2007年2月16日(金)掲載

◎雪崩や山岳遭難事故想定 道警函本が救助訓練
 【七飯】本格的な融雪期を前に、道警函館方面本部は15日、七飯町東大沼の函館七飯スキー場で雪崩や山岳遭難事故を想定した救助訓練を行った。青森県の八甲田山系では14日、死傷者の出る大規模な雪崩事故が起きたばかり。参加者は有事に備え、真剣な表情で訓練に臨んだ。

 訓練は、冬山への登山者が雪崩に巻き込まれ、救助を必要としている―という想定。道警函本管内の警察官でつくる特殊部隊「山岳遭難救助隊」の隊員8人が参加した。

 隊員は電波を受信することで居場所を知る「ビーコン」を使い、「大丈夫ですか。誰かいませんか」と声を掛けながら遭難者を捜索。「ゾンデ棒」と呼ばれる長さ約4メートルの細い金属棒を突き刺し、地面の感触を確かめながら雪に埋もれたバッグを見つけ、懸命にシャベルで掘り起こした。

 また、スノーモービルによる救助者の搬送訓練も実施。ロープでくくり付けられた簡易担架の左右と後方にスキー板を着用した隊員3人を配置し、急な斜面やカーブでも安全に運ぶ要領を確認した。

 視察に訪れた函館方面公安委員会の外山茂樹委員長は「八甲田山の事故のように、災害は忘れたころ、考えられないような状況で発生する。いざという時のために常日ごろから訓練に励んでほしい」と話していた。(森 健太郎)


◎函館市立3病院の健全化策/医師、看護師を増員
 函館市病院局は函館、函館恵山、函館南茅部の市立3病院の「当面の健全化策による収支計画」案をまとめた。診療報酬が高くなる看護体制の導入に向け、看護師を増やすほか、医師の増員で診療体制を強化し、患者確保と増収につなげる考え。2008年度には、単年度での黒字転換を目指す。

 同計画は07年度から2、3年程度の短期的な改善方策。同局によると、当初は中長期的な視点で策定する予定だったが、医療制度改革や診療報酬の改定など、医療を取り巻く目まぐるしい変化に臨機応変に対応できるよう、短期的な方策の検討を優先させた。

 (1)経営意識の醸成と意識改革(2)組織機構の見直しと人材の確保(3)収益安定のための増収対策等―など8つが柱。

 増収対策9項目。具体的には函館病院の看護師を50人増やし約520人とし、入院患者に対する看護師配置を現在の「10対1」から、診療報酬が高くなる「7対1」とする。このほか、先端医療の提供や地域の民間病院・診療所との連携促進、検査体制の強化などが盛り込まれた。

 また、組織機構の見直しと人材確保のため、医師定数を20人拡大して100人規模にする。嘱託医を正職員とし、医師の定着や欠員のある診療科の補充に努めるほか、休診している産科の再開、リハビリテーション科の開設などで診療内容を充実させ、医業収入の増収を図る。住民に分かりやすく、来院しやすい病院となるよう広報活動にも力を入れる。

 3病院の06年度決算見込みでは約13億円の赤字。他会計からの繰り入れで同年度までの累積赤字は約12億円に。当面の策を講じた結果の試算では、08年度は1億9800万円の黒字に転換する見通しだ。

 今後は道の療養病床の取り扱いについての調査結果を踏まえ、療養病床を抱える恵山、南茅部病院の在り方を含む3病院の抜本的な経営改善策を検討する方針。(宮木佳奈美)


◎函館市、本年度分奨学金の返還率85%
 函館市が実施している高校生や大学生、専修学校生への奨学金の返還率が、本年度分で約85%にとどまっている。市は毎年約4000万円の枠を設け特別会計で実施している貸付事業を、約2億円の基金による運用に転換する方針だが、現在の貸付額と滞納がこのまま続けば、15年から20年で基金が底を突くとみられている。

 15日の市議会総務常任委員会(板倉一幸委員長)に市教委が報告した。

 無職や失業などを理由とした奨学金返済の滞納は、日本学生支援機構(旧日本育英会)でも問題となっている。

 市は1951年から奨学金制度を設け、事業を実施している。市教委によると、奨学金の月額は公立高校生の1万円から私立大学生の1万9000円まで幅があり、返済期間は貸し付けた翌年から最長で15年間。

 ただ「残念ながら滞納が増えている」(市教委学校教育部)といい、93年度からは奨学生に連帯保証人を付けてもらっている。滞納者には督促状や催促状を郵送しているが、あて名不明で戻ってくるケースもあるという。連帯保証人への請求は、最長返済期間の15年間が経過していないため、実施していない。

 最も古い滞納は63年に貸し出し67年に卒業した大学生で、79年まで返済が続いたが、全額19万2000円のうち未納が10万2400円となっている。2005年度までの累積滞納額は約2800万円という。

 市は奨学金事業への寄付金や旧4町村から引き継いだ奨学基金を原資に約2億円の基金を造成し、継続して年間約4000万円の枠で事業を続ける方針。条例改正案を2月議会に提出する。

 同部は「基金を運用して収益を上げる果実型の基金となる。返済金を回転していく事業なので、すべてを返してもらいたいが、実情はそうではない」と説明した。(高柳 謙)


◎函病で「コンピューター」終日停止
 市立函館病院(港町1、長谷川正院長)で15日、検査・処方などの情報を診療科などの関連部門へ伝達する「オーダリングシステム」のコンピューターがほぼ終日停止し、外来患者約1200人の診療に影響が生じた。

 同病院によると、故障したのは、診療科の医師らのパソコン端末に患者の情報を伝えるコンピューターシステム。同日午前8時ごろ電源を入れたが稼働せず、同11時ごろに10分程度、一部復旧したが再び停止した。16日までに復旧する見通し。

 この障害で、内視鏡やエックス線検査などの検査結果のデータ分析や送信が不能となり、診察や処方が少なくとも1時間は遅れたという。午前中はデータを手書きして対応したが、時間がかかるため、午後からは患者に予約を変更してもらうなどして対処した。

 同システムは同病院が移転・新築した2000年に導入。昨年6月にも同様の故障で約2時間停止し、一部の患者に影響が出た。同病院はシステム管理を委託している会社を通じ、原因究明を急いでいる。

 同病院は「診療が遅れ、予約変更になるなど、大変申し訳ない」と話している。(宮木佳奈美)


◎江差町 人件費5%削減へ
 【江差】江差町と町職員労働組合は14日、危機的な財政再建策の一環として、新年度から職員人件費を約5%削減することを盛り込んだ人件費抑制策について合意した。基本給や各種手当の削減で総額約4600万円の歳出抑制効果を見込んでいる。

 町総務政策課によると、新年度からの基本給と期末手当の削減は全職員が対象。基本給は2%、期末手当は0・45カ月分を削減する。管理職手当も支給率を役職に応じて3―4%にカット。期末手当の役職加算率も見直す。

 一連の人件費抑制策で、07年度当初の在籍職員数を基準とした歳出削減額は、約4600万円に上る。人件費全体の削減率は約5%になるという。

 町は歳出抑制に向けて2004年度、全職員の基本給を2%削減。さらに05年度には基本給を課長職―係長・主査が5%、一般職員は3%を追加措置として減額した。管理職手当は04年度に2%削減したのに続き、05年度には支給額を2分の1に圧縮した。

 同町は新年度、町長、助役、教育長の3特別職と町議会議員の報酬についても5%減額する方向で検討を進めている。 (松浦 純)


◎公立高校入試出願変更後状況、函中部1・4倍に下がる
 道教委は15日、2007年度公立高校入試の出願変更後の状況を発表した。函館中部の出願者が13人減少し、倍率も1・5倍から1・4倍に下がった。道南普通科で最も倍率が高かった七飯は出願者の減少が3人にとどまり、倍率は当初と同じ1・8倍のままだった。

 出願者数は渡島管内の全日制で1人減って3345人。同管内の定時制と桧山管内はともに変化がなかった。

 渡島・桧山管内で1月29日発表の当初倍率から変動があったのは、4校8学科。このうち道南の職業科で最も倍率が高かった函館工業電子機械科は11人減り、倍率は1・9倍(当初比0・3ポイント減)、同電気科は12人減の1・8倍(同0・3ポイント減)。一方、同工業化学科は12人増え、倍率は1・7倍(同0・3ポイント増)、環境土木科も9人増やし倍率は1・4倍(同0・2ポイント増)となった。

 全日制普通科は函館西が9人、函館稜北が2人、上磯が3人増えたが、いずれも倍率に変わりはなかった。

 最終出願状況は、推薦入試不合格者らの再出願後の3月1日に発表。学力検査は同6日に行われる。(笠原郁実)


◎ラサール高環境問題研究会が温暖化防止訴えるサンドメッセージ
 函館ラ・サール高校の環境問題研究会(曹平会長、会員10人)の会員と有志計12人は15日、函館市内の大森浜に温暖化防止を訴えるサンドメッセージを描いた。激しい風雪の中、約3時間の作業で完成させた。砂浜に「KYOTO79」(縦3・5メートル、横24メートル)の巨大なメッセージが浮かび上がると、参加者は手をつなぎ「防止対策の本格化を」などと訴えた。

 「京都議定書」の発効2周年を迎え、メッセージを見た一人ひとりに「身近な問題」として考えてもらいたいと、同部顧問のピーター・ハウレット教諭らが中心となり企画した。議定書では2008年から4年間に温室効果ガス排出量6%(1990年比)削減を目標値として設定。だが、03年までに8%の増加があり、12年までに実質14%の二酸化炭素の削減が必要という。

 また、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書によると、地球温暖化対策を本格化させない場合、2100年に予想される海面上昇は18―59センチという。グリーンランドと南極の氷の解け方からさらに10―20センチの上昇も可能とし、最大79センチ上昇する可能性を示唆した。

 79センチ上昇した場合、100年後には消えてしまう可能性がある大森浜で、生徒は環境負荷のない砂の塊(直径30センチ)を100個以上作り、文字を形作った。中国出身の曹会長(2年)は「日本の取り組みを見て、環境の大切さを実感した。目標値を達成するため小さなことから取り組みたい」と話していた。(笠原郁実)