2007年11月23日(金)掲載

◎「融資」に疑問の声相次ぐ…ハコセン破たん 債権者説明会
 札幌地裁から民事再生法の適用決定を受けた信販会社「ハコセン」(函館市千歳町9、辻憲一社長)の債権者説明会が22日、同市内のホテルで開かれた。出席者からは地域コミューター航空会社「エアトランセ」(同市高松町、中山淑惇社長)に多額の融資を続けたことや、それを見過ごしてきた社内の管理体制の甘さに対し、疑問の声が相次いだ。

 説明会には、加盟店債権者2199人などのうち、46社から約80人が出席。辻社長は「関係者に多大な迷惑と心配を掛けたことを心よりおわびしたい」と謝罪し、事業融資での貸付金の不良債権化などが引き金となり、破たんに至った経緯を釈明した。

 申立人代理人から民事再生法の概要、再生手続きなどについて説明を受けた後、約40分間にわたって質疑応答が行われた。出席した30代の男性は「ことし6月の株主総会の時に、経営状況について問題ないと言っていたことが、結果的に虚偽だったということになるのでは。債権を回収できれば問題ないが、今後も加盟店を続けていくかは分からない」と、経営陣に対する不満を口にした。

 終了後、申立人代理人が記者会見に臨み、同社は2005年10月の株式会社化する以前の協同組合時から、非常勤の代表者ではなく、常勤の最高責任者である専務が金額にかかわらず、役員会を経ることなく事業融資の最終決済を下すのが慣例だったと説明した。

 代理人によると、エアトランセへの融資に対する責任問題について、当時専務だった竹ヶ原克司取締役は自らの責任を認めながらも、独断でやった融資はないと弁明したという。また、代理人は調査の結果として、「前社長の寺井(恒彦)さんも無関係ではない」と述べた。

 さらに、エアトランセへの短期融資の一部が弁済期を過ぎており、民事再生法適用後に口頭で請求したことを明かし、「いろいろな計画を立てているようだが、きちんとした内容であれば聞くが、そうでなければ聞いても仕方がない。現時点では、期日が過ぎているので支払ってもらうしかない」と話した。(浜田孝輔)


◎奥野容疑者が虚偽文書作成指示…スケトウ漁獲枠汚職 
 スケトウダラの漁獲枠をめぐる贈収賄事件で、収賄容疑で逮捕された道立函館水産試験場長(21日付で参与に異動)の奥野英治容疑者(58)が2005年1月下旬、森漁協に追加された漁獲枠を関係漁協が合意したとする虚偽の文書を、当時の渡島支庁担当者に作成させていたことが、22日までの函館中央署などの調べで分かった。奥野容疑者はパチンコなどで金を使い、約100万円の借金があったことも明らかになった。

 同署は奥野容疑者を収賄容疑、森漁協組合長の松居俊治容疑者(59)を贈賄容疑でそれぞれ函館地検に送致し、事件の全容解明を進めている。

 調べによると、奥野容疑者は同年1月、松居容疑者から漁獲枠の追加に向けた調整を依頼された後、あたかも周辺漁協が協議した上で合意したように装う文書を当時の渡島支庁水産課の幹部職員に作らせたとみられる。文書は同月末、同支庁の水産課長名で関係5漁協に送付された。

 同署などはこの文書の作成、送付が奥野容疑者の便宜供与を裏付ける証拠の一つとみて調べている。

 また、奥野容疑者はパチンコなどにのめり込み、消費者金融に約100万円の借金があったことが判明。奥野容疑者は05年4月、札幌市内の飲食店で松居容疑者から120万円を受け取った後、大半を返済に充てており、同署などは借金返済がわいろ要求の動機だったとみて追及している。

 奥野容疑者は松居容疑者にわいろを要求する際、「家族が事件を起こしたので、150万円貸してほしい」と持ち掛け、架空のトラブルを装っていたという。


◎漁業関係者 波紋さらに…スケトウ漁獲枠汚職
 道内一のスケトウダラの漁場・噴火湾が舞台となった漁獲枠をめぐる道水産行政のスペシャリストと漁協トップとの汚職事件。逮捕から一夜明けた22日、贈賄容疑で逮捕された松居俊治容疑者の地元・森町でも波紋はさらに広がりを見せ、関係者や漁業者の間に複雑な思いが色濃くにじんだ。

 「責任感が強く、職員や組合員からの信頼も厚かった。それだけに残念でならない。7月に役員に就任したばかりで、事件のことについてはまったく知らなかった」。森漁協の三国裕専務理事は22日午前、突然のトップの逮捕劇にいまだ驚きを隠せない様子で語った。

 森漁協では組合長が逮捕された21日、午前と午後の2回に分けて緊急の役員会を開催。組合員には今後の組合の運営方針などが書かれた副組合長名の文書をFAXで送付したという。

 漁協の男性職員は「真相は分からないが、今は捜査の行方を見守るしかない。事件の詳細は(警察に)資料を全部持っていかれたので何も分からない」と言葉少な。幹部の1人は「森町内の漁業のためを思ってやったことだと受け止めている。今でも組合長のことは信じている」と話していた。

 一方、組合員の間には不安や不満が交錯する。漁業の男性(52)は「てきぱきと仕事ができる人だった。まさかこんなことになるとは思ってもみなかった」と嘆く。別の男性漁業者(41)は「突然のことでびっくりしているが、やったことは事実だと思う。今後の漁獲枠に響かなければいいが」と、憂慮しながら淡々と出漁の準備を整えていた。


◎佐々木、阿萬野さん(函教大)日韓青年交流大使に
 道が本年度初めて公募した日韓青年交流事業の「交流大使」に、道教育大函館校の佐々木明菜さん(2年)と阿萬野未来(みく)さん(同)が選ばれた。2人が考えた日韓教育の違いなどを学ぶ交流計画の意欲的な内容が評価された。来年1月15日から4泊5日の日程で、韓国の釜山市などを訪問する。2人は「多くの人と知り合い、相互理解を深めたい」と意気込んでいる。

 同事業は、日韓交流の懸け橋となる人材育成などを目的に、道と交流趣意書を結ぶ韓国2地域(釜山広域市と慶尚南道)を派遣先として参加者を募集。札幌や北見などから10組の応募があり、書類選考と面接を経て決定した。

 2人は国際文化・協力を専攻し、留学生と交流するサークルで一緒に活動するなど、異文化交流に関心が高く、授業で韓国語を勉強していることなどから応募。「韓国における日本教育と文化交流から見えてくる次世代の担い手たちの姿」とのテーマで、現地の日本人学校や教育機関などを訪問し、釜山大学校の学生らと交流しながら、友好関係を推進する方法などを考える交流計画を作った。

 結果を聞き、佐々木さんは「2人で一生懸命考えた内容が選ばれてうれしい。事前準備をしっかりして積極的に話し掛けたい」、阿萬野さんは「日本人のイメージや韓国の人たちがどれほど反日感情を持っているのかなどを知りたい」と話している。(新目七恵)


◎市立博物館五稜郭分館 きょうから無料開放
 函館市が進めている箱館奉行所の復元整備に伴い、今月末で閉館する市立博物館五稜郭分館(佐藤克己分館長)は、23日から最終日の30日まで無料開放される。佐藤分館長は「半世紀以上にわたり館を支えてくれた市民に感謝の気持ちを込めた」とし、来館を呼び掛けている。

 同分館は1955年に開館。箱館戦争や五稜郭築城などに関わる歴史資料館として市民や観光客に親しまれてきた。現在は最後の特別展「さよなら これが五稜郭分館だ!」を開催中。同館誕生のきっかけとなった北洋博覧会(54年)、箱館戦争で藩士が戦死時に着用していた軍服、五稜郭の堀で作られていた箱館氷、科学教室などの資料829点を公開し、函館の歴史の息づかいを伝えている。

 閉館後、収蔵資料は本館(青柳町)などに移送される予定。佐藤分館長は「北洋博、科学教室を知る人たちをはじめ、いろいろな思い出が館には詰まっている。その懐かしさはこの館だから触れることができる」と話している。

 時間は午前9時から5時(入場は同4時半)まで。26日は休館。問い合わせは同館TEL0138・51・2548(山崎純一)