2007年2月20日(火)掲載

◎「がん診療拠点」に指定…函病・道南初
 市立函館病院(長谷川正院長)が、道南で初の「地域がん診療連携拠点病院」に1月31日付で国から指定された。地域で質の高いがん医療を提供する中心的な役割を担う。日常医療圏となる渡島・桧山管内の民間病院・診療所との地域医療連携、患者や住民への情報提供を積極的に推進し、地域全体の治療レベル向上を目指す。

 「拠点病院」は国が2002年度に制度化。がんの医療技術の地域格差を是正し、全国どこでも高水準の治療が受けられるようにするのが狙い。指定には、地域の医療機関との連携や緩和医療の提供など診療体制、医療施設、情報提供体制などの要件がある。

 知事の推薦などを基に厚生労働相が指定し、4年ごとに更新される。生活圏で比較的高度な医療サービスが受けられる範囲で分けた地域単位「2次医療圏」に、最低1カ所を目標に整備する方針。2月現在、全国で286病院、道内は21医療圏のうち、9医療圏10病院が指定を受けた。

 同病院は「地域病院の役割を積極的に果たしたい」との考えで、03年度から名乗りを上げていた。がんの治療成績が公表される「院内がん登録」をはじめ、緩和ケアチームの発足、セカンドオピニオン(主治医以外の医師に意見を聞く)外来やがん相談支援センターの開設など、すでに拠点病院の機能を備えており、指定によりお墨付きを得た。

 今後は、同病院自らの診療レベルを高めていくほか、他の医療機関との連携で、地域全体のがん治療に関する情報を集約して共有し、患者だけでなく住民に情報提供する。また、地域の医療従事者を対象にした研修や指導も、医師中心から看護師や薬剤師にも対象を拡大して取り組む。

 拠点病院の機能は診療部門と独立させ、がん相談支援センターを主な窓口にする考え。長谷川院長は「着実に拠点病院として機能させるとともに、診療レベルを上げ、地域への貢献度を高めたい」と話している。(宮木佳奈美)


◎地区の産業別施策追加…市議会総合計画特別委
 函館市議会の総合計画特別委員会(石井満委員長)が19日開かれ、素案の産業振興と地区別の発展方向について審議した。素案では新・函館市を方面別に5地区に分類。複数の委員から「各地区での産業や都市機能別の振興策をもっと盛り込むべきだ」との意見があり、市企画部は「地区別の発展方向を具体的に書き加えたい」と述べた。

 合併旧4町村は東部地区に分類し、漁業が基幹産業のため、各地域の水産振興策を盛り込んでいる。ただ、面積的に広い東央部地区(深堀、駒場、湯川、旭岡、赤坂、銭亀町など)は住宅地や温泉街、農業地域、漁業地域などがある。

 委員から「体験農園や市民農園の整備など、農業ひとつを取っても東央部の発展施策が足りなすぎる」との声があり、同部も地区内の生活や産業などに応じ、施策を書き込む考えを伝えた。

 また、市内で空き地・空き家が増える一方、郊外では大手資本による土地取引が行われているため、遊休地の流動化を進めながらも、郊外の大規模開発に結び付くような土地取引や土地利用を制限することを求める意見があった。

 ただ、土地は民間が所有し民間同士で売買が行われるため、同部は「大きな課題だが、私権に立ち入ることは行政には限界がある」と述べ、理解を求めた。

 1編5部から成る分野別計画と、2編で示した地区別の発展方向に関する審議は同日で終わり、次回は計画素案の序論と基本構想部分を審議する。(高柳 謙)


◎管内支部が擁立断念…道議選桧山支庁区
 【江差】難航している道議選檜山支庁区(定数1)の候補者擁立をめぐり、桧山管内7町の自民党支部長・幹事長の会合が19日に江差町で開かれ、地元支部として候補者擁立を断念し、対応を党道連と党8区支部(中村勉支部長)に一任する方針を決めた。

 これを受けて8区支部は、中村支部長を議長とし、管内の支部長・幹事長で構成する「桧山支庁区連絡会議」を同日設置。同党はすべての道議選挙区で候補者擁立を掲げており、管外からの擁立を含め、3月30日の告示ぎりぎりまで候補者の模索を続ける方針だ。

 会議には中村支部長と各町の党支部長・幹事長らが出席。取材に対して中村支部長は「環境は厳しいが現時点では候補者を擁立しない選択肢はあり得ない。具体名は挙がっていないが時間ぎりぎりまで責任を持って力を尽くしたい」と話した。

 同管内には各町に党支部があるだけで、全支部を統括する上位組織はない。新たに設けた連絡会議を通じ、統一選に向けた体制の立て直しを図る考えだ。

 管内では、本命と目されていた厚沢部町出身の参院議員秘書の擁立が頓挫してから、候補者選びが迷走。衆院選道8区で2度落選した佐藤健治氏の名前も浮上したが、本人が固持した。

 年明けからはピンチヒッターとして、管内の町議会議長を軸に説得を進めたが、同意を得られなかった。水産業界に影響力を持つ道議の意向で、渡島支庁区では擁立に至らなかった道水産林務部幹部の“くら替え”も模索したが、関係者の確執もあり実現しなかった。

 党関係者は「事実上の白紙委任。地元だけでなく落下傘候補を含め、8区支部や党道連にも手持ちの候補者は少ない。残り時間を考えても情勢は厳しい」と話す。

 中村支部長は「支庁統廃合に伴う桧山支庁区の先行きが見えないことが候補者が見付からない原因の一つではないか」と話している。(松浦 純)


◎函館市 戸籍窓口をリニューアル
 函館市は19日、市役所本庁舎1階の戸籍住民課窓口をリニューアルした。各届け出申請用にも番号札発券機を設置し、受け付け番号を大型の液晶ディスプレーで表示。待ち時間の案内表示機も設置した。3月5日に稼働開始を予定している戸籍電算化システムと併せて、住民サービス向上が図られる。

 50インチの大型ディスプレーは、窓口正面上部と横側に2台設置。上部ディスプレーは、画面を最大で20分割して番号を表示することができ、証明書などの発行完了を知らせる。仮に、申請者が庁舎を離れた場合でも、番号表示は残るため、職員に確認する手間が省ける。

 また、3月からの電算化システムの導入で、戸籍の検索や証明書の発行が迅速になるため、待ち時間は大幅に短縮される見通し。また、住民記録や戸籍の事務処理用の端末を共有するため、窓口を、届け出申請と証明書申請用に二元化し、来庁者の誘導が容易になる。

 同課は「順番や時間が分かると来庁者に安心して待っていただける。システム稼働までの間に、職員や市民の様子を見ながら、不都合な点があれば改善していきたい」と話している。(今井正一)


◎江差三下り発表大会 萩原さんが最優秀賞
 【江差】江差追分の“母唄”として知られる民謡・江差三下(さんさが)り(道指定無形民俗文化財)の第2回発表大会が19日、江差追分会館で開かれ、江差町内で生花店を営む萩原克彦さん(65)が最優秀賞を受賞した。江差三下り会(会長・濱谷一治江差町長)の主催。町内をはじめ全国各地から22人が出場した。

 最優秀賞に輝いた萩原さんは、昨年の第1回発表大会で優秀賞を受賞。1979年の第17回江差追分全国大会優勝者で、98年には江差追分会から師匠として認定されたベテラン。

 トロフィーを手に喜びの歌声を披露した萩原さんは「江差三下がりを始めて15年ほど。昨年の優秀賞がプレッシャーになり、浅沼春義師匠の特訓を受けて大会に臨んだことが実った。これからますます本場の歌声を極めたい」と、笑顔で語った。

 江差三下りは、越後地方の船頭衆に歌い継がれた信州馬子唄がルーツ。北前船時代を通じて海を思わせる音律に変化しながら約250年前に江差に伝えられ、花街で歌い継がれる座敷唄として三味線と尺八の伴奏を加えて、しっとりとした粋な雰囲気のある歌となった。江差追分の始祖とされる佐之市が伝えたケンリョ節との融合で江差追分が成立したと伝えられている。

 大会入賞者の氏名は次の通り。(敬称略)

 ◇最優秀賞萩原克彦(江差)◇優秀賞奥泉勇篁(札幌)▽小野寺安喜(東京)◇審査員特別賞成田誠(札幌)▽森信佐句(愛知)(松浦 純)


◎函工情報技術科・藤原さん 文部科学大臣優秀教員表彰
 函館工業高校情報技術科教諭の藤原啓展(ひろのぶ)さん(57)が、2006年度「文部科学大臣優秀教員表彰」を受けた。養護教諭向けの統計ソフトの開発・運営などが高く評価された。道南ではただ一人の受賞で、藤原さんは顔をほころばせている。

 同表彰は優れた成果を挙げた教員を評価することで教員の意欲を高めようと、本年度初めて実施。学習指導や生徒指導など6分野いずれかで成果を挙げ、道教委などの推薦を得た全国の国公私立学校(大学、高等専門学校は除く)の現職教員が対象となる。本年度の全国被表彰者は765人。15日、東京で伊吹文明文部科学相や同省幹部から表彰状が手渡された。

 藤原さんは「情報技術の高い専門性に優れた指導力を発揮、工業教育の充実やコンピューター活用による校務処理の円滑に大きく貢献した」(推薦書より)として2000年渡島管内教育実践表彰を、01年道教育実践表彰を受賞。

 中でも道高校養護教諭研究会の依頼を受け、1989年に製作した統計処理ソフト「保健処理システム」の開発は高く評価されている。同ソフトは生徒の身長・体重などの健康管理や保健指導回数などを簡単にまとめ、どの学校でも利用できるよう工夫を凝らした。同校ホームページからダウンロードが可能(無料)で、現在、道内20校以上で導入されているという。

 藤原さんは同ソフトの定期的なメンテナンスや、利用者へのアドバイスのほか、実習教材作りや授業研究も長年続けていて、「努力し、継続したことが認められたのでは。ソフトは完成がなく、メンテナンスが重要。今後も続けたい」と決意を新たにしている。

 藤原さんは軟式テニス部の顧問も務め、チームを何度も全道大会へ導いている。「子どもたちを輝かせることがわたしの仕事。今回の表彰は本来、子どもたちが受けるべきだ。子どもたちがさらに飛躍できるよう頑張りたい」(笠原郁実)