2007年4月11日(水)掲載

◎IT人材育成研修入校式
 【乙部】乙部町雇用対策委員会(中川眞一郎委員長)を主体に本年度からスタートするIT(情報技術)人材育成研修入校式が10日、館浦のIT研修館で行われた。第1期生14人がソフトウエア開発技術者を目指して約1年間に及ぶ研修生活のスタートを切った。

 中川委員長は「研修では『第2のビル・ゲイツを乙部から』を合言葉に、世界に羽ばたく一流の技術と豊かな人間性を培ってほしい」と第1期生を激励。寺島光一郎町長は「地方でこのような研修を行うのは全国初の試み。国も町も全面的に支援する。研修は厳しいが町民との交流を楽しみ、全員で国家試験を合格して乙部から世界に飛び立ってほしい」とエールを送った。

 同町出身で研修の構想段階から参画し、前期研修を担当するIT企業「グローバル・コミュニケーションズ」(函館市)の笹谷隆社長は「ITの仕事は土壇場で力業で対応できる技術力に裏打ちされる。さまざまな状況に対応できる人間力を町民との触れ合いで身に付けてください」と呼び掛けた。

 受講生代表の梅川昌士さんと松田梨沙さんの2人が「IT技術者になるため大きな夢と希望を持って入校しました。知識や技術だけでなく人間的に成長して立派な研修生となるよう努力します」と誓いの言葉を朗読し、受講生全員で唱和した。

 研修は受講生受け入れによる人口増加、卒業生の受け皿となるIT企業誘致や新規起業などによる雇用確保などを目指す町独自の地域活性化プロジェクトの中心事業。第1期生は女性4人を含む14人。9人はUターン組を含む地元出身者。専門研修を経て基礎情報技術者の資格取得を目指すほか、地方の特色を生かした農漁業体験など、多彩な研修を行うという。(松浦 純)


◎函館の水道水「おいしい」76%…市民アンケート
 函館市は、市の水道水に対する満足度に関するアンケート結果をまとめた。水道水を「おいしいと思う」「まあまあおいしいと思う」が76%、水道水の安全性について「安心できる」「どちらかというと安心できる」も76・2%と、4人に3人が「おいしくて安全」と評価していることが分かった。

 市民生活に密着した問題について、毎年テーマを変えてアンケートを実施している。住民基本台帳から無作為に抽出した2000人にアンケートを郵送し、40・1%に当たる802人が回答した。

 水道水について「どちらかといえばおいしくない」は4・5%、「おいしくない」は2・5%で少数。この回答者に理由を選択(重複回答)で聞いたところ、一番多かったのが「塩素のにおいがするから」の53・6%、次いで「くせがあるから」が37・5%だった。

 安全性に関しては「どちらかというと不安」が3・9%、「不安」が1・1%で、全体の5・0%が何らかの不安を持っていることが分かった。理由については「水源の汚れが気になるから」が57・5%、「塩素のにおいがするから」が42・5%、「いやな味がするから」が35・0%と続いた。

 「安心」「どちらかというと安心」と答えた76・2%の理由では、「色やにごりがないから」が68・4%、「いやな味がしないから」が64・2%、「いやなにおいがしないから」が62・7%と続いた。「水質検査が行われているから」との理由も34・5%あった。

 節水については「まめにしている」が20・9%、「多少しながら使っている」が55・4%で、合計76・3%。年代が上がるほど意識が浸透している傾向も分かった。節水を心がける理由については「水は限りある資源で大切に使わなければならないから」が72・7%、「水道料金が高くなるから」が58・3%だった。

 水道について今後、特に力を入れてほしいことは「安心できる水の提供」が75・4%、「水源の水質確保」が65・6%、「地震など災害に強い水道」が61・8%、「おいしい水の供給」が53・5%などだった。

 市水道局は「策定中の市総合計画と整合性を図り、今後策定する水道事業の長期計画にアンケート結果を反映させたい」と話している。(高柳 謙)


◎道南市町の議員 先月末で8人が辞職
 【北斗、七飯、乙部】今期限りで引退を表明していた北斗市と七飯町、乙部町の議員合わせて8人が、任期を1カ月残した3月31日付で辞職した。地方議員年金制度の改正に伴い、4月以降に退職すると議員年金の給付水準が引き下げられることを理由にした“駆け込み辞職”が、全国的に相次いでいる。しかし、道南の辞職者は「高齢」や「身体の不調」「統一地方選立候補者の応援」を理由に挙げ、駆け込み辞職を否定している。

 統一地方選で議員選挙が行われる道南の自治体は2市10町。北斗市と七飯、乙部両町以外では任期満了直前の辞職はなかった。辞職した議員の任期は30日。提出書類ではすべて「一身上の都合」を理由としている。

 各自治体議会事務局では、事前に制度改正について議員に説明。一部では3月31日以前に退職した場合と、それ以降の場合とを比較した年金額の試算結果を各議員に通知しており、これが「引き金になった」とみる関係者もいる。

 最も多い5人が辞めた北斗市では10日、市議会臨時会で水上務議長が、ほかの議員に辞職の事実を伝えた。同市は昨年2月の合併誕生時、まちづくりの実行力を高めることなどを理由に在任特例を適用。合併前の任期は旧上磯町が2006年2月19日、旧大野町は4月30日。

 辞職したのは全員旧上磯町地区の市議で、旧町議長経験者もいた。水上議長は「残念だが、本人の都合であり、詳しい理由は聞いておらず止められるものでもない」と話す。

 しかし4月に臨時会が開かれることは、3月中旬には決まっていた。このため同僚市議の中には「なぜ3月末なのか」と疑問視し、制度改正を踏まえた辞職を指摘する声が多い。「住民に選ばれた職なのに議員としての資質に欠ける」「『市の筋道を付けるため』と任期を延ばしたのは言葉だけだったのか」と憤る。

 こうした指摘に対して辞職者は、高齢化や選挙活動と説明する。北斗市議の中には「任期が伸びた分も精いっぱい働いたから辞めた。議員年金のことなど頭にないのに支援者に問いただされて迷惑」と怒りをあらわにする人も。「体の不調」を挙げる辞職者は「以前から不自由で、議会事務局と相談して決めた」という。

 また、「理不尽な制度改正に対する抗議の意味もある」と、減額を意識した議員も。ある議会事務局は「制度改正の時期を議員の都合を考えて任期で切らず、年度で切る方法が悪い」と国の手法を批判する。

 なお、3月31日付で辞職した議員は次の通り。

 ◇北斗市=塩清氏(76)▽里村幸喜智氏(72)▽阿部清氏(77)▽谷杉正寿氏(82)▽熊谷孝泰氏(73)

 ◇七飯町=秋田ハチエ氏(81)▽冨原喜八郎氏(76)

 ◇乙部町=菊池晴一氏(66)(小泉まや)


◎3年で樹木再生 浅利さん調査「回復実感」…04年の台風被害状況まとめ
 【七飯】道教育大函館校元非常勤講師の浅利政俊さん(67)=七飯町緑町在往=はこのほど、2004年9月に発生した台風18号で損害を受けた、同町のリンゴなどの果樹について調査した報告書をまとめた。リンゴの出荷量、花の咲き具合、実のつき方は回復したとしている。浅利さんは「自然災害に正しく対応できるよう状況や経過を記録にまとめることは大切。道内外の生産者との意見交換に使える資料になれば」と話している。

 台風18号により果実が落下したほか、波しぶきが飛散した潮風害で葉や枝が枯れたり、季節外れに花が咲いたりした。潮風害は翌年にも被害が及んだ。

 浅利さんは発生直後から農家を回り状況を調査。「翌年回復できるか不安を持つ人が多かったのは、大きな被害があった時の対処について記録がないため」と考え、回復状況を科学的に検証して記録することにした。

 同町内の農家の協力を得て、樹齢15―18年の王林、レッドゴールド、北斗などのリンゴや、プルーンなどを調査木とし、受粉、開花状況、果実の成長を観察した。新函館農協に出荷されるリンゴの出荷量の推移も調べた。

 04年度の出荷量は、前年度の約55%に当たる250トンと落ち込んだが、05年度は407トンまで回復、06年度(1月現在)は520トンとなった。「平年並みとなったことで農家は樹木の回復を実感できたと思う」と話す。

 調査木は、果芽、葉芽の状態、開花状況、結実とも正常に戻っている。出荷量という具体的な事実と、植物学的な裏付けが合致し、浅利さんは「樹木は3年で完全に元に戻った」と話す。

 調査に農家が協力的だったことや、防風林の必要性が説かれる中、成長の早いマツダヤナギを防風林に導入する農家がいることなどを目の当たりにした浅利さんは「果樹栽培に高い技術力を求め、研修向上に努めていると実感した」と話している。(山崎純一)


◎函館市内で野火相次ぐ
 函館市内で今年に入って、空き地や河川敷などの枯れ草が焼ける野火が相次いでいる。9日現在の発生件数は前年同期に比べ倍増の6件(警戒出動を含む)。市消防本部は「昨年、初めての野火が起きたのは3月22日。今年は早くから雪解けが進み、乾燥する日が続いている」と話し、暖冬の余波に警戒を強めている。

 今年最初の野火は2月28日夕、同市銭亀町の傾斜面で発生。子どもの火遊びが原因とみられ、枯れ草など約400平方メートルを焼いた。市内で2月に野火があったのは2000年以来。

 4月に入っても各地で野火が相次ぎ、6日昼すぎには同市白石町で田畑の枯れ草など1720平方?が焼けた。さらに隣接する民有林の杉約90本に燃え移る林野火災にまで発展。民家のごみ焼きの残り火が強風にあおられ、燃え広がったのが原因だった。

 同本部予防課によると、例年野火が発生し始めるのは3月下旬から4月下旬ごろ。今年は暖冬の影響で空き地などに雪がなく、枯れ草があちこちの地面に顔を出している。これに伴い屋外での作業時期も早まり、週末の日中や子どもたちの春休み時期に野火が頻発した。

 9日現在、建物の火災も前年同期比7件増の24件。焼損面積や死者数も増加傾向にある。同課は「春先は函館特有の強い風と、空気が乾燥する日が続く。あらためて火の取り扱いには細心の注意を」と警鐘を鳴らしている。(森 健太郎)