2007年12月19日(水)掲載

◎全校柔道で思いやりの精神を…乙部中で男女とも必修
 【乙部】乙部町の乙部中学校(豊田收校長、生徒122人)は2004年4月の開校以来、道南圏では例をみない全生徒参加の「校内柔道大会」を開いている。深刻ないじめや校内暴力が社会問題化する中、男女を問わずすべての生徒が心身の痛みを共有しながら、互いを思いやる精神を養ってもらうおうというのが目的だ。文部科学省は新年度、学習指導要領の改正に伴い、中学校での柔剣道などの必修化を進める方針で、武道を通じた心身の教育が脚光を浴び始める中、同校の取り組みはさらに注目されそうだ。

 鋭い視線の2人の男子生徒がじりじりと間合いを詰める。互いの袖や襟に指が触れた瞬間、全身でぶつかり合いながら技を繰り出す。「一本!」。真新しい体育館に審判員の鋭い声が響く。惜しくも敗退した生徒は会場の片隅で悔し涙を流しているが、勝ち誇る生徒の姿は無く、静かに互いの健闘をたたえ合う。

 4日に行われた大会は、100人を超える保護者や地域住民が見守る中、生徒たちの熱戦が繰り広げられた。

 試合は学年を問わない男女別で行い、体重や技量に応じて、男子は5つ、女子は4つのブロック戦を争う。午前9時からの試合数は約280試合に上り、少子化が進む桧山管内では最大規模の柔道大会にもなっている。審判員には阿部一町議会議長をはじめ、町内の柔道有段者が数多く参加する。

 同校では男女を問わず、1年生から体育の授業で柔道を学ぶ。柔道部は無いが、技量を磨いた生徒が中体連で好成績を納める成果も。豊田校長は「大半の1年生は柔道が初めて。大会までの授業は20時間ほど。大会を目標に練習を重ね全員が相当のレベルに達する」と説明する。

 同校は2004年4月、旧乙部、姫川、富岡、栄浜、明和の5中学校の統合で誕生。町役場がある市街地をはじめ、農漁村など多様な地域の子供たちが同じ中学校に通うことになり、統合後の融和や団結心をどう盛り上げていくかが課題だった。そこで導入されたのが、柔道を通じた“心身の教育”だ。

 豊田校長は「激しいけんかをすること無く育った子供たちは、お互いの限界を知らず、極端な暴力や陰湿ないじめに発展してしまう。ルールにのっとった柔道を通じて、心身の痛みや思いやりの心を養って欲しい」と語る。

 武道を通じた教育という全国的な動きを先取りした形の取り組みで、町の阿部喜美夫教育長も「走ることや球技が苦手だった子供たちが柔道大会ではヒーローになる。お互いの優れた部分を知ることで尊敬し合う心も養われる」と評価。町教委としても従前通り、全面的にバックアップしていくことにしている。(松浦 純)


◎きょう新幹線中央要望…財務省原案内示前に期成会の高野会長ら
 2008年度予算の財務省原案内示(20日予定)を前に、北海道新幹線建設促進道南地方期成会の高野洋蔵会長(函館商工会議所会頭)らが19日、事業主体の鉄道・運輸機構や関係省庁などを訪れ、予算確保と事業の推進を要望する。05年度30億円、06年度60億円、07年度100億円と伸ばしてきた道新幹線の予算がどの程度盛り込まれるかが焦点だ。

 整備新幹線の概算要求額は、事業費ベースで3069億円。道や関係団体は、2015年度の開業を目指す道新幹線新函館―新青森間の工事が順調に進むために、来年度予算で300億円の獲得を目指しているが、財務省は180億円前後を軸に検討している模様だ。10年度開業予定の東北新幹線八戸―新青森間、九州新幹線新八代―博多間などに重点配分されるとみられる。

 同期成会や函館市新幹線対策室は「道新幹線の進ちょく率は事業費ベースで4%。満額獲得を目指し、最後まで要望を続ける」と語る。

 19日には同期成会の高野会長をはじめ、副会長の海老沢順三北斗市長、沿線自治体の木古内、七飯、長万部の各町長ら12人が鉄道・運輸機構と国土交通省、自民党と関係国会議員を訪れ、予算確保とともに新函館―新青森の早期開業などを要望する。

 また、函館市も西尾正範市長や多賀谷智教育長をはじめ関係部局長が19日の市議会本会議終了後、空路で東京入りする予定。継続事業として五稜郭跡復元整備(箱館奉行所整備)や幹線臨港道路(湾岸道路)整備などを要望しており、20日に関係省庁を訪れ情報収集し、今後の協力を要請する。

 高野会頭と西尾市長は21日も関係国会議員などを訪れ、予算付けに謝意を示し、今後の協力を依頼する予定。(高柳 謙)


◎校内暴力、器物破損 相次ぐ…上ノ国中 被害額81万円
 【上ノ国】上ノ国中学校(福田正之校長、生徒205人)で、一部の生徒による校内暴力や学校施設などが壊される問題が相次ぎ、被害を受けた施設や備品類の総数は168件、被害額は81万3000円に上ることが18日分かった。事態を重くみた町教委は今後、同様の被害が生じた場合は警察に被害届を提出するなど、厳しい対応で臨む方針だ。

 同校では4月以降、一部の生徒による授業の拒否や妨害、服装の乱れなどが始まり、夏休み明けの9月からは校内での喫煙、教職員や同級生への暴力行為、学校施設や備品類を壊すなどエスカレートした。

 問題行動は3年生と2年生の男子生徒に拡大。生徒指導に当たる教職員の休職が相次いだこともあり、対応が後手に回った。町教委は「女子生徒にも授業不参加、喫煙、いじめの横行があり、学校崩壊の様相を呈している」との見方を示している。

 町教委のまとめによると、生徒が壊したのは学校のドア、窓ガラス、壁などの施設や備品類。町は修理のために81万3000円を公費から支出した。このうち61件4万1000円は保護者が弁償。4件9万3000円については保護者に損害賠償を請求している。

 金子廣教育長が18日の第4回定例町議会で、同校の現状や被害内容を明らかにした。

 町教委は「生徒の家庭環境などの背景を把握して指導を繰り返している」と説明。10月には保護者や住民による自由参観日を設けて、地域全体で学校の現状を共有しながら、学校運営の正常化に向けた在り方を模索している。

 一方、町教委は今後、暴力行為や器物損壊が発生した場合には、警察に被害を届け出るなど、厳しい対応で臨む方針で、桧山教育局や江差署にも支援を求めている。(松浦 純)


◎道政へ要望相次ぐ…地域づくり推進会議
 高橋はるみ道知事と市町長が地域の活性化方策について意見交換する「地域づくり推進会議in渡島」が18日、函館市美原の渡島合同庁舎で開かれた。参加した渡島管内の11市町長からは、道新幹線の開業に伴う周辺道路整備を望む声や、地方交付税縮小への危機感など、地方の課題や実情を踏まえた道政への要望が相次いだ。

 同推進会議の設置は高橋知事の2期目の公約。5月から上川中部、釧路、桧山など地域別に実施している。冒頭、高橋知事は「道財政は厳しいが、前向きな政策に向けた議論を期待したい」とあいさつした。

 議事では「道新幹線の新駅周辺の幹線道路整備が地域の最重要課題」(海老澤順三北斗市長)、「道縦貫自動車道の新直轄区間の早期完成を」(中宮安一七飯町長)など道路整備に関する要望が多く出され、高橋知事は「他地域とのメリハリを考えながらしっかり行いたい」と答えた。

 「道挙げて地方交付税のこれ以上の削減反対を訴えて欲しい」(西尾正範函館市長)など、厳しい地方財政を訴える意見や、「渡島や青森津軽、下北などを含めた海峡圏域での交流推進を」(前田一男松前町長)といった提案、「ホタテのウロなど養殖漁業の産業廃棄物の処理に苦慮している」(川村茂鹿部町長)などの声もあった。(新目七恵)


◎銃の情報収集 徹底を…道警函本 管内9署に通知
 長崎県佐世保市で起きた散弾銃乱射事件を受け、道警函館方面本部は18日までに、銃の保管状況に関する情報収集の徹底を求める文書を管内9署に通達した。各署では函館方面公安委員会から所持許可を受けた銃の保有者について、不審点がないか確認するなどして実態調査を進める方針だ。

 同本部生活安全課によると、管内で猟銃などを所持する許可を持っているのは6月末現在、608人に上る。許可丁数の内訳は散弾銃が261人(803丁)、ライフル銃が324人(460丁)、空気銃が23人(79丁)。1人で複数の銃を所持しているケースも多いという。

 主な用途は狩猟のほか、有害鳥獣の駆除、標的射撃などで、保有者は毎年4―5月に行われる一斉点検のほか、3年ごとの更新が必要。住居を持たない人や精神障害のある人、薬物、アルコール中毒者などには許可が下りない。近年、管内では許可を受けた銃による事件や事故は発生していないが、今年9月には函館市内で拳銃を持った男が警察官と銃撃戦となり、死亡する事件も起きている。

 今後、銃保有者が他人に危害を加える恐れなどが確認できれば、許可証の返納や取り消しを求めることもあるという。(森健太郎)