平成25年6月


6月30日(日)

●主人は注文された通り捕まえようとするが…「あ、逃げた」。捕まえながら表へ。町内を一回りして店の前を行き過ぎた。「どこへ行くねん」「前回って鰻に聞いてくれ」。おなじみ落語の「鰻屋」▼生命力旺盛なニホンウナギは、この30年で漁獲量が9割減り、国際自然保護連合が絶滅危惧種指定を検討し始めた。東南アジア一帯で個体数が減り、2月に日本のレッドリストで絶滅危惧種に▼稚魚シラスウナギの国産養殖量は約12㌧で、不漁だった前年からさらに25%減少したというから驚き。生きウナギの卸売価格は前年比25%上昇。かば焼きの店頭価格が30%近く値上がりするケースも▼昔は寺社や橋の一帯に「放し鰻」を商売にする者もいた。買った客が池や川に放してやることで功徳を積む「放生」だ。浜名湖では産卵期に差しかかっているものを買い取り、海に放流する現代版「放し鰻」を計画▼来月の「土用の丑の日」に向け、国産冷凍品を値下げするスーパーもあるが、庶民の口から遠ざかるばかり。「シラスは増えるかな。前に回って鰻に聞いてくれ」。落語には毎日1匹買って「もう捕まるんじゃないぞ」と川にドボン。「いい後生をした」ご隠居もいた。(M)


6月29日(土)

●函館では高校野球の道南支部予選が佳境。連日の熱戦が学校関係者や野球ファンを一喜一憂させている。夏の高校野球は風物詩だが、神奈川県内では、何と83歳の女子選手がベンチ入りし、話題となった▼川崎市立高津高校定時制4年の上中別府チエさん。「英語が読めるように」と中学の夜間学級に通ったあと、2010年から同校定時制に進んだ。そこで担任の勧めで野球部に入ったという。定時制通信制軟式大会の県大会決勝では、ピンチの場面でマウンドに伝令。大きな拍手が沸き起こったという▼80歳を超えてなお、孫の年代との部活動はすごい。公式戦に守備で初出場をした際には「ドキドキして3歳寿命が縮まった」とコメントしたというのも微笑ましい▼年齢を重ねてもスポーツを楽しむ人は多い。激しいスポーツのラグビーでは40歳以上の「不惑」、サッカーでは40代の「四十雀(しじゅうから)」、50代の「五十雀(ごじゅうから)」があり、アイスホッケーにも50代、60代の「オールドタイマー」というカテゴリーがある▼年齢に関係なくスポーツや趣味を楽しめる人は精神的にも豊かだ。自分もそうありたいと願いつつ、日ごろの不摂生を戒める。(T)


6月28日(金)

●通常国会が閉会した。最終日は野党提出の安倍首相に対する問責決議案を参院が可決。その身代わりではないのだろうが、電気事業法や生活保護法の改正案などが廃案となった。毎度のことだが「永田町の論理」は分かりづらい▼この通常国会では提出された75件の法案のうち、63件が成立した。いわゆる「0増5減」の衆院区割り見直しや国民に共通番号を割り当てる法案などが主。国家安全保障会議(日本版NSC)を創設するための法案などは継続審議となった▼首相問責をめぐるやり取りは理解に苦しむが、はっきりしていることはある。政治の世界はこれから参院選へまっしぐら、ということ。復習しておくと、公示は7月4日、投票日は同月21日。公示まであと5日▼前哨戦と言われた東京都議選は、投票率が43・50%。道路工事の是非をめぐって東京都小平市で5月に実施された住民投票は、投票率が成立要件の50%に達せず、開票すらされなかったのが皮肉な話に見えるぐらいの低投票率だ▼愛媛県松山市選管は、松山大学に期日前投票所を設けるという。函館でも昨年末の衆院選で、商業施設に投票所を設けた。あの手この手で投票率の低下を食い止めたい—。(T)


6月27日(木)

●フリーキャスター・辛坊治郎さんが、自らの夢であるヨットによる太平洋横断を実現させるために福島県いわき市の小名浜港を出港したのが6月16日。全盲の岩本光弘さんと約8000キロ先の米サンディエゴを目指したが、5日後に起きた浸水による遭難事故のために、リタイアを余儀なくされた▼海上自衛隊などの迅速な救助活動により二人とも無事に生還したが、辛坊さんに対しては「助かってよかった」という安堵の声よりも、「無謀な冒険計画だったのでは」「救助費用を自己負担すべき」と非難の声が大きい▼これには伏線がある。2004年にイラクで発生した日本人ボランティア拘束事件の際、辛坊さんは「危険な地域に自ら入った自己責任である」と、彼らの行動を非難した▼この論理でいくと、危険が伴う冒険に自ら挑戦した辛坊さんも、自己責任を負うべきということになる。しかし出港前は、がんを克服した57歳による果敢な挑戦を賞賛するマスコミや市民も少なくなかった▼それが手のひらを返すようにバッシングを浴びせる姿は気持ちのいいものではない。「一人の命は地球より重い」とある首相の言葉は、もう通用しないのだろうか。(U)


6月26日(水)

●2013年度版の「男女共同参画白書」が閣議決定された。第2次安倍内閣では、女性の社会参加を成長戦略に関連付けているが、女性の置かれている現状はどうなのか…▼女性の社会参加で重要な要素は「働く」ということ。白書によると、有職女性のうち、結婚後も「仕事あり」なのは71・4%。だが、第1子出産後は32・8%に急落する。仕事を続ける上で「出産・育児」が大きな障壁になっているのは明らか▼再就職を目指すにしても、労働時間が大きなネックとなる。従業員規模が30〜99人の事業所の16・7%、5〜29人の40・2%は育児のための所定労働時間短縮の措置がない。30〜44歳の非正規雇用の女性のうち、4割が「柔軟な働き方ができる」と非正規を選択したのもうなずける▼配偶者を持つ女性の年間所得は100万円付近にピークがある。これは「配偶者控除」がからむから。この限度額を引き上げたら「自制」は解けるはず▼そもそも家計収入で男性を「主」、女性を「従」と考えているうちは、本当の男女共同参画などあり得ない。社会のあり方と関わるだけに、劇的変化は難しいかもしれないが、少しずつでも改善しなければならない課題が山積だ。(T)


6月25日(火)

●仏教が朝鮮半島から日本に伝来したのは6世紀半ば。百済の聖明王が、欽明天皇に仏像や経典を贈った。奈良時代には、仏教が国を守るという思想のもとに、伽藍(がらん)や塔、大仏などが建立され、壮大な仏教文化が開花した▼昨年10月、長崎県対馬の寺社から盗まれ、韓国に渡った仏像の返還が滞っている。もともと朝鮮のもので、14世紀に和寇(わこう)に略奪されたものだから返す必要はない、というのが韓国側の世論のようだ▼問題の仏像は、国の重要文化財「銅造如来立像」と県指定有形文化財「観世音菩薩坐像」。朝鮮では李氏朝鮮時代の仏教弾圧で寺院が破壊され、仏像や経典など貴重な文化遺産が失われた。だからというわけではなかろうが、韓国の窃盗団が対馬から盗み、同国で摘発された▼くだんの仏像が600年前、本当に日本が略奪したものかは分からない。しかし、仮にそうであったとしても、現代の盗難を正当化する理由にはなるまい。窃盗団の罪は、厳正に裁かれなければならない▼対馬市長は仏像の返還を求め、韓国へ出発する。日本政府も解決に向けた努力をしてほしい。平和の象徴の仏像が1400年後の争いのもととなれば、聖明王も泣いている。(P)


6月24日(月)

●「白書」。手にしたことはなくとも聞いたことはあるはずだが、国政に関わる各分野の現状や政策遂行状況を伝える国の権威ある出版物。中央省庁が刊行し、近年、その数も増えている▼「白書」の謂(いわ)れは表紙が白だから。ただ「外交」だけは英国に倣って「青書」とされている。その「白書」の第1号は、戦後間もない1947(昭和22)年に出された経済実相報告書(現経済白書)と言われる▼現在、数ある中で、知名度が高いのは「国民生活白書」「通商白書」「防衛白書」「厚生労働白書」「環境白書」「防災白書」「警察白書」「外交青書」など。そのほか多様化する現代社会を背景に生まれた「白書」として…▼例えば「少子化社会白書」「高齢化白書」などもある。本欄で「白書」を紹介する思いになったのはつい先日、「子ども・若者白書」の閣議決定というニュースに接したから。ニートの若者が63万人という統計があった▼「白書」は、堅い内容ものと思われがちだが、現実を教えてくれる出版物。それぞれの政策課題に国がどう取り組もうとしているかも読み取れる。一度、手に取ってみるといい。すべてでないものの函館なら中央図書館で閲覧できる。(A)


6月23日(日)

●仙客来り遊ぶ 雲外の巓(みね)〜白扇倒懸かる東海の天(雲の上にまで聳(そび)え立った山の絶頂の雄大さ、神秘さ、秀麗さ)—祝賀会などで披露される石川丈山作の詩舞『富士山』を久しぶりに観賞した▼自分が住んでいる一番形のいい円すい形の山を富士山になぞらえて「○○富士」と呼んでおり、全国に340以上。標高数十㍍のかわいい富士も。北海道では羊蹄山の蝦夷富士、利尻富士がある▼富士山は文句なしに日本一。かぐや姫が月に帰ったため、帝が「不老不死の秘薬」を一番高い山で焼いたことから「不死山」と呼び、鎌倉時代に「富士山」となった。山岳信仰の修験道となり、登山者が詣でた▼最古の歌集「万葉集」に富士山の噴火を詠んだ歌があり、葛飾北斎の冨獄三十六景の浮世絵など、文学や芸術を生み出す源泉で、「富士山と信仰・芸術の関連遺産群」という世界文化遺産に登録が決まった▼気になるのは諮問機関が承認条件に、国の天然記念物の青木ケ原樹海を伐採するよう求めていることだ。自殺の名所は世界遺産にふさわしくないということか。富士山は六根清浄を唱えて登る「不老不死」の山。世界遺産の登録で、ご来光を仰ぐ登山ツアーがさらに増えるだろう。(M)


6月22日(土)

●黒いたくさんの礎 刻まれるたくさんの名前 戦争が残した傷跡の大きさ深さ この島であった悲しい記録 目を背けてはならない(普天間高3年、名嘉司央里さんの「平和の詩」)▼唯一の地上戦となった沖縄では住民を含む19万人(24万人とも)が犠牲に。どこで亡くなったか分からず、お骨もない人たちに、心静かに寄り添う日が年に1度ある▼慰霊の日で、今年の追悼式には普天間問題もあるためか、防衛相、外相、18年ぶりの米駐日大使、橋下徹大阪市長も出席する予定。米軍司令官に「風俗業活用」を促す暴言を吐いた橋下市長の行動には違和感は拭えない▼オスプレイの一部訓練を八尾空港で受け入れる構想を打ち出しているが…。沖縄の負担軽減には、矢臼別演習場での実弾射撃訓練や来月上旬の千歳基地での共同訓練など、北海道も協力しているのに、砲弾を演習場外に撃ち込むなんて…▼戦争で落とした命を慰める追悼式に“政治”の臭いが漂うから、祈りの場に似合わない金属探知機を持ち込む厳重警備。名嘉さんの詩は続く。「六月二十三日 慰霊の日 あの黒いたくさんの礎には たくさんの人々が訪れる 『今年も会いにきたよ』と」…。(M)


6月21日(金)

●朝早くから大興奮したサッカーファンは多かったのでは…。コンフェデレーション杯の日本—イタリア戦。惜敗と見るのか、世界の壁は厚いと見るのか。観点はさまざまだが、素晴らしいゲームだったのは間違いない▼前のブラジル戦では見せ場少なく0—3の完敗。自信を失わず、ここで切り変えられたのは、さすが代表選手。W杯優勝4回という強豪に見事な攻撃を繰り広げた。本田圭祐選手のPK、香川真司選手の反転シュートで一気に日本ペース▼しかし、ここで終わらないのが「アズーリ」(イタリア代表の通称)。後半の早い段階で同点、勝ち越しと試合をひっくり返した。長谷部誠選手のハンドの判定はちょっと厳しいと思ったが、イタリアの圧力は確かにあった▼だが、日本も意地を見せた。岡崎慎司選手の高く、強いヘディングで同点。その後も疲れの見えた相手に攻撃を仕掛け続けた▼結局は少ない好機をものにしたイタリアに軍配が上がった。「勝たなければ意味がない」という発言が試合後の選手から聞かれたが、見る側としては意味のある試合だったように感じられた。ここからが本当に難しいと思うが、W杯までにこの「あと一歩」を埋めてほしい。(T)


6月20日(木)

●ブラジルで開催中のサッカー大会のコンフェデレーションズカップ。翌年に開かれるワールドカップ(W杯)のプレ大会として実施されている。2002年のW杯日韓大会前年には日本で開かれた▼「プレ」は「先立って」の意味。開催国が翌年に向け準備を整える機会だ。その01年コンフェデ杯新潟大会を取材した。午後7時半試合開始。前日に新潟入り、夜は新潟駅前の全国チェーン居酒屋を利用した▼1枚のお薦めメニューには、ご飯ものと麺類だけが載っていた。店長がこれについて「明日は当社もW杯の前哨戦。夜遅い時間に応援で疲れた家族連れらが、小腹を満たすために考えた。W杯の試合会場地にある店で有効になるかテストです」と説明してくれた▼早く家に帰りたい客をターゲットにしたい作戦だろう。新潟はW杯に向けて緊張感が走っている感じがした。しかし、試合当日、市内の交通規制を知らないタクシーに乗り、大変な目に遭った▼7月、緑の島で開かれるGLAYコンサートにプレはなく、ぶっつけ本番だ。地元町会に対する説明会で、住民からは安全への不安より、公演盛況を願う声が多かったという。地域と関係者が一体となった成功を予感した。(R)


6月19日(水)

●社会において、何が難しいと言って身の処し方ほど難しいことはない。特に、問題を抱えた時のトップが、責任をどうとるか—。判断を誤った時には、大きな付けを背負うことになる▼その判断は大きく三通り。一つは頬被りするケース、二つ目が起こした問題の責任をとって辞するケース、そして対策を講じることで責任を果たすと居座るケースだが、往々にして多いのは後者▼最近の例では日本柔道連盟の上村春樹会長。女子強化選手への暴力行為やパワハラ、組織ぐるみと推認される強化費の不正受給や流用が表面化したが…。一方、日本野球機構の加藤良三コミッショナーはさしずめ前者▼統一球の変更を内密にしていた問題で、悪びれる様子は少しもない。「(失態だったが)不祥事ではない」「自分は聞かされていない」。責任は部下ということか。だが、責任者として「知らなかった」は通らない。統一球に自分の名前を刻んでいるのだから▼一般論でも、トップとして「知らされていない」は信頼されていないことの裏返し。大事なのは、どう処したら早く解決し、信頼を取り戻すか、という視点に立った判断だが、その域に達するのはなかなか難しいようで。(A)


6月18日(火)

●ここ最近、函館港に豪華クルーズ客船が入港するニュースを目にする機会が多い。入港数自体は数年前から大きな変化はないのだが、船内の一般公開など地元住民との交流イベントが増えたことから、より親しみやすい存在になっているようだ▼とは言うものの、クルーズ船によるバカンスというと、富裕層のぜいたくとして庶民には手が届かないイメージが強いのは事実。豪華な船内を見学しながら「宝くじでも当たったら、世界一周の旅をしてみたい」などと夢想するのが関の山だ▼考えてみれば、かつて函館市民は青函連絡船を日常の足として活用。現在では主に物流を中心に青森と大間とを結ぶフェリーが存在しているが、客船としての機能も失っていない▼以前はほぼ100%青函トンネル経由で青森入りしていた筆者だが、一昨年に久しぶりにフェリーに乗って以来、その快適な移動空間に魅了され、時間に余裕があれば迷わず乗船することにしている▼2年後に北海道新幹線が開業すれば、フェリーの利用者が減少することも予想されるが、安価で手軽にクルーズ気分が味わえる海の旅は、函館人ならではのぜいたくなバカンスとして残していきたい。(U)


6月17日(月)

●NHKの朝の連続ドラマ「あまちゃん」が好調だ。「じぇ、じぇ」の方言がかわいい主人公。脇役陣も重厚。宮藤官九郎さんの脚本らしく、ドラマのテンポはすこぶる良い。人気がでる要素はたっぷりあるのだが、そのひとつが弾けるような明るさを持ったテーマ音楽だ▼東京都議選の候補者が選挙カーなどでこの曲を流し、問題になった。人気番組への便乗は珍しくない話で、実際、この曲も今年の運動会のBGMで大人気らしい。だが、それが政治家となると話は変わる▼このテーマ曲を作曲したのは大友良英さん。フリージャズなどの分野を中心に活動し、数多くの映画音楽やテレビ音楽を手掛けた。「あまちゃん」は、大友さんプロデュースのビックバンドが演奏しているが、そのメンバーも「通好み」。単純に聴こえる曲だが、周到に練られている▼選挙で利用されたことに対し、大友さんは自身のツイッターで「政治家を目指すような人は流行を利用するような選挙活動はやめてほしい。そう強く思っています」と訴えた▼選挙にムードは大切。だが、はやりのテレビドラマの力を借りるとは情けない話。そこまで選挙は堕(お)ちたのか。東京の有権者もなめられたものだ。(T)  


6月16日(日)

●北海道にも本格的な夏山シーズンがやってきた。とは言っても、高山植物が咲き始めた山もある一方、雪が残る山もあるなど、山の様子はさまざま。夏山とはいえ、軽く考えないで、と言われるのもそれ故(ゆえ)▼実際に遭難事故は増えている。警察庁によると、昨年1年間の山岳遭難は1988件で、遭難者は2465人。全国のどこかで一日平均5・4件発生し、6・7人がSOSを発したことに▼統計を取り始めて50年ほどになるそうだが、過去最多で、急増という表現が大げさではない。10年前ごろの遭難者は1500人ほどだった。その背景にあるのは、いわゆる中高年齢者の登山ブーム▼登山人口は1200万人とも言われるが、急増分の多くは中高年齢者。6月早々、日高山系で最もえりも岬寄りのアポイ岳に登ってきたが、すれ違った人の半数は50歳以上。まだ登りなのに疲労が激しいと感じる人も何人か▼遭難で多いのは、道の迷いや転倒、疲労など。事前の調査や準備の不足、体力の過信をうかがわせるが、天候の急変など山に潜んでいる危険は冬も夏も一緒。「山を甘く考えてはならない」。2000件近い遭難が教えているのも、その一点に尽きる。(A)  


6月15日(土)

●北海道壮瞥町が生んだ怪童も60歳。日本相撲協会の北の湖理事長が還暦の土俵入りを披露した。太刀持ちに九重親方(元横綱千代の富士)、露払いに貴乃花親方を従え、昭和から平成にかけての大横綱のそろい踏みとなった▼重心の低いあんこ型の姿はそのまま。現役時代と同様に速い所作で雲竜型の土俵入りを見せた。せり上がりで少しふらつく場面もあったが、威風堂々とした姿が、まぶたに残る昭和の残像と重なった▼現役理事長で還暦の土俵入りをしたのは1988年の二子山以来という。スピード出世を遂げた北の湖は、史上最年少の21歳2カ月で横綱昇進をつかむ。「憎らしいほど強い」ためヒール役にも見られたが、真摯(しんし)に土俵を務めた▼理事長就任は2回目。1回目は力士暴死事件や大麻問題などから辞任。その後、角界は八百長問題で存亡の危機に立ち、土俵際からの出直しとなった▼相撲協会理事長の再登板は史上初。政界では安倍首相が昨年、再登板を果たし、内政、外交に大懸案を抱えながらも高支持率を維持している。北の湖理事長も相撲人気のV字回復を果たしてほしい。まずは日本人力士の奮起だ。日本人の活躍なく、大相撲の発展はない。(P)  


6月14日(金)

●戦後の子どもの頃は野球しかなかった。最初は2㍍ほど離れて相手の胸を見てボールを送り出す。徐々に距離を延ばす。キャッチボールは野球の基本で、心と心のコミュニケーション▼ボールは石ころを布で巻いて古いマットで包んで作った。バットは裏山の木で手づくり。小さな校庭と木炭バスが通った道路。都会から来た先生が冒頭のような説教のあと、50㍍くらいの遠投を見せてくれた▼今季はゴム芯の低反発素材を減らした。反発係数が0・001変わるごとに飛距離は20㌢ずつ変化するという。難しいことは分からないが、統一球が「飛ぶボール」にすり替わっていたのだ▼しかも、選手やファンには知らされていなかった。球界の偉い方は「知らせて混乱を招いてはいけないから」とルール違反を釈明したが、隠したことも「混乱を招いた」などと支離滅裂。選手たちは飛ばないボールに猛訓練していたのに…▼昨季の6割増しというホームランの山には眉につばをつけたくないが…。しかもコミッショナーが知らなかったというから、何をかいわんや。子どもの夢も、石の球で手を痛くしたオールドファンも離れていく。憧れの王さんも野村さんも「喝!」だ。  


6月13日(木)

●米国家安全保障局(NSA)がEメールなどインターネット上の情報を極秘収集していたことが明らかとなり、全世界に波紋が広がっている。オバマ大統領は「テロ対策が目的」として“合法性”の強調に躍起だ▼端緒は英ガーディアン紙のスクープ。後に元CIA(米中央情報局)職員という情報提供者の男性が名乗り出て、「史上最大級の内部告発」と称された。この男性は「良心が許さなかった」という趣旨の発言をしている▼情報収集に対し「プライバシー侵害」との批判が噴出したのは当然だが、深く考えさせられる動きも。「テロ捜査の方がプライバシー侵害より重要」との回答が6割を超えた世論調査もあるという▼2007年に34歳で早逝したSF作家・伊藤計劃(けいかく)は、「虐殺器官」という小説の中で、テロの恐怖から解放されることと引き換えに、個人のプライバシーを徹底監視することを選択した架空の社会を描いた。不気味な内容だった▼「日本版NSA」の設置に関する法案が今月閣議決定された。テロに無防備でいられないのは分かるが、「全権委任」は恐ろしい。アメリカの問題だと傍観するだけでは済まされない。十分な論議が必要だ。(T)  


6月12日(水)

●“ながら族”という表現が古いか新しいかはともかく、いつの時代にも存在する。音楽を聴きながら勉強するのは個人の自由だから良しとしても、それが犯罪や事故を誘引しかねないとなれば話は別▼近年、際立っているのが、携帯電話、スマートフォンや携帯音楽プレーヤーを巡るながら現象。法で厳しく規制されている車運転中の携帯使用も目にするが、驚くのは歩きながら、自転車に乗りながら…▼歩きながらの通話はまだしも、危険なのが若い人たちに見られる自転車に乗っての会話やメール。音楽を聴きながらも然り。理由は説明するまでもない。周りの様子や音が把握しきれず、注意が散漫になるから▼実際に犯罪を招く結果になった事例が少なくない。先日、大阪府警が発表した強制わいせつ事件被害状況の分析結果も教えている。路上での被害者の3割、10人に3人がこうした携帯機器を使用中だった▼この数字は決して軽くない。むしろ、大きな問題提起。いわゆる“携帯ながら族”は、事故の加害者にもなり得れば、犯罪の被害者になる確率も高いということでもある。気をつけ、注意に越したことはない。事故を起こし、被害に遭ってからでは遅い。(A)  


6月11日(火)

●暦では11日は入梅だが、全国的に雨が少なく、水不足が深刻。また、入梅の時期は湿度の関係か、子どもを中心に風邪(感冒症)や喘息も多発する。あわてて病院に駆け込むが…▼昔は富山の薬売りが置いていった家庭用薬箱の常備薬が頼りだった。今はスーパーやコンビニなどでも条件付きで風邪薬などが入手でき、インターネットで注文すると宅配便などで届けてくれる▼しかし、ネットで医薬品を購入した場合のデメリットも心配されている。病院の診察がいらないうえ、簡単に買いやすくなるためか、誤売されたり、外国製の粗悪品が出回る可能性もある▼こんな状況下で安倍晋三首相は成長戦略に、一般医薬品(大衆薬)のインターネット販売に関して原則解禁する方針を盛り込んだ。「安全性を確保しつつ、しっかりしたルールの下で販売を解禁する」という。対象は1万1400品目の99%▼薬事法改正では、副作用のリスクの高い順から2段階までは、購入者と対面して販売することを義務付けているが…。一錠の薬は命を守るけれど、種類によっては副作用がつきもの。安全性と利便性を考慮した解禁ルールが不可欠。梅雨入りして、風邪、喘息発作にご注意。(M)  


6月9日(日)

●3年後の開業に向け、着々と工事が進んでいる北海道新幹線。高架などを目にするたびに、「ここを新幹線が走るんだ」と感慨しきり。だが、時代はさらに先を行く。リニア中央新幹線だ▼JR東海が山梨県内に実験線を設けて実用化を目指している。3日には営業運転を想定した「L0(エルゼロ)系」の車両を公開した。新幹線をより未来風にした流線型のデザイン。窓が小さく、飛行機か宇宙船に見えなくもない▼車輪ではなく、超電導磁石で車両を浮かせて走る。列車というよりは飛行機に近い。最高時速は500キロで、東京—名古屋を40分で結ぶ予定。日本はますます狭くなる▼リニア新幹線の開業目標は2027年。何と北海道新幹線の新函館(仮称)—札幌間より早い。道新幹線は東京までが3時間台、札幌までが1時間と想定される。それでも十分な短縮に思えるが、近未来は我々の想像を超えているかも…▼巨費を投じる札幌までの新幹線が、開通する前に「時代遅れ」になるのはいただけない。北海道のような遠隔地にこそリニアモーターカーのような高速交通機関が有効だ。いささか極論だが、リニア整備の順番は東海道ではなく、北海道が先ではないのか…。(T)  


6月8日(土)

●古屋国家公安委員長の4日の発言は、多くの人の共感を呼んだに違いない。「取り締まりのための取り締まりになっている傾向がある」。閣議後の記者会見で、警察の交通違反の取り締まりに言及し、こう語ったのだ▼さらに「取り締まりは事故防止に役立つことが大切」との基本的な考えを示した上で…。50㌔制限の片側2車線の直線道路なら、流れで70㌔ぐらいは出る、そんな所での取り締まりはどうか、とも▼道路幅が狭く、歩行者も多く、事故の危険がある場所なら誰もが理解する。だが、現実に疑問を抱かせる取り締まりも目にする。昨年夏、札幌市内で経験した例もそう。それは8月の日曜日だった▼行楽地まで500㍍ほどの直線道路。住宅地だったが、少しも危険を感じられない所なのに停められた。18㌔オーバー。思わず聞いた。「こんな所でなぜ」。答えはなく、後味の悪さだけが残ったまま▼実際に40㌔、50㌔規制が必要かどうかと感じる所は少なからずある。だからと言って速度規制や取り締まりを否定する人はいない。それは社会的に大きな意味があることを認めているから。だからこそ敢えて…国家公安委員長が発言したことの重みは大きい。(A)  


6月7日(金)

●飛び跳ねるスルメイカ。まさにイカ踊り。松前沖に出漁した21隻の初水揚げは9・8㌧。燃料高騰や不漁予測で心配されていたが、漁体は例年より大きいようで一安心▼さっそく市場やスーパーなどに活イカがずらり。なんといっても朝に食べる刺し身、イカソーメンが一番だ。ここ2、3年では最も型がよく、値段も前年並みで、観光客や常連客が求めた▼イカと並んで親しまれているニシンの資源復活の兆しも吉報だ。放流した稚魚の追跡調査によると、上ノ国町の天の川河口で地引網に3匹の天然稚魚が入っていた。放流した5㌢ほどの稚魚もいたという▼3月に江差の鴎島で見つかったニシンの受精卵に続き、上ノ国でも産卵活動が確認されたわけで、桧山沿岸がニシンに適した環境なのだろう。近く天然稚魚のふ化時期などを調査するという。「江差の五月は江戸でもない」の豊漁も夢ではない▼稚魚が激減したニホンウナギが絶滅危惧種に指定された。世界の漁業資源のうち、乱獲種類は3割。マグロ、スケトウダラ、カレイなども含まれている。イカやニシンがレッドリストに入らないよう、資源回復活動に力を入れなければ。さぁ、今夜もイカ刺しだ。(M)  


6月6日(木)

●サッカーの男子日本代表が来年のワールドカップ(W杯)ブラジル大会の出場を決めた。1点を追う後半ロスタイム、本田圭佑選手のPKが決まった瞬間、テレビの前で歓声を上げた人も多かったのでは…▼日本のW杯出場は5大会連続。出場決定とは別に、事前に心配されたのは、サポーターの“暴徒化”。特に東京・渋谷のスクランブル交差点は、過去の大混乱を受けて厳重な警戒態勢▼今回も多くの若者が繰り出したが、大きな混乱は起こらなかったよう。その要因の一つとして、ネットなどで話題になっていたのが「DJ警官」の存在。拡声器を通じて、群衆に呼び掛けていた警官を若者がそう名付け、ツイッターなどに投稿、一気に拡散した▼若者の心に届いたのは、その訴えの中身。「おまわりさんもこんな夜に怒りたくありません。さあ、みなさん、手を上げて横断歩道を渡れますか」「みなさんは12人目の日本代表。フェアプレーの精神を持って、交通ルールを守って帰りましょう」—▼この警察官の呼び掛けに、群衆から「はい」との大合唱も起こったという。これらを伝える投稿からは、ほのぼのとした空気が伝わってきた。読んでいて、何だかうれしくなった。(T)  


6月5日(水)

●各地の高裁で1票の格差が違憲や違憲状態との判断が示されて2カ月余り。緊急措置的な衆議院の選挙区定数の是正案として自民などが提案した「0増5減」が、5月の連休前に衆議院を通過したものの…▼参議院は未だに審議入りしていない。区割りや定数にベストはないと言われる。この「0増5減」にせよ、みんなの党などの「18増23減」にしても。ただ、司法から厳しく指摘された現実は重い▼格差を少なくするのは国会の責任であり、対応が今求められている。なのに参議院は入り口で止まったまま。党利党略、与野党の駆け引きは今に始まったことではないが、当事者能力の欠如と邪揄(やゆ)されても仕方ない▼今の選挙制度でいいのか、定数の削減規模はどの程度にするか。このあとには各党の見解に大きな隔たりがある抜本改革を控えている。「0増5減」「18増23減」すら速やかに成立させられないで、果たして…▼そんな疑念が湧いてくる。選挙制度の改正を国会に任せるのは無理ではないのか、という声が出てくるのも頷ける。どうだろうか、衆参の議長がすべての決定権限を与えた第三者機関を設置して、客観的な判断を委ねては。今の国会の姿もそう教えている。(A)  


6月4日(火)

●2020年夏季五輪の開催地決定まで残り3か月。国内のスポーツ関係者は、東京開催実現へ向けて、心ひとつに誘致活動に力を注いでいる。しかし、レスリングと野球・ソフトボール関係者の胸中は複雑だ▼ここ最近、日本は女子選手を中心に圧倒的強さでメダルを量産してきたレスリングだが、ルールが分かりにくいなどの理由で、今年2月のIOC理事会で20年大会の除外競技候補に。一方、こちらも日本のお家芸である野球とソフトボールは、競技人口が少ないなどの理由で、すでに12年のロンドン大会から除外されている▼先月29日に行われたIOC理事会では、この2競技にスカッシュを加えた3競技のうち、1競技のみが20年に採用されることとなり、五輪開催地が決まる9月のIOC総会の翌日に最終決定となる▼つまり、もし東京での五輪開催が決まり列島が歓喜に沸いても、その翌日には日本にとってメダル獲得の可能性が高い2競技のうち、少なくともひとつは採用されない悲しい現実が待っているのだ▼ともに国民栄誉賞受賞者も排出しているまさしく国民的スポーツが、東京五輪という晴れ舞台で同時に開催されないとしたら、じつに残念な話だ。(U)  


6月3日(月)

●痛みやかゆみがあるなら話は別だが、それがないから注意と行動が長続きしない。そうメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)対策で、中高年になると現実味を帯びて問いかけられる▼知識はある。適度の運動継続、適切な食事が大事なことも知っている。啓蒙が進んでいる証(あかし)で、食育に感心を持つ人の割合は70%を超えているが、日常的な取り組みとなると、まだまだの域▼2013年版の「食育白書」もその現実を教えている。食事に気をつけ、半年以上運動を「継続している」人の割合は、前年より2%余り減の40%。国が第二次食育推進計画で掲げる目標50%の到達にほど遠い▼ただ、継続はともかく「時々している」人が30%というデータもあり、徐々に浸透している現実も垣間見える。取り組むか否か、それは誰のためでもない自分のためであり、個々人の意識が鍵を握る問題と言われる所以(ゆえん)もそこに▼「1に運動、2に食事、禁煙して最後にクスリ」。いい季節を迎えている。けっしてクスリのレベルまでいかないように。「食育」は全年代に共通した健康維持のキーワード。頭に入れておこう、毎月19日が「食育の日」、6月が「食育月間」であることを。(A)  


6月2日(日)

●道南はここしばらく春の陽気に包まれている。さわやかな気候とは裏腹に、ちょっと心配なニュースを目にした。文部科学、国土交通、警察の3省庁がまとめた全国の公立小学校などの通学路に関する調査結果だ。昨年度末現在で、要対策地点のうち、43%が対策未着手だという▼道幅が狭い、見通しが悪いなど安全対策が必要な通学路は、全国で7万4483カ所が報告されたという。嘆かわしいのは、「危ない」と指摘があるのに、対処が進んでいないこと。対策済みは4万2662カ所に過ぎない▼調査の契機になったのは、昨年4月、京都府亀岡市で発生した悲惨な事故。無免許の少年が通学中の小学生ら10人をはねて、死傷させた。ニュースに写しだされた現場の道路は確かに狭く、危ない感じがした▼函館市内では昨年、46小学校中39校区計90カ所の危険個所が指摘された。問題は迅速、確実に解消されなければ。事故が起こってからでは取り返しがつかない▼少子化が進む函館では今後、小中学校の統廃合を進めざるをえない。校区が広くなると、通学路が長くなる児童も増えよう。車の速度は控えめが良いが、問題への対処はスピードアップしなければ…。(T)  


6月1日(土)

●増え続ける要介護者と介護給付費の抑制は、どの自治体にとっても大きな課題。介護保険制度が始まった2000年、函館市の要支援・要介護者は6300人ほどだったが、今では1万7000人を超えた▼介護保険の利用が増えると、保険料の値上げにつながる。そのため、健康年齢をできるだけ長くし、介護を必要としないお年寄りの割合をいかに増やすかがカギとなる。介護で求められている理念の一つが「共助」。要介護者を支えていく仕組みづくりである▼その一助として函館市は、介護支援ボランティアの導入を目指している。介護施設でボランティアをした元気な高齢者に換金可能なポイントを与える制度で、全国で導入が進んでいる。ボランティアの健康増進や生きがいづくりになり、介護給付費の上昇カーブを抑える効果も期待される▼介護施設は慢性的な人手不足。ボランテイアが高齢者の話し相手や介護員の手伝いしてくれることで、職員はお年寄りへの目配りが一層でき、サービスの質向上にもつながるだろう▼介護保険は社会全体で高齢者を支えていく制度だ。必要な介護サービスの提供と、支える人材の多様化を進め、社会の連帯を強めたい。(P)