【企画・絆—お年寄りを見つめて(中)】函館市見守りネット

 函館市が2008年度からモデル事業として開始した「函館市高齢者見守りネットワーク事業」。国が「孤立死ゼロ」を目指して指針を定め、全国の自治体が関係団体と連携して同様の事業を実施している。函館市の場合、市社会福祉協議会や町会、在宅福祉委員会、地域包括支援センターなどと連携し、高齢者の見守り体制を構築している。

 業務の中核を担うのが、市から見守り業務の委託を受けた地域包括支援センターだ。同センターは地域の保健・医療・福祉の向上を総合的に推進する機関で、保健師、社会福祉士、ケアマネジャーなどの専門職が、地域で暮らす高齢者の①生活相談②介護保険サービスに関する助言③虐待などの防止④介護サービスの調整—を柱に活動している。

 見守りネットワークの実施で、この柱のほかに見守り業務が加わった。民生委員や、在宅福祉委員らと密に連携を取り、地域で暮らす高齢者の孤立を防ぐ。40代の女性社会福祉士は「孤立していることを本人の周囲が気づけるかが大事」と話す。

 しかし、対象となる高齢者から反発がなかったわけではない。「制度が始まって間もないころ、『何をしに来たのか』という疑問の声を投げかけられた」(30代の男性社会福祉士)こともあった。ある地区を担当する30代の男性社会福祉士は「連絡を受けて訪ねて行くと『誰から聞いたのか』と問い詰められるケースもあった」と振り返る。

 孤立を防ぐには、高齢者を公的介護サービスへとつなぐことも手段の1つだ。40代の男性社会福祉士は「介護保険サービスを受けることでヘルパーが自宅を定期的に訪問し、状況把握ができる」と利点を挙げる。

 一方で、見守りを拒む人がいるという課題もある。一人暮らしでも元気がある人、もしくは離れていても家族、知人などの支えがある人は安心できる。しかし、親子関係が断絶していたり、施設入所や公的サービスを受け入れない人の存在は支援をする立場にとって心配の種だ。

 40代の社会福祉士は「地域、行政だけでは限界がある」としたうえで「郵便局や新聞販売所といった民間が、訪問時に安否確認する取り組みが広がってくれれば」と期待を寄せる。しかし、現実には個人情報の観点などから実現が難しい。「もっと、ほかの機関と顔の見える関係が作れていれば」。高齢者を取り巻く課題を物語るように、女性社会福祉士がぽつりと漏らした。(黒田 寛)

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