2007年12月30日(日)掲載

◎年越しそば 準備大忙し
 函館市桔梗4の手打ちそば店「桔梗庵」では29日、年越しそばの準備が始まった。店主の鎌田征三さん(64)がそば切り、妻泰子さん(56)がめんをパック詰めするなど、夫婦二人三脚で作業に取り掛かっている。

 創業30年の同店は、道内産のそば粉と小麦にこだわった手打ちそばを提供する。不景気に加え、コンビニエンスストアなどが年越しそばを扱う影響もあって販売数が減り、ことしは100食用意する予定。ほとんどは予約注文だが、店内は久々に食べに訪れる帰省客や年越しそばを持ち帰る客でにぎわう。

 作業のピークは30日で、31日まで夜の営業を休み、早朝から晩まで仕込みに追われる。鎌田店主は「手打ちそばは切れやすいので家庭でゆでるときはお湯をたっぷり用意し、そばを入れたら10秒ぐらい待ってゆっくりかき混ぜて」とアドバイスしている。(宮木佳奈美)


◎「千の風」誕生の地大沼PR…プロジェクト発足
 【七飯】大沼再生に向けた第1歩―。2年連続で大みそかのNHK紅白歌合戦で歌われるヒット曲「千の風になって」誕生の地、七飯町大沼のイメージアップと観光客誘致を目指す「千の風・プロジェクト」(渡辺譲治委員長)がこのほど、発足した。この曲を訳詞・作曲した作家新井満さんの協力を得た試みで、第1弾として大沼国定公園内でのモニュメント制作を計画。来年2月2、3の両日、同公園広場で開催される「大沼函館雪と氷の祭典」(実行委主催)には、氷と雪を用いた同モニュメントの原寸大レプリカもお目見えする。

 新井さんは15年前、大沼・緑の森に家を購入。2004年の台風18号発生直後、同地区の人に救助されたエピソードをはじめ、美しい自然と温かな人情など、大沼の持つ魅力に引かれ、毎年同地区を訪れている。「千の風になって」の訳詞は同地区を吹き渡る“風の姿”からイメージしたという。

 11月に新井さんを招いて開かれた講演会とシンポジウムでは、大沼活性化に向けてパネリストや来場者が意見を交換。新井さんの「物語、伝説を作ることが大切。曲誕生の地としてPRしては」との提案を受け、湖畔への歌碑設置や駅前整備、合唱コンクールなど多様な企画が持ち上がった。

 そこで、こうした提案を地域で具現化しようと、渡辺委員長(62)を中心に同プロジェクトを立ち上げ、歌碑づくりから活動をスタートさせることになった。

 メーンモニュメントは大沼の自然石や七飯石(安山岩)などを直径3メートル、高さ30センチの椀型に積み、中央に「千の風になって 名曲誕生の地 大沼国定公園」のプレートを配置する。「千の風」を感じる場所を公募で選定する予定で、制作も地域住民らの手で行われる。また、永続的な活動を目指し、同様のモニュメントを継続的に制作し、モニュメントをつなぐ「千の風小径(こみち)」なども計画している。

 渡辺委員長は「『千の風になって』の訳詞テーマである「死」「再生」のうち「再生」が今、大沼に必要。この歌が持つイメージと大沼の本質を見つめ、具体的な形として取り組みたい」と意気込んでいる。

 また、町でも早速、中宮安一町長が「千の風になって誕生の地」と記載した名刺を使用し、北海道新幹線の要望活動などで好評を得た。名曲誕生の地として、大沼再生に向けた取り組みがいよいよ始動する。(笠原郁実)


◎道南地方 暴風雨
 三陸沖と北海道の西の海上から低気圧が発達しながら北上したため、29日は本道や本州の東日本、北日本の広い範囲で大荒れの天気となった。道南では渡島西部を中心に暴風雨に見舞われ、北斗市で土砂崩れなどの被害が発生。交通機関も乱れ、年末の帰省客の函館到着が遅れるなどの影響が出た。


 函館海洋気象台によると、29日午前2時から午後6時までの降水量は知内107ミリ、福島町千軒100ミリ、北斗65ミリ、函館市美原61ミリで、それぞれ12月としては最も多かった。最大瞬間風速は、函館市美原で午前9時14分に27・9メートル、江差で19・6メートルを観測した。

 JR函館駅前では、通行人が持っていたビニールかさが強風にあおられて壊れる場面などが見られた。同駅に家族を迎えに来たという同市本通の酒井宗康さん(71)は「気持ちよく一年を終わりたかったが、この天気ではすっきりしない。冬の大雨も地球温暖化の影響かな」と話していた。

 同気象台によると、30日は低気圧の北上と共に日本海の上空に強い寒気が入るため、日本付近は強い冬型の気圧配置となる見込み。渡島、檜山とも明け方以降は吹雪きになると予想している。 (山崎純一)


◎函館から8人が入選…水墨画・国画展
 東京都立美術館でこのほど行われた水墨画の第38回国画展で、函館市内の函館国画院の会(小野和子会長)と函館水彩画の会(風林猛雄会長)に所属する計8人が入選を果たし、市内で賞状の伝達式が行われた。両会を含め市内5つの水墨画団体を主宰する竹中征機さんは「函館からこれだけの人数が入賞するのは過去に例がない。みなさんの頑張りが評価された結果」と喜んでいる。

 今回入賞したのは、自由部門で国画院名誉会長賞に竹中さんの「垂水」。優秀賞に小野和子さんの「霜の声」。佳作に橋田紘子さんの「いさり火」。努力賞に大坂すゑ子さんの「旭日」。新人賞に東間征子さんの「ひらめとつぶ貝」、大泉セツさんの「牡丹」。近代造形社賞に秋山富佐子さんの「春蘭」。課題部門で課題優秀賞に小島洋子さんの「進水式」。

 今回、函館からは竹中さん自らが厳選した16人の作品が出品され、そのうち半数が入選を果たすという結果になり、竹中さんは「昨年は4人が入賞だったが今回は一気に倍増した。メンバーの努力の結果が形になった」と喜ぶ。

 水墨画を始めて4年目で初入賞を果たした小島さんの作品は、函館どつくでの作業員の様子を生き生きと描いた。小島さんは「以前は絵手紙を書いていたが、さらに本格的な作品に取り組みたくて水墨画を始めた。このような賞がもらえるとは思っていなかったのでうれしい」と笑顔を見せていた。 (小川俊之)


◎古布で洋服や壁掛け…川島、川合さん7日から初の「姉妹展」
 趣味で古布を収集し、洋服や壁掛けなどの作品づくりに励む函館市在住の姉妹、川島祐子さん(61)と、河合百合子さん(59)の初めての「姉妹展」が来年1月7日から、函館三菱ふそうギャラリー(市内昭和)で開かれる。同26日まで。

 2人は市内で開かれるパッチワーク教室、洋裁講座に通って基本の技術を習得。以来、仕事や空き時間を利用し、独学で作品づくりに取り組んでいる。友人から出展を勧められ、姉妹展を企画した。河合さんは「作品展を通じて制作に励む多くの市民と交流し、仲間の輪を広げたい」と話している。

 作品に使用する布は家族や知人から譲り受けた古い着物のほか、毎年1回、旭川と京都に布集めに出掛けている。川島さんは「多くの人に愛用され、最終的に手元にたどり着いた古布。そんな貴重な布を簡単に捨てるのではなく、少しでも取り入れて新たなものに再生したい」と、古布を使った作品づくりに寄せる思いを語る。

 川島さんは主に大島や藍染めを中心に、ベストやスカートなどの洋服のほか、バッグなども手掛け、河合さんは黒の羽織を下地に、赤や紫色の映える着物を活用し、鶴や風車の模様をかたどった壁掛けを主に制作。中でも、ことし9月に亡くなった知人から譲り受けた黒色の着物を使用した壁掛けについては、「出来上がった作品を本人に見せたかった」と涙を浮かべながら紹介した。

 小物入れや端切れのほか、ハンカチを3?四方に裁断し、花のつぼみを約100個組み合わせたブローチなども展示している。時間は午前9時から午後6時(12、13、14、19、20日は休館)。(小橋優子)


◎記者回顧(9)著名奏者 次々来函
 夏の人事異動で音楽関係の取材を担当することが多くなった。個人的に興味のある分野でもあり、取材を名目にさまざまなステージを楽しませてもらう機会も増えた。特に9月から11月にかけては、著名なアーティストや団体による来函ラッシュとなり、素晴らしい体験をさせてもらった。

 9月には「プラジャーク弦楽四重奏団」と「日本フィルハーモニー管弦楽団」。10月にはバイオリニストの「神尾真由子」と「イムジチ合奏団」。11月には「キエフバレエ」、「国立サンクトペテルブルク・アカデミー・バレエ」に「札幌交響楽団」と、いずれも年間の目玉イベントになってもおかしくないグレードの高い内容ばかりだった。

 中でも、「チャイコフスキー国際コンクール」のバイオリン部門で日本人2人目の優勝という快挙を成し遂げた神尾真由子さんのリサイタルは、コンクール優勝後初のソロリサイタルということもあり、道内外からも大勢のファンが足を運ぶなど注目度は高かった。実際の舞台でも神尾さんは、21歳と思えぬ堂々たる落ち着きぶりで逸材としてのオーラを発信。愛器ストラディバリウスで甘美な音色を奏でたと思えば、あえてむき出しの激しい表現をぶつけてきたりと、自由自在な表現力で観客を圧倒。この素晴らしい音空間に立ち会えたことを心から幸せに感じた。

 ただ、演奏の内容以外で残念に思うこともあった。それは11月にバレエの本場ウクライナ(旧ソ連)から2つの有名バレエ団が相次いで来日したこと。函館のような地方都市でこのようなバッティングが起こることは極めて珍しいのだが、さらに演目がどちらも「白鳥の湖」ということで、来場者が分散してしまったのだ。

 これは招聘(しょうへい)元が違うことと、来日公演の場合、かなり早い時期からブッキング(予約)しなければいけないことから来る偶然のいたずらとしか言いようのないこと。実力派による安定感のある「キエフバレエ」と、若手中心のフレッシュな「国立サンクトペテルブルク・アカデミー・バレエ」のどちらもそれぞれの個性を生かした素晴らしい「白鳥の湖」だっただけに、もし上演日時が離れていれば、もっと多くの観客の前で踊ることができたのに、と心から思った。

 また、函館では珍しく2月と11月の年2回行われた札響の演奏会だが、これももうひとつ来場者が伸び悩んだ。数年前には財政危機から存続が危ぶまれたこともあり、最近は地方都市での公演にも力を入れていることの現われだと思うが、本道唯一のプロオーケストラの活動を、日本ハムを応援するのと同じように、函館からエールを送って盛り立てていけないものだろうか。(小川俊之)