2007年1月4日(木)掲載

◎企画「新天地 函館で(1)」
 昨年4月にふるさとの石川県金沢市を離れ、第2の人生を歩み始めた曽山哲夫さん(59)、登美さん(57)夫妻。哲夫さんは、趣味の作曲・編曲活動をはじめ、読書やタップダンス教室に通い、時間にとらわれない新生活を満喫している。「地位、名誉を全部捨てて、残りの人生を楽しむために来た」と語る。

 哲夫さんは昨年3月まで金沢市で小学校の校長を務め、体調面を考慮し、2年早めて退職した。「最後の小学校では3カ年計画を立てて児童の学力向上に努め、登校拒否やいじめのない学校をつくり上げることができた。やれることはやったので、悔いなく第2の人生に踏み切れた」と振り返る。

 函館を移住先に決めた理由は、何よりも長男武士さん(33)夫妻の存在だ。「息子が面倒を見ると呼び掛けてくれた。近くに住んでいるので不安もなく、引っ越しもスムーズに進んだ」と話す。

 車の交通マナーの悪さにビックリしたと言うが、函館の印象は「教育施設が整っており、市民のボランティア精神も高い。食べ物も生鮮品が新鮮で、おいしくて安い」と驚いた様子。

 夫婦で散歩をするのも日課。「コースも豊富で、山や海も近くにあり、少し歩けば函館の景観を見渡すことができ理想的。中でも秋の香雪園は、鮮やかに彩られ、金沢の兼六園よりも見事な紅葉だった」と感激しきり。

 また、全国を旅しようと、移住と同時に長年の夢だったキャンピングカーを購入。昨年は、5月から9月にかけ、道北から中国・四国地方を旅行。「大好きな映画『男はつらいよ』のロケ地巡りをはじめ、子どもや親友に会いに行った。旅先で出会う地元の人とのふれあいも魅力の一つ」と漫遊の旅をエンジョイする。

 登美さんも「気候が合っており、観光気分が抜けない。子どもたちも『親が居るところがふるさと』と言ってくれたことがうれしかった」と笑みを浮かべる。

 移住するには「築いた人間関係を断ち切り、離れる寂しさはあるが、決断が大切。一方でそこで何をしたいのか計画を立てないといけない」とアドバイスを送る。また、函館での移住については「家族連れなら最適な場所。だが、移住にこだわらず、交通体系を整えれば、本州から多くの人が訪れ、にぎわいを見せる」と分析する。

 夫妻のことしのスケジュールは「キャンピングカーでまだ訪れていない道東と九州の旅を計画している。このほか、近所の方のご好意で畑を借りることができたので、トマトやキュウリなどを作りたい」と夫婦円満に新たな地できずなを深めている。

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 団塊の世代の退職が、いよいよ始まる。函館市をはじめ全国の自治体が退職者らの定住・移住に力を入れている中、ひと足先に函館に移り住んだ市民の実体験を通し、今後の移住促進に向けて何が必要かを探る。(工藤康行)



◎五稜郭タワーの年間搭乗客数/きょうにも創業以来初の100万人
 五稜郭タワー(中野豊社長)の本年度(2006年4月―07年3月)の搭乗客数が、1964年の創業以来初めてとなる100万人台突破に向けて、着実に数字を伸ばしている。3日の営業終了時点での搭乗客数は、99万9632人。帰省客や観光客で人出の増える年始に、1日あたりの平均で約2500人が利用していることから、4日午前中にも達成されそうだ。

 同タワーは、現社長豊氏の父である中野真輔氏が、五稜郭築城100年にあたる64年の12月1日に開業。高さ60メートルのタワーには、地上45メートルに位置する展望台を備え、特別史跡五稜郭の星形を眺められることから、函館の新たな観光名所として市民や観光客から脚光を浴びた。

 初年度は、4カ月間で3万1190人が利用。初の12カ月間通しての営業となった65年度は15万9822人に上り、66年度に20万人台、73年度に30万人台、82年度に40万人台と段階を踏み、87年度には一気に60万人台を突破。函館観光の目玉としての地位を確固たるものにしていった。

 また、90年度には搭乗客数の累計が1000万人を超え、92年度には、過去最高となる93万9273人を記録した。その後、バブル崩壊や国内外観光地との競争激化などで低迷が続いたが、同タワーの創業40周年を機に、タワー建て替え構想が浮上。04年11月に総工費30億円を投じて着工し、旧タワーは40余年で2223万8626人に利用され、その役目を終えた。

 約1年半の工期を経て、昨年4月に生まれ変わった新タワーは、避雷針の最頂部が107メートル、展望台が地上からそれぞれ高さ86メートル、90メートルの2層構造で、最大500人を収容。同月は7万8925人が利用し、翌5月には92年8月に記録した15万5人を大きく上回る18万3774人と月間過去最高記録を更新すると、10月まで6カ月連続で月間10万人台を保った。

 また、12月上旬には92年度に記録した年間最高の搭乗者数を更新。同月末時点で99万1701人を数え、年明けの搭乗者は1日あたり約2500人で推移していることから、100万人台突破は時間の問題となった。

 中野社長は「いつもとは違う慌ただしい年となった。新タワーは物珍しさも手伝って、市民を中心に多くの人に評価してもらったが、1度ならず何度でも足を運んでもらえる施設にしていけるよう、2年目以降が勝負」と話している。(浜田孝輔)


◎古里への別れ惜しみ/Uターンラッシュピーク
 年末年始を古里や観光地で過ごした人たちのUターンラッシュが3日、始まった。JR函館駅や函館空港は一日中混雑し、両手いっぱいに土産物を抱える乗客や、見送りの家族や友人たちと別れを惜しむ帰省客らの姿が見られた。

 函館空港はこの日、羽田行き全7便が満席となったほか、名古屋行きの1便も予約で埋まった。JRは日中から夕方にかけて、札幌行きの特急列車の指定・自由席ともに満席となった。このほか函館と青森などを結ぶ東日本フェリーや札幌行きの高速バスも混雑が見られた。

 函館空港では、朝から両手に手土産やバッグを持った乗客らで込み合った。搭乗時間が近づくと入り口付近には人だかりができ、ロビーのガラス越しにある内線電話で別れを惜しんで話し込む姿も見られた。関西の高校に通う長女を見送った市内の廣正真理さん(40)は「(娘は)部活動や学業の忙しさから解放され、落ち着いた正月休みになりました。また春ごろに元気に帰ってくることを楽しみにします」と手を振った。

 JRや航空各社によると、7日まで混雑が見込まれる。空の便では羽田行きの満席が続き、列車については札幌行き、本州行きの特急列車は予約でいっぱいという。(佐々木 司)


◎正月三が日/各所、市民どっと
 函館・道南地方の正月三が日はおおむね穏やかな天候に恵まれ、市内の神社にはたくさんの初詣で客が訪れ、デパートや量販店には、初売りやバーゲン目当ての買い物客が繰り出した。また、観光スポットには帰省客や観光客が大勢足を運び、ボウリング場などの娯楽施設も正月休みを楽しむ人たちで混雑。多くの施設が、昨年を上回る人出でにぎわった。(原山知寿子)

■神社

 道南で最も多くの初詣で客が訪れる函館八幡宮(函館市谷地頭町)は、三が日の人出が例年の7万人を上回った。参道の行列は1日午前2時ごろをピークに日中も続き、破魔矢の売れ行きも昨年以上。「2300本用意したが、2100本以上が売れた」という。

 湯倉神社(同市湯川町)でも、「参拝客の数は正確にはカウントしていないが、例年の2万3000人は超えた」。天候に恵まれたせいか、日中に訪れる人が特に目立ったといい、初詣で客の行列は午前中から夕方まで続いたという。

■観光施設

 リニューアルオープンから最初の正月を迎えた五稜郭タワーも、大勢の観光客などでにぎわった。3日間の来場者は1日当たり2500人を超え、2日の2672人は昨年の2倍。「五稜星(ほし)の夢」のライトアップ目当てに、夕方に訪れる人も多かったという。

 穏やかな天候に誘われ、“視界良好”な夜景を楽しもうと、函館山ロープウェイの人出も好調だった。1、2日とも例年並みの各約4300人以上が搭乗、ことし初めての夜景観覧を楽しんだ。「天候が良かったので、夜景もよく見えていた」(同社)。

■初売り

 デパート・大型店も大勢の人でにぎわった。デパートでは2日の初売りに合わせて冬物バーゲンもスタート。棒二森屋(同市若松町)では、「暖冬で冬物の売れ行きが鈍く、品ぞろえが豊富なことも奏功し好調」。全館で約8000個用意した福袋も、婦人、紳士服ブランドを中心に人気を呼んだという。

 丸井今井函館店(同市本町)は、2、3両日とも、入店者、売り上げが前年比約2割アップ。大規模改装後初めての「初売り」だったが、改装フロアの婦人雑貨、バッグなどのほか、若い女性向けの服飾ブランドなどで売り上げを伸ばした。「幸先がいいスタート。この調子が続いてほしい」と願う。

■娯楽施設

 ボウリング場のスターボウル(同市昭和、ホテルオークランド内)でも、例年より1割以上の人出。「1、2両日で2000人以上が来場した」。2、3日の午後は全40レーンがすべて埋まり、2日午後から夕方までのピークには、最大で2時間半待ちと大盛況だった。

 ボウリング場、ゲームセンターなどを備えた、パボッツ函館(同市梁川町)でも、若者グループなどでにぎわった。ボウリング場は3日午後も、24レーンすべてがいっぱいになり、待ち時間が出た。ゲームセンターも家族連れでにぎわった。


◎蓴菜沼のワカサギ釣り 9日に延期
 【七飯】4日に今季のオープンを予定していた蓴菜(じゅんさい)沼(七飯町西大沼)のワカサギ釣りが、9日に順延となった。昨年末から続く暖冬の影響で氷が固まりきらず、運営する大沼漁協(宮崎司組合長)は「氷は張っているが、安全を第一に考え、順延を決めた」としている。

 函館海洋気象台によると、昨年末は11月下旬から12月上旬の気温で推移し、3日も最高気温が4・3度まで上がり、平年を上回った。4日以降も暖かな天候が続くという。同組合は「このまま氷が固まってくれれば9日に営業できるが、当日の氷の状態で再度判断したい」と話す。

 同沼のワカサギ釣りは2000年からオープン。同漁協が釣りざおや餌などを用意し、家族で楽しめるレジャーとして人気を集めている。毎年1月4日から3月上旬まで営業しているが、順延したのは2004年の1月5日にオープンした時以来。(鈴木 潤)