2007年10月16日(火)掲載

◎企画 定住への道(上)…移住ビジネス創出 動き出した不動産業界
 「マンション購入者の1割強は首都圏などからの退職者層。個人情報の問題があり、詳しくは話せないが、首都圏からの問い合わせや資料の請求は相当数ある」

 マンションの建築・販売を手掛けるテーオーハウス(函館市)の担当者は、最近の動向をこう語る。夫婦のどちらかが函館・近郊出身か、転勤で暮らした印象の良さから退職後に移り住むケースが多く、数年後に移住を考えている首都圏在住者から「新築や手ごろな中古物件が出たら随時教えて」との声もあるという。

 インターネットの普及で不動産業界は全国に情報発信ができるようになった。市内の不動産会社社長は「景気が回復した首都圏在住者との取引が増えてきた。函館の土地は周囲に比べたら高いが、首都圏に比べたら格安。物件の値をつり上げる地上げ屋も出始めている」と指摘する。

 首都圏などからの移住促進に取り組む函館市の担当者は「これらは不動産業界での『移住ビジネス』の一例」と語る。聞きなれない言葉だが、移住希望者を対象にした新しい形のビジネスという意味。

 市は、移住希望者の総合案内的な仕事をする民間企業の北海道コンシェルジュ(函館市)に定住事業を委託し、さまざまな分野での移住ビジネス創出を目指している。

 同社は1週間から月単位で移住体験する「ちょっと暮らし」で、マンションや下宿などさまざまな不動産物件を用意。物件の提供に協力している市内上湯川町の「ロジング上湯川」はもともと、高齢者向けの下宿だ。

 経営する岩谷栄子さん(64)は「将来を函館で過ごしたいと考えている方々の応援団になれれば。気候や食材、人の温かさなど、函館は都会を離れて生活するのに最適な地であることを、多くの利用者に理解してもらいたい」と話す。

 市の定住促進事業に協力して2年目。1人1泊3食付き5000円で体験移住者の宿泊の場を提供している。山海の幸を使った料理や温かい迎え入れを心がけ、これまで利用があった東京や道内在住者から喜ばれたという。「最終的に移住を考える時に、入居を検討していただけるとうれしい」と岩谷さん。

 移住ビジネスは他の産業でも模索が始まっており、一層の拡大が求められている。函館近郊のレジャーホテルはゴルフ場での移住体験者向けの低料金プレーを設定。北海道新幹線開業を見据えた宅地開発や通信機器を使った観光情報提供などが始まっている。一方で、市内のイベント企画会社やホテルなどのサービス業界からは「羽田―函館間の航空運賃が高く、函館を見定める際の往来や季節限定での移住などのネックになっている」という課題も指摘されている。

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 函館市の定住促進事業が4年目を迎えた。退職が始まった団塊世代を主なターゲットに、民間でもビジネスチャンスを探る動きが出ている。官民のさまざまな取り組みを通し、移住事業の今後を考える。 (高柳 謙)


◎4月から一部施設休止…函館大沼プリンスホテル ゴルフ、宿泊・飲食部門
 西武ホールディングス(東京)の子会社、函館大沼プリンスホテル(七飯町西大沼温泉、大久保秀樹支配人)は15日、来年度からゴルフ部門と宿泊・飲食部門の営業規模を縮小すると発表した。ゴルフ部門の3コース45ホールのうち、2コース27ホールと、コテージ66棟の営業を休止。正社員、パート従業員合わせて約60人の人員を削減する。同社は施設の譲渡や売却はせず、集約することで経営改善を図る。大沼観光の一翼を担う同社の方針は、同町関係者にも衝撃を与えている。

 営業休止が決まったのは「函館大沼プリンスゴルフコース」(18ホール)、「函館大沼プリンス駒ケ岳コース」(9ホール)の計27ホールと宿泊部門のコテージ。メーンコテージ内の飲食部門も休止し、今後は北海道カントリークラブ大沼コース(18ホール)とホテル棟(292室)に一本化する。

 同社は営業休止の理由を「業績の低下傾向が止まらず、来場人員、売り上げともに10年前の半分以下」とした。宿泊部門は97年には宿泊客が14万4000人、休止するゴルフ場2コースは3万9000人の利用があったが、2006年には、宿泊客が6万9000人、ゴルフ場が2万人にまで落ち込んでいた。

 業績低下の主な要因として、道南全体の観光業不振や、団体客から個人客へとシフトした観光のスタイルの変化を挙げた。「有珠山や駒ケ岳噴火の影響などがあったが、市場の環境変化に対応できなかった」としている。

 また、105人いる正社員の中から、来月中旬までに、早期退職者を約40人募るほか、パート従業員も25人程度削減する。同社は人材専門会社を通じた再就職支援を行う方針。

 コテージは今月末、ゴルフ場は11月末で今期の営業を終了する。同社は今後、北海道新幹線開業など需要増が見込める要因もあるが、再開時期は未定とした。ゴルフ場は維持メンテナンスのみ継続する。

 渡島支庁で記者会見した大久保支配人は「施設全体の体質を筋肉質としたい。経営資源を集中し、よりお客さまにご満足いただける施設にしていく」と述べた。(今井正一)


◎管理職が自動車税徴収…渡島支庁
 道税収入の確保と税負担の公平を図るため、道は15日から、管理職による自動車税の直接徴収を全道一斉にスタートさせた。渡島支庁では23日までの7日間で、地域振興部と産業振興部の課長や主幹クラス延べ14人が3人1組で直接滞納者宅を訪問し、納税催告や預金口座の差し押さえを行う。

 管理職による自動車税の直接徴収は昨年度から始めた取り組み。自動車税の予算規模は全道で約873億円で、本年度の道税収入予算額の約15%を占める基幹税目。しかし昨年度決算では未納額が約46億円と道税全体の30・6%にのぼり、道財政が危機的状況にあることから、対策強化に乗り出した。

 昨年度に引き続き、4月には全道一斉に各支庁長と副支庁長ら幹部職員が管内の企業を訪問して納税を呼び掛けたほか、コンビニエンスストア納付の導入、自動車の差し押さえなどと併せて効果を挙げている。

 9月末現在の渡島管内の自動車税未納額は9億2775万円で、徴収総額の14・9%。このうち直接徴収の対象となるのは現年課税分の滞納のうち、車検切れとなっている自動車に関する600件1800万円で、催告する滞納者は300人。

 納税課は「昨年度からの取り組みで未納額も減ってきているが、引き続き税負担の不公平感をなくすため、き然と対応していきたい」としている。(宮木佳奈美)


◎アカマツに冬のコート…こも巻き始まる
 【七飯】七飯町鳴川地区の国道5号沿いの「赤松街道」で14日、害虫からアカマツを守る「こも巻き」が行われた。主催する赤松街道を愛する会(寺沢久光会長)や町、函館開発建設部の関係者のほか、町民ら計60人がボランティアで参加、わらで作った“こも(むしろ)”を次々と幹へと巻き付け、冬支度に取り組んだ。

 愛する会と町、函館開建の3者で締結した「ボランティア・サポート・プログラム」に基づく保護活動。こも巻きは越冬のため、枝葉から地面へと降りてくるマツケムシやマツクイムシなど害虫の習性を利用した駆除方法で、温かいこもの中に集まった同虫を春先に、こもとともに焼却処分する。

 この日は参加者が7グループに分かれ、それぞれ10本ずつを担当。樹齢100―130年の太い幹のアカマツに、参加者は数人がかりでこもをしっかりと押さえつけ、縄できつく止めるなどの作業を進めた。

 峠下から函館市桔梗まで続く赤松街道は全長約14・3キロで、約1400本のアカマツが「歴史豊かな潤いある道」を彩っている。今後、函館開建が冬までにすべてのアカマツにこもを施し、来年3月、同会などがこも外しを行う予定。(笠原郁実)


◎新幹線駅―函館新道 北側アクセス整備を…函館圏交通体系調査検討委
 函館圏総合都市交通体系調査地区検討委員会(委員長・米谷富幸市土木部新外環状道路整備推進室長)が15日、函館市水道局で開かれた。道が3月に示した函館圏総合都市交通体系調査(まちづくり交通計画)の報告書に基づき、事務局が概要を説明。今後、函館圏域の要望事項として、北海道新幹線の新函館駅(仮称)と函館新道(七飯町峠下方面)を結ぶ北側アクセス道路の整備促進を道、関係機関に働き掛けていくことを確認した。

 同報告書によると、新駅の利用客数は1日当たり9700人、ピーク時は1万4700人と推定している。新駅南口と国道227号を結ぶ南側アクセス道路は、北斗市市街地整備計画との整合性から必要不可欠なルートとした。

 また、新駅北口と函館新道を結ぶ北側アクセス道路の起点を(1)北口と結ぶ(2)線路を越え、南口と結ぶ―の2案設定し、比較検討した。(1)では1日当たりの交通量を2400台、(2)では同4100台と推定。いずれも函館空港などとアクセス向上や、広域観光振興への幹線道路としての利便性向上など、交通機能強化が期待される。

 しかし、(2)の場合、新幹線、在来線との立体交差構造の検討、整備費用の大幅増加による費用対効果の面などで課題が残るとしている。

 米谷委員長は「南側は北斗市街地との連携道路として、七飯や函館、森方面など、北側ルートは必要な道路」と述べ、検討委の整備要望事項として確認した。この日の会合で同検討委は解散、今後は函館広域幹線道路整備促進期成会(会長・西尾正範函館市長)の中で検討を進める。(今井正一)