2007年12月5日(水)掲載

◎堀口ファーム/サイロ壁画 色鮮やかに
 【木古内】木古内町建川29の堀口洋一さん(56)が経営する堀口ファームのサイロに描かれたた壁画が「色鮮やかできれい」と近所の話題になっている。近くを通るJR海峡線の列車からも見ることができ、木古内の新名所になりそうだ。

 壁画は知内高校(南和孝校長、生徒151人)の芸術選択科目で「美術」を選んでいる1年生の道上大輔君(15)ら23人と手代木惇講師、堀口さんが9月中旬から手掛けた。高さ12メートル、直径6メートルの円柱のサイロに、堀口さん一家が乳牛の世話をする様子が縦6メートル、横9メートルの大きさで描かれている。

 堀口さんは「『列車からも見えたよ』と報告してくれる住民や、『孫(生徒)の描いた絵を見にきた』と直接足を運んでくれるお年寄りもいる」とし、「温かさが伝わる絵で心が和む。生徒に感謝したい」と目を細めている。(田中陽介)


◎16日に平和クリスマスコンサート/馬頭琴とパイプオルガン共演
 モンゴルの代表的民族楽器、馬頭琴(ばとうきん)とパイプオルガンという珍しい組み合わせの音楽会が16日午後2時半から、函館市杉並町の函館遺愛女子中学・高校講堂で開かれる。収益金は第2次世界大戦末期の沖縄戦を主題にした絵本「おきなわ 島のこえ」(小峰書店)の英訳本出版資金に充てられ、会場では絵本の朗読も行われる。主催者側では「珍しい楽器が共演するクリスマスコンサートで『平和』を考えて」と呼び掛けている。(山崎純一)

 この絵本は本道出身の画家丸木位里(いり)さんと、妻の俊さん(ともに故人)が1年にわたり沖縄で取材し、1984年に出版した。沖縄の言葉を使い、住民の視点で惨状を語っている絵本を、英語圏の人たちに紹介しようとする函館ラ・サール中学・高校の教師ピーター・ハウレットさん(52)らが、公演の益金を出版資金に充てようと企画した。

 馬頭琴は本来、弦と弓を馬の尾の毛で作った擦弦(さつげん)楽器で、わずか2本の弦で音を奏でる。今回、馬頭琴を演奏するのはハウレットさんと親交があり、アメリカ在往で内モンゴル国家一級演奏家の李波(リポー)さん。パイプオルガンは函館在往のオルガン奏者石崎理(みち)さんが演奏する。2人は以前、石崎さんがチェンバロを弾いて共演したことはあるが、パイプオルガンでは初めて。石崎さんは「深みのある音があるパイプオルガンの方が馬頭琴と合っている」と話す。

 曲は李波さんがモンゴル民謡「スーホの白い馬」を演奏するほか、クリスマスソングでの共演が予定されている。

 また、同絵本を函館絵本の会銀のふねの和田ふみえさんが朗読する。朗読の途中に石崎さんの演奏も入る。「音楽と朗読の相乗効果で、絵本を体で感じることができる」と石崎さん。中でも足鍵盤だけで演奏する曲があり、パイプオルガンの魅力も存分に味わえるという。

 函館遺愛女子中学・高校では1982年に丸木さんの作品「原爆の図」函館展も開かれている。

 ハウレットさんは「沖縄戦では他都道府県出身兵の死者が7万6961人で、この中で本道出身は最も多い1万798人。北海道からこの絵本を世界に送ることの意義は大きく、クリスマスにあらためて平和について考えて欲しい」と話している。

 入場料は大人2000円、小・中学、高校生500円。函館市の松柏堂各店で発売中。公演の問い合わせは同絵本英語版出版プロジェクト事務局の鍋島さんTEL050・2020・9246。


◎にしん街道 標柱10基に/北海道歴史倶楽部が設置
 【八雲、江差】江戸時代から終戦後の1940年代後半まで、本道の日本海沿岸に繁栄をもたらしたニシン漁。「鰊(にしん)御殿」に代表される建築物や郷土芸能などの文化遺産は、ニシンの群れを追う人々とともに、道南から約500キロ離れた道北まで続く。江差、上ノ国、松前の3町観光協会でつくる「北海道歴史倶楽部」(会長・疋田清美松前観光協会長)は、ニシン文化がたどった道のりを「にしん街道」と命名。街道のシンボルとして設置した標柱はこのほど、計10カ所に達した。(松浦 純)

 10カ所目の標柱が設置されたのは、日本海に面する八雲町熊石鮎川地区。3日には川代義夫町長、標柱を寄付した八雲ライオンズクラブの餌取優会長らが除幕式を行った。

 同倶楽部は2003年、日本海沿岸に数多く残る鰊御殿や倉庫建築のほか、「袋澗(ふくろま)」と呼ばれる石組みの“いけす”などの遺構とともに、「沖揚げ音頭」などの郷土芸能も含め、ニシン文化を本道の新たな観光資源にしようとする「にしんルネサンス事業」をスタートした。

 これまでに渡島、桧山、後志の3支庁管内で、フォーラムや郷土芸能の発表、漁具の展示などを行うと同時に、「にしん街道」のシンボルとして、沿岸自治体や構想に賛同する有志の協力で「にしん標柱」の設置にも取り組んでいる。

 標柱の設置は2004年、上ノ国町の旧笹波家住宅(重要文化財)を起点に、江差、せたな両町で2カ所、松前町、奥尻町、八雲町、後志管内岩内町、積丹町では1カ所ずつの標柱を設けてきた。年度内には同管内寿都、古平の両町でも設置を予定している。

 同倶楽部で、にしん街道標柱設置協議会幹事長を務める打越東亜夫・江差観光コンベンション協会長は「沿岸自治体の協力で、標柱は渡島、桧山、後志の3支庁管内の10カ所に達した。ニシン文化が栄えた証しとして、来年度以降も石狩、留萌、宗谷と道北での設置を進めたい」と意欲を見せている。


◎渡島の特別交付税/11・4%減 14億9877万円
 本年度特別交付税の12月交付額が4日決まった。渡島・桧山両管内の全市町で策定している観光振興、子育て支援など自治体独自の取り組み「頑張る地方応援プログラム」の経費支援でそれぞれ増額したが、渡島11市町分は函館市や北斗市などの合併経費の減額などで相殺され、前年度比11・4%減の14億9877万円、桧山管内7町分は同5・4%増の7億5296万円だった。

 特別交付税は普通交付税の算定後に起きた災害など、特別な財政需要に対し、12月と3月の年2回交付される。

 市別に見ると、函館は合併経費が9413万円減額し、全体では同29・5%減の4億4554万円。北斗も合併経費減から同30・4%減の2億127万円だった。減額は道内で函館が最も大きく、北斗は6番目。

 町別では増率の高い順に福島が同690・6%増の3115万円、知内町が同183・1%増の3157万円、上ノ国町が同116・5%増の3268万円、江差町が同102・2%増の3677万円。いずれも同プロジェクト経費の支援措置(上限3000万円)が主な要因。

 全国の総額は同5・3%減の2477億4700万円で、北海道は同4・6%増の159億1000万円だった。(新目七恵)


◎函館市議会開会/「理事設置」条例案など説明
 函館市議会の第4回定例会が4日開会し、会期を19日までの16日間とすることを決めた。西尾正範市長は、行財政改革などを担当する特別職の理事を設ける「市理事の設置および給与等に関する条例」の制定案、乳幼児医療費助成拡大に向けた条例改正案など議案29件を提出し、各部局長が提案理由を説明した。

 理事は市政の円滑な運営を図ることを目的に設置し、指揮、監督、各種調整に当たる。条例制定案では市長が任命し、任期は4年。給料は月額79万円としている。

 医療費の助成拡大は市長の公約で、改正条例案では助成の対象範囲を未就学児から小学校卒業までに拡大する。来年度から実施の予定。

 一般会計の補正予算案は、民生費負担金や生活保護の扶助費などで3億216万円を追加し、総額を1247億841万円とする。2004年1月に起きた市立函館病院の医療事故で、損害賠償金4800万円を支払う関連議案や、市青函連絡船記念館摩周丸など市内5カ所の施設の指定管理者選定に伴う条例改正案などが提出された。

 民生常任委員会(佐古一夫委員長)で審査し、不採択とした「東山産業廃棄物処分場火災の再発防止のため再調査を求める陳情」は本会議採決でも不採択とした。

 一般質問は7、10、11、12日の4日間で17人が登壇。13日は各常任委員会が開かれ付託議案を審議。19日の本会議で各委員長が審議結果を報告し採決する。14日には有料老人ホーム問題調査特別委員会が開かれる。(鈴木 潤)


◎大谷派函館別院が国重文に正式指定
 文部科学省は4日、国内初の鉄筋コンクリート造りの寺院として知られる函館市元町16、真宗大谷派函館別院(梨谷哲栄輪番)の建築物3棟を国の重要文化財に正式に指定した。同日官報に告示した。

 同別院は今回、「大谷派本願寺函館別院」として正門と本堂、鐘楼(しょうろう)の1件3棟の指定を受けた。道内では唯一で、全国では10件が指定された。

 函館市内の建造物で重要文化財は、旧函館区公会堂(元町3)、函館ハリストス正教会(元町11)、太刀川家住宅店舗(弁天町15)、遺愛学院(杉並町23)に続き5件目。

 同別院は1907(明治40)年の大火で焼失したが、当時の帝室技芸員、伊藤平左衛門9世の依頼で15(大正4)年、現在地に鉄筋コンクリート造りで本堂を再建。本堂の正面は幅33メートルで、正門や鐘楼も続けて建てられ、鉄筋コンクリート造りの寺院建築の先駆けとなった。10月19日に開かれた文化審議会では、函館の耐火建築物普及の契機となった建築物として評価された。

 重要文化財の正式決定を受け、市教委は「函館が早くから建物の耐火対策に取り組んだことをさらにアピールできるのでは」としている。(鈴木 潤)