2007年10月13日(土)掲載

◎函館水天宮の大砲はベルー製/オランダの博物館館長が調査
 函館市東雲町13の函館水天宮にある長さ1メートル36センチの鋳鉄製の大砲が、1830―60年ごろにベルギーで作られたものと分かった。12日に水天宮を訪れたオランダ・ブロンベーク博物館のポール・フェルフーフェン館長(43)が調査したもので、国内で現存するのは珍しいという。この大砲について研究していた函館産業遺産研究会の富岡由夫会長(82)は「歴史的資料として適した保存をしなければならないだろう」と話している。

 富岡さんは約2年前から大砲の水天宮奉納の経緯を調べた。箱館戦争(1868―69、慶応4/明治元―明治2)当時、旧幕府軍艦蟠竜が七重浜で撃沈させた新政府軍艦朝陽が積載していたものの一つと分かった。

 朝陽は1928(昭和3)年に引き上げられ、積載されていた一つの大砲は同市八幡町の亀田八幡宮に奉納。太平洋戦争当時、国の金属回収から隠され、現在は市立博物館五稜郭分館前に展示されている。このことは日本銃砲史学会で理事長を務めていた故所荘吉さんが明らかにしていた。

 ところが船の引き上げ当時、ほかにも2つの大砲が引き上げられていた。これらについて富岡さんが研究した結果、函館の運送店経営者が得意先から保管を頼まれ、一つは同市元町の船塊神社に、一つは水天宮に奉納された。船塊神社の大砲は戦争の金属回収で供出されたが、水天宮のものは隠され、55年に再び戻されたという。

 大砲にある刻印や、朝陽がオランダで造られていたことまでは調べたが、大砲の詳細は不明だった。富岡さんは親交を持つ、日本の鉄砲史に詳しい国立歴史民俗博物館(千葉)の宇田川武久教授(64)に相談。同博物館の研究員として今年10月から3カ月間の予定で来日していたフェルフーフェンさんと共に、本道の調査の一環で水天宮を訪れることになった。

 フェルフーフェンさんは大砲を触ったり大きさを測り、口径約8センチと比較的小さなサイズや形であり、製造番号が見当たらないことから、ベルギーで1830―60年ごろに大量生産されていたカロナーデ砲の一つであると話した。小型ではあるが射程距離は約1―1・5キロ、自分の船を守るために使っていたという。

 過去にも来日しているが、「19世紀のヨーロッパの海戦ではよく使われていたが、日本で現存するのは面白い発見」と話す。自ら撮影した写真で詳しく調査したレポートを富岡さんに送るという。。

 大砲は現在、やや上向きに設置され、野ざらし状態。砲口から水が入るなど良い保存状態では無く、宇田川教授は「室内などに保存した方が良いだろう」と話す。富岡さんも「歴史的価値が判明した以上、市が博物館など適した場所での保存をしてもらえれば」と望んでいる。 (山崎純一)


◎高3集団暴行死 逆送は4人に、3人は少年院送致
 函館市内の公園で8月下旬、同市内の私立高3年佐藤智也君(18)が中学時代の同級生ら少年7人に集団暴行を受けて死亡した事件で、函館家裁は12日、傷害致死などの非行事実で送致された少年3人の処遇を決め、7人全員の少年審判を終えた。今回の事件で検察官送致(逆送)されたのは元同級生や15歳の高校生ら4人となり、残る3人は少年院送致の保護処分となった。逆送された少年4人は傷害致死罪などで起訴され、公開法廷で刑事裁判を受ける見込みだ。

 東海林保裁判官は同日、強要や恐喝未遂などの非行事実で追送致された無職少年(19)の逆送を決定。吉戒純一裁判官は9日に審判が続行され、ともに傷害致死のみの非行事実で送致された、16歳の少年を逆送、15歳の少年について初等少年院送致とする保護処分を決めた。

 同家裁は審判最終日の同日午後、処分決定の理由や認定した事実などを発表。要旨によると、少年7人は8月26日夜、富岡中央公園(同市富岡町1)や昭和公園(同市昭和町)で、代わるがわる佐藤君の顔面を複数回殴ったり、数回足で踏み付けるなどの暴行を加え、翌27日に佐藤君を頭部打撲による外傷性脳浮腫で死亡させた。

 また、強要や暴力行為法違反などの非行事実で追送致されていた元同級生や無職少年、15歳の高校生は、事件前にも佐藤君に富岡中央公園の公衆トイレの便器をなめさせたり、尻を金属バットで複数回殴打したりしたことを認定。傷害致死の非行事実のみで送致された16歳(犯行時は15歳)の少年について、吉戒裁判官は「少年の暴行が被害者の致命傷を生じさせた可能性が高い」とした。

 この事件では、函館地検が送致した少年7人について「事件の重大性や悪質性などを考慮し、刑事処分が相当」との意見を付けていた。

 同地検は逆送された少年4人について、近く傷害致死罪などで起訴。成人と同様に公開の法廷で刑事裁判を受けることになる。保護処分となった3人は各少年院に収容され、少なくとも1年以上の矯正教育を受けるとみられる。


◎高3集団暴行死、15歳の逆送 全国でも異例 
 函館市の少年グループによる集団暴行死事件は、函館家裁が12日までの審判で、元同級生を含む15―19歳の少年4人を検察官送致(逆送)とする決定を下し、舞台は刑事裁判の法廷へと移ることになった。現行の少年法では、故意に人を死なせた16歳以上の少年を原則逆送とすると定めており、15歳少年も逆送された今回の決定は原則を超越した厳しいものだ。改正少年法の施行後、16歳未満の少年が逆送されたのは全国的にも異例。

 一連のいじめの主導的な役割を果たした元同級生(17)について、吉戒裁判官は「犯行は極めて悪質かつ残酷で、その執拗(しつよう)さや陰湿さも顕著」と指摘。犯行の無計画性や事件後に反省している点などを考慮しても「刑事処分以外の措置を認める事情は見当たらない」とした。

 東海林裁判官は、7人のうち最年長の無職少年(19)について「何の落ち度もない被害者に対し、遊び感覚で長時間にわたり一方的に暴行を加え、ストレスを発散させようと考えた」と動機を認定。その上で、結果の重大性や遺族の被害感情などを考慮して処分を下したとしている。

 さらに審判では、佐藤君に公衆便所の便器をなめさせるという「人として耐え難い屈辱的な行為を強要させた」(東海林裁判官)ことも明らかになった。函館地検の調べでは、その様子を追送致された少年3人が携帯電話で動画撮影していたことも判明している。

 一方、少年院送致の保護処分とした15歳と16歳の少年3人については「被害者との面識がほとんどなく、致命傷を与えるような暴行を加えていない」などとした。

 現行の少年法は少年による凶悪事件の続発を受け、2001年に改正。それまで16歳以上に限っていた検察官への逆送の対象を14歳以上とした。


◎函館市の老年人口 初の25%台に
 函館市の9月末現在の住民基本台帳のまとめで、65歳以上の「老年人口」の割合が初めて25・0%に達した。国全体の老年人口割合が25%を突破するのは2013年(国立社会保障・人口問題研究所推計)とされているだけに、函館は速いペースで高齢化が進んでいることが改めて分かった。

 同日現在の人口は29万572人(外国人登録を除く)で、老年人口は7万2632人。老年人口割合は旧東部4町村と合併した04年末には22・7%だったが、年間当たり0・8ポイントずつ増加、06年末で24・3%となった。市の総合計画素案では16年の同割合を32・8%と予測している。

 高齢者の増加は福祉行政にかかわる経費の増加を生み、介護保険料の負担額見直し、在宅生活支援事業や敬老祝い金など、市独自の老人福祉事業の継続にも影響は避けられない。市介護高齢福祉課は「独自事業と介護保険事業とサービスが重なる部分は、いずれ見直しが必要となるだろう。経費削減との兼ね合いは難しいが、必要なサービスは続けていかなくてはならない」とする。

 また、独居老人への対応として、「函館は他地域と比べても独居老人の比率が高い。地域包括支援センターを拠点に、地域でお年寄りを孤立させず、孤独死をゼロにする取り組みを検討している」とし、高齢者が生きがいをもって社会参加できる環境づくりにも力を入れていくとしている。(今井正一)


◎福島漁港、北海道新幹線のレール陸揚げ
 【福島】福島漁港岸壁で12日、2015年度までに開業が予定される北海道新幹線の軌道レールの陸揚げ作業が行われた。終日かけて船から450本を揚げた。今後3年間で新幹線と在来線が共用するレール計6800本が運び込まれ順次、溶接と敷設などの工事が進められる。

 建設主体の鉄道建設・運輸施設整備支援機構(横浜)道新幹線建設局(札幌)が担当する青函トンネル中央部から木古内間約42キロの敷設レールで、1本25メートル、重さ1・5トン。北九州市八幡で製造され、1500トン級の船で海上輸送された。

 船から3本ずつ束ねたレールを2台の大型クレーンで次々に同漁港敷地に積み上げた。時折海から吹く強い風にあおられながらも、作業は慎重に、確実に進められた。

 軌道工事基地(知内町湯ノ里、知内駅付近)への運搬作業は16日から行われる。

 同機構は昨年6月に函館港で試験用レール240本を陸揚げしたが、軌道基地への近さと輸送費削減などの観点から、福島漁港が最終的に陸揚げ地に選ばれた。 (田中陽介)