2007年10月28日(日)掲載

◎企画 チャレンジ計画(下)有限責任事業組合スペースフィッシュ 齊藤誠一組合員(54)
 個人組合員2人、法人組合員3社の共同出資により、昨年5月施行の新会社法の下で創設された有限責任事業組合(LLP)として発足。函館市が掲げる「国際水産・海洋都市構想」推進を後押ししようと、従来の機器では得られなかった海面水温、植物プランクトン濃度を計測し、よりきめの細かい情報を発信することで効率的な漁業を手助けする。

 衛星データを基に配信する情報サービスを「トレダス」と命名。「宇宙から魚を探し、魚群を追いかけるというSF(サイエンス・フィクション)にならないよう、あくまでもビジネスに徹したい。結果的に『魚が捕れ出す』に引っかけたのは遊び心」と笑みをこぼす。

 昨年6月のサービス開始以来、道東のサンマ漁船、三重県のカツオ漁船などが「トレダス」を活用。原油価格が高騰を続ける中、ピンポイントで漁場に行けるため、経費を最小限に抑えられると、早速好評を得ている。また、「これまでは朝早くに出港して、魚群を追い掛けながら夜に漁をしていた。導入後は昼食を取ってから出漁しても間に合い、生活にも余裕が出てきたようだ」と、思わぬ効果ももたらしている。

 新たに着手するのが、これまで1?四方だった画面の解像度を500?、250?にまで鮮明化すること。より情報量を増すためにはデータ処理に時間を要するため、プログラム開発のめどを来年2月に設定する。

 さらなる普及には「口コミが何より」としており、新サービスを提供する上で、地元の協力によるデモンストレーションが不可欠。イカを中心とした漁業のまち・函館をモデル地区とし、成功に向けて自然と力がこもる。「大学に埋もれていたリソース(情報関係資源)をより広く発信することで、新しいことも出てくるはず。効率的な操業で、資源を守ることにもつながれば」と、期待はさらに膨らむ。(浜田孝輔)

 事業概要

 独自に開発した情報サービス「トレダス」の技術を活用して、函館に面する津軽海峡の微細海洋環境情報を作成。解像度を従来の1キロから250―500メートルに高めることで、これまでに成し得なかった海面水温、植物プランクトン濃度といった詳細な情報を衛星データ受信から数時間で利用者に提供する。本部・函館市豊川町16。昨年6月創業。


◎市中央図書館で「永寧寺記碑」の拓本発見
 函館市中央図書館(中山公子館長、五稜郭町)でこのほど、中国の明王朝がモンゴル帝国を支配する拠点として15世紀初頭に建設した役所「奴児干(ヌルガン)都司」の建立経緯などが記され、北東アジア史の研究史料として貴重な「永寧寺記碑(石碑)」の拓本(文字・文様を紙に写し取ったもの)が発見された。京都大にある同碑の拓本(1930年採拓)より採拓時期が古いと推測され、史料価値は極めて高い。27日には市立函館博物館の長谷部一弘館長が、函館市産学官交流プラザで開かれた研究フォーラムで報告、拓本が一般に初公開された。 (新目七恵)

 今回見つかったのは1413年に作られた碑の拓本。この石碑とは別に、1433年に作られた碑の拓本も2000年秋に同博物館で発見されている。

 長谷部館長によると、今年5月、同図書館から連絡を受け、桐箱に収められた拓本を見つけた。縦約120センチ、横約50センチの和紙に薄墨のような色で碑文が写されており、掛け軸として保存されていた。10月に同博物館へ移管された。

 本体の表面には「函館図書館蔵品寄贈大正13年2・1・受入」「同大正14年3・28」の印字があり、1924、25年以前に採拓されたことがうかがえる。同博物館で発見された拓本にも同様の印字があることから、同時期に函館図書館に持ち込まれ、何らかの経緯で保存場所が分かれたと考えられるという。採拓者や正確な寄贈日などは不明。

 長谷部館長は「函館市内に(もう片方の拓本も)あると思っていたが、見つけた時は驚いた」と振り返り、「貴重な第一級史料なので、図書館と共同で寄贈経緯などを追跡調査したい」と話した。

 報告後、2つの拓本がフォーラム参加者約30人に披露され、判読しようと試みる人などの姿が見られた。

 永寧寺遺跡などの現地調査に当たり、北東アジア史を研究する中村和之函館工業高等専門学校教授は「これまでの永寧寺記碑拓本では判読できない箇所があるので、一字でも二字でも読めれば研究は進む」と期待を寄せていた。

 ヌルガンのメモ

 永寧寺 1413年、明王朝が奴児干都司に併設して建設した仏教寺院。建造を記念して同年、由来や統治理念を刻んだ石碑を建てた。その後、現地住民に破壊され、1433年に再建された時も同様の石碑が建てられた。1995年、永寧寺遺跡がロシア・アムール川下流のティル村で発掘され、現在も現地調査は続いているが、奴児干都司の建物跡は見つかっていない。2つの石碑はロシアの沿海地方国立アルセニエフ記念博物館に収蔵されているが、文字が判読できない個所があるため、拓本が貴重とされている。


◎神尾真由子さんバイオリン・リサイタル
 今年6月のチャイコフスキー国際コンクールで優勝し、現在世界で最も注目を集めている若手バイオリニスト、神尾真由子さんのリサイタル(市文化・スポーツ財団主催)が27日、函館市芸術ホールで開かれた。神尾さんは研ぎ澄まされた技巧と豊かでつややかな音色を駆使して、幅広い時代にまたがる多彩なプログラムを披露、満員の観客をうならせた。

 大阪出身の神尾さんは11歳でメニューイン・国際コンクール・ジュニア部門に最年少入賞して以来、国内外の主要な指揮者やオーケストラと共演を重ね、現在はスイス・チューリッヒに活動の拠点を置いている。道内でのソロリサイタルは今回が初めて。この日はピアノにシューベルト国際コンクールで優勝経験を持つ佐藤卓史さんを迎え、ソナタや小品合わせて5曲を演奏した。

 モーツァルトの「ソナタ・ホ短調」では、情熱的な1楽章と叙情的な2楽章の対比を鮮やかに表現。シニカルで攻撃的な作風と繊細で詩的な要素が交錯するプーランクの「ソナタ」では、ダイナミックでスケール豊かな演奏を披露。チャイコフスキーの「瞑想曲」「ワルツ・スケルツォ」の2つの小品では、メロディーの美しさを際立たせると、ラストのフランクの「ソナタ・イ長調」では後半に向かうにしたがい燃焼度を高めていき、圧倒的な高揚感で大曲を締めくくった。 (小川俊之)


◎日本海グリーンベルト構想 上ノ国でドングリの種まき
 【上ノ国】上ノ国町の漁業者を中心に組織する「日本海グリーンベルト構想推進協議会」(花田英一会長)のドングリ(カシワの種子)の種まきが27日、町内の小砂子地区で行われた。

 海沿いの台地で行われた種まきは、小砂子、滝沢両小学校の児童をはじめ、漁業者や住民、構想を応援する町外の参加者ら約160人で行われた。参加者はササが生い茂る地面を掘り起こし、紙コップに2粒ずつ納めたドングリ約4500粒を丹念に埋めた。

 紙コップの利用は、昨秋植えたドングリの大半が乾燥やネズミの食害で発芽しなかったため工夫した。工藤昇町長は「昨年は発芽率が1%程度だったが、活動を始めなければ新しい芽はいつまでたってもゼロのまま。遠い将来この活動が実を結ぶはず」と話した。

 構想は昨年から20年計画で、伐採で荒れた海岸にドングリを植え続け、約50年後に豊かな海をはぐくむ森林を復活させようという試み。町は磯焼けや水産資源の減少に苦しむ日本海沿岸の市町村にも呼び掛け、全道的な取り組みに発展させたいとしている。 (松浦 純)


◎中国雑技団公演、曲芸などに大きな歓声
 【北斗】日中国交正常化35周年記念「中国雑技団」公演「龍鳳伝説」(MIN―ON、函館新聞社主催)が27日、北斗市総合文化センターかなでーるで開かれた。中国の国家級団の団員約50人は満員の観客の前で曲芸や軽業を披露した。

 中国雑技団は1950年、当時の周恩来首相の意向で政府が設立。中国に伝わるさまざまな演技、武術を総称し「雑技」と命名され、現代に受け継がれている。

 ステージでは華麗な衣装をまとった団員が次々に登場。手のひらの上で踊り、頭上に人を乗せ10枚の皿を回したり、自転車の曲乗り、柔軟な体を生かした舞いなど、人間技とは思えない展開の連続で、一つ一つのプログラムに大きな歓声と拍手が起きた。

 来場した函館市北美原の藤野菜王久さん(41)は「一度見たかった。予想以上の迫力で驚いた。最高のエンターテーメントでした」と話していた。 (山崎純一)