2007年10月4日(木)掲載

◎湯の川温泉街に足湯、5日にも着工
 湯の川温泉街の一角にある「温泉橋小公園」(函館市湯川町1)で、足湯施設の整備事業が5日にも着工する。市民や観光客が集い、語らう場所としてだけでなく、同温泉街の新たなシンボルとして、11月末のしゅん工、12月1日の供用開始を目指す。

 道内有数の温泉郷をより魅力ある街並みにする活動の一環として、函館湯の川温泉旅館組合(金道太朗理事長)や地元の町会・商店街などが、昨年8月に足湯建設に向けた期成会(会長・佐藤博イチマス社長)を発足。関係者との協議を重ねながら、準備を進めてきた。

 場所の選定に際しては、主要幹線道路沿いで同温泉街の入り口の湯倉神社前など4カ所を候補地として挙げた。その中から、工事費を抑制するために既存の温泉管から最も近く、直近の電停が「湯の川温泉」と名付けられていることから、同温泉街の西方向に位置する同公園内が選ばれた。

 足湯の浴槽は、長さが6メートル、幅が1・2メートル、深さが20センチで、一度に15人前後が利用できる。鉄骨造りの屋根付きで、24時間無料で楽しめる。泉質は塩化ナトリウム、塩化カルシウムで、季節によって加水や追いたきをすることで、50度前後の源泉を適度な水温に保つ。

 総事業費は、約2400万円で、市からの補助金780万円のほかは、寄付金で充当する。維持管理は同組合が行い、駐車場や洗面所は、近隣のパチンコ店の協力を得ることで了承を得ている。

 佐藤会長は「10年ほど前から夢に描いてきたことが、ようやく実現の運びとなった。温泉街らしい雰囲気づくりや町の活性化につなげていきたい」と話している。 (浜田孝輔)


◎踊る銀りんに歓声、乙部中生徒が定置網漁体験
 【乙部】日本海の秋サケ漁が最盛期を迎える中、乙部中学校(豊田收校長、生徒122人)の2年生が3日、乙部沖でサケの定置網漁を体験した。

 生徒の漁業体験は、乙部漁港を拠点とする漁業者で組織する乙部船団(松崎敏文船団長)などの全面協力で昨年からスタートした。

 約50人の生徒は、松崎船団長らの案内で8隻の小型漁船に乗り込み、乙部沖の4カ所に仕掛けた定置網を目指した。沖合では漁業者と男子生徒が力を合わせて、威勢のよい掛け声とともに網を引き揚げ、たくさんのサケを水揚げ。銀色のウロコを輝かせたサケが、船上を元気に飛び跳ねる様子に、生徒たちは「すごい!」「大きいね!」と歓声を上げた。

 漁を間近で見学するのは初めという明石未夢さんは「たくさんのサケが捕れてとても楽しかった。船酔いはまったくなかった」と笑顔を見せた。漁業者の工藤智司さんは「サケは環境の変化に敏感。北米では地球温暖化の影響で姿を消した。自然を意識した生活を通じて漁業を応援して欲しい。そして乙部の魚をおいしく食べて下さい」と呼び掛けた。

 午後には、漁業者を講師に迎えてサケの調理実習も行われ、水揚げ直後のサケを包丁で豪快にさばいて、さまざまな調理方法を学んだ。 (松浦 純)


◎初の官民検討会議、修学旅行の体験学習メニュー探る
 修学旅行の受け入れ促進に向け、官民協働で話し合う第1回おしまの体験学習づくり推進事業検討会議が3日、渡島合同庁舎で開かれた。本年度末までに3回会合を開き、体験学習のメニューや受け入れの仕組みづくりの可能性を探る。

 同会議は管内市町や宿泊・旅行関係者、体験事業者ら13人で構成。札幌やニセコなどの道央圏に比べ、道南圏は修学旅行の受け入れが少ない実態を踏まえ、先進事例や管内の状況を基に修学旅行のニーズに対応した地元の体制づくりを検討する。管内での修学旅行受け入れに向けた機運を醸成する狙いで、3月にはフォーラムを開催し、体験観光事業者や宿泊関係者、旅行会社などのネットワーク形成を目指す。

 この日は体験観光やアウトドアガイドのコンサルタント会社「北海道ネイチャーセンター」(十勝管内鹿追町)の坂本昌彦社長がアドバイザーとして出席。「道外から来る中高校の修学旅行の86・5%にアウトドア体験が盛り込まれ、体験観光はなくてはならない」と現状を説明した。

 また渡島管内について「景勝地やグルメなど観光素材に恵まれているが、団体客に対応した体験観光の場やガイドが足りない」とし、体験観光業者に客を送り込むコーディネーターの必要性も強調した。意見交換では、体験学習事業者の掘り起こしの難しさや行政主導の限界が指摘され、民間中心の地域振興と連動させた取り組みを重視する声が上がった。 (宮木佳奈美)


◎法テラス函館開設1年 相談件数1200件も認知度低く
 身近な法的トラブルの解決に役立つ情報を提供する日本司法支援センター函館地方事務所(愛称・法テラス函館、嶋田敬昌所長)が2日、業務開始から1年を迎えた。同事務所(函館市若松町6)に寄せられた1年間の電話や面談による相談件数は1252件に上る一方、全国から相談を受け付けるコールセンター(東京)に寄せられた電話約23万件のうち道南分は約170件で、全体の1%に満たないなど認知度の低さも浮き彫りとなった。

 法テラスは昨年10月から函館など全国50カ所の地裁所在地で業務を開始。司法過疎対策の一環として、道内では唯一、江差にも地域事務所が設置されている。電話相談は無料で、コールセンターが全国から受け付け、該当する各地方事務所へ転送する仕組み。

 法テラス函館は、2人の専門職員が1日当たり5件程度の相談に応じている。開設前の予想を上回り、相談時間も想定の15分を超えることがほとんど。紹介先は函館市役所、函館弁護士会などが多い。9月末までに寄せられた相談の内訳は、多重債務など金銭の借り入れ問題が最も多く460件(37%)、次いで男女・夫婦関係の相談が116件(9%)など。

 一方、法律扶助協会から引き継いだ「民事法律扶助」業務も盛況だ。経済的に余裕がない人に、弁護士が無料で相談に応じるとともに、裁判費用や弁護費用を立て替える制度。9月末現在で448件と、「業務継承前の同協会の実績に比べ3割以上増えている」(同事務局)という。

 嶋田所長は2日、記者会見を開き、「まだ周知されていないのが現状だが、潜在的な需要はあるはず。今後も丁寧な対応を心掛け、気軽に相談しやすい環境を整えたい」と話した。問い合わせはコールセンターTEL0570・078374(おなやみなし)へ。 (森健太郎)


◎残留農薬問題で町など、きょう生産者の救済策を農水省に要望
 【厚沢部】町内産のカボチャから基準値を超える残留農薬のヘプタクロルが検出された問題で、町、町議会、新函館農協(函館市)は4日、東京の農林水産省や道内選出国会議員を訪ね、出荷停止で経営に打撃を受けた農家に対する救済策の創設や残留農薬や除去などの技術支援について、国による援助を求める要望書を提出する。

 自主検査で基準を超える残留農薬が検出された場合、農作物はすべて廃棄処分となり「作付面積が大きい場合は経営が困難になる」(同町)。また、農作物は産業廃棄物の扱いを受けるほか、生鮮野菜は多量の水分を含み、通常の方法では焼却処分が難しく、農業者が多額の処分費用を負担しなければならず、今回のケースでも農業者に深刻な打撃を与えた。

 町は「1975年に使用や販売が禁止されるまで、ヘプタクロルは万能殺虫剤として全国で使用が奨励された。今回の事例でも、農地の売却で所有者が変わっているなど、農業者にとっては不可抗力の問題」(同)として、農業者に対する補償制度の創設や農作物の廃棄に対する財政的支援などの救済策を講じるよう要望する。

 一方、ヘプタクロルが広範に使用された経緯を踏まえて(1)30年以上にわたり土壌に農薬が残留したメカニズム解明(2)残留農薬の検知や除去に対する技術的支援―も求める。また、残留農薬の規制強化を図る「ポジティブリスト制度」についても、基準値と安全性の関連が分かりにくいほか、作物ごとに基準が異なるなどの問題についても改善を求める考えだ。

 渋田正己町長は「ヘプタクロルは、使用禁止から30年が過ぎても土壌中に残留している現状が明らかになった。今後も全国各地で同様の問題が発生することは避けられない。農業が基幹産業の厚沢部にとっては死活問題だ。直近に影響を受けた町として国に速やかな対応を求めていきたい」と話している。 (松浦 純)