2007年3月26日(月)掲載

◎インターネット上の仮想商店街「檜山商店街」4月に誕生
 【江差】菓子や日本酒など檜山が誇る特産品を全国に向けて発信する、インターネット上の仮想商店街「檜山商店街」が4月にオープンする。管内の特産品が一堂に会した仮想商店街の発足は初めて。同研究会は「食べ物や景観など檜山にはたくさんの良い所がある。運営を通じて管内のPRにつながれば」と意気込んでいる。

 ホームページ(HP)を立ち上げたのは、管内の企業16社と個人の有志でつくる檜山地区インターネット活用推進研究会(棚橋正顕会長)。昨年4月の発足以降、HPや販売戦略の検討、参加店舗の取材を精力的に進め、道の新産業創造事業にも認定された。

 25日に北海道電力江差営業所(石崎薫所長)で開設報告会が開かれ、4月から運用するHPをお披露目。棚橋会長は「立派なページに仕上がり、江差や檜山管内のPRにつながると確信している。最初の形が整うことで次のステップも見えてきた」と話した。

 トップページは檜山のイメージを江差町のかもめ島、旧桧山爾志群役所などの写真や文章で紹介。商品と店舗の紹介ページは、カラフルな画像を駆使して、店舗の歴史や商品の由来、経営者の思いなどを伝えており、町並みを思い浮かべながら買い物を楽しむことができる。

 購入ページでは、商品ごとに数量を指定。氏名、住所、電子メールアドレスなどの発送先情報を入力する。商品は注文先の店舗から代金引換便で発送される。

 4月のオープン時点では、五勝手屋本舗(ようかん)、浅野屋(和菓子)、富貴堂(ゆり最中)の菓子類、吉田酒店(純米吟醸酒)、マスナガ酒店(純米酒)が取り扱っている日本酒、うまいベイ(シソジュース)など、江差町を中心とする9店舗の10商品を取り扱う。

 商品販売などの本格運用は4月から。HPアドレスはhttp://www.shop−hiyama.jp/ (松浦 純)


◎今年初の10度超え/五稜郭にウミネコ、春の到来
 25日の函館市内は、日本海の低気圧から暖気が入り込んだ影響で気温が上昇、今年初めて10度を上回り午後1時38分に10・3度を記録した。春本番を思わせる陽気に誘われ五稜郭公園では、冬の間姿を消していたウミネコが再び飛来し、独特の「ミャー」と短い鳴き声を上げていた。

 ウミネコは同公園の堀の魚を狙って春から秋にかけてやってくる。観光客は「カモメ、カモメ」と言いながらカメラを向けていた。 (山崎純一)


◎自転車商戦スタート
 春の温かみが増している中、函館市内では、自転車を軽快に走らせる市民の姿が目立ち始めた。市内のホームセンターや自転車専門店でも、通勤、通学用にと、新しい自転車を求める人が多く訪れており、各店によると、この時期は一年で最も自転車が売れるシーズンという。最近は安さばかりを求めるより、長く安全に使うことができるものが注目されているようだ。各店は商戦ピークを、進学先や転勤先が決まる3月下旬から4月上旬にかけてと予想している。

 市内本通1のスピード商会本通店では、幼児から大人まで幅広い世代の来客に応える自転車が常時100台以上並ぶ。最近は、アルミニウム製のフレームのものが軽量で丈夫ということで人気という。価格は2―3万円。

 同店チーフの五十嵐聖治さん(52)は、「以前は、価格が手ごろの1万円以下の商品が売れ筋だったが、耐久性の低さに問題があり、少し高価でも、安全に長く利用できる商品が見直されている」と話す。

 市内石川町231のホームセンターホーマックスーパーデポ石川店では、13日から屋外に専用コーナーを設置。通勤、通学用自転車を中心に約500台を並べている。各用途とも価格は1万5000円前後が売れ筋という。

 売り場担当の西嶋大志さん(31)は「函館は、ほかの地域に比べ、各世代でママチャリと呼ばれる軽いタイプがよく売れる」と話す。人気のママチャリは、Uの字に曲がったハンドル、前カゴ、後方荷台付き、倒れにくいU字の両立スタンド装備で、デザイン性より使い勝手を重視している。

 快適で安全走行のためには整備が重要。市内中道1の自転車店マルイチモーターの市戸輝夫店長(59)は購入直後は、ネジなどがゆるむ可能性が高く危険と指摘。「異常を感じなくても、購入から2カ月以内には必ず専門店で初期点検を。ブレーキやワイヤーは2年に1回は交換をしてほしい」と話している。 (田中陽介)


◎函館寄港の飛鳥2・乗客が椴法華ツアー
 函館港に入港した豪華客船「飛鳥2」(郵船クルーズ、5万142トン)の乗客向けに、地場の海の幸を味わうツアーが25日、椴法華港で開かれた。当初の定員30人を上回る55人が参加。ウニの殻向き体験や、活エビの刺し身、脂の乗ったホッケなど、地元漁師らが調理した旬の特産料理に舌鼓を打った。

 同ツアーは、新たな函館の魅力を体験したもらおうと、市が初めて企画。椴法華観光協会、えさん漁協椴法華支所青年部、同女性部、椴法華地域振興グループが協力した。豊富な食事のほか「ホテル恵風」での温泉入浴付きで、参加費は1万円。

 港内の倉庫を利用した会場には、午前11時半ごろ乗客が到着。テーブルの上には所狭しと、さまざまな食材が並べられた。早速、おけの中に生きたままのボタンエビが入れられると、参加者から「逃げないうちに食べなきゃ」と歓声が上がり、教わった殻のむき方をまねて、味わった。

 そのほか、自分でウニを割って炭火焼きにして味わう体験や、前浜でとれたガゴメコンブ(トロロコンブの仲間)など数種類のみそ汁や、天然ノリ弁当などを用意。地元の漁師らとも意気投合しながら、笑顔と会話の輪が広がっていた。

 東京から夫とツアーに参加した江上トシ子さん(71)は、函館には何度も訪れているが、椴法華地区は初めて。「東京では見たこともないような食材ばかり。タラの刺し身や活エビなど、どれもおいしく大満足です」と、喜んでいた。

 サクラマスを使用したちゃんちゃん焼きづくりに汗を流した、同漁協青年部の藤枝章三部長(39)は「旬のものをそろえたので、味には自信がある」と話し、初の企画に手応えを感じていた。 (今井正一)


◎企画・国宝指定〜太古のロマンを秘めて〜(上) 中空土偶を発見した小板アヱさんの話
 「カックウ(茅空)、怒るかもしれない。寝でるのに起こしてしまって」。函館市南茅部地区著保内野(ちょぼないの)遺跡出土の中空土偶(愛称・カックウ)が、重要文化財(重文)から国宝に“出世”することが決まり、再び大きな脚光を浴びた。太古の眠りから目覚めさせたのは、考古学者でも遺跡発掘作業員でもない。漁師の主婦小板アヱさん(74)だった。

 1975年8月、アヱさんは家庭菜園のジャガイモを収穫しようと1人で自宅裏の畑に出かけた。くわを振りかざすと異物に当たり、カチーンという音とともにくわがはね返った。「刃を折れば、ばっちゃん(義母)に怒られる」。くわを置いて手で掘ってみると何かの頭が見えた。

 「ばっちゃん、人間の頭だ」。取り出した頭を持って義母のみやさんに教えた。「ぜんこ(お金)入ってる甕(かめ)でねーが?」というみやさんの言葉で、2人で畑に戻り再び掘るとバラバラになった胴体が次々と出てきた。「人形みたいだから(供養しに)寺参りのついでに持って行くか」。

 しかし当時中学3年だった長女浅井八重子さん(46)に「学校で習った埴輪(はにわ)だよ」と言われ、当時の南茅部町教育委員会に持っていくことにした。

 カックウは町教委で接合された後、アヱさんと再び対面した。「バラバラだったのにめんこぐ(かわいく)なって」。そのとき初めて抱いた“わが子”は、1979年6月に国の重文に指定され、ますます遠い存在となった。

 しかし、掘り起こしたアヱさんと話を受けたみやさんの対応、八重子さんの助言、町の価値判断がなければ、函館の「足の下の日本史」は土の中に埋もれたままだった。散逸の難を逃れ、国宝への道のりが固まるまでに、多くの「天の配剤」があった。

 「自分が手にかけたから気になる」と中空土偶が話題になるたび、新聞記事などを切り抜いて集めた。国宝指定を知り、「とにかくびっくりした。お褒めの言葉を掛けてやりたい」。9年前に95歳で亡くなったみやさんにも仏前で知らせた。

 写真をなでながら「立派に出世したね」と目を細め語り掛けるアヱさん。道内で初めての国宝となったカックウに「南茅部と函館市の誇りになればいい」と期待を込めた。

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 函館市著保内野遺跡(尾札部町)出土の国指定重要文化財「中空土偶(カックウ)」が道内初の国宝(考古資料)に指定されることが決まった。31年前に発見されてから今日まで大切に見守られてきたまちの“お宝”が歩んた道のりを未来を見据えてたどる。 (宮木佳奈美)