2007年11月20日(火)掲載

◎けあらしもうもう
 19日の道南地方は、前日に続き上空に真冬並みの寒気が入った影響で今期一番の冷え込みとなり、雪も断続的に降った。函館市内は雪に覆われ、朝から除雪に追われたり、足元を注意しながら歩く市民の姿が目立った。津軽海峡では海面から蒸気が上がる「けあらし(蒸気霧)」が発生した。

 函館海洋気象台によると、雪は18日深夜から降り始め、同市美原の積雪は未明のうちに10センチを超えた。積雪は午後5時までで16センチ。11月に市内の積雪が10センチ以上となるのは2001年の11月27日の11センチ以来だ。

 最低気温は1月上旬並みの氷点下5・7度まで下がった。津軽海峡の大森浜では海面水温より気温が低くなり、暖かい水面に冷たい空気が接してけあらしが発生。船が煙に包まれ、幻想的な雰囲気を醸し出していた。

 同気象台によると、20日は低気圧が本道に近づく見込みで、道南地方の天気は雨か雪で時々曇り、最高気温は9度前後と予想している。(山崎純一)


◎市民ら雪かきに大忙し…交通機関で欠航相次ぐ
 真冬並みの寒気が入り込んだ影響で、道南地方は18日夜から19日にかけ、今シーズン初の本格的な降雪に見舞われ、各地で住民や道路管理者が除雪作業に追われたほか、空の便やフェリーなどの交通機関に欠航が相次いだ。

 函館市内では、突然の大雪に19日朝から自宅前などで雪かきに追われる市民の姿が目立った。同日午後4時半すぎ、市内末広町の弁天末広通の自宅前で雪かきをしていた主婦(52)は「今朝も雪かきをしたが、雪が重たくて大変」と話した。

 市道の除雪を担当する市土木部維持課(赤川1)は、例年12月から稼働させているロードヒーティングを17日から前倒しで実施。19日は除雪車は出動させず、融雪剤の散布で対応した。先週末から冷え込みが予想されたため、同課は「今後も天気の状況を見ながら除雪車の出動も含め対応したい」と話している。

 函館開発建設部は19日未明から、今季初めて除雪車を出動させ、国道5号(函館新道)や国道227号など管内4路線の除雪に当たった。北斗市矢不来の国道228号では同日午前7時50分ごろ、スリップした乗用車が対向車線にはみ出し、ダンプカーと正面衝突する事故があり、一時通行止めとなった。

 東日本海フェリーの江差―奥尻間の2往復全4便が欠航。東日本フェリーは函館―青森間の高速船「ナッチャンRera(レラ)」も一部の便で出入港が30分前後遅れたほか、20日午前7時10分大間発函館行きと、その折り返し便の欠航も決まった。

 空の便は、函館空港の除雪作業のため、全日空(ANA)の函館―丘珠線の往復2便が欠航。このほか除雪のため滑走路が一時閉鎖となり、最大で同空港の発着便に約2時間半の遅れが出た。


◎朗読奉仕会が初の吹き替え…25日にユニバーサル映画「筆子・その愛」
 “障害児教育の母”と呼ばれた石井筆子(1865―1944)の生涯を描いた映画「筆子・その愛―天使のピアノ―」(山田火砂子監督)上映会が25日、函館総合福祉センター(函館市若松町33)で開かれる。8月に北斗市で行われた第2回北海道ユニバーサル上映映画祭=実行委(島信一朗代表)主催=の関連企画。今回は初めて、目の不自由な人のために、日本語字幕の吹き替え作業も行われ、障害者が映画を楽しむ環境に万全の配慮がなされた。

 昨年からスタートした道ユニバーサル上映映画祭は、函館など地元ボランティアらの手で字幕・音声ガイド、ミュージックサイン、補聴援助システム、手話通訳、要約筆記、車いす席、託児所などのサポート体制が取られている。

 障害者や高齢者、健常者が一緒になって気軽に映画を楽しむことのできる環境が整備され、好評を得ているが、今回はさらに字幕吹き替えにも取り組んだ。

 今回上映される「筆子・その愛」は、日本で最初の知的障害児(者)施設「滝乃川学園」に生涯を捧げ、大勢の園児たちに愛情を注いだ石井筆子の姿を描いた作品で、筆子役を女優の常盤貴子が熱演している。

 映画の中では、外国語での会話部分に日本語の字幕が登場するが、目の不自由な人は読み取れないため、その字幕のせりふを録音するのが、函館朗読奉仕会(船矢美幸会長)のメンバーだ。これまで、状況を説明するナレーションは録音してきたが、せりふを録音するのは今回が初めて。このほど行われた録音作業では、島代表(函館)の厳しいチェックを受けながら、画像とセリフがぴったり合うまで何度も録り直しが続いた。

 朗読を始めて10年になる有馬起代さんは「映画の吹き替えは初めてだったので、とても緊張した。観客が違和感なく映画の世界に入り込んでくれればうれしい」と話している。

 上映時間は1回目が午後0時半、2回目が同4時半から。映画上映に続いて、石井筆子のメッセージの朗読も予定されている。入場料は一般1000円、小中学生、高校生500円。チケットは松柏堂プレイガイドなどで販売中。問い合わせは実行委TEL0138・31・0010。(小川俊之)


◎大人も顔負け 江差追分合唱…五勝手保育園・発表会
 【江差】江差町立五勝手保育園の発表会が18日、町文化会館で行われ、年長組の5歳児6人が「江差追分」の合唱を大人顔負けの堂々とした表情で歌い上げ、練習の成果を存分に披露した。同園では初挑戦の江差追分で、会場に詰め掛けた家族や住民からは大きな拍手が送られた。

 「ふるさとの宝である江差追分を心に残して欲しい」(泉学美主任保育士)との思いから、初めて発表会のプログラムに加わった。

 同園内には町内の道場で江差追分を習っている子供もいるが、今回合唱した6人は全員が初体験。江差追分会の杉山由夫師匠の指導で、10月初旬から特訓を重ねて本番を迎えた。

 町文化会館大ホールのステージでは、全国の愛好家が頂点を目指して集う江差追分全国大会も開かれる。緊張した面持ちでひのき舞台に立った子供たちは、尺八の伴奏に合わせて「かもめの鳴く声に ふと目をさまし―」と、江差追分特有の節回しを披露。年中組の4歳児8人も、元気な声で「ソイーソイ!」と、独特の合いの手を入れる「ソイがけ」で応援。14人が一つになって、「本唄」と呼ばれる一節を見事に歌い上げた。

 杉山師匠も会場で合唱を見守り、「間違いもなく立派な出来栄えだった。100点満点で85点をあげてもいいね」と笑顔を見せた。

 会場を訪れた町内の50代の男性も「保育園や小中学校での取り組みを通じて後継者のすそ野が広がり、江差追分が末永く町内で歌い継がれるよう期待したい」と話していた。(松浦 純)


◎函館の日常 学生の視点で…慶大生19人のポスター 市電の中づりで発表
 慶応義塾大学環境情報学部(神奈川)の学生が作製したポスターを展示する「中づりギャラリー」が19日、函館市電530号車の車内で始まった。同学部の加藤文俊准教授のゼミ生19人が9月末、市内の市電沿線で実施したフィールドワークの成果をまとめたもので、学生の視点から見た函館の日常風景がポスターに収められ、乗客の関心を集めている。

 加藤准教授の研究室では、人々の集う「場」をテーマに、都市社会学やコミュニケーション論の観点から研究を進めている。7月には、神奈川県内の江ノ電沿線で調査活動を行い、中づり広告で成果を発表した。函館では9月29、30の両日、市電沿線で調査活動を行い、学生らの希望もあり、営業車両で最も古い530号を利用して「ギャラリー電車」を運行することになった。

 19枚のポスターのうち、「はこだてれっど」としてまとめた作品は旧函館ドックの大型クレーンや商店の看板、金森倉庫の外壁など、赤色のものを写真で集め、「函館のまちは、いろんな表情に彩られている。そしてまた、函館の赤にも様々な色がある」とコピーを付けた。このほか、青空に浮かぶ高田屋嘉兵衛像や住吉町でイカを干している様子など、日常の何気ない風景が個性的なポスターとしてまとめられた。

 加藤准教授は「通常の調査では、その成果を調査した地域で発表することなく終わることが多いが、一つの方法として中づり広告を用いた。学生たちが函館とコミュニケーションを取っていくきっかけとして、気付いたことや感想を寄せてもらえればうれしい」と話している。

 530号は12月2日までの期間中、1日5―6回運行を予定。運行スケジュールの確認は、交通局運輸課電車係TEL0138・52・1273へ。

 加藤研究室のホームページアドレスはhttp://fklab.net(今井正一)