2007年12月28日(金)掲載

◎ネズミや龍の連凧 頭上に舞う…きょうから梅谷さん作品展
 函館市山の手3の創作凧研究所「創作凧治工房」主宰で、日本凧の会会員の梅谷利治さん(78)の凧展が、28日から市地域交流まちづくりセンター(末広町4)1階で開かれる。来年の干支(えと)の「子(ネズミ)」や、梅谷さんオリジナルの作り方で完成させた龍の連凧などが訪れた人の頭上に飾られ、新春の雰囲気を醸し出す。来年1月15日まで。

 干支のネズミは、24年前の作品で船の形をした畳一畳の大きさがある「子鳳丸」、12年前の連凧「子大黒天」、顔を約30センチのハート型にしたことしの「福子連凧」のほか、横に並ぶ立体だこなど。福子連凧は「体が小さいネズミを大きく表現するために考えた。人々がハートをつなぐ大切さも訴えたい」と話す。

 連凧は同館天井の換気口に付けられ、イカや龍が長さ約20メートルのフロアを舞っている。龍は胴体が側胴と呼ばれる蛇腹でつなげる独特の作り方が楽しめる。凧揚げ風景を撮影した映像なども紹介している。梅谷さんは「周りにいる人たちのおかげ」と話している。

 展示されている凧の一部は、来年1月5日午前11時から同市の緑の島(大町15)で揚げる予定。(山崎純一)


◎ドイツワインのことは任せて……藤澤節子さん「ケナー」に
 函館市昭和1で藤澤稔さん(55)と共に酒店「地酒・ワイン屋みのや」を営む妻の節子さん(54)が、10月に東京で行われたドイツワイン・ケナー(識者)の呼称資格認定試験(日本ドイツワイン協会連合会主催)に合格し、成績上位者として表彰された。味だけでなく、産地や造り手などの背景も知りながら楽しむ“ワイン文化”を広めようと張り切っている。(宮木佳奈美)

 ワインが好きで勉強を始めた節子さんは、1998年に日本ソムリエ協会認定のワインアドバイザー、2001年にはフランス食品振興会認定のコンセイエ(フランスワインを売る達人)も取得。店頭で顧客にアドバイスするほか、市内の喫茶店が主催するワイン講座で講師も務める。

 昨年3月、ドイツのワイナリーを訪ねた際に造り手の熱意に感銘を受け、ドイツワインの知識を深めたいと受験を決めた。

 ドイツのワインや文化の普及を目的に、2003年に創設された呼称資格制度で、ケナーと上級ケナーに分かれる。同連合会によると、12月現在で全国のケナーは492人、うち道内は6人で、函館市内は既に資格を取得している1人と節子さんだけ。上級ケナーは全国115人、道内は1人という。試験は年1回、愛好家を対象とし、ワインだけでなくドイツに関する一般知識も問われる。成績上位12人が褒賞対象となる。本年度のケナー受験者は100人で、合格率は64%だった。

 節子さんは「ドイツワインでは凍ったままのブドウを絞り、甘みが凝縮したドイツ産主流の『アイスワイン』が人気なので、PRしている」と話し、「資格を取ってより自信が持てるようになった。来年は上級試験にも挑戦したい」と意欲を見せている。


◎公債費比率18・5%…桧山管内7町 2006年度決算
 【江差】檜山管内7町の2006年度普通会計決算がまとまった。歳入に占める借金返済額の割合を示す実質公債費比率が、全道平均の16・5%を上回る18・5%で、05年度より0・8ポイント上昇した。江差、奥尻、せたなの3町では、小規模市町村の地方債発行が制限される基準の25%に迫った。中でも江差町は、07年度決算から3年間程度は、基準の25%を超えることが確実とみられており、危機的な財政状況が浮き彫りになった。

 同比率は、江差町が起債制限ぎりぎりの24・9%。1828ある全国市町村の中で47位、道内180市町村の中でも14位にある。奥尻町は24・7%、せたな町は22・8%。 

 過去の建設事業などによる起債償還がピークに達する江差町では、一般会計は改善傾向にあるが、上下水道事業などの起債が占める割合が大きく、町の試算によると、07年度決算から3年間程度は同比率が25%を超えることが確実な情勢だ。このため、08年度は起債制限の適用、09年度には国の指導による財政健全化計画の策定義務付けが予想され、年明けから本格化する新年度予算編成でも、厳しい対応を迫られそうだ。

 同比率は、一般会計、特別会計、企業会計を含めた、歳入に対する地方債の元利償還の割合を示す指標。小規模市町村では、18%を超えると地方債発行に国の許可が必要になる。25%以上35%未満では、国庫補助金を伴わない事業に充てる地方債の起債制限を受け、起債による独自事業が困難になる。本道では06年度決算で知内町など13市町村が25%以上の基準を超えている。

 また、08年度からは、地方公共団体財政健全化法の本格運用で、同比率が25%を超えると財政健全化計画の策定が義務付けられ、35%超で財政再建団体になる。

 管内7町の歳入は約374億9291円(対前年度比2・1%減)、歳出も約369億8133万円(同2%減)と微減。一般財源に占める人件費など、義務的経費の割合を示す経常収支比率は、05年度より2ポイント減って84・7%。地方債残高は約537億1251万円(同2・9%減)、積立金残高は約117億1210万円(同1%減)。(松浦 純)


◎水稲共済金8億5000万 加入農家の6割対象に…道南NOSAI
 道南農業共済組合(道南NOSAI、北斗市東前)は27日、渡島・檜山管内の本年産の水稲の共済金支払い額が、過去10年間で2番目に多い約8億5000万円に上ったことを明らかにした。7月の低温などの影響で、道内で最も悪い作柄となったのが原因。共済加入農家1690戸のうち、共済金支払いの対象となった農家は約6割の974戸に上る。0ァ40ィ(新目七恵)

 
 冷害や台風など農業災害の損害を補償する農業共済(国の補助金と農家の掛け金で運営)のうち、水稲などの農作物共済などの支払い額が確定した。共済金は農家から被害申告を受け、損害評価を経て被害の程度に応じて支払われる。

 道農政事務所(札幌)によると、道南の本年産の水稲の作況指数(平年作100)は、全道平均98に対し、渡島71、檜山68と「著しい不良」となった。この結果、共済額が膨らみ、特にせたな町や今金町など檜山北部の一部と、上ノ国町や福島町など檜山南部の一部で被害率(最大補償額に対する共済金の占める割合)が高かった。

 同農済によると、本年産の水稲の被害率は15・1%。大冷害で最悪の凶作となった1993年産は作況指数が渡島3、檜山2で、共済金支払い額は約90億円(被害率96%)、台風災害に見舞われた2003年産は作況指数が渡島44、檜山43で、支払い額は約26億円(同44%)だったが、本年産はこれらに次ぐ被害となった。

 一方、ジャガイモも干ばつ傾向で小玉が増加したり、7月後半の雨による象皮の発生などで作柄が悪く、115戸の農家に対する共済金は約1億3000万円に上った。被害率は10・8%で、過去10年の平均被害率4・7%の倍に跳ね上がった。また、9月の台風9号の影響などで、七飯町のリンゴ果樹農家16戸に対する共済金が約1000万円、園芸施設も被害を受け、11月末現在で延べ94戸に累計約3150万円が支払われている。


◎「管理職全体でコスト減」…「理事」設置で西尾市長
 函館市の西尾正範市長は27日、定例記者会見を開いた。来年度から行財政改革などを指揮する特別職「理事」を設置することについて「4年間で6000万円という数字が独り歩きした感があるが、管理職と特別職のトータルコストは下げる。理事は総務部に権限と責任を持たせる目的だが、最終的な責任は当然私が負う」と述べた。

 市長は「議会で十分な説明ができず、残念に思っている」と述べ、行財政改革の断行に「日常的にリーダーシップを発揮する特別職が必要。機構改革を含め、論理を組み立てて職員を納得させ、役所内のことが分かり、改革の意欲の強い人材でなければならない」と述べ、内部から登用する考えを示した。

 「市長、副市長2人、企業局長3人の現体制でできないのか」との質問に対し、「できないことはないが、副市長2人は多忙。私のイメージする政策や改革を、共に取り組んでいく力量のある人が求められる」と述べた。そして「屋上屋(屋上に屋根をかけること=無駄なことの例え)にはしない」と明言した。

 管理職と特別職を合わせたトータルコスト削減については「現時点でははっきり言えない」としたが、一例として兼任方式で人件費を浮かせる考えを示した。水道・交通・病院の3企業局の再編は「来年度の検討課題で、来年度から再編することはない」とした。

 常勤監査委員と水道局長が来年3月末で任期満了となることから、1月中には理事を含め3特別職の起用人事を固めるという。また「組織と人事は不離一体」と述べ、来年4月の人事は大型になる見通しも示した。(高柳 謙)


◎記者回顧(7)西尾市政スタート
 昨年12月29日正午すぎ、函館市役所地下公用車駐車場にいた。退任あいさつを終え、庁舎を後にする西尾正範助役(当時)を見送ったあの日から丸1年がたつ。ある政治家が「人生には3つの坂がある」と発言したのも記憶に新しいが、「まさか」の助役辞職に始まり、福祉施設建設許認可をめぐる問題、井上博司前市長との一騎打ち、得票差3万5千票あまりの圧勝劇で誕生した西尾新市長―。振り返ると、的確に物事をとらえ、言葉を選び、分かりやすく読者に伝えることができていたのか、判断のつかない場面が多かったように思える。

 市長選では西尾陣営を担当した。4月11日の総決起集会、西尾氏の現職や経済界、議会首脳らを揶揄(やゆ)した発言は、会場を熱気と興奮で包み込んだが、別世界にいるかのような光景だった。選挙戦術としては、支持者の結束や心をつかむことには成功したのかも知れないが、選挙後も経済界との間で禍根を残し、年末まで尾を引く事態を招き、市議会でも市長の政治姿勢をめぐり、さまざまな発言があった。行き過ぎた言葉は不幸を生み出すことがある。

 記者にとっても「言葉選び」は重要なファクターだ。取材相手との会話で交わす「言葉」、原稿に使う「言葉」など、選択ひとつで印象を変えてしまう。10月末に市長就任半年の記事で「中核市市長としての言葉には、一言一言に重みが求められて当然だ」などと書いた。後日、ある人から「余計なことを書いてたね」と皮肉っぽく言われた。「たまに余計なことを口にしているのは市長ではないのか」と内心思いつつ、「言葉のひとり歩きを忘れてはならない」と自省した。

 年が明け、新年度の予算編成や人事異動が終われば、西尾市政の方向性もはっきりと見えてくるだろう。出馬会見で西尾市長は「若い人が夢を持って働き、家族を養い、子どもを育てられる地域づくりをする」と述べた。事実、子ども未来室や労働政策室などを設置し、環境改善に向けて動き出している。世代的に自分自身にも直結する問題でもあり、市長の手腕に期待するひとりだ。

 年末には、特別職新設をめぐり、市民からも異論の声を聞き、西尾市長誕生で行政への関心が高まっていると感じる。27日の記者会見で、西尾市長は「市民の皆さんに語る場も増やし、理解をしてもらいながら(市政運営を)進めたい」と語った。市民が期待するのは、こうした姿勢を積極的に示すことだ。

 人口減少に伴う地域産業の衰退、財政悪化など、函館が直面している課題はひとつではない。市民一人一人の関心を高め、声を集める手助けをすることも、地域紙記者の役割だと考えている。(今井正一)