった、と思った時は手遅れとなる▼そんな事例はたくさんあって…先日も驚きを覚える報告が。国土交通省が行った高速ツアーバス会社の緊急重点監査の結果である。298社のうち、なんと250社に道路運送法違反を指摘される事項(48社は複数違反)があったというのだから▼4月29日だった。群馬県の関越自動車道で7人が死亡、39人が重軽傷を負った高速ツアーバス事故があったのは。国交省の認識もお粗末だった。一人で夜間670㌔までは運転させていいとしていたのだから。だからと言って、運行会社の責任が免れるものではない▼その最大の理由は、人命を預かる仕事であること。だとすると、示された基準がどうあれ、安全を第一に考えた体制を組むのは使命。なのに、今回の監査でも、安全教育を怠っていたり、日雇いの人に運転を委ねていたとか▼高速バスは鉄路とは競争できる関係にあり、安価を売りに急成長している。それだけ需要があるということだが、あくまで安心、安全が保障されてのこと。再び大事故が起きたら、利用者の信用失墜は免れない。そうならないように…改めて「安全を第一」を。業界全体で。(A)


7月23日(月)

●一時はサッカー人気に猛追されたが、未だに日本で指示されているスポーツが野球であることに間違いない。しかし、世界に目を向けると、極めて限定的にしか普及していないマイナースポーツのひとつにすぎない▼その野球を真にグローバル存在にするために関係者が並々ならぬ努力をした結果、1992年のバルセロナ五輪でようやく正式種目に採用された。しかし、残念ながら今回のロンドン五輪では外されてしまった▼現在プロが参加できる唯一の世界規模の国際大会が、2006年にスタートしたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。日本は初回から2回連続で王者に輝き、13年の第3回大会にも3連覇の期待がかかっている▼その大事な舞台への出場に、日本プロ野球選手会が「ノー」を突きつけた。大会の利益配分などで、アメリカとそれ以外の国との条件格差が大きすぎることが原因だが、1年前に米の大会主催者側に出した要望に対して、何の返答もなかったことが決定的な亀裂を生んだ▼今回の選手会の決断について「プロとして当然のこと」という擁護の意見と、「単なるわがまま」という否定的な考えとが入り乱れている。ただ不思議なのは、両者の間がこじれるまで、なぜプロ野球協会が黙っていたのかということ。野球を国際化したいという純粋な思いが、この問題で曇ってしまうことだけは避けてほしい(U)


7月22日(日)

●気になるニュースがひとつ。世界の穀物価格の指標となる米シカゴ商品取引所で、トウモロコシと大豆が史上最高値を更新している。食料の多くを輸入に頼る日本にとって、安閑としていられない事態だ。数カ月後に必ずボディブローがやってくる▼トウモロコシは牛の飼料の主要な部分で、約1600万トンを輸入している。カロリーベースでは、畜産物の51%は輸入飼料で生産された計算。大豆も自給率は25%しかない。(いずれも2010年度の農水省統計から)▼穀物相場は豊作、不作で上下するのは当然だが、近年は大量の「投機マネー」がからんで、単純な需給動向だけでは判断できない複雑な構造になった。数年前にも原油価格を釣り上げた「投機マネー」が、石油の“天井”を見るやいなや穀物市場にシフトし、トウモロコシや大豆の一時的な高騰を招いたとされる▼実態を反映しない「投機」が原油や食料の価格を左右するのは、世界経済にとって大きな不安要素。特に食料は替えがきかず、低自給率の国に与える打撃は深刻だ▼日本は1961(昭和36)年に自給率が78%もあったが、07年には40%まで下落。外国は、オーストラリアの173%を筆頭に、カナダ168%、アメリカ124%、フランス111%を維持している。異常気象などで世界的に食料生産が不安定な今、自給率アップに舵を切る好機だ。飢え始めてからでは遅い。(T)


7月21日(土)

●永田町はすっかり選挙モードに入った。政局を誘引した社会保障と税の一体改革法案の参議院審議も始まり、最大の関心事は衆議院の解散総選挙の時期に。年内説は次第に現実味を帯び、しかも徐々に早まりそうな気配が▼現職にとっては尻に火がついた状況で、新人も準備が全開モード。道内では顔ぶれが出そろっていない選挙区もあるが、注目を集める選挙区が幾つか。まず挙げられるのは、鳩山由紀夫元首相が比較的楽に当選回数を重ねてきた胆振・日高の9区▼首相経験者とはいえ今回ばかりは…。沖縄の米軍普天間基地問題での腹案あり発言、さらには次回選挙には出ない発言の撤回など、批判を受けて迎える選挙。今度は相手が相手。スケートの五輪選手で、知名度の高い地元選出道議(自民)の堀井学氏ときている▼このほか10区、11区も。10区は自民本部が公明候補を推す決定に、地元支部は岩見沢市長を支持して自民が混乱状態。11区は民主から離れた現職・石川知裕議員に、病死した故中川昭一氏の夫人が弔い挑戦する。ともに目が離せない▼そして民主が議席を守り続ける当地8区は…再選を目指す逢坂誠二議員に、2度目の国政挑戦となる前松前町長の前田一男氏(自民)が挑戦する。激戦の構図が浮かび上がっているが、政治の現実を見極め、将来を考えて、誰に託すか…答えの準備もうながされている。(A)


7月20日(金)

●函館市で2007〜11年の間、覚せい剤使用が発覚して生活保護費の支給を停止された人が延べ42人もいたことが明らかになった。中には、後に支給が再開されたのに、再び逮捕され、再度支給停止になった人も2人いた▼函館は生活保護率が1000人当たり46人台で、道内2〜3番目に高い状態。セーフティネットの最後の砦(とりで)とも言える生活保護が急増している現状は、地域の経済、活力の総体的低下を反映している▼生活保護法は1950(昭和25)年制定。生存権を規定した憲法第25条に基づき、その第1条に「国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長すること」と記している▼最近特に話題になっているのは不正受給の問題。札幌では先月、覚せい剤取締法違反の容疑者が逃走。捕まえてみたら生活保護を受けながら高級外車などを乗り回していた生活実態が明らかになった。チェック体制の不備が指摘されている▼函館の昨年度の不正受給額は5100万円で全体の0・25%。割合は少ないが、一部の不正を放置すると生活保護の「無差別平等」の原則まで疑問視されかねない。「不正」を「生活の糧」とする人たちには厳しく対処しなければならない。と同時に法にある「自立の助長」への効果的な対策を打ち出す必要もある。(T)


7月19日(木)

●やはり受動喫煙の影響は怖い。咳き込んだり、目や喉が痛み、脳卒中や喘息なども発症。妊婦が受動喫煙にさらされると、流産や早産の危険性が高くなり、喫煙しない母親の子供より発育が遅れることも▼未成年者の喫煙率が高いインドネシアの2歳のヘビースモーカー(男児)。1歳半の時に親がタバコをやったことから、1日に2箱(40本)も吸っていた。母親は「タバコを与えないと泣き叫んで、頭を壁にぶつけ、吐き気を…」▼動画サイトに、中国でも2歳の男児が1日に1箱をプカプカ吸う姿が映っていた。父親がヘルニアで苦しんでいる子供をみて鎮痛剤として吸わせたらしい。インドネシアの男児は3歳になって、禁煙セラピーをうけ禁煙に成功したという▼ジャワ島の動物園で、おいしそうにタバコを吸う姿が人気の14歳のオランウータン。5歳の頃、来園者が投げ入れたタバコをプカプカ吸い始めた。報道によると、来園する子供たちへの受動喫煙と動物の健康への悪影響を考慮して、先ほど強制的に禁煙させられたという▼函館の女性の喫煙率は13%といい、依然として全国平均より高く、受動喫煙の影響を受ける家族らも10%に上る。ベランダで吸っても、口や肺にタバコの煙は残る。母乳に少しでもニコチンが含まれると、赤ちゃんはすぐ下痢症状に。タバコは万病のもと。2歳男児のように禁煙セラピーを受けて、禁煙しませんか。(M)


7月18日(水)

●ジョン・ロード氏が16日死去した。ロック少年の心を熱くしたディープ・パープルのキーボード奏者で、数々の名曲を世に送り出した。彼がいなければパープルは成り立たず、今のロックは違った形になっていたかもしれない▼中学生の時、初めて聴いた「紫の炎」に打ちのめされた。鮮烈なギターのリフに、ロード氏のハモンドオルガンがかぶる。激しいがどことなく叙情的。イントロだけでノックアウトされた。それからパープルをむさぼるように聴いた▼「紫の炎」はバンドで演奏したことがある。自分のパートはドラムス。練習で手の皮がむけるほど激しかった。キーボードの担当者も「大変だ」と愚痴をこぼしていた。演奏後に息が上がるくらいハードだった▼「ライブ・イン・ジャパン」の「ハイウエイ・スター」もすごい。イントロから妖しい熱気に包まれ、「これぞロック」と唸らせた。ロード氏が活躍する「レイジー」もユニークな曲。前半は重厚なキーボードソロが延々続く。この曲名はその後、日本のファンがプロでデビューした際、バンド名になった。ロック党にとっては、「レイジー」より、中心メンバーが後に結成した「ラウドネス」の方が有名。パープルはヘビィメタルの原型でもあった▼ハード路線をメジャーに押し上げたパープル。その中心にはいつもロード氏がいた。「紫の炎」のキーボードソロはいつまでも語り継がれる。(T)


7月17日(火)

●手付かずの自然が残り、温泉と火山が豊富。学術的に貴重な白いヒグマも確認された。水産資源にも恵まれ、クラッカーにイクラをたっぷり乗せて食べた指導者の姿を思い出す。北方領土の国後島である▼知床半島や野付湾から目と鼻の先にあるわが国固有の領土に、ロシアのメドベージェフ首相が再び足を踏み入れた。大統領時代の2010年11月以来で、今度は「一寸たりとも領土は渡さない」と語った。北方領土では地下資源の存在も確認されているようだ▼歴史的にも国際的な取り決めからも日本の領土だが、不法占拠が続く。そしてロシアは近年、北方四島への投資を始め、戦車配備や、空港や道路などインフラの整備を進めている。極東地域の新たな戦略拠点にしようとする狙いが透けて見える▼一方で、ロシア大統領に返り咲いたプーチン氏は、領土問題の解決に意欲を見せる発言をしている。6月の日露首脳会談でも議論の「再活性化」という趣旨で野田首相と合意した。その矢先の、メドベージェフ氏の国後訪問である▼大統領の発言と裏腹なメドベージェフ氏の行動の狙いは何か。復権を目指し、民族主義に訴えて支持拡大を狙うという観測もある。握手をしながら足を蹴る、ロシアの揺さぶり。日本は安定した政治の中で外交に臨み、ロシア側の真の意図を見極め、これまで以上に毅然とした態度で返還を求めていくことが必要だ。(P)


7月16日(月)

●会社の本棚を眺めていたら「函館/都市の記憶」(編集・函館市史編さん室、発行・函館市文化スポーツ振興財団)という写真集を見つけた。冒頭部分に昭和初期の函館の人口に関する記述があった。函館は1920(昭和4)年、人口14万4740人で全国9位だった▼札幌は10万人を少し上回った程度で、道内では函館がトップ。北日本最大の都市だった。市街地の3分の2を焼失した大火の翌年35(昭和10)年でも20万7480人で全国13位、まだ道内一を守っていた▼その函館市は昨年から今年にかけて、人口が約2700人減った。30万の大台はとうに割り、減少は底なしに見える。国政調査数値だと、ピークは80(昭和55)年の32万154人。現在の市制区域に当てはめると34万5165人なので、7万人も減った計算▼だが、逆に考えてみてはどうだろう。当時はまだ車社会ではなかった。もし、人口ピークがそのままだったら、渋滞はものすごいだろう。利便向上のため、道路などのインフラが整備される。市の財政赤字はとんでもない額かもしれない▼日本全体で人口が減っていく中、大事なのは、できるだけ人口減を抑えつつ、少なくなった市民が豊かに暮らせるマチに再構築することではないか。子どもを育てる環境、働く場の確保、高齢者や障害者が充実して生活できる社会。マチのデザインを再検討するアイデアを競う時代だ。(T)


7月15日(日)

●米航空宇宙局(NASA)が昨年11月に打ち上げた火星探査船「マーズ・サイエンス・ラボラトリー」が8月5日に火星に到着する。この船には「キュリオシティー」という名の探査機(ローバー)が搭載されている。土などを採取して、生命の痕跡などを詳しく調べる▼水の存在が確認されるなど何かと話題の多い火星。「キュリオシティー」は軽自動車ほどの大きさがあり、土壌の化学分析機器や顕微鏡などを搭載する。電力源に原子力電池を使用し、1火星年(2・2地球年)の活動を想定している▼火星ローバーには偉大な“先輩”がいる。2004年に着陸した「オポチュニティー」だ。設計寿命は1カ月半ほどだったが、何と8年を経た今も動いており、多くのデータや画像を地球に送っている▼砂にはまったり、動力源の太陽電池パネルが砂塵で汚れて動けなくなるなど、幾多の危機を乗り越えて働き続けてきた。その苦闘ぶりは“火星版はやぶさ”。米国の宇宙開発の底力をみる思いだ▼一方、日本は12日、内閣府に「宇宙戦略室」を設置した。宇宙産業の国際競争力を高めるのが狙いで、国産ロケットを売り込むという。今後の宇宙政策が楽しみな一方、「産業の国際競争力」という地球的なテーマが気に掛かったりもする。経済の論理だけで挑戦的な研究は成り立たない。将来への夢や希望を育てる「戦略室」であってほしい。(T)


7月14日(土)

●もう言いたくはないけど、今の永田町を見ていると、余りの姿に一言も二言も言わずにいられない。そんな思いを抱き、いらいらを募らせている人が多いに違いない。政権を担う民主は混迷のるつぼ状態で、野党第一党の自民も相変わらず▼あまり期待していないから、お勝手に、とさじを投げたいところだが、そうも言ってはいられない。内政、外交ともに課題が山積しているから。確かに税と社会保障の一体改革法案も大きな政治課題だが、伝わってきたのは永田町論理▼口を開けば「国民のために…」「国民が…」と建前を言うが、本音は違うところにあって。だから激しく批判し合う一方で、協力関係にもなる。税と社会保障の一体改革法案は後者の一例だが、としても、自民の谷垣総裁の発言はどう理解すればいいのか▼「極めて遺憾。一緒にやっていく信頼感が損なわれた」。民主が消費税法案に反対した鳩山元首相の党員資格停止期間を短縮修正したのを受けてだが、その前提は、信頼感があって、一緒にやっていこうと考えていた、ということだから▼そこに見え隠れするのは建前と本音の使い分け。これでは有権者に政権を任せられる政党はないと思われて仕方ない。朝日新聞の最新世論調査にも表われ、望む政権は自民中心が17%、民主中心は7%。ちなみに無党派は63%で、圧倒的な第一党。悲しい現実というほかない。(A)


7月13日(金)

●「男児志を決して千里を馳す…却って笑う春風雨を吹く夜…」 148年前、国禁を破って渡航した新島襄が香港で詠んだ。この漢詩が刻まれた渡航の地碑前で、函館水産高校の生徒が寸劇「新島襄と仲間たち」を15日に演じる▼西部地区の東坂を下った岸辺。密出国を手伝ったのは「函館丸」の建造に携わった福士成豊。深夜、小舟に乗り込み、新島は船底に身を伏せ、成豊が櫓をこいだ。途中、奉行所役人にとがめられたが、信頼の厚かった成豊は冷静に対応。無事、沖のベルリン号に乗せた▼ベルリン号船主夫妻の養子に迎えられ、10年にわたって、教育を中心に欧米の政治、経済、社会慣習などの知識を習得。クラーク博士から化学も教わった。戊辰戦争時に男装で鶴ケ城に籠城し、スペンサー銃で奮戦した八重と結婚▼新島は日本のジャンヌダルクと呼ばれた八重を「ハンサムウーマン」と称し、互いに尊重し合って同志社の創立に尽くす。結婚後、夫妻は函館に立ち寄り、2人で脱国した大町周辺を散策している。そう来年の大河ドラマ「八重の桜」の主人公▼水産高校生の寸劇は新島が函館から密出国するシーンを再現。別れの杯、逃避行、再会の3部作。「函館ゆかりの新島を多くの人に知ってもらい、函館と同志社の関係を盛り上げたい」と熱演する。渡航地もドラマに登場するだろう。新しい時代に立ち向かった夫妻の偉業・功績は函館の誇りだ。(M)


7月12日(木)

●将棋の羽生善治さんが「棋聖」を防衛し、前人未到の域に。タイトルを防衛すること81期。あの大山康晴十五世名人の記録を抜いた。振り返ると、最初のタイトル「竜王」を獲得したのは弱冠19歳の時。1989年というから22年前に遡る▼そのタイトルは翌年失うも、その翌1991年には「棋聖」を獲得。以来、毎年、何らかのタイトルを保持し続けている。今日までの勝率は実に7割強。実力拮抗の世界で、1996年には全冠独占という快挙も成し遂げている▼あれは2005年6月のこと。羽生さんに会う機会に恵まれた。第63期名人戦の第6局が函館で行われた際の前夜祭だった。もともと勝負師という激しい気性のイメージのない人だが、素人のピント外れの問いにも、優しい物言いで対応してくれた▼まだ41歳というから、再度の函館対局も期待される。その函館は、将棋ファンが多い、と言われている。タイトル獲得5回、長く日本将棋連盟会長を務めた二上達也九段の出身地ということもあろうが、こうした大一番の開催もけっして無縁でない▼本紙も将棋界との付き合いは薄くない。創刊時から棋譜の紙面展開をしてきたほか、創刊記念として道南竜将戦(日本将棋連盟函館中央支部との共催)を新設。毎年、一流棋士を招いて、地元新聞社の事業として開催して15年。今年も8月19日に本社ビルで開かれる。(A)


7月11日(水)

●ヒッグス粒子とみられる素粒子の存在が初めて99・9999%の確率で確認されたという。物質の質量の元になる「神の粒子」。存在は48年前、理論的に示唆されていたが、長い間証明できないままだった▼宇宙の成り立ちを説明する「標準理論」に必要な17種類の素粒子うち、存在が確認されていなかった唯一の粒子。パーツが全て揃ったことで、宇宙の起源や生命誕生の謎を解き明かす一助になるらしい▼素粒子物理学はとにかく難解だ。一般人、特に文系人間にはチンプンカンプン。だが、ヒッグス粒子の存在証明は、世紀の偉業ということで物理学者は色めきたつ。よく分からないが謎ときのワクワク感がある▼素粒子は、それ以上細分化できない物質の最小単位。最初の発見は「電子」で、時は1897年。その後、1世紀の間に、クォークやニュートリノなど16種類の素粒子が見つかっていた。この探究には、巨大加速器(LHC)が大きな役割を果たした▼真空のチューブの中で陽子を光速近くまで加速して衝突させる。そこでは宇宙誕生の際の大爆発(ビックバン)に近い状態をほんの一瞬だけ再現できるという。ヒッグス粒子もビックバン直後(100億分の1秒後)に現れたとされ、今回はスイスにあるLHCで行った実験で、その存在が確認された。分かったようなことを書いているが、ここまでの理解が文系には精いっぱい。宇宙の謎は深淵だ。(T)


7月10日(火)

●宝塚歌劇団に「ブスの25カ条」があるとか。「笑顔がない」「いつも周囲が悪いと思っている」など。心の持ちようで美しくも醜くもなるということで「心から笑顔で」「周囲に感謝の気持ちを持つ」ことができたら〈美の女王〉になれる…▼中国メディアで〈美の女王〉ならぬ〈空飛ぶ女神〉と呼ばれている女性がいる。先月、中国が打ち上げた有人宇宙船に乗り込んだ中国初の女性飛行士の劉洋さん(33)。13日間滞在し、心臓血管や脳に与える医学的な影響を調査▼注目されるのは女性が宇宙飛行士になれる条件。アザや虫歯などの有無のほか、「歯が白く、身体から異臭がしないこと」がある。歯が白い美人は帰還後に広告塔に使え、体臭検査は何らかの内臓疾患を抱えていないかなどを調べるためともいう▼25歳以上の女性、特に子供を産んだ既婚者は孤独に耐える力が備わっているため宇宙飛行士に向いているそうだ。「足にタコがない」という項目も。タコは皮膚病を誘発し、中国では昔、死を告げる前兆といわれていたとか…▼〈空飛ぶ女神〉を送り込んだ中国は世界初の「宇宙ベビー」を狙っているのか…。2年前、国際宇宙ステーションで15日間滞在、帰還後に引退した山崎直子さんは、劉洋さんにエールを送った。ある幼稚園で園児に一番好きな臭いを聞いたところ、「お母さんの臭い」の大合唱になったという。美しい〈女神の臭い〉は宝だ。(M)


7月8日(日)

●日本航空などが出資する格安航空会社(LCC)「ジェットスター・ジャパン」が、成田空港を拠点に就航した。成田—新千歳の片道は4490円からと、衝撃の価格設定。往復1万円以下というケースもあり、利用者にしてみれば大きな魅力だ▼日本にとって、今年は「LCC元年」といわれる。3月に全日空系の「ピーチ・アビエーション」が関西空港を拠点に運航を始め、8月には同じく全日空系の「エアアジア・ジャパン」が成田を拠点に大都市間のエアラインに参入する▼LCCは欧米ではかなり浸透し、その安さや手軽さから「空飛ぶバス」と例えられる。基本はインターネット予約、変更やキャンセルが利かない、機内サービスの有料化など、徹底したコスト削減で低価格を実現した▼既存の航空会社にとって脅威だが、同じパイを奪い合うのではなく、格安航空の参入で新たな需要が生まれ、航空業界全体の市場拡大や活性化を図る狙いがある。多少の不便は我慢して安さをとるか、高品質のサービスや安定運航を求め従来のエアラインにするか、利用者にとって選択の幅が広がるのは歓迎だ▼函館空港への就航はまだだが、LCCの参入で移動人口が増えれば、地方都市でも観光や経済への波及効果が期待される。ただ、行き過ぎた競争は企業の体力戦となる。くれぐれも安全性が“低空飛行”することのないようお願いしたい。(P)


7月7日(土)

●「分裂」という表現は、ちょっと大げさ過ぎはしないか。まあ、それはともかく、民主党から離党者が出て1週間になろうとしている。民主主義は数で決まる、政治は数と言ってはばからなかった政治家が、いわば数に負けての離党劇▼どの政党に所属しようが、政治家の勝手であり、是非の判断は有権者がすればいいこと。ただ、この懸案山積の時に、政局に走る舞台裏まで見せつけられると、勘弁願いたいと言いたくもなる。主役を演じた政治家にとっては、4回目の舞台である▼政権与党時代の自民党を離れたのが最初。その舞台は結構な顔ぶれとの行動だったが、その後の舞台では一人減り、二人減り…今回も役者の数こそほぼ50人規模ということだが、多くは当選1、2回のデビューしたて。本番に向けての時間も足りない▼そもそも民主党という劇団自体、右から左までの役者が混在し、その基盤は不安定。たまたま吹いた風に乗って大盛況となったが、マニフェストという台本を巡り、次第にきしみが大きくなって…。新たな劇団探しをする役者が出てしまった▼その責任の一端は有権者という名の観客にも。3年ほど前、民主党はいい劇団、と拍手を送ったのだから。今、向けられる目は厳しいが、それは旗揚げする新劇団の方が何倍も。そして、観客は、というと…。じっと来るべき大公演「解散総選挙」を待っている。(A)


7月6日(金)

●日本は年に3万人を超す悲しい自殺大国。昨秋、大津市で中2男子がマンションから飛び降り自殺した問題で、全校生徒を対象に実施したアンケートから、自殺した生徒が生前に「自殺訓練」を強要されていた事実が判明した▼報道によると、うち伝聞形式で解答した1〜3年の15人は「自殺の訓練とか、トイレで殴られていたとか、死んだスズメを口の中に入れろと言われていた」「何回も自殺の練習をさせられていた。先生に相談したけど何もしてくれなかった」…▼いじめと自殺の関連を示唆するような「がんの友達に自分の命をあげるなどと言っていた」「いじめていた人に『明日死にます』とメールを送っていた」と続く。市教委は、いじめの存在は認めたが、一貫して「自殺との因果関係は判断できない」と主張している…▼両親は「小さな信号を発信していた生徒がいたのに、なぜ調査を打ち切った。自殺はいじめが原因」と提訴。自殺は自分の成長を止めてしまう行為。自殺の訓練というのは間接的な他殺ではないか。若い子供の生命を止める訓練なんて許されない▼家庭にある化学薬品を使って「自殺する方法」を書き込んだウェブサイトもある。アンケートの回答には「自殺訓練」の具体的な内容に触れるものはなかったが、ヘッドロックをかけたり、訓練といって押さえ込んだり…。目撃していた担任が軽い注意にとどめていたことが残念だ。(M)


7月5日(木)

●鹿児島県に2日、「1」とだけ書かれた不審なEメールが約1万6000通も届いたという。海外のサーバーを経由して、県のホームページを通じて発信されたらしい。いたずらのレベルを超えた犯罪的行為だ▼無意味なメールを大量に送り付ける「メール爆弾」を筆者も受けたことがある。ある日、仕事中にメールを確認すると、なかなか受信が終わらない。しばらくして完了したのを見ると、英語のタイトルのメールが数百通。不気味さに青ざめた。始末の悪いことに、その後も1分間に数〜十数通のペースで同じメールが届いた▼すぐにメールアカウントを休止し、「メール爆弾」をブロックしたが、アドレスを変えざるをえなかったので、仕事先や知人への連絡にかなりの時間を要した▼米国のセキュリティーソフト会社によると、昨年、企業や政府機関のサーバーを攻撃して、個人情報などが流出した事例が世界で1億8700万件もあったという。最近では「アノニマス」という集団が、日本の違法ダウンロードの刑事罰化に抗議して国内でサイバー攻撃を実行した▼インターネットの急速な普及で、世界中との情報交換は格段に便利になった。一方で情報流出やサイバー攻撃などの犯罪的な行為やメール爆弾のような迷惑行為がより激しさを増している。一般ユーザーはセキュリティーソフトをインストールするくらいの対抗策しかとれないのが歯がゆい。(T)


7月4日(水)

●ロンドン五輪のサッカー日本代表メンバーが発表された。どの新聞、テレビを見ても、男子より女子に紙面や時間を割いている。まさに隔世の感▼感動的なワールドカップ優勝で「世界一」の称号を手にした日本女子・なでしこジャパン。最強のアメリカと死闘を演じたW杯決勝戦の後半、コーナーキックを合わせた沢穂希選手の同点弾は日本のサッカー史上に残る素晴らしいゴールだった▼そのなでしこも、先の親善試合では米国に1—4で大敗した。米は体格で上回るフォワードにロングパスを通して一気にゴールに迫る。日本は相手の厳しいプレッシャーを受けて生命線のパスがつながらない。テレビを見る限り、内容的にも完敗で、五輪が少し心配になった▼「世界一」のなでしこは、当然各国から徹底的に研究される。この前の米国戦を参考に、五輪本番でも、体格とスピードを生かしたパワープレーで攻められるだろう。戦術としては単純で面白みに欠けるが、五輪では何より勝利が求められるので仕方ない。受けて立つしかない▼強豪国と比較すると、日本は体格で大人と子どもほどの開きがある。しかし、W杯では全員が惜しまず走り、目の覚めるようなパスワークで、その大人たちを翻弄した。サッカーの内容は日本が完全に「大人」だった。ジュニアのお手本になるような鮮やかなプレーも随所にあった。その雄姿を五輪でもう一度見たい。(T)


7月3日(火)

●若者の職業観については、さまざまな見方がされる。「今の若い者は」こそ、あまり聞かれなくなったものの、世代間の意識ギャップは残ったまま。短期間での離職が多い現実はその一つの証しだが、昨今は必ずしもそうではないようで▼「チャンスがあれば転職したい」。悪く言えば今の仕事に対する不満であり、よく言えばステップアップの意識がさせる言動、行動だが、今はそうでない。置かれる環境が変われば、人間の意識も変わって当たり前。職業観にしても然り▼日本生産性本部などが新入社員研修の際に行った意識調査の結果も物語っている。「定年まで今の会社で働きたい」と答えた人は3人に1人、これまで最高の34・3%。「残業を命じられたら仕事をする」は、過去2番目の85・6%だったという▼にわかに信じ難い、そう受けとめる人がいるかもしれない。確かに今の厳しい雇用環境も背景にあろう、入社したばかりという調査時期もあろうが、少なくともこの会社で頑張っていこうという思いは伝わってくる。鍵はその思いをいつまで保ち続けるかである▼同じ会社で定年まで働くも良し、転職するも良し。それは誰にも指図されることではない。それぞれ抱える事情もあれば、価値観の違いもある。ましてや入社早々から答えを出す話でもない。新入社員の社会人生活は今まだ始まったばかり。人生は長い。(A)


7月2日(月)

●高校球児にとって夢の舞台である甲子園出場をかけた夏の高校野球大会予選は、全国各地で熱戦が繰り広げられている。函館支部でも、まずは札幌で行われる南北海道大会への3つの切符を手にするために、26チームが激闘を展開。6月30日に行われた代表決定戦では、函大有斗、函高専、函大柏稜が見事に勝利をつかんだ▼今年の決定戦は、2試合が延長戦にもつれ込むなど、チーム感の実力差が拮抗し、見応えのあるゲームが続いた。特に、強豪の函大有斗を土俵際まで追い詰めた函館ラ・サールの堂々たる試合運びは、賞賛に値する内容だった▼一方の函大有斗も、土壇場の9回に同点に追いつき、最後は鮮やかなサヨナラ勝利を収めるなど、最後まで試合をあきらめない執念を見せてくれた。ここで苦しんだ経験は、必ず南北海道大会でも生かされることだろう▼支部予選の期間中は、各学校の家族や関係者やOBらが、毎日の結果に一喜一憂してきたと思うが、ここから先はこの3校が、道南地区の期待を一身に背負って道内の強豪に挑むことになる▼かつては高校野球の激戦区だった道南地域だが、1997年の函大有斗以来、夏の甲子園の土を踏んだチームはいない。結果がすべてではないが、高校球児にとってあこがれの大舞台で彼らが思う存分プレーできるように、まずは札幌円山の地に向けて道南からエールを送りたいと思う(U)。


7月1日(日)

●最大の親不孝は、昔から「親より先に逝くことだ」といわれる。冥土にある賽(さい)の河原では、幼くして死んだ子供たちが「親を悲しませた」という罪で石を積む苦行を永遠に繰り返しているという▼脳障害を負った6歳未満の男児が脳死と判定され、幼児では日本で初めて臓器移植が行われた。肝臓を移植された女児は容体が悪化する中、手術が間に合った。心臓は心筋症の女児に、腎臓は60代の女性に移植され、いずれも術後は良好という▼提供した男児の両親は「家族が精いっぱい愛情を注いで育ててきた息子が、遠くへ旅たちました。息子が誰かのからだの一部となって長く生きてくれる…。このようなことを成しとげる息子を誇りに思います」と気丈にコメント▼臓器移植ネットによると、0〜9歳の登録患者は心臓10人、肺4人、肝臓8人、腎臓18人の40人。15歳未満では84人(5月現在)。子供の患者は提供者が現れず、海外での移植を目指すケースが多かった。このため昨年の法改正で子供の提供も可能になった▼脳は死んでも、体には血が通っているため温かい。幼児は大人より脳の蘇生力が強いといわれ、家族が認めがたい死。両親の究極の決断に頭が下がる。わんぱく盛りの心臓や肝臓をもらった少女たちは、会ったこともない恩人に感謝しながら歩み始めた。賽の河原で男児は積み重ねられる「命のリレー」を見つめている。(M)