2007年1月21日(日)掲載

◎農協1億円盗難 逮捕の元課長自宅近くから現金9000数百万円…犯行への関与認める
 顧客から現金をだまし取ったとして、詐欺の疑いで逮捕された函館市亀田農協本店(函館市昭和4、山岸栄一組合長)の元金融部の男性運用課長(57)が、同本店で昨年12月、現金約1億円が盗まれた事件に関与していたことが20日、函館中央署の調べで分かった。同署は同日朝、元課長方を捜索し、近くの畑の中に埋められた現金九千数百万円を発見。同署は、同本店金庫室から盗まれた1億円の大半とみて窃盗容疑についても追及し、容疑が固まり次第、再逮捕する方針。

 調べによると、元課長は19日夜の取り調べで、同市内の女性顧客(78)からだまし取った現金150万円の返済方法について「亀田農協の金庫から盗んだ金の一部を(被害者への)弁済に充てた」と自供。同署は20日午前7時40分ごろ、元課長立ち会いの下、自宅に隣接する親類の敷地内を捜索したところ、建物裏にある畑地の深さ約30センチの中から三重の袋に包まれた現金を発見した。

 現金は紙製の米袋(10キロ)を二重のビニール袋で包んだ状態で見つかった。1万円札、5000円札、1000円札があり、同農協の帯封が付いたままの束や、バラバラになった紙幣も含め、九千数百万円が入っていた。袋の上には約10センチの土がかけられていた。

 同署が元課長の借金の支払い額と収入の矛盾点を追及したところ、1億円の窃盗容疑について認め、「(自宅近くの)土の中に埋めた」と供述。動機については「借金を返済するため」と話しているという。

 1億円が盗まれた同農協の金庫室は、四重にロックされていたが、すべて鍵やダイヤル番号を使って解錠され、警報装置も作動直後に解除されていた。同署はこれまで、内部犯の可能性が高いとの見方を強め、職員を中心に事情聴取を続けていた。元課長は当初、1億円盗難事件への関与を否定していた。

 同署は、元課長が借金返済などのために、1億円を盗み出し、自宅近くに埋めたとみて、詳しい犯行の手口や現金の運搬方法などについて裏付け捜査を進めている。さらに、現金の使い道や詳しい動機についても追及している。


◎定数34に37人名乗り…市議選旧函館市区
 任期満了に伴う函館市議会議員選挙(4月15日告示、同22日投票)は、旧函館市選挙区(定数34)と合併旧4町村にそれぞれ選挙区(各定数1)を設け、38議席を争う。このうち旧函館市区には20日までに現職27人、元職3人、新人7人の計37人が出馬の意向を示しており、このままでは落選が3人だけという「超少数激戦」の様相となっている。

 前回は定数34に対し43人、前々回は定数36に対し47人、その前は定数40に対し45人が立候補している。今後、新たな候補が名乗りを上げることも想定されるが、「過去にないほどの新味に欠ける選挙」(複数の市議や政党関係者)だ。

 今期限りで引退を表明しているのは、民主系の岩谷正信氏(63)と熊坂成剛氏(71)、自民党の久保幸一氏(73)、公明党の中江捷二氏(64)、保守系無所属の上谷俊夫氏(65)の5人で、いずれも当選5―6回のベテラン。昨年1月の道議函館市区補欠選挙への出馬で2人が辞職しており、現職では残る27人の出馬となる。

 元職3人はいずれも保守系無所属で、2人は道議選出馬、落選からの返り咲きを目指す。

 新人7人の内訳は民主系4人、保守系無所属1人、公明1人、共産1人。

 2003年の前回選挙では定数34に対し、現職33人、元職2人、新人8人の計43人が立候補し、現職4人が落選、新人5人が当選した。今回は定数34に対し現職が27人で、「現職のほとんどが堅いのでは」とみる関係者が多く、元職や新顔も相当数が当選しそうだ。

 市議選と同じ日程で函館市長選も行われる。現時点で出馬を表明しているのは、現職の井上博司氏(70)だけ。

 民主党は独自候補の擁立を見送る見通しで、共産党は関係団体とともに擁立を目指しながらも「対応を検討中」(党函館地区委員会)。井上氏の市政運営を批判し昨年末に助役を辞職した西尾正範氏(58)も「市政の刷新が必要」と候補を模索しているが、擁立には至っていない。市長選が盛り上がりを欠き、仮に無風となれば市議選の投票率にも影響が出そうだ。(統一選取材班)


◎トラブルなく1日目終了…大学入試センター試験
 2007年度の大学入試センター試験が20日、全国一斉に始まった。道南では、函館市内の北大水産学部、道教育大函館校、公立はこだて未来大学の3会場で行われ、受験生は志望校合格を目指し、第一関門に挑戦した。

 このうち、北大水産学部では午前8時半から、受験生が父母らの運転する車などで次々と会場入り。試験場前で高校教員らから声援を送られた受験生は、会場内でも参考書などを開き、最後まで復習を繰り返すなどしていた。

 試験は午前9時半から公民がスタート。同会場の志願者368人のうち58%に当たる215人が試験に臨んだ。同日は公民のほか地理歴史、国語、外国語が行われ、各会場とも大きなトラブルはなく、1日目の日程を終了した。

 大学入試センターによると、本年度の全国の志願者は55万3352人で、道南では1256人。

 21日は理科、数学の試験が行われる。(笠原郁実)


◎北高吹奏楽局OB会がフェアウェルコンサート
 新年度、函館東高校と統合し市立函館高校となる函館北高校の吹奏楽局卒業生で構成する函館北高校吹奏楽局OB会(高橋英雄会長)は20日、函館市芸術ホールでフェアウェルコンサート(函館北高校さよならコンサート)を開いた。卒業生と在校生総勢147人による“北高サウンド”が場内に響き、満員の会場からは最後の公演を惜しみ、大きな拍手が送られた。

 同局は1966年、寺中哲二前顧問の下、部員17人でスタート。72年、マーチング・スクールバンドモデル校に指定されるなど特色ある活動を展開してきた。75年から宍戸雄一教諭が顧問を務めている。道吹奏楽コンクールや高文連マーチング全道大会などに出場するほか、定期演奏会も続けている。

 コンサートは「(統合前)最後に一緒の舞台を作り上げたい」という宍戸顧問の思いをOB会がバックアップ。札幌や東京などからも卒業生が駆け付け、昨年11月から本格的な練習を行ってきた。

 演奏に先駆け、高橋会長(68年卒)が「着実な歩みを続けたという自負やプライド、卒業しても強い結束を見てほしい。長く心に残るコンサートにしたい」とあいさつ。校歌がオープニングを飾った。

 高校生、卒業生、共演の3部に分かれ17曲を披露。スカイブルーのユニホームを着た高校生はお気に入りの3曲を、卒業生は寺中前顧問や宍戸現顧問の思い入れのある曲など4曲を演奏した。卒業生によるステージドリルも行われた。

 3部はジャズピアニストの宮永正良さんをゲストに迎え、マンボや映画のテーマ曲などで会場は大いに盛り上がった。ラストの「蛍の光」を指揮後、宍戸顧問は全メンバーに拍手を送り、会場・ステージからはハンカチで涙を抑える姿が見られた。(笠原郁実)


◎唯一無二の歴史性大切…産業遺産保存シンポ 大型クレーンの価値確認
 第3回函館市産業遺産保存シンポジウム(ゴライアスクレーンを守る会、北海道産業考古学会主催)が20日、函館市内のホテルで開かれ、市が撤去を決めている旧函館ドック跡地の大型クレーンの価値を再認識した。基調講演した文化庁文化財部の江面嗣人主任文化財調査官は「唯一無二の歴史性や個性を大切に、自分のまちの品格や歴史性を再確認することが必要」と述べた。

 守る会の運動が2年目を迎え、石塚與喜雄会長が「函館にある郷土の大切な遺産を深く認識し、意味をただしたい」とあいさつ。約60人が出席し、江面氏が「産業遺産の保存と観光・まちづくりについて―近代化遺産の保存と活用」と題して講演した。

 江面氏は近代化遺産について、幕末から第2次世界大戦前までに近代の手法で建設され、国の近代化に貢献した産業施設や土木施設、と説明。文化財について「京都では指定や登録がされないものも、北海道ではなるという地方的特色も基準になっている」と述べた。

 また、文化財保護法は文化財の保存と活用をうたっており、特に活用していくことが大事であると強調。私見として「国民が文化財の価値を享受し、多くを学び、高度な精神性を獲得するために文化財の活用がある」と説明した。大型クレーンに関しては「皆さんが議論して考えることで、函館を文化あふれるまちにしてください」とエールを送った。

 このほか、旧国鉄士幌線のコンクリートアーチ橋の保存活動に携わった十勝管内上士幌町の竹中貢町長らによる課題報告や、江面氏や石塚会長ら参加してのシンポジウムを行い、大型クレーンの保存・活用に向けて意見交換をした。(高柳 謙)