2007年1月1日(月)掲載

◎小中学生、正月返上で受験勉強
 「お正月は合格発表まで」―。函館市内の学習塾などでは、年末年始の特別講習が開かれている。年明けに迫った入学試験を控えた小中学生が集まり、「春」をつかもうと正月気分返上で勉強に励んでいる。

 北大学力増進会では、道南の6校で31日から1月2日まで、冬期講習とは別に、受験生の小学6年生、中学3年生向けの「正月特訓」と題した特別講座を実施。受講生は「正月こそ差をつけよう」と、レベルを高めた特別カリキュラムに臨んでいる。

 このうち、本部教室(函館市本町33)では、約120人が受講。期間中は1日当たり4コマの授業を受ける。子どもたちは「必勝」「合格」と書かれた特製の鉢巻きをして、真剣な表情で講義に耳を傾け、机に向かっていた。

 笠木誠函館本部長代理は「合格の時が正月です。勉強をして、精神的にも強くなってほしいですね」と話していた。 (田中陽介)


◎MOA美術館全国児童作品展で函館の2人が入賞
 1日から2月14日まで、静岡県熱海市のMOA美術館円形ホールで開かれる「第18回MOA美術館全国児童作品展」(実行委主催)で、日本習字教育財団美原支部(川上孝夫主宰)の金谷侑季(ゆき)さん(函館中央小6年)が書写の部で準最高位にあたる日本PTA全国協議会会長賞を受賞。また、絵画の部で、函館深堀小5年の伊藤希(のぞみ)さんが銅賞に入賞した。ともに「これからも好きな書や絵を続けたい」と喜びを話している。(山崎純一、田中陽介)

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 同展は「生命を尊ぶ心」をテーマに、海外を含む367会場で開催され、約34万8000点の応募があった。函館会場(昨年10月開催)では約370点の応募があり、金谷さんと伊藤さんの作品が代表として全国作品展に出品された。全国展では629点が集まり、計300点が入賞、入選した。

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 書写の部で、道内では初となる日本PTA全国協議会会長賞を受賞した金谷さん。小学3年から習字を始め、まだ4年目。水泳にも取り組んでおり、丈夫な体を使って力強く伸びのある字を書く。

 作品は「文化発祥」。金谷さんが川上さんに「大好きな函館に関する文字を書きたい」と相談。川上さんは、ことし5月に制定30周年を迎える「函館市民憲章」の前文「わたくしたちは、北海道の文化発祥の地、函館に住む市民です」から考え、手本を作った。

 金谷さんは夏休みに作品づくりに取り組んだ。まずイメージを膨らませるため、西部地区や五稜郭を訪れ、文化発祥の雰囲気を肌で感じた。「新しくなったタワーから眺めた五稜郭や市内がとてもきれいだった」。文字にかける意気込みが沸いた。

 書いた紙は約100枚。「発の字が難しかったが、優しく教えてくれる川上先生のおかげ。これからも書き続けたい」と喜ぶ。川上さんは「教室を休まず、気持ちを引き締めて書いている。本当に良い結果になった」と評価している。

 両親からは受賞のご褒美として、静岡の授賞式に連れて行ってもらえるという。「全国レベルの作品に触れ、習字の勉強をしてきたい」と目を輝かせていた。

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 伊藤さんの同全国展の入賞は、深堀小でも初めての快挙。伊藤さんはもちろん、友達や学校関係者も喜びに沸いている。

 幼いころから絵を描くことが大好き。作品は同市元町の旧函館区公会堂。昨年6月に行われた同校の写生会で描いた。伊藤さんは「きれいな建物の色合いを表現するのと、バランス取りが難しかった」と話す。

 色は、自身が納得のいくまで多くの絵の具を混ぜ合わせ、完成させた。独特の風合いを持つ歴史的建造物に独自の感性を込め、表現することができた。

 色にこだわるばかりではなく、絵に躍動感を与えようと大胆な筆遣いを心掛けた。母親から受けた「自由にのびのび描きなさい」とのアドバイスを生かし、秀作が生まれた。

 受賞に満面の笑みを見せる伊藤さん。「初めての大きな賞にみんなが喜んでくれてうれしい。今回の受賞でもっと絵を好きになった。これからも絵は続けたい」と創作意欲を見せる。

 同校の和田裕校長は「本人の努力があってこそ。表現が評価されるのはうれしいし、今後の期待も膨らむ」と話していた。


◎臨海研究所、いよいよ開所
 函館市などが推進する国際水産・海洋都市構想の研究拠点となる「函館臨海研究所」(大町13)が、4月に開所する。同構想で市が所有する初の研究施設で、民間が主体となって水産・海洋関係の新技術や新製品の開発研究を進める。また、旧函館ドック跡地に計画している国際水産・海洋総合研究センター整備も、新年度は岸壁改修が本格化。西部地区に水産・海洋研究の施設集積を図る同構想の基盤づくりが、着々と進む。

 臨海研究所は、1926(大正15)年に建造された旧函館西警察署(景観形成指定建築物)を解体し、外観をそのまま復元した「レトロアンドフィーチャー」(古くて未来的)な建物だ。

 1区画約80平方?の研究室は1、2階に各3部屋用意し、月額4万5000円で民間研究機関へ貸し出す。研究室では水産・海洋関係の技術開発や技術の高度化、水産機器や軽食料品の新製品開発などが進められる。

 市内では、北大大学院水産科学研究院や公立はこだて未来大、道立工業技術センターなどで水産・海洋に関する研究が進められているが、大学や研究機関に民間企業が参加する「官主導型」だ。臨海研究所は「民主導型」の研究機関で、行政(市)が研究機関を整備し、民間の力で海洋構想を推進していくタイプ。

 市国際水産・海洋都市推進室は「新技術や研究成果を地域の幅広い産業に結び付け、産業化や起業化、雇用に結び付けるための研究拠点施設」と説明する。

 第1次産業には増養殖技術の応用や未利用資源の発掘、第2次産業には漁具や加工食品の製造、第3次産業では流通技術や産地情報伝達・発信、新商品の販売などを見込み、地域経済全体の活性化を目指す。

 また、旧函館ドック跡地に段階的に整備する国際水産・海洋総合研究センターは「知的人材や研究機関の集積を図る研究拠点基地」(同室)だ。市と協議して東京のコンサルタント会社が作成した報告書では、最短で2006年度から10年度までの5カ年で研究機関の整備を図る。新年度はドック跡地の岸壁改修が本格化する。

 まだ青写真の段階だが、集積を目指す研究機関は、水産庁の水産総合研究センター、北大北方生物圏フィールド科学センターの水圏部門、北大大学院水産科学研究院研究棟、道立函館水産試験場など。市は学会などが開ける会議室や企業向け貸し研究室、短期宿泊施設などを備えた共同利用施設を整備する計画。

 総合研究センターの整備により、各機関に集まる研究者や職員数は130人が見込まれている。国際的な水産・海洋都市づくりに向けた新・函館市の取り組みが一歩一歩進む。

 同室は「海洋構想は市内西部地区に研究施設の集積を図る内容で、新年度はその具現化の第1号として臨海研究所が開所する。総合研究センターは、港湾と一体になった複合的な研究基地づくりで、10年度の一部着工に向けて、関係機関と連携していきたい」と話している。 (高柳 謙)


◎咸臨丸で町おこし、転換点に
 【木古内】町亀川の更木岬沖に沈んだという旧幕府軍の戦艦・咸臨丸で町おこし運動を展開している「咸臨丸とサラキ岬に夢見る会」(久保義則会長)が活動開始から、ことしで4年目を迎える。会員のほとんどが町民という手作り運動は、毎年同岬に植え続けるチューリップが4万個を達成したことで一つの節目となり、“ハードからソフトへ”と、活動の大きな転換点を迎る。5月には満開の花とともに、新設する入り口看板や咸臨丸モニュメント、物産展が、道南各地からの観光客を引き付けるだろう。

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 同会は、隠れたまちの観光資源を掘り起こし、木古内の活性化につなげようと、町観光協会などが中心になり2004年に発足。咸臨丸の生まれ故郷・オランダから贈られたチューリップの植栽を同岬で始め、05年には「咸臨丸まつり」をスタート。昨年は、咸臨丸終えんの碑を設置するなど、活動の幅を広げてきた。

 発足当時に100人余りだった会員は、06年12月には500人を突破。チューリップの球根数も、会費や寄付などから資金を工面し、1年間に1万個ずつ増やしていった。植栽する花壇は、土木・建築会社などを経営する会員の協力を得て拡張。すべての会員が、自分のできる範囲で力を尽くしてきた。

 メーンの活動は、チューリップの世話だ。日常的な水やりなどは、町泉沢に住む港光栄さん(71)がほぼ1人で担当する。球根は、5月中旬ごろに開花した後、夏には掘り起こし、雪が降る前の11月には植え直す。その都度、会員らは忙しい日程を調整して集まり、手作業で土を掘り起こす。昨年11月に4万個を植え終えた久保会長は「咲いた様子はきっと壮観だろう。来年が楽し」とさわやかな表情で語った。

 ことしはさらに、咸臨丸モニュメントやイベント舞台、老朽化した入り口看板の新設に取りかかる。モニュメントは、札幌の会員が寄付したプレジャーボートを会員の西村幸光さん(66)サ町大平、西村造船所社長サが改造。西村さんは雪解けから作業に取り掛かる予定で、「マストを2本立ててロープなどで飾り、咸臨丸そっくりの外観に加工する」と意気込んでおり、5月にはお披露目される見通し。

 さらにことしは、集客アップを狙い、ソフト面の充実に力を入れる計画だ。チューリップの開花時期に合わせた5月の大型連休からのほぼ1カ月間、新企画「サラキ岬チューリップフェア」を開催する予定。町内の商業者らと連携して特産物などを販売し、商業面の活性化にもつなげる。同会や商工会、観光協会の3者で1月に実行委を結成し、具体的な協議に入る。

 チューリップの開花時期は、松前町でさくらまつりが開かれており、自動車で国道228号を通る観光客が増加する。同会は「これまでは通り過ぎるだけの人が多かったが、ことしからは少しでも多くの人に木古内に立ち寄ってもらいたい」と夢を膨らませている。 (小泉まや)