2007年3月28日(水)掲載

◎函館子ども歌舞伎 31日に福岡で初公演 地元児童らと
 函館子ども歌舞伎(市川団四郎主宰)は31日、福岡県の小郡市文化会館で児童劇団「みくにっこ劇団レインボーキッズ」(森山悦子代表)の児童ら20人とともに歌舞伎公演を行う。同市で発足した実行委の招待を受けての“出張”で、遠く福岡の地で初めて函館子ども歌舞伎が見えを切る。

 主催は小郡公演実行委(森山洋光委員長)。昨年3月27日、同劇団は同市出身の高松凌雲を題材にした「箱館戦記〜新章〜静かなる獅子」の函館公演を成功させた。公演前日、交流を図ろうと函館子ども歌舞伎が口上を披露。手づくりのもてなしに、同劇団の関係者が感激し「小郡でもぜひ公演を」と実行委が組織された。

 演目は「良弁杉の由来」と「白浪五人男」。舞台装置を福岡まで運ばなければならず、費用面から函館子ども歌舞伎からの出演者は全8人と少人数。足りない部分は、小郡市内の劇団員にカバーしてもらうなど、異色の共演となる。劇団内で口上などのオーディションを実施した結果、20人を役者に大量抜てき。えりすぐりのメンバーで歌舞伎の舞台を踏む。

 17日に市川さんが同市を訪問。児童らにけいこをつけた。市川さんは「普段から声を出したり、せりふを覚えたりしているのか、大変覚えが早い」と褒め、本番を楽しみにしている。

 函館子ども歌舞伎のメンバーもけいこの真っ最中だ。双子の姉安代あすかさん(函館中央小5年)と妹あんなさん(同)は「良弁杉の由来」に出演。「最後のポーズをビシッと決めたい」と意欲を燃やす。

 森山委員長は「小郡では歌舞伎を見る機会が少ない。子どもたちがいろんな文化に触れられれば」と期待する。市川さんも「出演者一人ひとりに拍手が送られた時の充実感が歌舞伎の魅力。子どもたちに伝わればうれしい」と話していた。

 公演後には市川さんによるワークショップも開かれる予定。(佐々木 司)


◎子ども古代文字書道展/文字の原点「絵画」で表現
 函館市杉並町4の中島荘牛書道教室(中島荘牛講師)の「子ども古代文字書道展」が27日、函館市千歳町13のNHKギャラリー彩で始まった。教室に通う市内の小学生から高校生までの50人が、好きな文字を象形文字で表した。伸び伸びとした筆遣いの個性豊かな作品が来場者の目を楽しませている。4月1日まで。

 文字の成り立ちの意味を知り、芸術的な魅力を探ることなどを目的に、30年ほど前に初めて開催。一時中断した後、2003年からは毎年、年に一度、発表の場を設けている。

 織笠椋多君(函館附属小4年)の「面」は、人間の笑顔がモチーフ。太いまゆ毛に、つぶらな目で愛きょうたっぷり。池田さおりさん(函館中部高1年)の「羊」は、曲がった立派な角と量感あふれる羊毛が印象的。絵画のようなユニークな仕上がり。

 来場した市内美原の村上歌子さん(75)は「子どもならではの素晴らしい発想で面白い」と目を細めていた。

 中島講師は「文字の原点を知り、象形文字の素朴さや美しさなどを感じながら作品づくりに励んだ力作ばかり」と来場を呼び掛けている。

 時間は午前9時半から午後5時まで。4月1日は同4時まで。(田中陽介)


◎「道南の治安維持を」道警函本 浦谷本部長が着任会見
 26日付で着任した道警函館方面本部の浦谷博美本部長(59)=警視長=が27日、同本部で着任会見し、「管内9署1000余名の警察官の総力を挙げ、道南地方の治安維持に努めたい」と抱負を語った。

 浦谷本部長は留萌管内羽幌町出身。道警本部警務部参事官兼監察官室長、釧路署長、道警察学校長などを歴任し、昨年3月から道警本部生活安全部長。主に警備畑を歩んできた。

 浦谷本部長は重点課題として、昨年12月に発生した未解決のタクシー運転手強盗殺人事件を挙げ、「被害者や遺族の無念を晴らし、市民の不安を解消するためにも早期解決すべく全力で取り組んでいきたい」と強調。このほか、交通死亡事故の抑止や統一地方選、参院選など選挙違反の取り締まりを強化する方針も示した。

 函館勤務は函本警備課長だった1997年以来2回目。10年ぶりとなる函館の印象について「歴史と文化と温泉のまち」と述べ、「風光明美な函館で再び勤務できることは大変光栄。ふるさとに帰ってきたような感じがする」と笑顔を見せた。(森 健太郎)


◎障がい者就労支援地域道民フォーラム「行政との協力大事」
 「2006年度障がい者の就労支援に向けた地域道民フォーラム」(道主催)が27日、函館市湯川町の花びしホテルで開かれた。基調講演とシンポジウムを通じて現場の声を聞きながら、就労支援への問題点や可能性を探った。

 本年度から施行された障害者自立支援法により、障害者の就労の機会や場所の拡大が大きな課題になっていることを受け、道は2月の札幌に続き、函館、旭川、釧路の計4カ所でフォーラムを開催することにした。

 基調講演では、道南地域で介護老人保健施設の事務長を務める堺正英さんが、自らの障害者雇用の取り組みを紹介。介護保険施設という性格上、当初は障害者を雇用することは困難だと感じていたが、ハローワークの協力によって障害者4人の採用を実現。「行政との綿密な打ち合わせによって、問題を一つ一つクリアしていくことが大事。今では彼らは私たちの職場に欠かせない存在」と話した。

 続いて東京で障害者の就労支援活動に携わる吉田岳史さんが「障がい者の在宅就業の可能性」をテーマに講演。職場に通うことが困難でも個人の能力を生かす方法として「在宅就業」の可能性に言及した。「企業に埋もれている仕事を掘り起こし、さまざまな職種や業種を開拓し、障がい者が“はたらく意欲”を発揮できる環境を整えていきたい」と訴えた。

 この後「障がい者とともに働く地域社会づくり」をテーマにしたシンポジウムが行われ、障害者の支援側と雇用側がそれぞれの立場から、現在の就労支援体制の問題点や今後の可能性について意見交換した。(小川俊之)


◎指定管理者落選団体名の非開示で市情報公開審 「一部開示を」と答申
 函館市が青函連絡船記念館「摩周丸」の指定管理者に応募した3団体のうち、選定されなかった2団体の名前を非開示にしたことに対する異議申し立てで、市情報公開審査会の山崎英二会長は27日、応募した団体名を開示し、個別の評価と落選団体が分かる部分に関しては非開示の決定を妥当とする答申書を工藤寿樹助役に手渡した。

 異議申し立てをしていたのは市内日吉町の市民団体代表、大河内憲司さん。昨年11月に行われた意見陳述で大河内さんは「指定管理者制度は市民の財産を管理する、市民の重大な関心事。応募したことで会社の評価は上がり、落選が知られても不利益にはならない」とし、市は「落選団体を公表すれば、その団体や会社のイメージや社会的評価が悪くなる恐れは否定できない」と主張した。

 会社名を非開示とした文書は2種類あり、一つは申請団体3者の名前と当落の結果が分かる文書、一つは3者の名前と個別の評価基準の点数が結び付いている文書。同審査会は前者の文書については団体名を開示するよう答申した。仮に落選団体の名前が分かっても、個別の評価点数はどちらの団体かは分からない。

 大河内さんはまた、指定管理者選考委員会の議事録が作成されていない点を指摘し、作成するよう求めた。同審議会も議事録を作成することが望ましいと答申に添えた。

 市は答申内容を尊重する。(高柳 謙)


◎国宝指定〜太古のロマンを秘めて〜(下)地域振興の起爆剤に高まる期待
 「中空土偶の国宝指定は地域振興の大きな弾みとなる」。南茅部地区の縄文遺跡群を活用した魅力あるまちづくりを進めようとする函館市は、大きな期待を寄せる。

 同地区には、大規模な集落跡の国史跡大船遺跡や国内最大級の馬蹄(ばてい)型盛土遺構が発見された垣ノ島遺跡など重要な遺跡が集中する。

 それぞれの特徴を生かした遺跡公園として整備する構想は、縄文文化の発信拠点とするのが狙い。青森県の特別史跡三内丸山遺跡など重要な縄文遺跡が広がる北東北3県と北海道が連携し、縄文文化を通じて地域間交流を図る「北の縄文文化回廊」づくりを後押しする。

 早ければ2009年度にも中空土偶などの資料展示や体験学習、調査研究の拠点施設となる「縄文文化交流センター」(仮称)を垣ノ島遺跡(臼尻町)の付近に整備する計画だ。

 市教委文化財課の田原良信課長は「青函を中心とした縄文文化交流で唯一の国宝となる中空土偶が一つの核になり、象徴になる」と強調。「あくまで軸足は生涯学習の推進だが、結果として観光振興につながる」と展望する。

 ハードとソフト両面の整備が函館の新たな観光資源の創出へと結びつき、地域の基幹産業である水産業や温泉などと連動させることで広域観光ルートとしての魅力が高まる。

 市観光課の妹尾正白課長は「広域観光は滞在型観光を強化する一つの要素として必要。国宝は観光面でもPRになるのは間違いない。旧市内の都会型観光と旧4町村の漁村型観光の両方を楽しめるのは面白い」と可能性を語る。

 中空土偶の国宝指定を受け、観光業界も動き出した。市内では北都交通函館支店(高松町507)が早速、毎年春に実施する恵山つづじまつりに合わせたバスツアーに、大船遺跡埋蔵文化財展示館にある中空土偶のレプリカ(複製)見学を盛り込んだ。同社は「国宝指定は道内初で、話題性もある。観光客を呼び込むチャンスで利用客の反応を見て今後、定期化を検討したい」と前向き。

 JTB函館支店(本町6)も「観光地として整備されれば広域観光の拠点になる可能性を秘めている」と情報発信の明るい材料ととらえる。

 遺跡整備に合わせてソフト面では体験メニューの企画や展示解説などを担うボランティア育成、ハード面では宿泊や飲食、鮮魚販売などの施設整備といった受け皿づくりが求められる。住民の意識醸成も発展の鍵となる。地域の“誇り”をいかに町おこしに有効利用するか。スタートラインに立ったばかりだ。(宮木佳奈美、工藤康行)