2007年1月13日(土)掲載

◎日銀函館・冬休み親子見学会 お金の役割楽しく学ぶ
 函館市内・近郊在住の小学5、6年生とその保護者らを対象にした「冬休み親子見学会」が12日、日本銀行函館支店(同市東雲町14、服部誠弘支店長)で開かれた。参加者は、裁断された札などに触れられる体験コーナーや、さいころを使ったゲームを通じ、お金の役割や使い方を学んだ。

 お金に関する知識を深める場を児童に提供し、冬休みの自由研究に役立ててもらおうと初めて企画。午前と午後の2回開かれ、合わせて40組約80人の親子らが参加した。

 日銀の業務を解説するビデオを鑑賞した後、店内の見学・体験コーナーに移動。1億円分と同じ大きさ、重さの札束を持ったり、1万円札の裁断くずで作ったいすに座って写真に収まったりしながら、職員の説明に耳を傾け、懸命にメモを取るなどしていた。

 また、「親子でお金を考えよう!」と題したゲームは、自宅を出発してスポーツ観戦や外食を楽しんで、帰宅するまでに要する金額を予想。さいころで出た目によって、出費額が増えることもあり、結果に一喜一憂するなど、盛り上がりを見せた。

 参加した菊地慎之介君(北斗久根別小6年)は「実際に1億円分の札束を持って、その重さが分かった」と話していた。(浜田孝輔)


◎ポリテクセンター函館 4月に「生産ネットワーク管理科」創設
 雇用・能力開発機構北海道センター函館職業能力開発促進センター(ポリテクセンター函館、函館市日吉町3、鈴木一弘所長)は、4月に新たな訓練科として「生産ネットワーク管理科」を創設する。35歳以下を対象とし、6カ月の訓練期間中に民間企業で1カ月の実習を行い、職務経験を積んでもらう。受け入れる企業にとっては、訓練終了後に即戦力として採用する上での判断材料にできることから、雇用者、被雇用者双方にメリットがある取り組みとして期待が集まる。

 同センターでは、目まぐるしく変化する雇用情勢やニーズに対応するため、カリキュラムの内容などを見直す機関として、5年ほど前に同市内の有識者らを招いて推進協議会を発足。2006年度に開講した6つの訓練科のうち、「住宅サービス科」が、建設業界の低迷や希望受講者の減少などを背景に本年度をもって廃科する方針となり、新たな訓練内容を検討してきた。

 同センターにとって3年ぶりの新設となる「生産ネットワーク管理科」は、IT(情報技術)社会に対応した製造業に関する内容。ネットワークやデータベースの構築、プログラミングなどの開発技術の習得を目指す。1―4カ月は同センター施設内での訓練で、5カ月目は企業に出向いて実習を体験し、最終月は同センターで仕上げの訓練を受ける。

 受講生の募集は15日から2月16日までで、函館公共職業安定所(同市新川町26)で受け付ける。3月2日の面接・筆記試験を経て、同9日に合格者が発表される。定員15人。訓練期間は、4月3日から9月28日まで。

 鈴木所長は「職の定着を目指す若者にとっては、職場の雰囲気を体感できるのは何よりで、優秀な人材を求める企業側にとっても、能力や才能を見いだせる良い機会になるはず。即戦力に近い訓練生を育成し、社会に送り出すことで地域の就職率向上に一役買えれば」と話している。

 申し込み・問い合わせは同安定所職業相談第2部門TEL0138・26・0735。(浜田孝輔)


◎台湾ユニ航空チャーター便 第1便は来月1日
 函館空港への乗り入れを表明していた台湾の立栄航空(ユニ航空)のチャーター便運航概要が、12日までに固まった。第1便は2月1日で、高雄から出発する。2、3月の2カ月間に計57便の発着を予定している。台湾からの函館便参入は、エバー航空、中華航空、マンダリン航空に続いて4社目。

 台湾からのチャーター便は、中華航空が台北―新千歳空港間の定期便を就航させた昨年7月以降、函館空港の利用は減少傾向にある。昨年1年間では649便、9万4620人の利用があった。

 ユニ航空はエバー航空の子会社で、昨年、日本への国際便運航の認可を受け、函館便運航が第1便となる。昨年11月に市や市議会、経済界などでつくる観光客誘致訪問団が台湾を訪れた際、同社から運航計画が伝えられた。同月末には、同社幹部らが視察のため、函館を訪れている。

 同社が使用する機材は約150人乗りとなる予定。出発地は高雄、台北、台中の3カ所。台中から函館への乗り入れは同社が初めて。函館空港事務所によると、2月に39便(到着20便、出発19便)3月に18便(到着7、出発11便)の運航を予定している。(今井正一)


◎初春巴港賑 熱こもる初げいこ
 地元各界の名士が出演する市民歌舞伎「初春巴港賑(はつはるともえのにぎわい)」が本番へ向けて始動した。第29回公演(2月18日、函館市民会館大ホール)は「母と子」が大きなテーマ。涙なしでは見られない感動的な物語を、例年に劣らぬ“演技派役者”たちが、“迷”芝居で盛り上げる。10日に同ホールで年明けの初げいこが行われ、出演者は本番に向け士気を高めていた。

 実行委員会(委員長サ藤岡敏彦・藤岡眼科病院理事長)と市文化・スポーツ振興財団が主催。1973年から始まり、途中4度の休演を経て、復活。今や函館の新春に欠かせない名物行事に。

 ことしも地元の行政、経済、文化、医療、報道など各界から約50人が出演。出し物は戯曲「瞼(まぶた)の母」、時代物「傾城阿波の鳴門『どんどろ大師』」に、定番の「白波五人男」と口上の全4演目。

 「瞼の母」では、演歌歌手高田友恵さんが生み別れた母親を探す忠太郎役を、「どんどろ大師」では、函館子ども歌舞伎の佐藤菜月さん(函館北美原小2年)が母親探しの旅に出る娘お鶴役を、菊地喜久さん(菊地喜久税理士事務所長)が母親のお弓役を演じる。

 「白波五人男」では、初舞台となる寺坂伊佐男さん(函館バス社長)ら5人。口上には井上博司函館市長ら4人が挑む。

 年明けの初げいこでは、「どんどろ大師」の主要役者約10人が集まり、正月に覚えたせりふを本番さながらに披露。市川団四郎さん(歌舞伎役者)と市松与紫枝さん(創劇新舞踊市松流師範)のアドバイスを台本に書き込むなどした。市川さんは「始まったばかり。振り付けはこれから自然と身に付くようになる」と話していた。(佐々木 司)


◎函館地検 キャラクター「はっぴー」“選出”
 函館地検は、裁判員制度の周知などに活用するキャラクター「はっぴー」を制作した。かわいらしいイカが、函館の夜景を表現した星柄の法被を着ている「函館仕様」のデザイン。印刷物に張るなどし、実施まで2年余りとなった同制度の各種広報に利用する。同地検は「函館名物のイカ同様、はっぴーを通じて裁判員制度が広く知られてほしい」と期待する。

 親しみあるキャラクターを生み出して同制度の周知を図ろうと、札幌高検の呼びかけに応じ、札幌、旭川、釧路の各地検が独自に作った。職員約80人からデザインを募り、応募作6点から職員の投票で「はっぴー」を“選出”した。

 考案者は総務課の西田裕行さん(30)。9本の足は3人の裁判官と6人の裁判員で審理・評議する裁判員裁判を、2本の手が検察官と弁護士をそれぞれ表現。法被の夜景は、家々の光が集まる夜景で、皆で力を合わせて実現させる同制度をイメージしたという。

 シールなどにして、配布するプリントなどに張る。市民には、2月に開かれる「はこだて冬フェスティバル」会場での街頭啓発でお披露目される予定という。

 同地検の石井隆次席検事は「はっぴーには皆で真剣に話し合い、適正な裁判を行って、ハッピーな世の中にしようという気持ちが込められている。一目で覚えていただける函館ならではのキャラクターが出来上がった」と話している。(原山知寿子)


◎「函館発オンリーワン」ガゴメ研究の今 (上) 可能性
 「函館にはオンリーワンの都市になれる海藻がある」と北大大学院水産科学研究院の安井肇助教授は語る。その一つがトロロコンブの仲間である「ガゴメコンブ」。特有のぬめりがあり、その成分は健康への効果が高いとされる、フコダインやアルギン酸、ラミナランなどの水溶性粘性多糖類だ。これらを多量に含むガゴメは健康ブームに乗って一躍主役の座に躍り出た。ガゴメを使用した食品やサプリメント(健康補助食品)など、関連商品は100近くを数え、今や函館ブランドの代表格となった。

 ガゴメはトロロコンブ属の海藻で、主な生息地は函館山から南茅部にかけての沿岸。葉に特徴的な凹凸模様があり、長さ2・5メートル、幅40センチ以上と大きく成長する。長い間、だしも取れない「マコンブの邪魔もの」扱いされてきたが、安井助教授は早くから有用性に着目し、その価値を知らしめた。

 諸成分の研究も進められている。フコイダンを投与したマウスに、人のがん細胞を植え付けた実験では、半数以上のマウスのがん細胞が消えたり、増殖作用を抑えたりする効果が確認できた。アルギン酸は血圧を抑制し、フコキサンチン(海藻油)には肥満を抑える効果があるとされる。

 メタボリックシンドロームなど、今後、生活習慣病予防への活用も期待される。安井助教授は「がんに強い傾向は分かっている。今後さらに研究を深め、人にも効果があることを実証するのが課題」という。

 研究の中核は北大大学院水産科学研究院と道立工業技術センターが、文部科学省の補助を受けて進めている都市エリア産学官連携促進事業。2003年度から「一般型」、06年度から「発展型」でガゴメを含む、水産・海洋分野の多岐にわたる研究を行っている。民間企業も50社以上が参入し、さまざまな分野で“函館の未来”を生み出そうとしている。

 「インターネットでガゴメを検索すると、たくさん取り挙げられている。今まではあり得なかったこと」と安井助教授。同事業ではガゴメを生かした、カレーパンや黒酢などの食品、石けんや化粧品などの商品化も進み、全国に浸透させようとしている。

 安井助教授は「海の宝を保全しながら、人の健康にも貢献していく函館型の産業スタイルをつくり上げることが事業の目的。その利益を常に市民や道民に還元していけるようになれば」と期待する。

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 豊富な水産資源を有する函館市。その中で脚光を浴びるガゴメコンブは、函館から世界に通じる技術や産業を生み出す可能性を秘めた素材として注目を集めている。ガゴメを取り巻く現状と、海藻研究の可能性を紹介する。(今井正一)



◎企画 函館で歩む(7)落合良治さん
 函館市時任町で約35年間、国内外の美術品を扱ってきた「はこだてギャラリー」の落合良治社長(59)は、美術品販売を通じて函館のさまざまな姿を見てきた。「ことし還暦を迎える。これまでに函館から受けたもので、函館に恩返ししなければ」と話す。

 新潟生まれの両親は、樺太でニシン漁を営んでいた。生まれる前の1945(昭和20)年、家族が樺太から引き揚げようとした際、兄が風邪をひき、予定していた船をキャンセル。その船はは旧ソ連の潜水艦に撃沈された小笠原丸だった。「生まれる前から何かに導かれる運命にあったのかもしれない」

 同市新川町で生まれた。子供のころ、近くにあった古美術品販売店にある、アイヌ民族やロシアの珍しい美術品にひかれた。函大付属有斗高校在学中は、地元の産業、歴史に興味を持った。学校や課外活動で函館の歴史や文化、産業を教わったのは称名寺住職の須藤隆仙さんや函館ハリストス教会の前神父、故厨川(くりかわ)勇さんら。函館を愛し、函館での活動に情熱を注ぐ人との貴重な巡り合いだ。「生の函館物語を聞くことができ、幸運だった」と振り返る。

 19歳の時、ハリストス教会の洗礼を受けた。教会から美しい函館の風景を眺め、街への尽力に情熱がわき起こった。72年にギャラリーを創設。東京で地域の青年が集まり、さまざまな活動をしているのを参考に、函館市青年サークル協議会や市青年センター設立に力を注いだ。「いろいろな人の後押しや協力があった。一人ではなくグループであれば何でもできる。今も同じなのではないか」と力を込める。

 北洋漁業が盛んなころから時代は変わり、函館から活気が消えていった。移ろいゆく街を見ると、以前に学んだことを思い出す。「函館は幕末から明治時代、高い志を持って本州から来た人や、地元で事業を起こした人の力が結集した。そうした人の力と知恵で発展した町。そんな底力ある函館が衰退するわけがない」

 仕事で全国を飛び回る中、団結して再生を果たした地域も見てきた。「函館も一旗揚げようと志した人の意思をもう一度学び、原点に戻る必要があるのでは」と訴える。

 還暦を迎えることし、函館で学び、受けた恩恵に報いる活動を模索する。「これまでの道のりは、多くの導きがあったからこそ。函館再生の手助けになることが、今の仕事にもあるはず」。街の足跡を知る一人が静かに動き始める。