2007年11月14日(水)掲載

◎あす「かまぼこの日」・「ヤマサ宮原」五代目予定の一馬さん奮闘
 「ありがとうございました!」。威勢の良い声が店内に響く。函館市豊川町2のかまぼこ製造販売業「ヤマサ宮原」(宮原秀夫社長)は、道内にあるかまぼこ店の中で最も古い歴史を持つ。創業から120年余り、四代にわたり伝統の味とおいしさを追求する精神を守り続けてきた。宮原社長(58)の長男で、五代目になる予定の専務の一馬さん(35)は「いつも変わらない味を提供したい」と話している。15日は「かまぼこの日」―。

 かまぼこの日は、日本で最古のかまぼこの記録が残る西暦1115(永久3)年にちなみ、全国かまぼこ水産加工業協同組合連合会(東京)が1983年に定めた。

 ヤマサ宮原は1883年、初代の故・宮原徳松さんが当時の恵比須町(現在の末広町)に開業。代々社長の名を継ぎ、大火による3度の全焼や戦時中の取り壊しなどを経て1948年、三代目の故・徳松さんが現在地に店舗を新築した。現社長は四代目に当たる。

 同社では焼き、蒸し、揚げの各かまぼこ数十種類を製造。特に人気があるのは、スライスしたタマネギを練り込んだ「玉ねぎ揚げ」(1個105円)で、常連客の1人、高橋千尋さん(厚沢部町在住)は「タマネギの甘さが良く出ていて大好物」と太鼓判を押す。ほかにも、地元産スルメイカを練り込んだ「いか浜焼き」(1個126円)や「ホタテちぎり揚げ」(300グラム525円)などの商品が並び、奥尻町から足を運ぶ客もいるという。

 一馬さんは市内の稜北高卒業後に入社。現在は経営と営業分野を担当し、弟で、工場長の章倫さん(31)と共に会社を支えている。

 「季節で原材料の味も変わり、毎日同じ水準の商品を作るのは大変。長い歴史の重さを実感する」と一馬さん。「嫁いだばかりの母や、店を手伝っていた子どものころの自分を知っているお得意さんも多い。今のニーズに合った商品も開発しながら、“いつも同じ味”を守っていきたい」と、力強く語っている。(新目七恵)


◎来年4月「改正児童虐待防止法」施行、立ち入り調査強化
 全国で相次ぐ子どもの虐待死などを背景に、改正児童虐待防止法が来年4月に施行される。家庭への立ち入り調査や児童に対する接近禁止措置など、児童相談所(児相)の権限が大幅に強化される内容だ。函館児童相談所(土渕美知子所長)は自治体や関係機関に改正内容の概要について周知を始めた。虐待の早期発見や児童の安全確保の手だてとなるか、土渕所長に話を聞き、改正のポイントを整理してみた。11月は児童虐待防止推進月間―。(宮木佳奈美)

 大きな改正点は立ち入り調査の強化だ。児相に通報があるとまず職員が家庭訪問し、保護者と面会して子どもの安否を確認するが、訪ねても面会を拒まれたり、居留守を使われたりするケースがある。手紙や電話で接触を図っても、現行法では反応がなければ打つ手はない。

 改正法では保護者が再三の出頭要求や立ち入り調査に応じない場合、裁判所の許可状を得て強制的に、「鍵を壊してでも」立ち入れるようになる。

 ただ、国から改正の全容が示されていないため、「許可状を得るには状況説明の詳しい証拠が必要になり、手続きが厳密になるのでは。どう効果的に進められるか、まだ明らかになっていない」とする。

 改正のもう一つの柱は、保護者に対する面会・通信などの制限の強化だ。

 保護者の同意で施設に入所している間でも、児童との面会や通信を制限できるほか、強制的な施設入所措置でも保護者に対し、児童へのつきまといなどを罰則付きで禁止できる。「保護者が子どもを連れ帰り、再び虐待を繰り返す事態を未然に防げる」という。

 同児相によると、道南での立ち入り調査は年間数例あるが、近所とのかかわりが比較的密接な土地柄で情報が得やすく、保護者に会えないケースはなかったとしている。


◎函館市内上半期、ネグレクトが最多
 函館児童相談所が受理した2007年度上半期(4―9月)の児童虐待件数(速報値)がまとまった。受理した全47件のうち、育児放棄や怠慢などの「ネグレクト」が半数以上を占めたことが分かった。

 05年度までは「身体的虐待」が最多だったが、06年度からネグレクトが上回るようになり、受理件数も05年度の25件から06年度は54件と30件近く増えた。07年度上半期もネグレクトが最多の24件に上り、身体的虐待の16件、きょうだい間の差別などの「心理的虐待」6件、「性的虐待」1件と続く。

 虐待者は実母が32件で最も多く、実父10件、実父以外の父2件、実母以外の母1件、その他が2件。虐待を受けた子どもはゼロ歳から2歳が2件、3歳から就学前は9件、小学生16件と低年齢が半数以上。中学生15件、高校生・その他5件だった。

 ネグレクトは保護者が長時間子どもを放置したまま出掛けたり、家の中が不衛生だったりし、子どもの健康や発達に影響を及ぼす恐れのある事例が挙げられる。近年こうした育児での不適切なかかわり方が虐待と認識され、件数が伸びている。

 同児相は「自分の生活を優先してしまう親の未熟さもあるが、精神疾患や障害を抱え、育児が困難なケースも増えている」と指摘。「自ら援助を求めない保護者への育児サポートが課題」としている。(宮木佳奈美)


◎富岡男性殺害/1審破棄、内妻に懲役5年、長男を家裁移送
 【札幌】函館市富岡町で昨年10月、同居する無職男性(当時41)を殺害し、遺体を自宅近くの空き地に放置したとして、殺人と死体遺棄の罪に問われた内縁の妻で無職の母親(46)とその長男(17)の控訴審判決が13日、札幌高裁であった。矢村宏裁判長は「長期間にわたり理不尽な暴力を振るうなど、被害者にも極めて重大な落ち度があった」と認定し、母親を懲役7年(求刑懲役9年)、長男を懲役2年6月以上3年6月以下(同懲役3年以上―5年以下)の不定期刑とした1審の函館地裁判決をいずれも破棄、母親を懲役5年、長男を函館家裁に移送する決定を言い渡した。

 矢村裁判長は、長男について「夫婦間の暴力や子どもへの虐待が存在する環境で育ったため、判断能力や社会適応性の未熟さが強く現れている」と指摘し、「刑罰を科すよりも、中等少年院送致といった保護処分で健全育成を図るのが相当」と述べた。長男は再び同家裁で少年審判を受けることになる。

 弁護側は男性の家庭内暴力(DV・ドメスティックバイオレンス)に対する過剰防衛が成立するとして、刑の免除を主張していたが、矢村裁判長は「差し迫った侵害行為があったとは言えない」として退けた。その上で「1審判決は重すぎて不当」として情状酌量を認めた。

 判決によると、2人は度重なる男性からのDVに耐えかねて殺害を決意。昨年10月19日未明、自宅で男性に睡眠薬を飲ませて眠らせ、胸を小刀で刺し、ネックレスなどで首を絞めて殺害し、遺体を近くの空き地に遺棄した。


◎ボジョレ・ヌーボーあす解禁・再送
 今秋獲れたブドウで造るフランス・ボジョレ地方の新酒「ボジョレ・ヌーボー」が、15日に解禁される。晩秋のイベントとして日本でも定着し、酒店や飲食店では準備に大忙し。函館市昭和1の地酒とワインの専門店「みのや」(藤沢稔社長)では13日午前に第一便が到着し、店頭の飾り付けや包装作業に追われている。

 同店では今年17種類を扱う。中でも限られた地区だけで造られる格上の「ビラージュ・ヌーボー」を豊富に取り寄せ、たる詰めのものは店頭で瓶詰めして販売する。価格は2500円―4200円程度。同店のワインアドバイザー木村万里子さんは「普段ワインを飲まない人でも渋みが少なく飲みやすいのでぜひ試して」と勧める。

 ボジョレ・ヌーボーとはフランス南東部に位置するボジョレ地方の丘陵地で獲れるブドウ(ガメイ種)のワイン。フランス料理店「唐草館」(青柳町21)のソムリエ丹崎文緒さんは「ブドウそのもの果実味が強く、軽やかな味わいが特徴」とし、「冷暗所で保管し、飲む2、3時間前に冷やす。チーズやハムなどとよく合い、スパイシーなアジア料理とも相性がいい」という。同店でも15日から3種類を提供する。

 市内各所では解禁に合わせたイベントが企画されている。主なイベントは次の通り。

 ▽「みのや」(TEL43・0020)14日午後10時からカウントダウンパーティー。会費2500円。要予約。▽居酒屋「萬福とみや」(本通1、TEL53・6363)14日午後7時半からカウントダウンイベントでフルート生演奏など企画。1人1500円。▽ジョッパリダイニング(梁川町18、TEL55・0111)15日からコース料理(1人3500円)を注文した人にボジョレ(ビラージュ)を原価で提供。要予約。▽カフェ&ダイニングかねもり(豊川町11、TEL27・7878)15日午後7時から飲み放題など企画。料理付き1人6000円。要予約。(宮木佳奈美)


◎道南市民オンブズマン、06年度政務調査費の使途状況結果発表
 道南市民オンブズマン(大河内憲司代表)は13日、2006年度の函館市議会各会派の政務調査費の使途状況に関する調査結果を発表した。支出総額に占める項目別の割合は、研究研修費6・3%(前年度の同調査7・5%)、調査旅費8・4%(同26・2%)で、調査旅費が極端に減ったことが分かった。大河内代表は「議員には調査をして、市のために(課題を)提案してもらいたいが、調査旅費が使われていない。我々の監査請求や住民訴訟が負の抑制に働いているのでは」と述べた。

 政務調査費は議員1人当たり月額5万円が支給される。06年度の交付額は総額4620万円で、支出額は1736万4220円、返還額は2883万5780円。支出額の割合は37・6%(同41・7%)。ただ、旧4町村の5会派の返還総額が2195万円で、返還割合を押し上げた。

 大河内代表は政務調査費の住民監査請求や訴訟を起こしていることの影響があるとし、「観光的な視察調査は極めて少なくなっている。使途が改善され適正化しつつある」とした。

 一方、広報広聴費は全会派で24・1%を占めて年々増加。会報の作成・配布やホームページ作成などの広報費が多く、広聴費の使途は少ない。

 事務費の割合は46・1%で、事務員の人件費として支給している会派があり、大河内代表は「賞与は市民の税金で払うものではない」とし、「研究や視察調査より、広報誌発行や事務機器購入にウエートを置くのは政務調査費本来の在り方をゆがめている。全国的に、政務調査費の不透明、違法な支出が指摘される中、今後廃止論が高まるだろう」と述べた。(今井正一)