2007年3月27日(火)掲載

◎函館八幡宮につつじ園を造成
 函館八幡宮(函館市谷地頭町2、中島敏幸宮司)の境内に函館の花「ツツジ」が植えられる。場所は、2004年9月の台風18号の猛威で倒れた木や石碑が積んだままになっている一角で、同神社の敬神婦人会(國立タミ会長、会員200人)が創立50周年を記念して申し出た。28日午後11時半から安全祈願祭を開き、4月末までに完成させる。花を付けたツツジを植える予定で、5月ごろに見ごろを迎え、参拝客の目を楽しませることになりそうだ。

 植えられるのは、参道から本殿に向かって右側の約300坪の傾斜面。500万円かけて整備し、100本を植える。

 04年の台風では、社殿(1915年完成)の銅ぶき屋根の一部がはがれたほか、参道付近のケヤキ、ヒバ、ヒノキなど約50本が根元から倒れるなど甚大な損害を被った。建物は災害保険で修復されたが、倒木地は今も倒れた石碑や大木の切り株などが残されたまま。急こう配で重機を持ち込めないため、これまで同神社職員が手作業で倒木除去に当たってきた。

 「神聖な場所を野ざらしにするのは寂しい。できることがあれば」と同婦人会が50周年記念事業として提案。再び倒れることのないよう根付きの良い、函館市の花「ツツジ」を選んだ。

 同婦人会は57年の創立から「正月の縁起物づくり」や「すす払い」などで同神社を支えてきた。國立(くにたて)タミ会長(79)は「神社に一生残るものを婦人会として選びました。参拝者が和むような場所になれば」と願う。

 同神社は「大変ありがたく感謝いたします。青い森に花が咲く。近づいて花の間に腰を下ろしたり、参道から観賞したりして楽しんでもらいたい」と話していた。

 設立50周年記念式典と祝賀会は、10月8日に行われる予定。 (佐々木 司)


◎函館市の季節労働者 半数が年収100―199万
 季節労働による年収は200万円未満で、「収入が不安定」―。函館市が季節労働者を対象に行ったアンケートで厳しい現実が浮き彫りになった。調査結果によると、収入の不安定、低収入を不安視し、通年雇用を希望する声が52・9%に上った。雇用保険の特例一時金削減や、本年度末での通年雇用安定給付金など助成制度の廃止も決定しており、行政だけではなく、事業者側にも支援や対応が迫られている。

 同市内の季節労働者は減少傾向にあるが、約5600人(出稼ぎ労働者約750人を含む)とされ、全就業者の約4%を占める。調査は1月から2月にかけ、同市内で開かれた冬期技能講習会を受けた季節労働者425人に対して実施し、411人から回答を得た(回答率96・1%)。

 回答者のうち男性は370人、女性は41人で、年齢別では50歳代が159人(構成比38・7%)で最も多く、60歳代以上を含めると207人に上った。就業業種は、土木177人(43・1%)、建築159人(38・7%)―など。

 雇用期間は、8、9カ月間が最多で、4月に就職し、12月に離職する労働者が大半。年収は100―199万円が202人(49・2%)と最も多く、次いで200―299万円が139人(33・8%)だった。また、季節労働以外の収入なしと答えた人は287人(69・8%)だった。

 通年雇用安定給付金などの廃止の影響を、「非常に大きい」と答えた人は358人(87・2%)。対策として事業主への通年雇用化や職種転換などの支援策を求める声が上がった。

 市労働課は「国の新たな通年雇用対策の概要が明らかになった時点で、市が取り組むべき施策などについて調査、検討したい」と話している。 (今井正一)


◎道知事選「北海道を変えよう」荒井氏道南入り
 道知事選に立候補した新人の荒井聡氏=民主、社民、新党大地推薦=が26日道南入りし、各地で遊説を行った。

 午後6時半からは、函館市本町の交差点で街頭大集会を実施。民主党選対委員長の鉢呂吉雄衆院議員(道4区)、社民党の辻元清美衆院議員、新党大地代表の鈴木宗男衆院議員が応援に駆け付け、荒井氏への支援を呼び掛けた。

 荒井氏は道財政の再生に向け、支持者らとともに「ほっとけないっしょ北海道」と連呼。「経済格差よりも大きい命の格差を何で放っておいたか。地方で医師不足が進んでいる」と高橋はるみ知事の姿勢を批判した。100日で取り組む緊急課題として医療格差の是正を訴えた。さらに雇用安定や出生率上昇を掲げ、「私と一緒に戦ってぜひ北海道を変えてほしい」と支持を求めた。

 鉢呂氏は「北海道を立て直すのが荒井さん。函館から北海道を変えよう」、鈴木氏は「北海道のために体を張る荒井さんのやる気を買ってください」とそれぞれ激励。辻元氏は「地方切り捨て許さないと北海道から立ち上がって。戦えるのは荒井さんしかいない」と呼び掛けた。

 荒井氏は27日午前から函館朝市、JR函館駅前で鈴木氏と街宣した後、七飯、森、長万部各町を遊説する予定。 (浜田孝輔、宮木佳奈美)


◎みなみ北海道観光写真はこだて冬フェスフォトコン 個性豊かな入賞作並ぶ
 道南の優れた景観写真などを募った「第55回みなみ北海道観光写真コンテスト」(実行委主催)と「2007はこだて冬フェスティバルカラーフォトコンテスト」(実行委主催)の入賞作品が30日まで、金森洋物館(函館市末広町13)の一角で展示されている。個性豊かな作品が、市民や観光客の目を楽しませている。

 展示されているのは、四つ切りとワイド四つ切りサイズで「みなみ北海道―」が22点、「はこだて冬フェスティバル―」が21点。

 「みなみ北海道―」は市内の五稜郭公園のサクラをはじめ、秋の大沼公園(七飯町)や「寒中みそぎ祭り」(木古内町)などさまざまな角度から四季折々の一こまをとらえている。

 「はこだて冬フェスティバル―」は、市内の元町公園や基坂など5カ所でライトアップした幻想的なイルミネーション写真や、2月10、11両日に五稜郭会場(五稜郭公園)で開催したイベント様子が臨場感たっぷりに切り取られている。

 家族3人で西部地区を散策していた南條公二さん(34)は「その場の雰囲気が伝わってくる。新たな函館の魅力をとらえている」と関心していた。

 時間は午前9時半から午後7時まで。 (工藤康行)


◎地域資源活用型産業実践セミナー 高齢者の奮闘で地域再生
 【上ノ国】上ノ国町女性団体連絡協議会(古館丸子会長)主催の「地域資源活用型産業実践セミナー・女性の元気が未来を拓(ひら)く!『自分らしさ』を生かした産業づくり」が25日、町総合福祉センター「ジョイ・じょぐら」で開かれた。同町内で農漁業などに携わる女性を中心に町内外から約300人が参加し、地元の農水産物などの活用法に考えを巡らした。

 講師は、徳島県上勝町の第3セクター「いろどり」の横石知二副社長。山深い上勝町の人口は約2000人。半数が65歳を超える過疎の町だが、四季折々の“葉っぱ”を資源として注目し、料理に彩りを添える「つまもの」の生産を高齢者を中心に展開。全国シェア8割を誇るビジネスに成長しており、過疎地の再生モデルとして注目されている。

 横石氏は「高齢者が携帯電話やパソコンを使い、時間と情報を自分のものにしている。高齢者の器用さ、知識、根気に若者はかなわない。豊かな自然がありバアちゃんばっかりの町だからできる仕事がある。人は誰でも主役になれる」と、再生の原動力になった高齢者の奮闘ぶりを紹介。「80歳を過ぎても一生懸命にモミジの種をまいているおばあちゃんは『自分の夢をまいている』と言います。何歳まで頑張れるか、子や孫が後を継いでくれることを信じながら種をまいているんです」と力説した。

 その上で「75歳から事業に参加したおばあちゃんは以前、自分の代で家が途絶え、畑も荒れて地域に迷惑をかけると案じていた。しかし、今では子供が町に帰り孫も生まれ、家族と楽しく暮らしている。住んでいる人に笑顔があれば地域に誇りが生まれる。一歩踏み出すことで必ず幸せはつかめる。上勝と上ノ国はいつも上を向いて頑張ろう」と語り、農林水産資源を生かして、新たな地域おこしを模索している町民に熱いエールを送った。 (松浦 純)


◎空港道路 工事の安全願い「きねん柱」
 函館インターチェンジ(IC)と空港IC(仮称、函館市上湯川町)間の約10キロを結ぶ高規格幹線道路「函館新外環状道路(空港道路)」の着手記念イベント(函館広域幹線道路整備促進期成会主催)が25日、同市桔梗町の函館IC管理ステーションで行われた。関係者が「きねん柱」を設置し、工事の安全と早期開通を願った。

 同道路は函館新道から函館空港方面へのアクセス機能の強化などを目的に計画が進められ、昨年11月の都市計画変更手続きで整備が決定。現在は測量が行われており、新年度にも本格的な工事がスタート。道新幹線開業予定の2015年までの完成を目指す。

 函館市をはじめとした関係自治体、函館開発建設部、渡島支庁などから関係者約100人が出席。同期成会の井上博司会長は「構想から足掛け30年でようやく着手に至った。道南地域における高速ネットワークの柱として一日も早い完成を目指したい」とあいさつ。福井孝函館開建部長は「地域と連携し、環境に十分配慮しながら早期完成に取り組みたい」。成田一憲渡島支庁長は「空港とのアクセス強化により、道南の広域的観光ネットが広がることに期待したい」と祝辞を送った。

 この後、井上会長、成田支庁長、福井部長、海老沢順三北斗市長、中宮安一七飯町長が「千代函山」と書かれたきねん柱の周りに砂を盛るなどし、会場は大きな拍手に包まれた。 (小川俊之)


◎国宝指定〜太古のロマンを秘めて〜(中)中空土偶の謎「命の再生と循環を願う気持ちの表れ」
 命の再生と循環を願う気持ちの表れか―。土偶の役割にはさまざまな説がある。函館市著保内野遺跡出土の「中空土偶」は頭や胴体、両足など内部が空洞で、縄文時代後期(約3500年前)にみられるタイプ。市教委生涯学習部南茅部埋蔵文化財担当の阿部千春参事は「中を空洞にすることに意味がある。当時の精神文化を背景に“再生”の意識を強めたのでは」と一説を挙げた。

 土偶がつくられた背景に生物、無機物を問わずすべてのものに魂が宿ると考える「アミニズム」的な縄文人の精神文化があるという。動植物の多産や豊穣(ほうじょう)を願う狩猟採集民族に多い考え方で、生命再生への思いを込めて母体像で表現したとみられる。ほとんどの土偶は乳房や腹がふくらみ、妊娠線が強調されている。

 一方、国内最大級で均整の取れた形と精巧な作りなどが国宝指定の理由に挙げられた中空土偶は、他の土偶に見られる特徴が薄い。比較的スリムな体形で男性らしい特徴もなく中性的にみえる。

 両脚部を連結する筒の穴は内部の空洞へつながる。これは脚の重みを支えると同時に焼成時の空気抜き効果が考えられ、製作技術の高さがうかがえる。しかし異説では「生命が誕生する穴」とみる専門家も。やはり女性か。想像は尽きない。

 中空土偶が出土した著保内野遺跡は当時、十分な調査ができず、昨年再調査が行われた。円を描くように石が敷かれた環状配石遺構を伴う集団墓地と分かり、縄文時代後期では珍しく体を伸ばした状態で葬る「伸展葬」で、中空土偶は副葬品と断定された。

 しかし再調査でも欠損している頭の突起と両腕の破片は見つかっていない。「一部を割って埋める」という方法は、何らかの儀式として故意に行われたとみられる。文化審議会は文部科学相への答申で、「当時の信仰や祭祀(さいし)の実態を明らかにする上で欠かせない資料で、土偶造形の到達点を示すものとして極めて貴重」と評価した。

 実は発見当時から国宝級だと言われていた。展示施設が不十分で偶然見つかったために学術的な裏付けがなく、評価はあったが具体化されずにいた。

 ベルギーやアメリカなど4カ国での海外展を機に国内外の評価が高まり、文化庁の協力で展示施設の整備計画や、学術的に裏付ける再調査が実現。30年余りの時を経て国宝へ格上げされることが決まった。

 阿部参事は「縄文時代の文化や精神を端的に表しているのが土偶。中空土偶はその中で最も優れ、縄文の精神文化の代表を担う価値がある」と存在意義をかみしめている。(宮木佳奈美)