◎小児科診療日誌/かみいそこどもクリニック・渋谷好孝先生(2009.6.6)

★何もしないのが一番の治療

 6月になったというのに、函館市内近郊はインフルエンザB型の流行が続いています。インフルエンザB型は症状が軽く「熱が下がれば学校に」と考える方も多いようですが、熱が下がってもウイルスをばらまくのは発病してから5―7日間と言われています。インフルエンザの流行を止めるためには、ひとりひとりの家庭で、インフルエンザにかかったときはしっかり休むという心構えが一番大切です。

 小児科に携わる者の戒めとして「何もしないのが一番の治療」という言葉があります。「子どもは自然治癒力が旺盛なので、基本的には何もしないでも自然と治っていくものだ。医者はどうしても苦しいとか辛いという症状に最小限度の薬を出し、あとは子どもが治っていく力を邪魔しないように、あえて薬を出さないことも必要で、それがこどもを診る大前提だ」というということです。

 鼻水の薬の代表的なものに抗ヒスタミン薬というものがあります。小児科で使う薬の中では大変ポピュラーな薬ですが、ぜんそくがひどい場合に使うと痰(たん)を固くしてますますひどくなり、肺炎になってしまう場合があることが知られています。また、眠気が強かったり、熱が高いときに飲むと熱性痙攣(けいれん)を誘発する言われているものがあります。

 昨年1月にアメリカの食品医薬品局(FDA)は、2歳未満の幼児に市販の風邪薬と称されるものを飲ませないようにと勧告を出し、それらの薬で風邪が治ることはないと発表しました。わたしのところにも、市販の薬を飲んだけどかえって悪化したという子どもが時々いらっしゃいます。カルテをめくってみると、前にゼロゼロとした痰が絡むような咳をしていたというのがほとんどのようです。

 症状が出たら、何かしてあげたいというのは親としてはよくわかります。でも、時にはあえて何もしないことがこどもには一番の薬であるというのも理解してください。小児科はいつもこんなことを考えながら、その子にあった一番の最低限の薬を見つけるために日々診療を行っています。

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