2007年12月21日(金)掲載

◎タクシー運転手強殺から1年/捜査難航 有力手掛かりなく
 北斗市のタクシー運転手、八木橋朋弘さん(当時42)が殺害され、売上金などが奪われた強盗殺人事件は、21日で発生から丸1年を迎えた。函館西署などの合同捜査本部はこれまでに、延べ1万9800人の捜査員を投入。現在も専従50人体制で懸命の捜査を続けているが、この1年間で寄せられた情報はわずか70件にとどまり、犯人特定につながる有力な手掛かりは得られていない。捜査本部は「事件解決に向け、ささいな情報でも寄せてほしい」と呼び掛けている。

 事件が起きたのは昨年12月21日未明。八木橋さんは同日午前3時半ごろ、北斗市七重浜1の国道227号で、犯行に関与したとされる「最後の客」を乗せ、同4時15分ごろ、七飯町峠下で数分間停車した。近くに八木橋さんの大量の血痕や携帯電話が見つかったことから、八木橋さんはこの時間帯に、この場所で殺害されたとみられる。

 その後、犯人が遺体をタクシーのトランクに詰め込み、自ら運転して遺体発見現場の函館港岸壁(函館市港町3)まで運んだ可能性が高い。この間、北斗市東前の国道227号を同4時半ごろ通過し、同岸壁に同5時ごろ到着したことが、タクシーに搭載されている衛星利用測位システム(GPS)の解析結果などで判明している。

 捜査本部はこれまで乗車場所、殺害現場、遺体発見現場となった函館、北斗、七飯2市1町の周辺住民の聞き込みを中心に捜査。タクシーの足取りが徐々に明るみに出る一方、犯人像や殺害の動機については絞り込めないままだ。

 司法解剖の結果、八木橋さんの遺体には心臓まで達する深い傷のほか、顔や腹など数カ所に刺し傷があった。さらに強奪された売上金も2万数千円と少額で、顔見知りによる「怨恨(えんこん)」との見方は捨てきれない。

 一方、これまでの調べで、八木橋さんの携帯電話の通話記録には直前に「最後の客」とみられる人物からの着信は見当たらず、「犯人が運行経路を予測していたり、タクシーを追跡後に先回りして乗車したりするのは考えにくい」(捜査関係者)ことから、「金目当て」による場当たり的な犯行の可能性も色濃く残る。

 時は静かに刻み続けるが、残された遺族が背負う悲しみは消えない。事件発生後、毎日欠かさず仏壇に手を合わせるという八木橋さんの父勝信さん(74)は「話せば思い出してしまうから駄目だ」と口を閉ざすが、「あの日から随分と時間が過ぎ、捜査は面倒なことになっていると思うが、一日も早く犯人逮捕を報告できる日が来れば…」と唇をかみしめた。

 捜査本部は、引き続き物取りと怨恨の両面から不審人物や捜査資料の洗い直しに全力を挙げているが、依然として遺留品や目撃証言が乏しく、捜査は難航している。事件を風化させないため、捜査本部は21日、函館市の本町交差点などで、事件に関する情報提供を呼び掛けるチラシ入りのポケットティッシュを配布する。

 合同捜査本部への情報提供はフリーダイヤルTEL0120・004・179。(森健太郎)


◎来年度予算原案/道新幹線に180億円
 国土交通省は20日、2008年度予算の財務省原案に盛り込まれた整備新幹線の事業費を発表した。要望額通り3069億円が確保され、同省鉄道局は「個別路線の配分額は現時点では確定していない」としている。ただ函館の公明党関係者によると、北海道新幹線新函館―新青森間は180億円、東北新幹線八戸―新青森間は700億円などで固まっている。

 同関係者によると、このほか北陸新幹線長野―金沢間が904億円、同福井駅整備に5億円、九州新幹線博多―新八代間(鹿児島ルート)が1270億円、同武雄温泉―諌早間(長崎ルート)が10億円となっている。

 東北新幹線と九州新幹線鹿児島ルートが2010年度の開業を予定しているため、重点配分された。北陸新幹線も「森喜朗元首相のおひざ元で、政治力が働いた」とみる関係者が多い。

 05年度に着工した道新幹線は、05年度30億円、06年度60億円、07年度は大台の100億円に達し、来年度は300億円の獲得を目指してきた。満額には至らなかったが、前年度比80%増で決着しそうだ。

 今月8日に北斗市で、道新幹線沿線自治体から要望を受けた公明党の風間昶(ひさし)参院議員(与党整備新幹線建設促進プロジェクトチームメンバー)は「東北新幹線の新青森開業を早期に実現することが、15年度の新函館開業に弾みを付け、札幌への早期延伸に結び付く」と指摘している。

 同省によると、3069億円のうち、国の公共事業費分は706億円、地元自治体の負担は1023億円で、残りはJR各社への既設新幹線の譲渡収入など。今後配分額を正式決定し、24日に閣議決定する予定。(高柳 謙)


◎来年度予算原案/函館港港湾整備など、市が重点要望まとめる
 2008年度の北海道開発予算発表に合わせ、西尾正範市長をはじめ幹部が上京している函館市は国施行分で、幹線臨港道路(湾岸道路)の整備や船だまり岸壁(旧函館ドック跡地)整備など函館港港湾整備事業に24億9900万円などを要望している。

 国施行分はこのほか、函館空港整備事業に10億600万円、物揚げ場を改良する椴法華港整備事業に1億8000万円などがある。

 道の施行分では、函館湯川漁港整備や戸井汐首漁港整備など地域水産物供給基盤整備事業(漁港)に13億7700万円、函館湾流域下水道整備事業に9億400万円など。市などの施行分(補助金含む)は、五稜郭跡復元整備(箱館奉行所整備)や南茅部の史跡大船遺跡整備など文化財整備事業に6億9460万円、本通中央通や赤川中央通などの街路整備事業に15億4000万円などを要望した。

 市企画部は「これら港湾整備事業費や街路事業費などは開発予算の中の全体枠で示されるため、要望に対しどの程度配分されるかは現時点では分からない」とし、国土交通省北海道局も「24日に政府案となる予定で、各開発建設部への配分が決まるのはその先になる」と話している。(高柳 謙)


◎市民ツリー好評/短冊に願い事…昨年上回る2000枚超
「函館の森林の再生と活用を考える会」(木村マサ子代表)がクリスマスファンタジー期間(1―25日)中、函館市豊川町11の明治館横に設置している「市民ツリー」が大好評だ。訪れた人たちは願い事を書いた短冊を付けており、ことしの短冊は2000枚を超え、昨年の期間中の約1400枚を大幅に上回っている。木村代表は「体験型観光が好まれる良い例ではないか」と話している。(山崎純一)

 このツリーはことしで5回目で、4年前から同所に設置。短冊は同会の会員が集めた牛乳パックを約10?四方に切ったもので、中にはくつ下型もある。緑のモールをつけ、ツリーに付けた箱に油性ペンとともに置いてあり、自由に書き込むことができる。

 団体客を乗せたバスが近くに停車するため人通りが多く、珍しがって書き込む人が多いという。「利用が多いのは午前中。昼からは人が減り、夜は寒くて暖を取る場所が少なく、足早に帰るため通り過ぎるだけ。観光事情を垣間見ることができるようだ」と木村さん。

 昨年は約1割が外国語で書かれ、そのうち約6割が台湾、中国語圏だった。ことしはさらに多く、平和や健康を願う「人都平安」「身体健康」などが目立つ。20日に台湾から訪れた女性は「正月祭りのようでかわいい」と喜ぶ。会員は「国際交流のため台湾語や英語を勉強しなきゃ」と笑顔を見せている。

 書き込みでは、函館を訪れた感想も増えた。大人が恋愛の願いをしたためたものは以前から多いが、子どもの夢は減っているという。ツリーの横にある道南スギで作った木馬も、大人が楽しむ光景がよく見られるという。木村さんは「最近はファンタジーを訪れる親子や、毎年来る市民が減ったように感じる。イベントは見せる、憩いを与える、参加する―という魅力をそろえることが重要だと思う」と話す。


◎インフルエンザ、早い流行の兆し/銭亀沢中が学年閉鎖
 函館市教委は20日、インフルエンザを含む集団風邪で、函館銭亀沢中学校(高垣孝二校長、生徒148人)2年の2クラスを21日まで、学年閉鎖措置としたことを明らかにした。学級、学年閉鎖は市内では今冬2校目。市内では例年、冬休み明けの1月下旬から2月上旬にかけて学校で風邪が流行する傾向にあるが、全道的にインフルエンザ感染がまん延する中、今年度はその時期が早まる兆しがある。市立函館保健所や市教委は注意を呼びかけている。

 銭亀沢中の罹患(りかん)した生徒は主に発熱や頭痛、腹痛などの症状を訴えている。2学年はA組、B組の2クラスで、生徒数はともに28人。学校からの報告によると、20日現在、B組は75%に当たる21人が罹患し、うち12人が欠席した。A組は11人が欠席し、出席した生徒の中に罹患者はいなかった。

 昨年度の函館市内は休み明けの2月から学級、学年閉鎖の報告が相次ぎ、最近の傾向でも年明けに流行している。ただ、今年の道内は例年より早いペースでインフルエンザが広がり、道内の全30保健所のうち、滝川や富良野など半数以上が医療機関の報告に基づいた「注意報」「警報」を発令している状況だけに、市立函館保健所でも警戒を強めている。

 同保健所は「学校の行事などで集団行動する機会が増えるとともに、風邪が流行する傾向にある」と指摘。これから学校が冬休み期間に入り、児童、生徒の集団感染の可能性はやや少なくなるとみられるが、「寒さが厳しくなるので体調管理に気を付け、外出後にうがい、手洗いをし、室内の乾燥に気をつけてほしい」としている。(鈴木 潤)