2007年10月26日(金)掲載

◎チャレンジ計画(上)・(株)イワサワメモリアルサポート 岩沢哲社長(42)
 「人一人が死んだ場合、50年先まで面倒を見なければならない。核家族化の進行で、風習の継承がうまくいっておらず、故人のため、遺族のため、少なからず手助けになればと考えている」。人の死は誰にも訪れる絶対的なもので、どうしても向き合わなければならない現実だ。ただ、儀礼的要素が強く、一般市民は知識、経験ともに少ない。法要専門店を頼りにしたいと思うのは自然で、これまで有りそうで無かったサービスともいえる。

 父が葬儀社を経営していたこともあり、中学生のころから、休日には手伝いをしていた。遺族の悲しみを目の当たりにしながら、葬儀の流れや神聖さを体得してきた。大学進学で親元を離れたが、「将来は継がなければならない」との思いから帰ってきた。

 当時は、町会館や寺院での葬儀が主流だったが、近年は住宅事情や核家族化を反映してか、セレモニーホールが急速に普及してきた。ただ、年回法要が来るたびに供物や仕出しの手配など、準備には相当の時間と手間を要する。「顧客からの相談も以前から多かった。決して利益の出る商売ではないので、手を出したくても出せなかったのが実情」と明かす。そうした中、「お客さま第一」を信念に奮起した。

 ことし4月中旬の営業開始以来、受注は約80件とまずまずのスタート。「『助かった』と声を掛けてもらえるのが、何より」と話す。親身に応対することが受け入れられ、リピーター率も高い。一方で、新聞のお悔やみ広告を基にデータベース化するという地道な作業も惜しまない。

 仏壇前飾りの宅配、香典や弔問の代行といったサービスにも乗り出し、奔走(ほんそう)する日々。「冠婚葬祭のときしか帰郷しないというのではなく、Uターン、Iターンにつながるまちづくりの一環になってくれれば」。郷土を思う気持ちは、事業的にも着実にその輪を広げつつある。(浜田孝輔)

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 いまだ景気回復の突破口を見いだせない地元経済を活気づけようと、函館市が起業化を目指す個人や法人に、補助金を支給する「チャレンジ計画」を創設して8年目を迎えた。これまで28件の企業が“独り立ち”を果たし、ことしは17件の応募の中から、3件が認定された。全国区のベンチャー企業を目指す代表者に意気込みを聞いた。

 ◎事業概要

 ▽事業概要 自社で開発した顧客管理ソフトを活用して故人の50回忌までを管理し、法要時期が迫ったのを見計らって、ダイレクトメールなどで案内。また、高齢や仕事上の都合などで葬儀会場に出向けない人のために、スタッフが香典を預かって弔問を代行する。全国的にも珍しい事業を定着させ、フランチャイズ化も視野に入れている。本社・函館市東山2。今年3月創業。


◎費用弁償の支出は違法 市に返還求め監査請求…道南市民オンブズマン
 道南市民オンブズマン(大河内憲司代表)は25日、2006年度に函館市議会議員に支払われた費用弁償総額1676万5000円は違法な支出に当たるとして、市に返還するよう求める住民監査請求書を同市監査事務局に提出した。

 住民監査請求したのは同団体メンバーで同市湯浜町の筒井将喜さん(69)ら8人。昨年度分に加えて07年度支給分の返還、08年度以降の費用弁償の廃止を求めた。

 函館では議員が本会議や委員会に出席した際に、1人1日当たり5000円が費用弁償として支給されている。06年度は在職した議員77人に対し、延べ3353日分が支払われた。

 監査請求書によると、議員が本会議や委員会に出席するのは職務遂行の最低の義務であり、費用弁償を別途支給する理由はなく、「不当な報酬の二重払い」と指摘。地方自治法234条を根拠に、地方自治体の長の命令で支払うべき債務が確定していないため同法違反で、議長による裁量権の範囲も逸脱しているとしている。

 筒井さんは「費用弁償の支払い根拠はあいまいであり、2、3分で終わる委員会の出席にも支払われている。札幌市議会で廃止され、函館も議論されているようだが、監査請求で背中を一押しするつもりだ」と述べた。

 このほか、旧函館検疫所台町措置場(船見町)の活用契約をめぐり、監査請求書を提出。当初公募で契約を結んだ特定非営利活動法人(NPO法人)が撤退した後、同法人理事の会社社長個人と結んだ契約は無効だとしている。大河内代表は「市民の共有財産を個人に使わせている契約の在り方に問題がある」と述べ、監査の際には、行政関係者をはじめ、NPO法人関係者らから直接事実確認を行うことを求めた。(今井正一)


◎松前、森 公表せず…全国学力テスト
 文部科学省が24日に公表した全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果について、住民に情報を公開するかどうかの態度を保留していた道南8町のうち、松前町と森町が数値については一切公開しないことを決めた。なんらかの形で情報を公開することを決めている北斗市と八雲町では、分析作業が終わり次第どこまでを伝えるか検討する方針。各学校単位でも分析し、児童・生徒に個人結果を知らせる「個票」の返却を順次行う。

 函館市や七飯町など1市9町が「学校間の序列化や過度な競争につながる」「学校や児童・生徒数が少ないので、個人情報に触れる恐れがある」などとして公開しないことを決め、鹿部、長万部、江差、上ノ国、厚沢部、乙部の6町は「内容を分析後に決める」などとして未定。

 数値も含めて公開することを決めている北斗市は、11月に開く教育委員会に分析結果を上げ、どこまで住民に知らせるかを検討する。数値は一切出さないが町全体の傾向を住民に伝えたい八雲町は、11月中には何らかの方法で知らせる予定で、「できる限り早く伝えたい」としている。

 函館市は「議会などには市全体の傾向を伝えなければならない」としているが、膨大な情報量を前に「分析はいつ終わるかわからない」とする。各校が行う個票の返却は北斗市が25日以降、函館市は30日以降。函館市は「便りを付けたり、個人懇談の場を利用するなど、渡し方は学校に任せている」という。(小泉まや)


◎豊かな海へ=再挑戦=…日本海グリーンベルト構想 27日にドングリ種まき
 【上ノ国】植生が失われた海岸にカシワの種子(ドングリ)を町ぐるみで植え続ける上ノ国町の「日本海グリーンベルト構想」。昨年秋には初めて3000個のドングリを植えたが、確認された新芽はわずか40本にとどまった。町はこの失敗を糧に種まきの方法を改良。27日には100人規模の住民が参加して2回目の植え付けを計画し、森林にはぐくまれた豊かな日本海の回復に向けた“再挑戦”がスタートする。

 同構想は、江戸時代以降に植生が失われた約20?の海岸に、20年間にわたりドングリや苗木を植える町独自の取り組みで、昨年秋から種まきが始まった。

 水産資源の減少が深刻な日本海沿岸では、土砂流出を防ぎ、豊富な栄養分を供給する森林の回復が急務だ。しかし、同町など沿岸市町村は過疎化や財政難に苦しみ、植林に巨費を投じることは困難な状況。このため、少ない資金で長期間継続できる方法として、風よけなどの設備を作らず、ドングリや苗木の自然力を生かした植生回復の手法を取り入れることにした。

 しかし、昨秋に植えたドングリは発芽率が1・3%に過ぎなかった。檜山森づくりセンター(下沢孝所長)は、土壌の乾燥やネズミの食害が主な原因とみる。

 再チャレンジに向けて町は、市販の紙コップで乾燥や食害からドングリを保護する方法を検討。2個のドングリを入れるコップには穴を開け、水が浸透しやすくした。町産業課の太田昭仁参事は「冬には塩分を含む暴風が吹く海岸沿いでの植生回復は、多くの困難が予想される。失敗を重ねて最良の方法を見つけていきたい」と意気込む。

 失敗を知った道南各地の住民からは「植樹に役立てて欲しい」と、カシワやミズナラの苗が相次いで届けられ、工藤昇町長は「賛同の輪が広がったことは心強い。1つの目的に町民や志を同じくする人たちが結集することが最大の目的」と話す。

 種まきは漁業者を中心とする「日本海グリーンベルト構想推進協議会」(花田英一会長)が主催。27日午後1時半から小砂子地区で行う。町内で採取したドングリ6000個を国道228号沿いの台地に植える。問い合わせは同課TEL0139・55・2311(内線264)へ。(松浦 純)


◎道内初公演 演奏楽しんで…神尾真由子さん あすバイオリンリサイタル
 ことし6月にモスクワで開催された「チャイコフスキー国際コンクール」のバイオリン部門で優勝した神尾真由子さん(21)が、27日に函館市芸術ホールで開かれるバイオリン・リサイタル(市文化・スポーツ振興財団主催)出演のため函館入りしている。函館山のクレモナホールで25日、函館新聞社などのインタビューに応じた神尾さんは「函館の街並みはきれい。リサイタルでの演奏を楽しんでください」などと話した。

 同コンクールは世界の若手音楽家の登竜門として4年に1度開催され、ショパン・コンクールと並び世界2大音楽コンクールの一つ。神尾さんは大阪出身。98年、11歳でメニューイン国際バイオリンコンクールジュニア部門に最年少入賞した。以降、国際的なキャリアを重ね、「体から歌心に満ちた音楽があふれ出る」などと絶賛を受けている。最近はスイス・チューリッヒに活動の拠点を置き、研さんを積んでいる。

 神尾さんの北海道でのリサイタルは初で、函館を訪れるのも初めて。山頂から見る眺望を気に入り「ふもとの教会群がきれい。観光する時間を作り、五稜郭などに行きたい」と話す。

 10代前半から世界中で活躍し、将来も大きく期待されているが、「10年で成長しているものはあるだろうが、自分で変化を口にするのは難しい。今後も今までやってきたことを続けていきたい」と謙虚に語る。

 今回のプログラムでは、モーツァルト「バイオリン・ソナタ第28番ホ短調K.304」など3曲がステージ初演奏という。「自分の好きな曲に挑戦してみたかった」と紹介。チャイコフスキーは2曲で、「懐かしい土地の思い出 作品42より

 第1曲『瞑想曲』」などは同コンクールで演奏した曲だ。

 また、同公演にはピアノで佐藤卓史さん(24)も出演。佐藤さんはことし9月にドイツで開かれた第11回シューベルト国際ピアノ・コンクールで優勝したばかり。「函館の皆さんとコミュニケーションをとりながら演奏するのが楽しみ」と意気込みを話した。

 函館の公演は27日午後7時から。入場券は完売しており、当日券の発売は無い。なお、神尾さんは12月31日午後10時から、札幌コンサートホールkitaraで開かれる「HTB朝日ジルベスターコンサート」に出演。この公演の問い合わせは北海道テレビ?011・821・4411。 (山崎純一)