2007年1月11日(木)掲載

◎市交通局、電停の命名権販売、第1号は函館信金が「魚市場通」購入
 函館市交通局は、既存電停名の後に企業名などをつける権利を販売する「ネーミングライツ(命名権)制度」を導入した。電停の副呼称にスポンサー名を盛り込み、同局が発行する印刷物や車内放送などを宣伝媒体に契約企業の周知を図る。第1号として函館信用金庫(大手町2、黒滝啓洋理事長)がこのほど、魚市場通電停のスポンサーに決定。24日から「魚市場通 函館信金本店前」として供用開始となる。

 同局の広告収入は、中づり広告や全面車体広告(カラー電車)などで約4200万円(2005年度)。同制度の導入で、収入基盤の安定を目指す。全国の公営交通機関では、神戸市営バス(兵庫)が一部バス停に同制度を導入しているが、路面電車では初の試みという。

 全26電停が対象で、1年間の契約料は約73万円。3年以上の契約を望み、長期利用には割引制度を適用する。また、契約企業には電停の表示器やベンチ、時計などの利便性を向上させる設備の設置、美化活動など一定の負担を求める。環境整備と副呼称を一体とすることで、企業イメージ向上の相乗効果を狙う。

 契約期間中は電停標柱の表記ほか、車内アナウンスや料金表示器、1年ごとに更新している路線図などの印刷物で企業名入りの電停名が使用されるため、広告効果が期待できる。同局運輸課は「観光マップが付く1日乗車券だけで、年に約20万部発行されている。効果は高いはず」と話す。

 契約第1号となった同信金は「路面電車は函館文化の一つで、地域に根差した金融機関を目指す経営理念に合致する。PR効果とイメージアップにつながると期待している」と説明する。スポンサーの負担として、同電停などに照明灯2基などの寄贈を予定している。

 同局では「利用者の混乱を防ぐためにも全電停名の変更はできないが、電停は函館のランドマーク。長期間の契約をいただければ、市民にも副呼称が定着していくはず。この制度に限らず、新たな形での市電利用も提案してもらいたい」と話している。

 問い合わせは同課TEL0138・32・1731。(今井正一、浜田孝輔)


◎味のネットワーク レトルト加熱する自販機発売
 食品通信販売の「味のネットワーク」(函館市西桔梗町589、構良一社長)は1月末、道立工業技術センター(同桔梗町)、精密機械設計のコムテック(北斗市)と共同開発したレトルト食品自動販売機「Mr.(ミスター)グルボット」を発売する。密封した容器付きのレトルト食品を自販機に内蔵する電子レンジで安全に加熱し、90秒で手軽に味わえるのが特徴だ。

 電子レンジを活用して温かくておいしい食品を提供しようと、約3年前に開発に取り掛かった。同社によると、従来の食品自動販売機は冷凍品を解凍するのが主流で、レトルト商品を温める自販機は全国で初めてという。

 レトルト食品は、密封のままでも容器が破損しないよう、電子レンジ内で加圧するなど特殊な熱処理を施している。常温で約半年持つとされ、内蔵冷凍庫を必要としないためコストの削減にもつながる。

 自販機内の商品は、函館を意識した「いかめし」をはじめ、「鍋おでん」「しゅうまい」の3品を用意しており、道内産の食材を使うことを心掛ける。ビジネスホテルや遊戯場をはじめ、全国のサービスエリアなどに設置を呼び掛けていく予定。

 初年度の販売目標は150台で、価格は195万円。高さ180センチ、幅75センチ、奥行き65センチ。1商品24個の収納が可能で、特許も取得した。商品化の総事業費は約1億円。

 カレーやジンギスカンなどの新商品開発も検討中で、構社長は「できる限り道内の食材にこだわりたい。自販機を通じて北海道のPRになれば」と期待を込める。

 問い合わせは同社TEL0138・50・8700。ホームページはhttp://www.ajinonetwork.jp(工藤康行)


◎桧山スルメイカ水揚げ、過去5年で最高水準
 【江差】2006年の桧山沿岸海域でのスルメイカの水揚げ量は、前年比66%増の9643トン、水揚げ額も同54%増の26億7934万円で、深刻な不漁だった04、05年を大幅に上回り、過去5年間で最高水準に達したことが、桧山支庁のまとめで分かった。

 ひやま漁協(乙部町)の支所別に6―12月の累計水揚げ量を見ると、管内南部では江差1628トン(前年比105%増)、上ノ国543トン(同7%増)、乙部702トン(同159%増)、奥尻1759トン(同21%増)で、江差は05年の2倍超、乙部も6割弱の増加。北部では瀬棚897トン(同増減なし)、大成3495トン(同123%増)、熊石620トン(同57%増)だった。夏にかけて津軽海峡や太平洋岸を回遊するスルメイカの群れが日本海沿岸を北上したほか、秋以降に沿岸を南下する「戻りイカ」も好調で漁獲を大きく伸ばした。

 水揚げ額も漁期の開始から初秋まで、津軽海峡や太平洋岸が不漁だったこともあり、前半は価格が上昇。瀬棚を除く各支所とも軒並み増加した。支所別では、江差4億9891万円(同104%増)、上ノ国1億5075万円(同7%増)、乙部1億9287万円(同159%増)、奥尻4億6445万円(同18%増)、瀬棚2億3056万円(同19%減)、大成9億6666万円(同96%増)、熊石1億7514万円(同51%増)だった。

 06年の1キロ当たりの累計平均単価は前年より22円安い278円、月平均単価は同じく50円安い305円だった。(松浦 純)


◎未来大、スクールバス試験運行
 公立はこだて未来大の鈴木克也教授のゼミ学生らでつくる「スクールバス実行委員会」(碓井健太郎代表)は、函館バス(寺坂伊佐夫社長)の協力を得て、12月から同大と函館市富岡町2の東富岡停留所を結ぶスクールバスを試験運行している。登下校時に合わせて朝夜各3便で、定刻通行が冬季の通学不安を解消している。

 同大を結ぶ路線バスは2系統。冬になると降雪による渋滞などの影響で、最大約40分遅れて到着するなど、講義に遅れる学生が毎年のように出る。このため鈴木教授は昨年9月、同社にスクールバスの導入を提案。「定刻通りの発着」を目指し、碓井代表(4年)と同社営業課の内沢博昭さん(27)がルートを検討した。

 交通量が多い同市本町交差点や電車通り沿いなどを避け、一人暮らしの学生が多く住む富岡・美原地区を通行路とした。コースの実測や交通情勢を把握するなどして定刻性の徹底に努めた。

 運行期間は冬休みや土・日曜などを除く、昨年12月4日から1月31日までの30日間。運賃は区間内一律150円で、同大と東富岡停留所間は従来の路線バスより90円安い。所要時間は20分―25分で、行き5・1キロ、帰り4・6キロ。

 実行委は10日現在、約1200枚のチケットを販売。1、2年生の利用が目立ち、12月19日には、行き帰りの全6便で約80人が乗車した。

 碓井代表は「1日100人の利用を目指して学生に周知していきたい。また、アンケートを行い、ニーズを明確にしたい」とし、内沢さんは「結果次第では定期運行も検討したい」と話している。(工藤康行)


◎音楽協会賞に信田さんら3人
 函館音楽協会(市川須磨子会長)は10日、2006年度の協会賞と奨励賞の受賞者を発表した。協会賞に「函館少年少女合唱団」主宰・指揮の信田誠さん(69)、「函館シルバー混声合唱団」代表の萬田真一さん(79)、合唱指導者の山岸淑子さん(74)、奨励賞には声楽家の次藤正代さんが選ばれた。27日午後6時から市内の函館国際ホテルで授賞式を開き、賞状や記念品が贈られる。

 賞は同市内・近郊の個人・団体が対象。協会賞は過去の実績、郷土の音楽文化向上推進への功績、奨励賞は作曲や演奏活動での実績、郷土の音楽活動の推進力となったことに対して贈られる。1961年度から毎年実施している。

 協会賞の信田さんは教員として長年、学校教育の場などで合唱指導に当たり、声楽家としても活躍。30年間にわたって「函館少年少女合唱団」を率いてきた。萬田さんも教職に就き、学校教育の場や地域社会で合唱指導や演奏活動を行い、67年に「はこだて女声合唱団」、91年には「函館シルバー混声合唱団」を結成した。

 山岸さんは声楽家として、同協会主催のコンサートをはじめ、ソロやアンサンブルでも活動。近年は函館を中心とする6つの合唱団を指揮・指導する。3人それぞれが函館の音楽文化の発展、向上に寄与したことが認められた。奨励賞の次藤さんは音楽教室を主宰し、声楽家として近年意欲的に活動。本年度の同協会主催のコンサートなどで卓越した演奏を披露し、高い評価を得た。

 信田さんは「子供たちが創意工夫して成長する姿や、助け合う姿に感動しながら続けてきたことが、受賞につながった」と喜びを語り、萬田さんは「受賞は新しいことにチャレンジし、やればできるというモットーを掲げ、さまざまな音楽活動をやってきたことに対するもの」と謝意を示した。

 山岸さんは「父からピアノの手ほどきを受け、68年間頑張ってきたことに対し、賞をいただいた。今までやってきたことを積み重ね、楽しく音楽を続けたい」と話し、次藤さんは「とてもうれしい。歌い手として、聴いてくれる方の心の琴線に触れるように歌っていきたい」と気持ちを新たにした。(宮木佳奈美)


◎企画・函館で歩む(5) 山田明弘さん
 国際オリンピック委員会(IOC)が世界のメジャースポーツ30種の一つとして認定するチェス。函館でも子供から大人まで愛好者は少なくない。函館西高校教諭の山田明弘さん(49)は「普及に熱心な人がいる函館から世界に羽ばたくプレーヤーを輩出したい」との願いを込め、昨年6月に函館チェスサークルを発足させた。「全国チャンピオンになる子供を育てたい」と力を込める。

 東京生まれ。高校の時に本格的にチェスを始めた。「勝ちたいという一心だけだった。強敵は少なく、頂点に立てると思った」と振り返る。しばらく競技から遠ざかっていたが、2005年に北海道や全国レベルの大会で優勝。06年4月、同校に赴任した。

 函館では子供から大人まで広く市民が参加するチェス大会がある。かつてこの大会を見学した時、子供の参加者が多いことに驚いた。さらに函館赴任後、チェスに取り組む小学校や幼稚園があることに注目。「子供は覚えるのが早い。力を持っている子を育て、世界で通用するプレーヤーにしたい」との思いが頭をもたげた。自身も前年に全国大会などを制していて、「自分の力があるうちに」とサークルを立ち上げた。

 「集まった子供に全国優勝できる素質のある子がいますよ」と言い切る。実戦的に育て、実力を上げたいが、チェスの教材は英語版がほとんどで、日本語版は初心者か中級者向きばかり。そこで自ら「サークル通信」を作り、次の1手などの教材とした。

 通信では親とのコミュニケーションも図る。「チェスは、日本ではマイナーな競技だが、世界的に認められているスポーツであることを理解してほしい」。マナーを重んじる指導は親から好評を得ている。

 昨年12月には、函館初の日本チェス協会(JCA)公認大会の「第1回函館チェス大会」を開催。子供たちに大会に参加する喜びを知ってもらった。順調に活動のステップアップを踏むが「函館でチェスの普及に努めた函館チェスクラブの高佐一義代表の存在があってこそ。素質のある子がいるのも基盤があったから」と語る。

 高佐さんが生み出した金の卵を育て上げ、全国、世界で通用する実力者にする―。「函館で頑張る子供たちを応援したい」と意欲を燃やし、自身の指導に磨きをかける決意だ。