2007年12月11日(火)掲載

◎企画「工匠を夢見て」(1)函館職業能力開発促進センター・住宅リフォーム科
 愛着あるマイホームでより快適な生活を送るため、外壁の塗り替えや間取りの変更などリフォーム需要が高まっていることを背景に、2004年4月に誕生した訓練科。再就職を目指す人が3カ月ごとに約15人ずつ入所し、6カ月にわたって建築に関する基礎知識から、施工や建築CAD(コンピューター利用設計システム)までの技術、技能習得を目指している。

 同科を創設する以前は、住宅サービス科として多くの訓練生を育成した。かつては勤務先や自己の都合で建築業から離職した30―40代が大半を占めていたが、今では20代から60代まで年齢層は幅広い。年配者が若年者に語り掛けながら訓練に臨む姿は、師弟や親子のようにも見える。

 訓練は建築CADによる図面作成、リフォーム施工がそれぞれ3カ月行われる。特にリフォーム施工は、2部屋の住宅を実際に建造するもので、木材の加工や組み立てを手分けしながら、作業を進めていく。最終的には内壁や床といった内装も仕上げ、共同作業による成果が目に見えて実感できる。

 7月に同科に入った函館市内の森良司さん(32)は「もともとインテリアに興味があった」という。以前従事していた飲食業からの転身を志す。「厳しいのはどこの業界も同じなので、建築業に抵抗はなかった。知識を蓄え、資材に触れているうちに、建築にかかわっていきたい気持ちが一層大きくなってきた」と期待を膨らませている。

 6年前から函館で訓練生を指導してきた高瀬洋助教授(58)は「6カ月という短期間で、すべてとは言わないまでも、少しでも多くの技能を身につけ、今後に生かしていってほしい。ものづくりに限らず、就職機会を広げてあげるのが、われわれの使命」と力を込める。(浜田孝輔)

=◇=

 公共工事の削減などから、相変わらず厳しい状況にさらされている建設業界。ただ、ものづくりに魅力を感じ、業界にあこがれを抱く若者も少なくない。優秀な人材を育成して企業に送り込むため、指導に当たる教育・行政機関を紹介する。



◎イルミナシオン映画祭閉幕
 函館山展望台クレモナホール(函館山山頂展望台内)と十字街シアター(函館市地域交流まちづくりセンター内)の2会場で3日間にわたって開催された「第14回函館港イルミナシオン映画祭2007」(実行委主催)が最終日の9日、大勢の映画ファンの熱気に包まれながら閉幕した。期間中の入場者数は1750人で前年比170人増だった。

 同映画祭は7日に開幕し、計29作品を上映。オール函館ロケ作品「硝子のジョニー 野獣のように見えて」(1962年)に主演した宍戸錠さん、美術監督の木村威夫さん、このほどフランスで開かれたキノタヨ映画祭で最優秀観客賞に選ばれた「アリア」の坪川拓史監督(長万部町出身)ら多彩のゲストのトークも注目を集めた。

 9日は両会場で10作品が上映された。このうち、クレモナホールでは若松孝二監督の「実録・連合赤軍―あさま山荘への道程(みち)」が上映された。

 この作品は1972年2月に起きた長野県・あさま山荘立てこもり事件と、それに至るまでの連合赤軍内部で発生した壮絶なリンチ殺人を3時間10分にわたり克明に描き出した大作。今年度の東京国際映画祭(日本映画・ある視点)で作品賞を受賞しており、国内外の映画祭からも参加要請が殺到している。

 作品上映後、出演者の大西信満さんとともにステージに上がった若松監督は「連合赤軍事件を知らない若い世代に、事実をありのままに伝える映画を作りたかった」と説明し、「彼ら(連合赤軍メンバー)の行動が正しいとか間違っていたとかを押し付けるのではなく、映画を見た人が自由に感じ取ってくれればうれしい」と話した。

 続いて同会場行われた閉会式では、同映画祭の米田哲平実行委員長が「市民の手作りでスタートした小さなイベントが、回を重ねてたくさんの素晴らしいゲストに参加してもらえるまでに成長した」とした上で、「15回目の節目となる来年も、さらに充実した内容を目指すため、みなさんの協力をお願いしたい」とあいさつした。(小川俊之)


◎西尾市長 中小企業振興目指す…函館市議会
 第4回函館市議会定例会は10日、一般質問を続行し、4氏が登壇した。西尾正範市長は、地域経済の活性化につなげる中小企業振興を主眼とした「中小企業基本条例」の制定に取り組む考えを示した。

 本間新氏(市民クラブ)の質問に答えた。同条例は、中小企業振興策の基本的理念や指針などを規定するもので、帯広市が4月に道内で初めて施行し、札幌市でも制定の動きがある。帯広市の条例では中小企業者、市民、行政の役割を定めている。

 函館市には事業に対する助成や融資制度を定めた中小企業振興条例があるが、施行から36年が経過し、新たな時代に対応した施策が求められている。

 全国的に地域経済の衰退が進む中、西尾市長は「中小企業を大事に育てて、競争力をつけさせ、人材を育てていくことが必要だ」との認識を示し、「商工会議所、中小企業同友会など関係団体と連携して条例の制定に取り組みたい」とした。

 また、本間氏は先ごろ公表された中期財政試算で、来年度から2012年度の5カ年で650人の職員削減の計画を示したことを受け、「別の方策で給与カットを行う考えはないのか」と質問。西尾市長は「やるとすれば最後の最後で行う」と現段階で給与削減を行わない考えを示し、50歳以上の職員が1000人以上いることから「120―130人の退職者に対し10人程度採用を続けていきたい」とした。(鈴木 潤)


◎幕末の志士と函館熱く語る…浅田次郎さん講演
 第21回地域振興フォーラム(函館市、函館商工会議所など主催)が10日夜、五稜郭町の市芸術ホールで開かれ、直木賞作家の浅田次郎さんが「函館と私〜私の琴線にふれるもの」と題して講演した。東京都日野市に住む浅田さんは、同郷人の土方歳三や榎本武揚について熱く語り、「彼らは函館で人生にけじめをつけた。そういうことで函館に引きつけられる」と述べた。

 「蒼穹の昴」「壬生義士伝」など、壮大な歴史小説を発表し、絶賛されてきた浅田さんは、「自分が書いている歴史は、今から130年前までのこと。歴史は今立っている座標を確認するためのもので、幸福が誰から授かったか、不幸は何からもたらされたかを知らなければならない。5年、10年前の歴史を知ることも大切」と語った。

 連載中の小説を含め、函館を題材にした2つの作品を紹介。箱館戦争を戦った幕末の志士の魅力や、終戦後に旧ソ連が侵攻した千島列島のシムシュ島に渡っていた旧函館高女の乙女たちの逸話を語った。

 また、世界三大夜景と称される函館の夜景は掛け値なしで世界一であると絶賛し、毎年冬に訪れて見ていることや、函館の夏競馬のファンでもあることを伝えた。

 フォーラムは、函館の課題やまちづくりを市民が考え、語り合う契機とする目的。浅田さんの大ファンという西尾正範市長が「浅田さんから見た函館の魅力や文化、気質を知り、未来に継承していく大切さを教えてもらいたい」とあいさつした。(高柳 謙)


◎本年度の道税滞納差し押さえ倍増
 渡島支庁が本年度、道税の長期滞納者らを対象に給与や預金などを差し押さえた件数が、12月10日現在で前年同期比2・1倍の431件に上っていることが分かった。同支庁では徴収強化の表れとしており、「『滞納処分強化月間』の12月も引き続き差し押さえなどを行うので、滞納者はまず相談して」と呼び掛けている。

 差し押さえの内訳は預金が最も多く231件、給与が134件。このほか、生命保険が42件、自動車15件、不動産9件。前年同期は202件だった。

 同支庁納税課では「差し押さえた預金にはある程度まとまった額があるなど、払えるのに払わないケースも多い」とし、「車検切れの時期に一括して払えばよいと勘違いしている人もいる。説明しても道税の趣旨を理解してもらえず、結局滞納につながってしまう」と話している。

 厳しい道財政から全道的に行われている滞納対策強化の一環として、同支庁でも本年度から差し押さえ品のインターネット公売を始めた。同支庁では「分割して期限内に払う人も多い中、税の公正さを期すため、滞納の早期解決に向けて取り組みたい」と話している。

 同支庁では13日午後5時半―同8時、夜間納税窓口を渡島合同庁舎内に開設する。問い合わせは同課TEL0138・47・9403。(新目七恵)