2007年3月16日(金)掲載

◎道南の中学校で卒業式
 松前町や厚沢部町の一部の学校を除く道南の中学校59校で15日、一斉に卒業式が行われた。卒業生は3年間の思い出を胸に晴れやかな表情で式に臨み、慣れ親しんだ校舎と級友に別れを告げた。

 函館的場中学校(沼崎孝男校長、生徒423人)では、父母や在校生が見守る中、143人が一人ずつ登壇。沼崎校長の「高校へ行っても頑張って」の激励に、深々と頭を下げ「ありがとうございます」と卒業証書を受け取った。

 沼崎校長は「的場中で手に入れた思い出は一人ひとりの心のアルバムに残されるはず。感謝の気持ちを忘れず自信と誇りを持って未来へと飛躍してほしい」と式辞。

 卒業生を代表して前田望夢(のぞむ)君が「今、自分で決めた道を自分のために歩みだす。厳しく、険しい道だと思うが乗り越えてこそ価値がある。学んだことを誇りとして、全力で取り組みたい」と力強く述べた。

 卒業生全員がステージに並び、在校生と向かい合って「旅立ちの日に」を全校で合唱。卒業生は流れる涙をそっとハンカチで押さえながら、旅立ちへの思い新たにしていた。(笠原郁実)


◎市議会議会改革WG報告書案、議員同士の議論明記
 函館市議会の議会改革検討ワーキンググループ(WG、能川邦夫座長)は、昨年2月から協議してきた議会改革に関する報告書案をまとめた。常任委員会の再編や政務調査費の削減などを実現。合議体としての機能と役割を発揮するため、議員同士が議論を重ね、議案の提出や修正をしていくことを明記した。19日の議会運営委員会で委員の了解を得る。

 昨年2月22日に議会運営委員で構成する議会改革検討WGを設置し、同10月31日まで延べ14回の会議を開いた。

 本会議の運営については、改選期の2月定例会での代表質問を行わず、新しい市長が市政執行方針を述べる6月定例会で行う。従来は2月と6月議会で2回行ってきた。一般質問や質疑での一問一答制の導入や、電光掲示板などを活用した投票システムの導入は引き続き検討事項とした。

 常任委員会の運営に関しては、総務、民生、経済、建設の4委員会を総務、民生、経済・建設の3委員会に再編。委員会の議案提案・修正権など政策立案の機能を高めるため、委員同士が協議する場を設ける。委員会での意見調整も原則として公開で行い、透明性を確保する。

 議会費については、昨年4月から政務調査費を1人月額7万円から5万円に引き下げたが、議員報酬(月額51万円)については現行通り市報酬審議会に委ねる。本年度の同審議会は、議員報酬について現状維持とする答申をしている。また、本会議や委員会への出席にかかる経費として1日5000円の費用弁償も現行通りとした。全国では交通費のみの実費支給や全面廃止している議会も多いという。

 また、議会本来の役割の発揮と政治倫理の確立を条例化することを検討していく価値がある、との方向性を示した。

 能川座長(民主・市民ネット)は「当初は意見が合わない点も多々あったが、各委員の前向きな姿勢と理解をいただき、一定の成果が出せた。議会改革は今後も、住民の意見を聞きながら進めていかなければならない」と話している。(高柳 謙)


◎地域提案型雇用創造促進事業で雇用効果310人、目標の90%に
 函館市議会の予算特別委員会(中江捷二委員長)は15日、経済、建設常任委員会所管の新年度予算案を審議した。坪谷正一商工観光室長は、2005年度から実施している地域提案型雇用創造促進事業(パッケージ事業)で、昨年末現在310人の雇用効果があり、3カ年の目標数値である347人の約90%を達成していることを明らかにした。

 同事業は厚生労働省の委託を受け、函館雇用創造促進協議会(会長・桜井健治商工観光部長)が中心となり3カ年計画で実施。特色ある地場産業の活性化や観光関連産業の人材育成などの各事業を展開している。委託費は3カ年で約2億4000万円。

 初年度の05年度は、中心市街地活性化支援に絡み、大門横丁のオープンなどで180人、本年度は函館どつくの業績好調などを受け、130人の雇用効果を生んだ。今月に若松町に開設したばかりのIT関連業のコールセンターの雇用実績が含まれていないため、本年度末ではさらに増える見込み。

 佐古一夫氏は「効果を生んでいるが、市民への事業周知が足りない。成果があるので事業の継続も可能ではないか」と、最終年度となる新年度も積極的に取り組むべきと指摘。坪谷商工観光室長は「各構成団体と連携を図り、さらに事業を推進する」と答えた。

 このほか、新年度の雇用対策について板倉一幸氏が「雇用対策本部を設置し、所管部局の連携を強化するべきだ」と求めた。桜井部長は「依然厳しい状況が続いている。庁内に本部を設置しても、事業主の受け皿の問題がある。どんな形で進めるのがいいか、検討させていただきたい」と述べた。(今井正一)


◎函館市長選、連合が井上氏「支持」
 民主党の最大支持母体である連合函館・渡島地域協議会(渡部正一郎会長)は15日、代表者会議を開き、4月の函館市長選に立候補を表明している現職の井上博司氏(70)への対応を「支持」とすることに決定した。民主党道8区総支部は「推薦」を決めており、同一歩調を取ってきた総支部よりも支持色を薄める結果となった。

 渡部会長は、井上氏と連合の考えに政策的な差異はなく、市政運営でも市民への公平性、透明性を高める努力をしていると評価。しかし、側近だった西尾正範前助役が井上氏を批判する形で辞職した点は「内部の体制管理が不十分と言わざるを得ないため、支持にとどめた」と説明する。

 主要単産や組合員の間では、井上氏に対する民主党総支部の推薦決定に対する意見に“温度差”も見られる。

 西尾氏も市長選への立候補を表明しているが、渡部会長は「連合が西尾氏を推薦・支持することはない」と話している。(宮木佳奈美)


◎日豪EPA交渉と道南地域の経済を考えるセミナー
 【七飯】日本とオーストラリア政府間で4月にも交渉入りが予定されている経済連携協定(EPA)について、北海道や道南地域の経済に与える影響を考える「日豪EPA交渉と道南地域の経済を考えるセミナー」(道南地区農業協同組合会、渡島支庁、桧山支庁共催)が15日、七飯町文化センターで開かれた。阿部秀明北海商科大教授を講師に迎え、農畜産物の輸入自由化が農業だけでなく、道南経済に深刻な事態をもたらす危険性を再認識した。

 EPAは、特定の国同士が物やサービスの貿易自由化に加え、経済活動全般で交流するための協定。4月23日から行われる日本と豪州との交渉では、農畜産物の関税撤廃、もしくは引き下げが焦点になるとみられている。関税が撤廃されると、日本に比べ経営規模や効率性が格段に高い豪州から価格の安い農畜産物が大量に輸入され、国内農家が大きな打撃を受ける懸念がある。セミナーは、同交渉についての理解を深めるとともに、道内の農業保護への意識を高めてもらおうと企画された。

 道南地域の農業関係者を中心に約600人が出席。道農政部による日豪EPA交渉の状況説明の後、阿部教授が「日豪EPA交渉が地域経済にもたらす影響について」をテーマに講演。阿部教授は「EPAにより貿易障壁が撤廃されることで、輸出拡大やビジネスチャンスが生まれることは、日本経済復活にとって大事」と意義を示す一方、「食料自給率が40%しかない日本にとって、豪州から価格の安い農畜産物の輸入が増えれば、国内農家が打撃を受けるのは必至。特に北海道は農業のみならず、経済全体が深刻な影響を受ける」と懸念を表した。

 阿部教授は、農産物の関税が撤廃された際のシミュレーションを示しながら「内外価格差の大きい牛肉、乳製品、小麦、砂糖は生産中止に追い込まれ、生産農家は年間4300億円の影響を受ける。農業にかかわる製造業、運送業、サービス業などを含めた影響は1兆円を超え、北海道経済にとっては計り知れない損失となる」と説明。「道民が一丸となって、EPAによるマイナスの影響を最小限に食い止めるよう政府に訴えるとともに、農業改革を進め、安全・安心な農畜産物の供給に努力する必要がある」と締めくくった。(小川俊之)

 EPA 協定構成国間で、物やサービスの貿易自由化を行う自由貿易協定(FTA)の要素に加え、経済取引の円滑化、経済制度の調和、サービス、投資、電子商取引など幅広い領域での連携強化と協力の促進を行う協定。日本は現在、シンガポール、マレーシアと締結しており、将来的にはASEAN、日・中・韓、豪州、インド、ニュージーランドの16カ国による東アジアEPAの構築を目指している。


◎富岡男性殺害、内妻に懲役9年求刑
 同居していた男性(当時41)を殺害し遺体を空き地に捨てたとして、殺人と死体遺棄の罪に問われている函館市富岡町、無職の女(46)に対する論告求刑公判が15日、函館地裁(柴山智裁判長)で開かれた。検察側は「被害者からの暴力に耐えかねた動機に同情すべき事情はあるが、安易に殺害という最悪の手段を選択し、短絡的。事前に睡眠薬を服用させるなど犯行は計画的で、未成年の息子を犯行に関与させた責任は大きい」とし、懲役9年を求刑し、結審した。判決は29日に言い渡される。

 弁護側は「犯行前日、被害者男性は包丁を持ち出すなどして、女らへの暴行に着手。服用させた睡眠薬の効果で男性は眠り、一時停止しただけで、犯行当時も(暴行は)続いていた」とあらためて過剰防衛を主張、殺人罪での刑の免除を求めた。また、「被害者からの暴力に追い詰められて犯行に及んだ典型的なドメスティックバイオレンス(DV)の事案。被害者の落ち度は非常に大きい」と訴えた。

 女は被告人質問で、終始うつむきながら、時折涙を流しながら答えた。「毎日のように暴言を吐かれ、常に緊張感、恐怖感があった。一度別れを切り出した時に殴られ、以来口にできなくなった。周囲に相談すると仕返しが怖かった」と、当時の苦しい心境を吐露した。

 長男(16)=同罪で起訴済み=に殺害を打ち明けたことを「誰にも話せないので、つい甘えて言ってしまった。愚かだった」と泣き崩れた。「殺すことはなく、警察などに相談すべきだった。非常に後悔している」と語り、最後には「息子の刑を軽くしてください」と涙ながらに訴えた。

 論告などによると、女は昨年10月19日午前零時半ごろ、同市富岡町の自宅1階和室で、長男と共謀し、同居していた無職の男性の左胸を小刀(刃渡り13・5センチ)で刺し、首をネックレスで絞めるなどして殺害。遺体を近くの空き地に放置した。