2007年3月24日(土)掲載

◎江差で立茎アスパラ初収穫始まる
 【江差】江差町鰔(うぐいかわ)町にある「アスパラ営農ハウス団地」で、道南で最も早いアスパラガスの収穫作業が始まった。

 同団地では町内の農家7戸が35棟(177アール)のビニールハウスを設けて栽培に取り組んでいる。収穫は外がまだ薄暗い午前5時前後にスタート。農家が白い息を吐きながら長さ約20センチに育ったアスパラを1本ずつ丹念に切り取る。収穫したアスパラは同町水堀町の集出荷施設で選別などを行い、札幌圏のスーパーなどに出荷される。

 6棟のハウスを持つ長尾勝征さん(65)は「ハウス内は完全無農薬栽培を実現しています。そのまま食べても強い甘みとみずみすしさがあります」と高い品質に胸を張る。

 同団地では2005年から立茎(りっけい)方式によるアスパラ栽培を開始。3月下旬から春芽を収穫する。6―9月には春芽が高さ約2メートルの立茎に成長。茎の脇から成長してくる夏芽を収穫する。露地物に比べて高い収益性が注目されている。

 長尾さんは「立茎栽培では収穫量や収入が安定する。新方式の農業が定着することで、農業後継者の確保や新規就農の促進にも光が見えてきた」と、継続への意欲を語る。(松浦 純)


◎渡島地方税滞納整理機構の徴収額、2年連続1億円突破
 函館市を除く渡島管内1市9町で構成し、市町税の滞納整理を引き受ける一部事務組合「渡島地方税滞納整理機構」の本年度の徴収額が22日までに1億500万円となり、2年連続で1億円を突破した。徴収率は34・1%。年度末には徴収額1億800万円、徴収率35・1%に達するとみられ、前年度実績の1億784万円、34・2%を上回る見通し。また、4月からは桧山管内7町の加入も決まっており、「渡島・桧山地方税滞納整理機構」に名称を改め、道南全域をカバーする。

 同機構は、町単独では処理が難しい滞納を専門的に処理する機関として2004年4月に発足。渡島支庁と各町の職員ら5人が専門的に強制徴収などを手がけている。

 本年度は各市町から270人、3億754万円の事案を引き受けた。4、5月に滞納者の財産調査を行うとともに督促文書を配布し、6月から強制徴収を開始。早期着手が、高い徴収率につながったとみている。

 徴収額のうち、差し押さえなどの強制徴収は3600万円で、全体の34・2%を占める。差し押さえの内容は、現金や預貯金が中心だが「今後は動産や不動産の公売などによる差し押さえも検討していきたい」とさらなる徴収率アップを目指している。

 新たに桧山支庁7町が加入する新年度も、現在と同じ5人体制を維持。同機構は「整理機構により厳しい処分が行われるということを認識し、自発的に納税してくれる人が増えてくれることが一番望ましい。渡島管内で培ったノウハウを桧山でも生かしていきたい」と話している。(小川俊之)


◎福祉施設建設問題で市長、職員情の報誌販売見直し
 函館市の井上博司市長は23日、記者会見を開き、民間福祉施設建設をめぐる一連の問題について見解を述べた。問題に関与した男性が発行している地元政財界情報誌を市職員が販売していたことについて、「昼休みなど勤務に支障のない時間に販売したと聞いているが、好ましくない」とし、職員の規律保持に努める考えを示した。

 全庁的な調査の結果、2部1課で3冊を公費で購入していたことが判明したが、私費購入の数は把握できないという。

 同情報誌の有料ホームページサイトを公用パソコンで職員が閲覧していることについては、職員が私費で費用を負担し、情報収集の一環として行っていることから、「職務の専念を義務付けた地方公務員法35条に違反するものではないと考えている」と述べた。

 市議の口利き行為については、市民代表の議員が要望や提言を伝えることは議員活動で保障されるべきだとし、正当な議員活動の要望を阻害することのないよう、口利きの定義を定める必要があるとの認識を示した。

 昨年7月20日に市長室で議長同席の下、福祉部長と同次長に老人ホーム建設をめぐる話を聞いたことについては、市議会答弁と同様に「議長退席の上で行うべきであった」「老人ホーム建設の再検討を指示したことはない」と強調。市長は、事業者と行政の双方の立場に立った質問を福祉部長にし、「部長から適切な答えがあったので、万全だという確信を持った。事業者も納得している」とした。

 そして「今回の件は(現・前)福祉部長以下がかなり苦しい立場にあったと思うが、きちっと対応し、公平・公正な判断をしてくれたと思っている」と述べた。(高柳 謙)


◎渡島管内の小・中学校で修了式
 渡島管内の小・中学校で23日、修了式が一斉に行われた。1年間の課程を終え、4月から1学年進級する児童・生徒は、クラスメートや教職員にしばしの別れを告げ、約2週間の春休みに入った。

 函館あさひ小学校(伊藤皓嗣校長、児童285人)では午前10時40分から修了式が行われた。伊藤校長は「1年を終え、自分の変わったこと、できるようになったことに気付いたはず。新しい気持ちでまた1年間頑張れるよう、春休みにしっかり、準備しましょう」とあいさつ。各学年の代表児童に修了証書を手渡した。

 式後は17日に卒業した6年生も出席し、本年度で同校を離れる教職員7人を送り出す離任式へ。定年を迎える伊藤校長も壇上から「楽しい思い出をありがとう」と別れを惜しんだ。

 各教室では担任教諭が児童に通知表を手渡し、学年最後の学級活動を行った。1年生41人は通知表を受け取った後、伊藤校長に似顔絵画集をプレゼント。思いがけないプレゼントに伊藤校長は顔をほころばせながら、一人ひとりと固く握手を交わした。

 桧山管内の小・中学校は26日に修了式を行う。渡島・桧山管内の小中学校の入学式は、4月6日に一斉開催の予定。(笠原郁実)


◎「道いるか・くじら110番」開始
 北大水産学部や帯広畜産大(帯広)、道開拓記念館(札幌)に所属する鯨類研究者ら28人で構成するストランディングネットワーク北海道(SNH)は、4月2日から「北海道いるか・くじら110番」をスタートさせる。クジラやイルカなどの鯨類のストランディング(座礁、混獲、漂着)情報を収集、共有する取り組みで、代表の松石隆さん(42)=北大助教授=は「窓口を明確化することで、発見者と全国ネットを結ぶ役目を担えれば」と期待する。

 SNHは、道内に散在する鯨類研究者の連携を確立するとともに調査の協力を図ろうと、1月に北大大学院水産科学研究院の松石研究室を事務局として発足。「―110番」は漁業関係者らに協力を依頼し、集まった鯨類のストランディング情報を基に鯨類の保全対策や漁業被害対策に役立てたい考えだ。

 沿岸部が長い道内では、ミンククジラやネズミイルカなど年間30件ほどのストランディングが報告される。水産資源保護法が適用されるスナメリ(ネズミイルカ科)などの一部を除き水産庁への報告義務がないため、実数はもっと多いと推測される。また、現在80種を超える鯨類がいるが、種類が特定されないまま処理されるケースもあり、希少種の確認は容易でない。

 松石さんは道内の市町村や漁協、水産試験場などに協力を依頼し、集まった情報を登録者である近隣の研究者に知らせ調査、データ化する。個体群の把握から数の少ない鯨類の保全や、漁業被害の実態調査やその対策など幅広い用途に活用させていく。

 同事務局の田口美緒子さん(北大大学院研究生)は「写真があれば、種類などがより判別しやすい。臨機応変に対応するのでまずは電話連絡を」とPRする。

 情報提供や受信希望、調査希望者は専用電話TEL090・1380・2336。電子メールはsnh@minke.fish.hokudai.ac.jp(笠原郁実)


◎地検が新年度から「公判前整理」適用拡大
 重大な刑事事件の裁判に国民が参加する「裁判員制度」導入を前に、全国の地検は新年度から、殺人や強盗致傷など裁判員制度対象の全事件について、事前に争点などを整理し、審理を短縮化する公判前整理手続きの申し立てをする。函館地検では昨年から既に、対象事件すべてで申し立てている。同地検は「裁判の迅速化を図ることができた。今後も対象事件で申し立てを続け、制度や手続き面で習熟していきたい」としている。

 公判前整理手続きは検察、弁護側、裁判所が、初公判前に証拠や証人などを整理。検察、弁護側双方が主張を打ち出し、争点を絞り込むことで裁判をスムーズに進める。全対象事件で申し立てるのは最高検の方針。

 裁判員制度を見据え、函館地検では昨年から全対象事件で申し立ててきた。殺人・死体遺棄3件、殺人未遂1件、強盗致傷2件の計6件で、いずれも函館地裁で同手続きが適用されている。

 このうち5件(うち1件は判決待ち)は、初公判または第2回で結審した。「正確には比較していないが、未手続きの過去の事件より、審理が大幅にスピードアップしている」と同地検。証明予定事実記載書など、検察側の新しい手続きにも順調に慣れているという。

 一方、2日間にわたり、午前、午後と終日かかった公判もあった。短期集中審理や、事前に審理計画が決まっている場合、時間通りの進行を目指し、日程が過密になりがち。法廷慣れしていない裁判員の負担も懸念される。

 同地検は「迅速化と同様、分かりやすい裁判が必要。裁判員の負担軽減を目指したい」としている。