2007年3月17日(土)掲載

◎国宝に「中空土偶」…道内初の指定
 函館市著保内野(ちょほないの)遺跡(尾札部町)で出土した国指定重要文化財「中空土偶」が、国宝(考古資料)に指定されることが16日、決まった。文化審議会が同日、文部科学相に答申した。道内からの国宝指定は初めてで、考古資料では全国で42件目、縄文関係では3件目となる。縄文遺跡と産業・観光を連動させた魅力ある地域づくりを進める函館市にとって、国宝指定は大きな弾みとなる。井上博司市長は「大変うれしく名誉なこと。縄文文化を生かした魅力あるまちづくりを一層推進したい」と話している。

 中空土偶は1975年8月、畑作業中の主婦小板アヱさんが発見し、79年6月に国の重文に指定された。縄文時代後期(約3500年前)に作られたとみられ、高さ41・5センチ?、幅20・1センチで国内最大級。頭部の突起や両腕は欠けていたが、ほぼ完全な姿で残っていた。

 内部は空洞で、表面の厚さは5―7ミリと薄手。頭部から足元まで施された細かな文様や漆による彩色の痕跡が特徴だ。精巧なつくりと写実的な表現から、その高い技術と芸術性がうかがえる。

 昨年の発掘調査で同遺跡が縄文時代後期の集団墓地であることが分かり、中空土偶は副葬品と断定。答申では当時の信仰や祭祀(さいし)の実態を明らかにする上で欠かせない資料で、土偶造形の到達点を示すと位置づけられた。

 出土以来、ベルギー王立博物館、スミソニアン博物館、ローマ市立展示館、大英博物館と海外4カ国で展示されたが、地元では2002年の大船遺跡埋蔵文化財展示館(大船町)、05年の市立函館博物館本館(青柳町)の2回だけ。

 4月24日から5月6日まで国立博物館(東京)でお披露目されることが決まっており、函館ではまず6月1日から3日間、南茅部支所での公開を予定しているほか、7月から8月にかけ市立函館博物館本館での特別展を企画している。これまでは南茅部支所内の金庫室に保管され、レプリカ(複製)を大船遺跡埋蔵文化財展示館で展示していた。今後は本物を同博物館本館で保管し、適宜公開する考え。

 また南茅部地区には縄文時代早期から晩期まで90カ所の遺跡が集中しており、市教委は縄文遺跡を保存・活用した生涯学習の推進や観光振興を進める「市南茅部縄文遺跡群整備構想」を策定。早ければ09年度に資料展示や体験学習、調査研究の拠点施設となる「縄文文化交流センター」(仮称)を垣ノ島遺跡(臼尻町)の付近に整備し、管理上の問題でこれまで常設できなかった中空土偶を展示する。 (宮木佳奈美)


◎公立高校合格発表
 道内の公立高校で16日、一斉に合格発表が行われ、道南でも「春」をつかんだ受験生に歓喜の笑顔が広がった。

 新年度から函館東、函館北の両高校が統合してできる市立函館高校は、函館北高校で発表。午前10時に、324人の合格者番号が書かれた掲示板が張り出された。家族や友人と訪れた受験生は、自分の番号を確認すると「あった」「やった」と声を上げ、握手したり、抱き合ったりして喜んでいた。

 同市本通中から受験した波多野夏微さんと秋元菜々さんは、そろって合格。波多野さんは「単位制で学ぶ教科はこれから考えたい。部活のバドミントンで頑張りたい」、秋元さんは「単位制では英語を頑張りたい。この喜びを中学の担任の先生に早く報告したい」とともに声を弾ませ、高校での新生活に夢を膨らませていた。(山崎純一)


◎思い出胸に校舎に別れ…渡島の小学校で卒業式
 函館市など渡島管内の多くの小学校で16日、卒業式が行われた。卒業生は小学校生活のさまざまな思い出を胸に、級友や担任と固く握手を交わし、6年間を締めくくった。

 函館中央小学校(安保勝順校長、児童471人)は、書家でもある安保校長が揮毫(きごう)した卒業テーマ「夢」を背に卒業生85人がひな壇状の席に着いた。会場中央部の特設ステージで安保校長から一人ずつ、卒業証書を受け取った。

 安保校長は大リーグで活躍するイチロー選手のエピソードを紹介し「夢を実現するためには前を目指し努力することが必要。夢に向かって一歩一歩歩んでほしい」と激励した。

 卒業生は6年間の思い出や教職員や保護者、後輩に向け、感謝の気持ちを言葉に込め、「たくさんのことを学んだ教室。思い出が刻み込まれた校舎を忘れない。しっかり前を向き、夢に向かって歩いていきます」と力を込めた。「さよなら友よ」を全校で合唱。涙を浮かべ、慣れ親しんだ校舎や教職員、友との別れを惜しんだ。

 檜山管内では多くの小学校で20日、卒業式が行われる。(笠原郁実)


◎フカヒレを不正売却…道の実習船
 道教育庁の実習船「若竹丸」(666トン)と「北鳳丸」(664トン)の両船長がマグロはえ縄漁の実習中、針にかかったサメのヒレ(フカヒレ)を寄港した清水港(静岡)の業者に売却していたことが、16日までに分かった。同庁実習船管理局によると、過去5年間で若竹丸は9回(2006年5月まで)、北鳳丸は1回(03年3月)、売却していて、総収入は約110万円。生徒を慰労する菓子や飲み物代に充てたという。

 全国で同様の問題が相次ぎ、北鳳丸の帰港を待って船長と乗組員から事情を聴いた。両船長の話によると、不正売却は30年以前から行われていたと推測される。

 航海実習は小樽水産、函館水産、厚岸水産の道立3高校が約1カ月半、中部太平洋上でマグロはえ縄漁の体験や漁獲した魚の処理などを行う。混獲したサメは船長が漁獲と見なした場合だけ肉を市場へ流通させていた。フカヒレは内蔵とともに海中廃棄されることもあり、漁業者内では「売却処分してもよい」との慣習から船内で乾燥させ、清水港で不特定の業者に売却した。

 1度の航海で約10万円の収入があったとみられ、うち8万円を生徒へのケーキやジュース代などに、2万円を体調を崩した生徒に付き添う船員や職員の交通費に充てた。航海中に全額使用し、職員らに現金を渡すことはなかったという。

 道財務規則では実習による漁獲はすべて市場を通じて流通させ、売り上げは道の歳入となる。06年度の売り上げは3航海で年間約400万円だった。

 同管理局の高須賀敏勝局長は「厳しい漁業実習の合間などにジュースなどを提供したいという思いから行ったが、道民の誤解を招く行為。適切な処理を行うよう指導を徹底していきたい」とコメントしている。

 同管理局は16日までに、道立3高校に口頭で事情を説明。会合などであらためて高須賀局長が謝罪する予定。(笠原郁実)


◎9ヵ月 1072人利用…函大図書館・放送大学習室
 函館大学(函館市高丘町51)の図書館内に昨年6月に開設された放送大学学習室の2月末までの利用実績がまとまった。放送大学(千葉)が放映する授業の一部を再視聴するなど、9カ月間で延べ1072人が利用。小澤叡(あきら)室長ら函館大関係者らは「今後、施設の拡充を目指すとともに地域の皆さんに利用してもらえるような施設になるよう協力していきたい」と話している。

 同学習室は函館市と放送大で開設。渡島・檜山管内在住者であれば利用できる。前後期合わせて47科目(1科目15巻テープ)と集中講義12科目があり、利用した放送大学生は約150人で、放送大と単位互換を行う函館大の学生は延べ56人。これら学生と一般市民を合わせ、1日当たり約5人が使用したことになる。

 これまで札幌で受けていた単位認定試験を函館でも受験できるようになったほか、視聴できなかった分を気軽に再視聴することが可能になった。また、土・日曜も午後8時まで開館している(月曜休館)函館大図書館も利用でき、資料を確認したい受講生や市民らに好評という。

 小澤室長は「徐々に利用者は増えているが、もっと多くの人に利用してもらえるよう広く啓もうするとともに新年度から科目により幅を持たせたい」と語り、函館大の小笠原N・w長は「利用者数や利用者の声から、高等教育を受ける場を求めている地域の意欲を感じた。今後、機能の具体化を目指すとともに、他大学の学生にも利用の幅を広げるなどし、地域に貢献していければ」と話している。(笠原郁実)


◎6月下旬からノロ検査…市議会予算委
 函館市議会の予算特別委員会(中江捷二委員長)は16日、民生常任委員会所管の議案を審査した。市が新年度導入するノロウイルス検査機器について、市立函館保健所は「リースで5月下旬に導入し、検査技術の習得などを進め、6月下旬の検査開始を想定している」と述べた。

 佐古一夫氏(市民自由クラブ)の質問に答えた。市は新年度当初予算案に検査機器の導入費用として213万7000円を計上している。

 全国と同様、同保健所管内では、昨年末からノロウイルスの集団感染が激増している。昨年発生した8件のうち6件が12月以降で、有症者は疑いも含め343人。今年はすでに10件発生し、有症者は13日現在で436人。介護保険施設や医療機関、老人福祉施設などで発生しており、いずれも食中毒ではなく、何らかの経路で入居者らが感染し、拡大したとみられる。

 市内でノロウイルスを検査できる機関はなく、これまで札幌や東京の機関に有症者の便を送って検査を依頼している。ウイルスの遺伝子を迅速に確定できる「リアルタイムPCRシステム」と呼ばれるタイプを導入する計画。

 このほか、岡義次氏(南かやべ議員団)が、国民健康保険料の収納率向上策などをただした。斎藤俊一市民部長は「滞納を放置しておけば負担の公平を欠く。納付相談のほか、休日や夜間の訪問・電話催告、財産調査で可能な場合は差し押さえなどをしている。全体の医療給付費に見合う保険料を負担してもらう制度であることを理解してもらいたい」と述べた。

 予算委員会は3日間の審議を終え、付託された2007年度一般会計予算案など議案42件を原案通り、可決した。22日の本会議で中江委員長が審議経過を報告し、採決する。(高柳 謙)