2007年10月27日(土)掲載

◎企画 チャレンジ計画(中)(株)ヒトココチ・曾我直人社長(36)
 「世界中からミュージシャンが集まる音楽祭ができないだろうか」―。1998年に函館で誕生した「トラベリングバンド『ひのき屋』」のメンバーとして、フランス、クロアチア、ブラジルなど世界9カ国30都市をめぐり、各国のフェスティバルに魅せられた。「いつかは函館で開催したい」と温めてきた構想は、来年8月に「はこだて国際民俗芸術祭」として結実する。

 ひのき屋の活動もことしで10年目を迎えた。自らのバンドをプロデュースする会社から、広範囲に芸術分野を取り扱う事業に拡大するため、前身の「合資会社ひのき屋」を組織変更した。

 これまで参加した音楽祭の魅力を「見たことのない楽器や衣装、リズム感や世界観など、新しい発見の連続。地球の奥深さや広さを実感できる刺激的なイベントだった」と語る。各国のグループとの親交も深め、イベント運営のノウハウも習得してきた。

 はこだて国際民俗芸術祭には現在、ロシア・チュクトカ地方のイヌイット文化を継承する「エルギロン」をはじめ、アルゼンチン、ガーナなど5カ国からの参加が決定。ニュージーランド・ニウエ島からはダンスグループ「タウ・フアタ・ニウエ」が出演する。ニウエは、地球温暖化の進行で海面上昇が進めば水没の危険性がある島だ。「函館の人にとって、ものすごい出会いになるはず。地球環境問題を考えるメッセージも込めたい」とする。

 会場は元町公園を予定している。1859年の開港当初の函館、異国文化あふれる西部地区に思いをめぐらせる。「当時の函館には、見慣れない国の人たちに出会える面白さがあったのではないだろうか。いずれは、さまざまな国から来たミュージシャンであふれ、その音楽を求めて人たちが集まる街にしたい」と夢は膨らむ。世界をめぐるバンド「ひのき屋」とともに、イベント成功に向けて駆け回る日々は続いていく。(今井正一)

 【事業概要】 函館を拠点に音楽家や芸能家など芸術分野で、国際交流事業の確立を目指し、CDやDVD作品の企画・制作をはじめ、マネジメント業務、イベント企画などを行う。毎月第3土曜日には市内のカフェで「土曜の夜の音楽祭」を主催し、市内外のアーティストに出演の場をプロデュースしている。本社・函館市陣川町52。今年2月創業。


◎米イージス艦 函館入港
 米国海軍イージス艦「マスティン」(第7艦隊横須賀基地配備、9000トン)が26日、函館港に入港し、港町ふ頭に接岸した。艦長のエドワード・キャッシュマン中佐ら乗員約380人を海上自衛隊函館基地隊、函館日米協会会員ら約50人が出迎えた。岸壁ゲート付近では、入港時に市民団体による抗議集会が行われたが大きな混乱はなかった。

 歓迎式典で同協会の加藤清郎副会長が「入港を心より歓迎する。函館は日本最初の国際貿易港で、世界に誇る夜景が有名な観光地。疲れを癒し、有意義で楽しい時を過ごしてください」とあいさつ。花束を受け取ったキャッシュマン艦長は「函館寄港は初めてだが、150年前に函館を訪れたアメリカの水兵がいたことを我々は知っている。函館の素晴らしい文化や自然を楽しみにしている」と謝辞を述べた。

 一方、「非核・平和函館市民条例を実現する会」「函館地区平和運動フォーラム」は午前8時半から約1時間、抗議集会を開いた。「函館港の軍港化を許すな」と書かれた横断幕を前に、「親善・友好のうたい文句を信じることはできない」などと訴えた。参加した約80人の市民はこぶしを突き上げ、「マスティンは函館から出て行け」とシュプレヒコールを繰り返した。参加した男性(79)は「米軍兵による暴行事件も起きている。市長にはその点を認識して、入港の可否を判断をしてほしかった」と話していた。

 市は港湾空港部職員がふ頭周辺の警備などに当たり、艦内で渡辺宏身部長が「核兵器廃絶平和都市宣言文」を艦長に手渡し、趣旨を説明した。午後からは西尾正範市長がキャッシュマン艦長らの表敬訪問を受けた。

 同艦は30日まで同ふ頭に滞在。27日には同市船見町の外国人墓地を墓参するほか、滞在期間中、スポーツ交流などの行事を予定している。(今井正一)


◎「ミリキタニの猫」3日に道内初上映
 国内外の映画祭で賞を獲得したドキュメンタリー映画「ミリキタニの猫」が11月3日、道内で初めて道立函館美術館(函館市五稜郭町)で上映される。ニューヨーク(NY)の路上でネコの絵を描き続けていた日系の男性ホームレスの人生を描いた作品。同月1―7日の「芸術週間」に合わせた同美術館の特別企画で、「ホームレス画家の魂に迫る映像を、それぞれの感じ方で楽しんでほしい」と来場を呼び掛けている。

 同美術館では広く芸術に親しんでもらおうと、毎年同週間中に映画上映や講演会などを行っている。今年は3、4の両日、現代美術アーティスト奈良美智の創作活動に密着したドキュメンタリー映画「NARA:奈良美智との旅の記録」と、「ミリキタニの猫」の2本を無料上映する。

 「ミリキタニの猫」の主人公は、NYで路上生活を送るジミー・ツトム・ミリキタニさん(87)。彼の絵に引かれたアメリカ人女性監督が交流を重ね、戦争に翻弄(ほんろう)されたミリキタニさんの過去を知り、共同生活を通じて向き合っていく。

 撮影期間中、偶然カメラは2001年9月11日の同時多発テロをとらえ、その混乱の中でも黙々と創作を続けるミリキタニさんの様子を映し出す。数奇な人生を送った芸術家の創作の秘密やその内面に迫る話題作で、06年東京国際映画祭の「日本映画・ある視点」部門で最優秀作品賞を受賞するなど、多くの映画祭で高い評価を受けている。

 同美術館の地家光二学芸課長は「こういう芸術家がいることに驚き、共感を覚える人もいるかもしれない。テロやホームレスなどを扱い、社会派ドキュメンタリーとしても興味深い作品」と話している。

 上映(74分)は3日午前11時と午後2時からの2回。4日は「NARA:」(93分)を午前11時と午後2時から上映する。同週間中、同美術館では常設展「ミュージアムコレクション秋」(大人150円、高校・大学生90円)を無料開放する。問い合わせは同美術館TEL0138・56・6311。(新目七恵)


◎ガイド楽しみ西部地区散策…ボランティア 佐藤さんが案内
 ボランティアガイドが函館市内の元町地区を案内する「はこだて街歩きガイド『てくてくはこだて』」(函館国際コンベンション協会主催)が26日始まった。この日は午前、午後合わせて17人の市民や観光客が参加。函館観光ボランティア「一會の会」会長の佐藤喜久恵さんをガイドに、紅葉が広がる元町地区を散策した。

 散策コースは元町公園内の観光案内所(写真歴史館)を出発し、ハリストス正教会などの教会群前、二十間坂などをめぐり、旧イギリス領事館まで戻るコースで、約1時間半をかけて歩いた。

 佐藤さんは、旧函館区公会堂前から函館湾を見下ろしながら、ペリー来航時や五稜郭誕生秘話、箱館の名称の由来などに触れ、「ここから見える風景の中にも物語がいっぱい詰まっている」と話した。このほかにも豊富な知識を披露しながら参加者を楽しませた。

 市内松蔭町の岸本和子さん(58)は「知らないことがたくさんあった。絵本の読み聞かせの活動をしているので、子どもたちにも話してあげたい」と満足していた。

 同事業は11月末までの毎週金、土、日曜日の午前10時半―正午、午後1時半―同3時の1日2回。12月は25日までの毎日午後2時半―4時に開かれる。元町観光案内所に開始10分前までに集合すればよい。参加無料。

 問い合わせは同協会TEL0138・27・3535、または同案内所TEL同27・3333。(今井正一)


◎新規求人倍率1.00倍…9月雇用情勢
 函館公共職業安定所は26日、9月の渡島・桧山管内の雇用情勢を発表した。先行指標となる新規求人倍率は、前年同月比0・10ポイント増の1・00倍と、2005年11月(1・06倍)以来ほぼ2年ぶりに1倍台に回復した。しかし、求職者1人に対する求人数を示す有効求人倍率は同0・03ポイント減の0・55倍で、3カ月連続のマイナスとなった。

 新規求人数は同3・7%増の2220人で、新規求職者数は同5・8%減の2228人。逆に月間有効求人数は同3・1%減の5258人となり、月間有効求職者数は同1・5%増の9474人だった。

 新規求人を産業別でみると、建設業が同46人減の130人、卸売・小売業が同32人減の445人、金融・保険業が同14人減の41人と低調。半面、サービス業が同79人増の431人、医療・福祉が同53人増の397人、飲食・宿泊業が同39人増の237人など、一部で回復の兆しをうかがわせた。

 新規求人に占める常用パート求人の割合は31・6%で、同0・6ポイント上昇。離職者は同173人減の1246人で、内訳は事業主都合(リストラ)が同63人減の392人、自己都合が同106人減の829人などだった。(浜田孝輔)


◎オンパクきょう開幕
 湯の川温泉街を主会場にした体験型イベント「第3回はこだて湯の川温泉泊覧会(はこだて湯の川オンパク)」(実行委主催)が27日に開幕する。「湯けむり見聞録―そっと教えるおとなのより道―」をテーマに、近隣へのツアーや秋を体感する散策、湯の川の歴史を紹介する写真展などの70プログラムが、11月11日までの16日間にわたって繰り広げられる。

 同温泉街の活性化と魅力発信などを目指し、昨年10、11月に第1回、ことし3、4月に第2回を開催。参加人数は第1回が1951人、第2回が2786人と着実に数字を伸ばすとともに、参加者は地元住民にとどまらず、道内外の観光客にもその輪を広げている。

 今回のプログラム数は前回の74には及ばないものの、集客性に重点を置いて内容をこれまで以上に充実させた。開幕前日の26日の予約終了(午後5時)時点で、満席となったのは19プログラムで、予約人数は1917人に達した。

 実行委(刈田眞司委員長)は「準備は何とか間に合ったので、あとは開幕を待つだけとなったが、天気だけが心配」と、変わりやすい秋の空模様を気に掛けている。

 問い合わせは実行委事務局(函館湯の川温泉旅館協同組合内)TEL0138・59・3789。予約は専用ダイヤルTEL同36・6111、ホームページアドレスはhttp://hakodate.onpaku.com(浜田孝輔)