平成25年12月


12月31日(火)

●正月準備に大忙し。なかでも、生きていくためにいただく命、自然の恵みに感謝する正月料理。世界無形文化遺産に登録された和食の出番。「もったいない」の心も育んで大切にいただく▼食材の一つ一つの良さを引き出しながら、全体を調和させるのが和食。正月料理の代表格は、煮しめ、酢の物、焼き物という祝い肴三種の「おせち」。関東では黒豆、数の子、田作り、関西では田作りがタタキゴボウに代わる▼道内は本州からの入植者が多いためか、各地のおせちが混在しているが、函館の正月料理に欠かせないのが「クジラ汁」。黒くつやのある皮、白い皮下脂肪。皮の部分を塩漬けにした「塩クジラ」▼大根、ニンジン、タケノコ、ゴボウなど入れて酒や塩で味付け。野性味あふれるコク。体が温まり、餅を加えれば雑煮に。松前藩の時代「クジラが来るとニシンが寄る」といわれ、クジラは魚の神だった▼最近は学校給食にも使われている。日本のクジラ肉は調査捕鯨で確保してきたが、反捕鯨団体の妨害もあって、捕鯨頭数は大幅に減少。しかし、ノルウェーから輸入される見通し。人と人の和を育む「クジラ汁」を食べて、駿馬の如く飛躍する新年を迎えたい。(M)


12月30日(月)

●北海道開発予算の内示とともに、この時期いつも注目されるのが整備新幹線の予算配分。政治力を背景にした予算の獲得競争は激烈で、「政治新幹線」と言われるゆえんだ▼来年度の道新幹線新青森—新函館(仮称)間は、前年比半減の524億円で、新函館—札幌間は倍増の120億円。2015年度の青函開業まであと5年、4年、3年と言っているうちに、札幌へのつち音も響いてきた▼札幌延伸で道は、駅舎整備費の負担割合を関係自治体と決めた。通常は道負担の1割が地元負担だが、札幌市の上田市長は5割を持つことに同意。当初は難色を示していたが、思い切った政治判断をした▼一丸となった取り組みが必要な中、青函開業に影を落としているのが駅名問題。来年6月にもJR北海道が名称を決めるため、函館、北斗の両市は、地元で一定の結論を得ようと協議を始めた▼しかし両市の議会が別々の駅名を決議しており、協議の実効性を疑問視する声がある。一方、函館側としては、駅名をめぐる道の介入をけん制する狙いもある。道には新幹線現駅乗り入れの約束を反故にされるなど、不信感が根強い。政治うずまく駅名問題だが、開業の喜びを分かち合える方途を探ってほしい。(P)


12月29日(日)

●さまざま解説されているが、来年度予算の政府案が決まった。その規模は一般会計で95兆8800億円。経済対策が必要、だから思い切って。でも…消費税を3%上げたところで賄え切れない▼税収は対前年度当初比16%増を見込んで50兆円余。頼るは国債というわけで、新規で41兆円余りを発行することになり、税収外の公債依存率は43%。予算規模の4割強を借金で辻褄合わせするということである▼まさに自転車操業状態。借金大国の度合いをさらに強め、積もり積もって来年度末の国債発行残高は、なんと780兆円。それに借入金などを加えると1000兆円を超えて、国民1人当たりに換算すると800万円▼企業経営が改善され、賃金が上がった分が消費に回るならまだしも、それも保証の限りでない。年金は目減りし、若い世代は将来に不安を抱えているから、低金利時代とはいえ貯蓄を敬遠するわけでもない▼消費増税による消費への影響も懸念される。何かアベノミクス万々歳のムードが無きにしもあらずだが、忘れてならないのは、それを支えているのは多額の借金だということ。解消を託されるのは次世代だが、それに対する答えは一向に伝わってこない。(A)


12月28日(土)

●A級戦犯が合祀されている靖国神社に参拝した安倍首相に、中国や韓国が反発、同盟国の米国も「近隣諸国との関係を悪化させる行動に失望している」と批判。先の大戦は1発の銃弾から始まった▼こちらは1発どころか1万発の話である。軍が内部分裂し、民族争いに発展した南スーダンのPKO韓国軍に、陸自の銃弾を提供した。韓国軍の銃弾が切れ、国連経由で要請を受けたという▼これまでイラクやアフガニスタンなどに向けた実績をみると、テントや毛布の生活必需品や医薬品、建設機材など難民向けが多い。銃弾など武器はなかった。海外への「物資協力」の規定は不透明▼案の定、日本は「緊急性・人道性が極めて高い」として無償譲渡したが、韓国側は「困っていない。銃弾は足りているが、予備として」と主張。武器提供が禁じられている国と隣国に借りたと認めたくない国▼戦場に登場のカラシニコフ銃の作者は「銃は国を守るものだが、争いに使わないでほしい」と強調。1万発の銃弾は子供など1万人を殺傷することだ。武器輸出「三原則」に違反する。「人道性」などと拡大解釈は許されない。靖国神社に祀られている戦没者も決して望んではいない。(M)


12月27日(金)

●「餃子(ぎょうざ)の王将」チェーンを展開している王将フードサービス(本社京都)の大東隆行前社長が射殺された事件から1週間が経った。王将で餃子を購入し、その写真をツイッターやフェイスブックに投稿する「追悼餃子」の動きが広がっているという▼大学に入り京都に住んだ30年ほど前、本道出身の筆者は王将を知らなかった。だが、大学の正門前で、無料券や割引券が札束のように分厚く入った茶封筒を何度も受け取り、その存在を知った。貧乏学生にとって王将は「救いの神」だった▼先日、札幌に行った際、久しぶりに王将に入った。値段の安さとボリュームが相変わらずなのがうれしかった。店内は大いに混雑していた▼大東社長は一代で王将を全国屈指の外食チェーンに育てた。かつてテレビ番組の特集で、厳しい仕事ぶりが紹介されていた。だからこそ、あのサービスを確立できたのだと妙に納得した▼それにしても不気味なのは、この凶行。亡くなる1週間前、ある週刊誌で「誰よりも早く出社し会社の周辺を掃除する」と紹介されていた。まさに狙われたのはそのタイミング。会社のトラブルなのか個人的怨恨なのか—いずれにせよ、犯人は挙げられなければならぬ。(T)


12月26日(木)

●「ゆく河の流れは絶えずして〜」のように、有明海の「潮の流れも絶えずして〜」—。諫早湾干拓で出た相反する二つの裁判を巡って、流れる潮が「人間の無作為」を嘆いている▼かつて秋田県の八郎潟など各地で干拓が進んだが、コメ余りになって後退。そこで食糧事情の救世主となる大事業の先べんをつけた一つが諫早湾干拓。鉄板をギロチンのように落として遮断。陸側は農地になった▼農業が潤えば漁業が廃れる。農民側に立つ長崎県と漁民を応援する佐賀県。福岡高裁は開門調査を命じる判決。これに対し、長崎地裁は開門差し止め仮処分の判決。開門期限の20日はとっくに過ぎた▼かたや水門を開けろといい、かたや開けるなという諫早干拓の矛盾。盾と矛が戦ったらどうなるのか。水門が開ければ負傷者が出る恐れも。国は鉄板の板挟みで身動きできず、「難問先送り」という大矛盾▼もともと漁業者、農業者を苦境に追い込んだのは国の無策にある。これを機会に有明海再生のビジョンと決意を示すべきだ。北海道には関係ないが心配。ひどい仕打ちを受けた有明海の潮は「黙って」流れ去らないだろう。年の瀬に顔を出したムツゴロウも「何とかして」と訴えている。(M)


12月25日(水)

●ソチ五輪の日本代表最終選考を兼ねたフィギュアスケートの日本選手権が23日、男女フリーでクライマックスを迎えた。劇的な幕切れに大勢が釘付けとなった▼代表レースは男女ともまれにみる混戦。GPファイナルの結果から、羽生結弦選手と浅田真央選手は確実とみられていたが、残る男女各2枠は日本選手権の結果次第。高レベルの選手の層がこれほど厚い国はそうない▼男子はバンクーバー五輪の銅メダリスト高橋大輔選手が足の故障もあって5位。普通なら選考枠から漏れるところだが、何しろ彼には実績がある。結果、3番目の枠に滑り込んで歓喜の涙。今大会で3位に入ったのに落選した小塚崇彦選手の潔いコメントが泣かせた▼女子は“本命”の浅田選手がジャンプのミスで3位に沈む波乱。浅田、鈴木明子両選手に次ぐ3番手が焦点だったが、2位をつかんだ村上佳菜子選手が混戦を抜け出した▼女子優勝の鈴木選手の演技には感動した。欧米人と比べると手足の長さなど体格面ではハンディがあると思うが、スケーティングの技術と表現力を磨いて芸術性を高めた。鈴木選手に限らず、どの選手にもメダルの可能性がある。五輪本番が楽しみでならない。(T)


12月24日(火)

●今年も残すところ1週間、明暗いろいろな出来事があった。間もなくマスコミ各社選定の十大ニュースが発表される。多くは読者が選んでいるが、大手新聞社の社会部長はこう選定した▼新聞之新聞社という業界紙が行っているもので、対象は国内外の出来事。作る側の立場からの選定だけに読者と見解が分かれることも。今年の1位に挙げられたのは「特定秘密保護法の成立『知る権利』の議論に」だった▼2位は「2020年東京五輪・パラリンピック決定」で、3、4位も東京都関係の「異常気象相次ぎ伊豆大島で土石流災害」「徳洲会事件摘発・猪瀬都知事にも波及」へと続き「参院選で自民大勝・ねじれ解消」▼そして「福島原発の汚染水問題など震災の影響なお深刻」「衆参の一票の格差に初の違憲・無効判決」「東北楽天日本一で被災地に元気」「アルジェリアで人質事件・日本人も10人死亡」「柔道などスポーツ界で体罰問題相次ぐ」▼明るい話は五輪と楽天の2つ。「富士山の世界文化遺産登録」も番外で、選ばれたのは暗い話の方が多数。毎年、十大ニュースに触れて抱くのは「来年は明るい話題の多い年に」という思いだが、今年も…その例外でなかった。(A)


12月23日(月)

●時間の問題ではあったが、予想以上に早い段階で辞任を決断した東京頣知事の猪瀬直樹氏。ぎりぎりまで権力にしがみく見苦しい政治家が少なくない中、引き際だけは潔さを見せたと言うところか▼こうなると世間の注目は「次に頣知事の椅子に座るのは誰か?」という一点に絞られる。日本の首都であり世界有数の大都市の首長を務めるには、政治的手腕はもちろん国際的に通用するアピール力が必要となる。五輪招致に成功した猪瀬氏は、その部分に関してだけは役割を果たしたと言ってもいいだろう▼もちろん次期都知事にとっても、五輪へ向けた準備は大切な任務のひとつであるが、それ以外の膨大な仕事をこなすためには、百戦錬磨の政治経験が必要されるのは明白だ▼現時点では舛添要一氏や東国原英夫氏、さらには橋下徹大阪市長などの名が飛び交っているが、いずれも予想の範囲でしかない▼これだけは忘れて欲しくないのは、都知事選には莫大(ばくだい)な費用が掛かるということ。2011年4月、12年12月、そして今回と、3年度連続で行われた選挙費用の合計は130億円以上に達するという。せめて4年間の任期を全うできる人を選んでほしい。(U)


12月22日(日)

●当たり前のように受けているサービスが、ある日ストップしてしまったら…。カナダの郵政公社が郵便物の各戸への配達を都市部でも廃止することを決めた。地域単位で設置した集合ボックスに配達するという▼背景にあるのは、郵便物の減少。カナダでは最近5年に郵便物の戸別郵送が25%も減ったらしい。その原因として、Eメールの普及などが挙げられる。カナダは広大な国土を有する国なので、確かに配達効率は悪そうだ▼日本ではまだこうした措置は本格的に議論されていないが、いずれ検討される可能性は否定できない。世界の郵便動向を研究した2004年のある論文では「Eメールやインターネットが普及しても郵便物数の急減は生じていない」と断じていたが、情勢はそれ以後に大きく変化したのかも▼郵便物の量は、景気や世帯数にも左右される。いわば社会を映す鏡でもある。広大な面積に少ない人口。北海道の条件はカナダと似ている。加えて景気も低迷中。サービス変更があるとしたら、真っ先に検討されそう▼実際、カナダでは最初に都市部以外で集合配達を実施した。郵便形態の変化と人口の偏在を克服する何か良い方法はないのだろうか。(T)


12月21日(土)

●地方の人より都会の人の方が、日常生活の中で運動している。その理由は歩く量が多いから。言われてみれば確かに。車依存度の差とも言える通勤の交通手段を例にとると分かりいい▼地方にいると、車での移動はいわば常識。通勤はもとより、近くへの用事でも無意識にハン㌦を握ってしまう。運動面からみると、強制的に歩かざるを得ない環境に置かれている都会の人がうらやましくも映る▼公共交通機関の充実度が違うから、一概に善し悪しは決めつけられないが、結果として地方の人は歩く機会に恵まれない。函館市が提唱の市民ノーマイカーデーの参加者、徒歩で移動した人の少なさも、それを物語っている▼歩くことは健康維持に大事な要素で、適度な運動の一例。特に糖尿病対策として推奨される。その罹患者と放っておくと糖尿病になる予備軍を合わせた人数は実に2050万人(厚労省の国民健康・栄養調査)という▼5年前の前回調査と比べ160万人減ったそうだが、それでも2000万人超とは。大人から子供まで国民のほぼ6人に1人。予備軍のうちは大丈夫、は通用しない。予備軍は赤に近い黄信号。緑に戻すには適度な運動…歩くことは欠かせない。(A)


12月20日(金)

●痛みで水さえのどを通らず、寝返りを打った拍子に骨が折れる—。100年ほど前に富山県の神通川流域で、金属鉱山の排水に含まれるカドミウムに汚染されたコメを食べ、骨折する被害が続出。イタイイタイ病▼カドミウム汚染米を食べた住民に腎臓障害や骨粗しょう症を伴う骨軟化症がみられ、患者は「痛い、痛い」と全身に激痛。45年前に国内初の公害病に認定され、認定患者は約200人だったが、生存者は3人▼カドミウム腎症だけは「日常生活に支障が出るわけではない」と患者認定されなかったが、先ほど、原因企業が公式に謝罪し、全面解決の合意書に調印。被害者1人に60万円の一時金が支払われる▼「朝には紅顔ありて、夕には白骨となれる身なり」—故人の骨あげを終えると、唱えられる蓮如上人の「白骨の御文」。しかし、イ病の犠牲者はわずかに頭蓋骨の一部を残すのみで、白骨さえも奪われた▼戦後、日本産業は国民大衆の犠牲の上で育成されてきた。四大公害病のうち、熊本、鹿児島、新潟の水俣病は患者の認定基準が批判され、全面救済の筋道はついていない。カドミウム腎症を健康被害として認めさせようと闘った教訓を生かそう。(M)


12月19日(木)

●「愛とか友情などというものはすぐ壊れるが、恐怖は長続きする」。20世紀の独裁者の一人、スターリンの語録である。旧ソ連で権力の中枢に座り、数え切れない粛清を重ねた。クレムリンでは書記長以下に並ぶ序列がそのまま権力の順番でもあった▼北朝鮮でも金正恩第1書記が、政権ナンバー2で後見人の張成沢氏を粛清した。そして17日の金正日総書記死去2年の追悼行事では、張氏の代わりに軍の幹部らが序列を上げた。張氏の側近は「恐怖で支配しようとしている」と話した▼先軍政治の色を強めたい第1書記と、経済改革を進める張氏が対立したとか、中国をバックに影響力を強める張氏をうとましく思ったとか、諸説あるが、真相は闇の中だ▼即日裁判で死刑、即日執行という国に弁論の余地などないのだろう。かの国のテレビは、指導者はいつも温かく人民を見つめており、指導者への忠誠こそ、国家が繁栄する道なのだと、繰り返し説いている▼しかし、温かい指導者であれば人民を飢えさせず、凍えさせない愛と友情があるはずだ。第1書記をたたえる新しい歌は「我々はあなたしか知らない」という歌詞のようだ。人民の哀歌にしか聞こえない。(P)


12月18日(水)

●復興特別法人税が1年前倒しして今年度で廃止するという。与党が決めたのだが、企業にその利益分を賃金に反映し消費に結びつける、その結果として景気の回復が期待できる、として▼三段論法的な話だが、そう上手くいくかは保証の限りでない。改めて説明するまでもないが、復興特別法人税は東日本大震災の復興財源を法人も個人もこぞって負担しよう、という趣旨で設けられた▼廃止するなら、その趣旨からして個人にも何らかの措置があって然るべき…そんな感情論を抱かれても仕方ない。経済効果を考えるなら、消費増税対策としてなら、個人の税負担を軽くした方が手っ取り早い▼なのに法人だけの廃止。企業にその分を賃上げに回してもらうのだという。経済界も一定の理解を示しているようだが、それは大企業レベルでの話。中小零細企業も同じ認識と受け止めているとしたら甘い▼それでなくとも極端な円安状態。ガソリン価格の高騰に経営を直撃されている業種、企業は少なくない。復興特別法人税の廃止分もその経費増に吸収されてしまう可能性が無きにしもあらず。目論見通りの答えが出るのかどうか、その鍵を握っているのは政府与党でない。(A)


12月17日(火)

●カーリングの女子日本代表(北海道銀行)が15日、ソチ五輪出場を決めた。最後の1枠を争う決定戦で、ノルウエーに逆転勝ち。女子の五輪は5大会連続。道産子がつかんだ“プラチナチケット”を素直に喜びたい▼4人のうち最後にストーン(石)を投じるスキップは小笠原歩さん。トリノなど2度の五輪を経験し、引退後の結婚、出産を経て3年前に現役復帰。スキップは石の置き方(戦術)を決め、最後の石を投じる。その重圧は想像を絶するが、見事に大役を果たした。まさに「母は強し」▼小笠原さんはオホーツク管内の旧常呂町(現北見市)出身。常呂は数多くの選手、指導者を輩出してきた。その理由は1980年代から屋内専用ホールを設け、競技の普及と向上に努めてきたから▼実は同時期、帯広市や池田町など十勝管内でもカーリングは盛んだった。公開競技として五輪に初出場したアルベールビルの代表は大半が帯広の選手。しかし、帯広は専用施設の整備が遅れ、常呂に水を開けられた▼冬季スポーツ、特に氷上競技は施設に左右される。函館にも道南で唯一のリンクがある。氷上競技の底辺を広げるためにも、このリンクを存続させる意義は大きい。(T)


12月16日(月)

●地方のマスコットキャラクターのゆるキャラ化が止まらない。そもそもは、地域の魅力をPRする脇役的存在のはずが、今や自分自身をいかにアピールすることができるかが最重要ポイントになっているようだ▼火付け役となったのは、2007年に登場した「国宝・彦根城築城400年祭」のイメージキャラクター・ひこにゃんと言われてい。しかし、個人的には「平城遷都1300年祭」のキャラとして登場した、せんとくんの超個性的なビジュアルが頭から離れない▼その後、ゆるキャラの個性化はエスカレート。中でも千葉県船橋市から登場した梨の妖精・ふなっしーは、市からは非公認ながら、薄気味悪い顔立ちとエキセントリックな言動によって全国的人気に▼そのふなっしーに負けじと、北斗市からホッキ貝とふっくりんこによる寿司をイメージした「ずーしーほっきー」が登場。どこからどう見ても可愛いとは言えないその姿は、ネットなどで大反響を巻き起こした▼大事なのはこの先どうやって話題性を持続させるか。今後、着ぐるみで登場するであろうずーしーほっきーが、どうやってインパクトのある行動を見せるかが楽しみであり、不安でもある(U)


12月15日(日)

●日本語は奥が深い。それが素晴らしい点であり、悪い点でもあるが、いかようにも解釈でき、都合のいいように受け止めることができる表現は多々。それが特に際立つのが、政治の世界▼「検討します」は相手に可能性を感じさせるが、必ずしもそうでない。最近はあまり使われなくなった「善処します」も然り。双方にとって都合がいい落としどころ…それが与党の税制改正大綱にも表れた▼消費税の軽減税率を巡って。すでに来年4月の8%改定時は見送られたが、再来年10月とされている10%への引き上げ時に向け、出てきた答え。それは「10%時」。表向き明確に映るが、実は二通りの取り方ができる▼「10%時点」なら、導入時から、のニュアンスが強いが、「10%時」となると…導入時からなのか、10%が適用されている期間のどこかなのか不透明。どっちの受け止め方が正解なのか不正解なのか定かでない▼政治問題でなければ、よくぞ考えたと賞賛に値する表現だが、政治問題で、となれば話は別。実際に自民、公明で解釈が分かれている。なのに、不思議なのは双方が納得していること。これが政治の現実とはいえ、玉虫色の答えを聞かされる方はたまらない。(A)


12月14日(土)

●「五輪が開かれる。震災からの復興にも輪のつながりが大切」—今年の世相を表す漢字「輪」。大書きした清水寺の貫主は語った。「輪」は海外を含めて最多の9500票を集めた▼確かにプロ野球の楽天の日本シリーズ初優勝でチームワークや応援の輪の大切さが光った。豪雨や土砂災害の被災地への支援の輪も。富士山の世界遺産登録に列島の輪が結ばれた。東京五輪も決まった▼輪には輪廻のように、迷いの世界で無限に生死を繰り返す意味もある。東京五輪誘致に成功した猪瀬東京都知事。徳洲会からの借金を巡って、都議会で「のらりくらりの答弁」を繰り返している。前世は識者だったのに…▼因果は車の輪のごとく巡り回ってくる。のらりくらりの答弁は何とも苦しい。都議会は輪をかけて追及するだろう。空白は五輪準備にも影響する。人は震災などに遭ったら、協力の輪をつくる本能を持っている▼2位の「楽」も3位の「倍」も捨てがたい。早く5000万円の疑惑を晴らし「輪」を広げ「楽」にしなければ。「力」をキーワードにしている猪瀬知事は近く「勝ち抜く力」を出版するが…。知事答弁をマンデラ追悼式で「でたらめ」だった手話通訳にでも頼もうか。(M)


12月13日(金)

●政党の目的は政策の実現である。考えの近い議員で政党や会派を結成し、政策の実現に向けて行動を共にする。そのためには議席が必要だ。だから選挙では第一党や発言力のある議席獲得を目指す▼特定秘密保護法は、十分な審議を尽くさず成立した。圧倒的な議席を背景にした政策の実現である。ただ、その経過について安倍首相は「反省している」と述べた。「数は力」の横行になってないか、この先が不安である▼その秘密法案に、党の声を聞かずに自民党にすり寄ったとして、みんなの党の江田憲司幹事長が渡辺喜美代表を批判し、離党した。衆参13人の議員を引き連れ、新党結成を目指す▼江田氏は民主や維新の有志と、野党再編もうかがう。ただ、どこか冷めた見方がある。新党結成は、翌年の政党交付金をにらんだ年末恒例の光景だからだ。昨年12月の総選挙前には、反原発や反消費増税を旗印にした新党が続々できたが、選挙で躍進した党はなかった▼持たなければ何の力もないが、持ちすぎると暴走の危険性がある議席。政党を飛び出したら発言力が低下したという同じ轍(てつ)を踏まず、江田氏はさらに大きな野党勢力の結集を果たせるか。ハードルは低くない。(P)


12月12日(木)

●秘密保護法の陰に隠れた感があったが、経産省がエネルギー基本計画の原案をまとめた。原子力発電を「ベース電源」と位置付け、前民主政権の「原発ゼロ政策」を見直す内容▼「ベース電源」。専門的には「電力の安定供給で基礎的役割を担う電源」という意味らしい。低コストで発電量が一定なのが条件で、原子力や水力、石炭が相当。対極は「ピーク電源」。高コストだが、“瞬発力”があり需要増に対応する。石油や液化天然ガス(LNG)がこれに当たる▼原発停止中の現在、石油、LNG発電もフル稼働。この体制が電力会社の経営を圧迫し、電気料金の値上げなどにつながるというのが、原発再稼働要請の一因▼一理はあるが、原子力の将来的なコストを忘れてはいないか。東京電力福島第一原発は廃炉、除染費用に10兆円も必要。その大半は国がみるしかない。小泉元首相が指摘したように、高レベル核廃棄物の最終処分法も未定で、費用は分からない▼太陽光や風力、バイオマスの発電量は不安定だが、蓄電などの技術開発で「ベース電源」の一端を担えるはず。その可能性に目をつむり、再び原子力に頼るのは安易。大震災の反省はどこに行ったのだろうか。(T)


12月11日(水)

●政治不信は、国民が進んで抱いているのではなく、国会から抱かされている。先の国会を振り返って覚える思いだが、気づいているのか、気づこうとしていないのか、またまた不信を増幅させてくれた▼特定秘密保護法案を巡って。いつの間に登場し、他の議案を霞ませて。国民の間に反対が多かろうが、内容の不備が指摘されようがお構えなし。議論するほどボロが出ると考えたのか、あったのは急ぎの論理と数の論理▼重要法案ほど慎重に議論されるべき。だが、現実はその真逆。朝日新聞世論調査(7日)の結果がそれを教えている。国民の76%が議論は十分でなかったと受け止めたという▼なぜ強行するのかの答えもなく。理解の輪を広げようという姿も残念ながら。謙虚さの一端でもうかがえたならまだしも、それもない。議論もしました、手続きもとりました、ほかに何か異論でも、と言わんばかりに▼多党化した野党の低迷はともかく、かつての数こそ力の悪しき姿とだぶって映る。それにしても、疑問点を払拭せずに急いだ理由はどこにあったのか、の答えが未だ見えてこないのはなぜか。この後も数で押していくのだろうか。1月下旬には通常国会を迎える。(A)


12月10日(火)

●「軍事秘密」だった頃の函館山は地図から消えた。船上で函館山を背景に写真を撮影した外国人や観光客が要塞地帯法違反で罰金を科せられたり、カメラを没収されたという▼福島原発が特別秘密保護法の「特定秘密」に指定されれば、安全や事故に関する情報隠しが懸念される。事故原因を探れば罪に問われ、裁判になれば罪状など「秘密だから」と明らかにされない可能性も▼「見ざる、聞かざる、言わざる」と目耳口をふさいだ日光東照宮の三猿を思い出す。自分の欠点や他人の難点は見ない、聞かない、言わないという教訓なのに、国民にも「見ざる言わざる聞かざる」を強いるのか▼「戦争に巻き込まれる可能性が」「もの言えば唇寒しが合法的になる」…。秘密保護法案審議の議場は怒号とヤジ。傍聴席から運動靴が投げ込まれ、反対デモでは2人が逮捕された。まるで“惨疑院”の様相▼何が秘密かも秘密。もともと選挙公約にも上がらなかった法律で、米国の要請で急いだともいわれ、可決後も「国民の理解を求めていく」とは後先逆だ。情報保全監察室などチェック機関を設置するというが、いま一度、民意を問うべきではないか。美しい函館山を自由に撮りたい。(M)


12月8日(日)

●軽乗用車の新車販売が好調だという。全国軽自動車協会連合会の統計によると、今年の販売台数は11月現在、前年同期に比べ6・4%増の155万4100台余り。軽自動車全体でも4・8%伸びた▼生活に車は欠かせない。一家に1台が言われた時代から、2台、3台保有も珍しくない。その中で近年、スポットが当たってきたのが軽乗用車。佐賀や鳥取県では「軽」が一家に1台という統計がある▼公共交通機関が不十分な地域性もあるが、支持される理由はそればかりでない。「軽」は小回りが効く。特に女性や高齢者にとっては運転しやすい。さらに維持費が少なくて済むし、性能や居住性が向上した▼景気の低迷などの時代背景もあるが、日常生活で使うなら十分。なにより新車でも価格面で手が届く。11月の実績(前年同月比23%増)が裏打ちしているが、各社が力を入れ、新車を市場に送り出しているのも大きい▼こうした要因が「軽」を後押ししているが、今年の「軽」全体の新車販売予測は過去最高の210万台とか。国内メーカーが国内で販売する新車乗用車のほぼ半数弱であり、2台に1台が「軽」の時代はそこまで。気になるのは税改正(増税)の動きである。(A)


12月7日(土)

●「返還がかなわない怒りと無念の思いを希望と願いの声に変え、四島を返せと力強く行進する」。先日、東京の北方領土返還「中央アピール行進」に参加した元島民の決意表明▼ロシア人が次々と島に入り、インフラも整備、水産加工場も建ち、外国から出稼ぎにくるほど。日本を「隣国」と呼び、ビザなし交流で親睦を深めているのが現実。担当大臣が代わるたび「早期返還」というが、ヌカにクギ▼最近は「返還運動を次世代に」という動きも。「北方領土を学校の授業で知った」子どもたちが増え、函館に寄港した交流事業の船「えとぴりか」の巡回研修に多くの児童生徒が参加した▼返還署名を提出したり、チシマザクラを植えたり、道南は返還運動に熱心。「平和条約締結後に歯舞群島、色丹島を引き渡す」という日ソ共同宣言を踏まえ、来月に次官級協議が開催されるが、首脳交流につなげてほしい▼戦前の日本の建物は2棟だけ。ソ連が占領した際、仏壇など木造家屋は暖をとるため燃やされたという。♪霞むクナシリわが故郷〜。「知床慕情」と同じメロディーの「オホーツクの舟歌」で歌われる望郷の念。高齢化した元島民には「明日がない。戻りたい」の一心だ。(M)


12月6日(金)

●先週末、私用で札幌に行った際、大通公園のホワイトイルミネーション会場に足を運んだ。あいにくの雨模様だったが、大勢の来場者で身動きがとれないくらいの混雑ぶり▼函館でも1日に16回目のクリスマスファンタジーが開幕。国の特別史跡・五稜郭でも「五稜星の夢」が2年ぶりに始まった。いずれも札幌に負けないにぎわい▼ホワイトイルミネーション会場では、何やら食欲をそそる匂いがあちらこちらから漂ってきた。お祭りのアメリカンドッグのようでもあり、天ぷらのようでもある。これは廃食油を原料としたBDF(バイオディーゼル燃料)によるもの。今年の電飾は、BDF発電によって輝いていた▼自家発電の理由はもちろん「節電」。函館の「五稜星の夢」も点灯時間を短くするなどして、これまでより約10%節電するという。市民や観光客を楽しませる冬の“風物詩”にも、当世風の工夫が必要になった▼札幌で感心したのは、会場内の凝った電飾の素晴らしさだけではなく、札幌駅前からすすきのまでの西4丁目通りの華やかさ。まるで来場者を誘導する「光の道」のようだった。観光客のみならず、市民も楽しみにする理由が分かった気がした。(T)


12月5日(木)

●特定秘密保護法案の国会審議を聴いていると、言論統制の戦前に戻るのではないかと危惧する。自民党の石破幹事長が国会周辺のデモを「絶叫戦術はテロ行為と変わらない」とブログに記入。「じぇじぇじぇ」▼法案が国会を通過したら、秘密を漏らした公務員、聞き出そうとしたジャーナリストらが処罰される。タカ派色で数頼みの強硬姿勢に危うさがのぞく。国民の知る権利を奪うような法に「ノー」と叫ぶのは「今でしょ!」▼孫娘の中学で「ウザい」「死ね」などと、いじめられた生徒が給食の時間に熱いスープを投げつけたという。階段の下でぶん殴った生徒も。いじめるのも悪いが、かといって「倍返し」もよくない▼東京五輪誘致に奔走した猪瀬東京都知事は選挙前に「これからの生活が不安で…」と公選法違反で幹部らが逮捕された徳州会から5000万円を借りていた。こんな「お・も・て・な・し」はとても頂けない▼今年は過去最多の四つに。楽天イーグルスの「被災地が東北が、日本がひとつになった」が特別賞に選ばれた。「亭主元気で留守がいい」や「がんばろうKOBE」などは当時の世相がよみがえる。今年の流行語も末長く勇気を与えてほしい。(M)


12月4日(水)

●信長亡き後の織田家の後継と領地の配分を決めた清洲会議。明智光秀を討った羽柴秀吉は、土地の配分などで重臣を味方につけ、根回しをしながら交渉に臨む▼国際社会に何の断りもなく、中国がいきなり、尖閣諸島を含む東シナ海に防空識別圏を設定した。事前の連絡なしにここに入るな、さもなくば撃墜すると▼手順も協議もなしに、一方的に設定することが許されるわけがない。日本政府はわが国の航空各社に飛行計画を提出しないよう求めており、西側諸国もこの姿勢に同調している▼ただ、頼りのアメリカが、どこか歯切れが悪い。「尖閣は日米安保の適用範囲」「日本の姿勢を評価する」とはいうが、米国の民間機の飛行計画提出は「安全確保のため容認」する構えだ▼握手をしながら足を蹴るのが国際政治。ダブルスタンダードの中で、いかに正当性があっても、確固とした同盟や連帯がなければ交渉を有利に運べない▼秀吉は映画「清須会議」で相当なお調子者に描かれているが、天下取りへの布石や根回しはそつなく打った。子どもの陣取り合戦は声や力のある子が勝利する。今や世界第二の経済大国になった中国が、力だけで覇者になるのだけはご免だ。(P)


12月3日(火)

●健康維持に欠かせないこと…医学的にはいくつか言われるが、その基本で、最も大事なのが食事。朝昼夕の三食をきちんと摂り、しかも栄養バランスがとれていれば申し分がない▼ただ、現実に目を移すと、近年は朝の欠食が指摘される。小学6年生の11%、中学3年生の18%が朝食抜きで登校しているという調査データもあるが、その欠食率は高校、大学、社会人となるにしたがって高い傾向に▼なぜ、朝食なのか。理由は多々あるが、よく言われるのが体温の上昇をうながし、エネルギー源が補給されること。その結果として脳の働きが活性化する…だから朝食を軽く考えてはならないと啓もうされる▼毎日、朝食を摂っている学生は6割程度…その認識に立った立命館大学が、来春から2つのキャンパスの学生食堂で「100円朝食」を始めるという。琵琶湖草津キャンパスで行った試験提供で需要が確認できたとして▼おかず三品にご飯とみそ汁付きで、本来は260円の定食。父母教育後援会が支援するそうだが、親元を離れて暮らす学生には何ともありがたい話。ほかにも試みる大学もあると聞くが、朝食は健康に大事、だから食べよう…その誘い水として注目に値する。(A)


12月2日(月)

●今世紀最高の明るさを見せてくれると、多くの人たちが期待していたアイソン彗星は、太陽への最接近によりほぼ消滅してしまうまさかの結末を迎えた。一部が残ったという見方もあるが、予想よりは遙かに小さく暗い姿しか確認することはできないようだ▼宇宙科学についての進歩は著しいが、彗星についてはまだまだ謎が多く、その道のりを予想することは最新技術をもってしても難しい▼1974年に地球に接近したコホーテク彗星は、マイナス3等級の大彗星になると見られながら、実際には3等級前後に終わった。過去に何度も輝かしい姿を披露してきたハレー彗星が1986年に接近した時も、肉眼でぎりぎり確認できるまでしか増光しなかった▼アイソン彗星についても、予想より本体がかなり小さかったため、太陽への接近時に消滅する可能性は指摘されていた。それでも天体望遠鏡は飛ぶように売れ、自分の目で確認しようと楽しみにしていた人はたくさんいただろう▼もちろん今後も明るい彗星が現れる可能性はあるし、様々な興味深い天体ショーは日夜繰り広げられている。せっかく手に入れた望遠鏡をむだにせず、冬の夜空を楽しんでみては。(U)


12月1日(日)

●「赤ちゃんはどこからくるの」「コウノトリが運んでくるの」。臥牛子の世代は「お前は橋の下で拾われた子だ」とひどい言い方をされ、落ち込んだものだ…▼病院で出生後に取り違えられた東京都の男性は「生まれた60年前の出産の日に戻して」と訴えた。地裁は「真の両親を知ることがなかった。無念の心情は察して余りある」と、病院に損害賠償の支払いを命じた▼60年前に産湯につかった後に別の子と取り違えられた男性。裕福な両親の長男に生まれたのに、母子家庭の末っ子に。生活保護を受けながら、家計を助けようと中学を卒業して働いた。今も病気の次兄を介護している▼母から「長男は父に似ており、次男は母に似ているのに、お前は誰に似ているのだろうね」と何度も言われたという。男性の実母が出産した弟側が両親の死後、DNA鑑定の結果、血縁関係のないことが分かった▼13分後の新生児と取り違えられ苦難の人生。実の両親の写真を見て「生きているうちに会いたかった」と涙。「病院のミスさえなかったら…」と、やるせない思い。干支は巳で還暦を迎えた。橋の下で拾われたのではないが、来し方を忘れず、平穏な歳月を願うばかり。(M)