2007年4月13日(金)掲載

◎サツマイモの苗すくすく…厚沢部
 【厚沢部】札幌酒精工業厚沢部工場(厚沢部町鶉、岩崎弘芳工場長)では、焼酎原料用のサツマイモ・黄金千貫(コガネセンガン)の苗が春の日差しを浴びながらすくすくと成長している。

 昨年10月に操業を開始した同工場は、町内産の黄金千貫などを原料に本格焼酎「喜多里」を製造。工場に隣接する2棟のビニールハウスでは、秋の仕込みに向けて約50万本(15ヘクタール分)の苗を丹精込めて育てている。

 苗作りは3月上旬に始まり、数センチ間隔で並べた種イモを丹念に土で覆った。保温したハウス内では新芽が続々と成長。4月に入ると青々とした葉が一面に生い茂った。成長した茎を切り取って苗を作り、5月中旬から町内の畑に定植。10月前後には収穫期を迎える。

 昨年秋に始まった焼酎の製造も順調に進んでおり、今月下旬には瓶詰め作業が始まる。岩崎工場長は「焼酎も順調に熟成が進み5月中旬の初出荷を予定しています」と語り、初めての“100%厚沢部産焼酎”の出荷準備に余念がない様子だ。(松浦 純)


◎合併4町村「地域の代表」へ願い熱く…07年統一地方選
 在任特例が終了し、定数特例を適用する函館市議選(15日告示、22日投開票)の関心が、合併旧4町村地域で特に高まっている。今回のみ、旧町村単位で定数1の選挙区を設置。現在45人の旧4町村市議が改選後は4人となり、漁業振興や景気回復、福祉の充実など「地域の代表」に期待する住民の声は大きい。普段は静かな漁村地帯に、15日からは選挙カーや候補の訴えが響き渡る。

 地域を支えた合併時の町村長が3月末で支所長を退任したこともあり、住民からは「事実上の町長を選ぶ選挙」との声も聞かれる。

 戸井は現職2人、恵山は現職と新人の2人、椴法華は現職3人と新人1人、南茅部は現職2人が立候補を予定している。合併前の前回議員選(2003年)は、恵山を除き3町村が無投票。戸井は無投票が3回続いたため、1991年以来16年ぶりの選挙戦となる。

 漁業が基幹産業のため、各地域とも水産振興や漁業基盤整備、魚価の安定などを望む声が大きい。浜町(戸井地区)の漁業の男性(75)は「第一に漁業振興。ムラサキウニの出荷額は、安い時で1キロ370円。きょう(12日)は600円だったが、高い時は1000円を超す。価格安定や資源増大なども望みたい」、富浦町(椴法華地区)でコンブ干し作業をしていた女性(55)も「今年は雨や雪の日が多く、コンブ乾燥機の燃料代が大変。漁業や前浜が活気づくよう願っている」と話した。

 有権者の関心は総じて高い。木直町(南茅部地区)の無職の女性(75)は「私も含め、同年代の住民の関心が特に高い。漁師まちなので漁業振興はもちろん、福祉政策に力を入れてくれる候補に1票を入れる。合併して初めての選挙で、かつての町長選と同じくらい大切な選挙」と力が入る。高岱(恵山地区)の飲食店従業員の女性(59)は「お客さん同士は選挙の話をしない。それは逆に関心があるから。地域をよく知り、景気対策に力を入れてくれる候補を選びたい」。

 候補が少なく残念、という声も。尾札部町(南茅部地区)の漁業の男性(61)は「地元に貢献してくれる候補が一番。ただ、今回は2人の出馬となりそうで、もっと多く立候補があれば選択肢が広がる」と指摘する。

 市議会事務局によると、2004年12月の合併からこれまで計10回の定例市議会で、旧4町村議員は延べ60人が一般質問をした。「地域の声を届け、水産振興や恵山高校の統廃合問題、消防・防災体制の整備などに生かされた」と語る。

 8日現在の有権者は、戸井3044人、恵山3663人、椴法華1180人、南茅部5739人。(高柳 謙)


◎「観光情報学研」を選出…国交省のまちナビ
 道南観光の調査・研究などを進めるグループ「はこだて観光情報学研究会」(松原仁主査)が、観光客に対する情報提供の高度化を図る、国土交通省の支援事業「まちめぐりナビプロジェクト(まちナビ)」に選ばれた。今秋に開催予定の「第3回はこだて湯の川オンパク」に向け、携帯電話による予約をはじめ、アンケートの集約や観光情報の提供など、一連のシステム構築を目指す。

 「まちナビ」は、昨年度から始まった事業。本年度は全国から62件の応募があり、選ばれた31件のうち、道内では函館が唯一採択された。同研究会への助成金は1000万円。

 これまで「はこだて湯の川オンパク」での予約は、電話やパソコンで対応してきたが、来函した観光客が携帯電話で空き状況を確認して予約できるようにする。画面上では、参加後に満足度や感想などのアンケートを選択または入力して送信してもらうことで、情報として集積する。

 また、プログラムを決める上で参考にしてもらうよう、第2回オンパクのプログラム風景を映し出す、デジタル携帯音楽プレーヤー「iPod(アイポッド)」の貸し出しも宿泊先で応じる。このほか、集積したアンケートの情報を基に、年代や要望に合ったプログラムの提案もする。

 同研究会幹事の鈴木恵二公立はこだて未来大教授は「携帯電話や提供する情報などをうまく連動させることで、新たなプログラムの創出や顧客満足度の向上に活用してもらえれば」と話している。(浜田孝輔)


◎篆刻家の宮腰善行さん・ヘブライ文字の旧約聖書「創世記」第1章27、28節完成
 ヘブライ文字で記された旧約聖書の「創世記」の篆刻を1996年からライフワークにしている函館市千代台町32の篆(てん)刻家、宮腰善行さんがこのほど、第1章第27、28節を一つにして完成させた。27節の「神は御自分にかたどって人を創造された」は、「創世記」の中で宮腰さんが最も好きな言葉という。「ようやくたどりついた思い」と喜んでいる。

 宮腰さんは約20年前の60代のころ、愛妻の京子さんを亡くした。意気消沈していた時、「文字を彫るだけでなく、精神的な物で永遠に残るものを作ろう」と考え、旧約聖書の言葉を作品にすることにした。95年には「モーゼの十戒」を7年かけて完成させ、これに続き「創世記」全50章の制作に入った。

 篆刻を始めて約50年。蘇石(そせき)という石を鉄筆で彫る。宮腰さんが取り組むヘブライ文字は、紀元前12―16世紀ごろのもので、トラピスト修道院の神父から、文字の太さや点の打ち方などの指導を受けた。

 1節から5節までは2年で完成。その後、半年から1年のペースで1節ずつ彫り続けてきたが、第26節完成から28節を仕上げるまで2年かかった。「文の意味をかみ締め、文字をデザインする大変さはこれまで以上。それほど大切な内容が書かれていて難しかった」。作品のそばにある何枚ものスケッチが苦労を物語る。

 全章完成まで先は長い。「与えられた使命だと思い、1節1文字に感動して取り組んでいきたい」と意欲を見せる。

 作品は同修道院や国内外の教会、大学に納められている。機会があれば市内のギャラリーで公開する予定。(山崎純一)


◎交通ルールを守ろうね…安全運転管理者協が長崎屋前で大型街頭啓発
 「新入学(園)期の交通安全運動期間」(5―14日)に合わせ、函館中央地区安全運転管理者協会(東海林●会長)は12日、函館市美原の長崎屋函館店前で大型街頭啓発を行った。近くの中央小学校の児童が交通安全ルールについて学んだほか、道行くドライバーや買い物客に安全運転や夜光反射材の活用などを呼び掛けた。

 毎年新入学期に行っている。同協会、中央小の新入学児50人のほか、函館中央署、函館地区トラック協会、函館中央地区交通安全協会連合会など、運輸、交通安全関係の14機関・団体から計約200人が集まった。

 東海林会長に続いてあいさつした高橋道夫函館中央署長は「高齢者や子どもといった交通弱者が犠牲になる交通事故が依然多い。自分たちの子ども、孫、父母を守る気持ちで交通安全を訴えよう」と呼び掛けた。参加者は同店前の道道函館上磯線(産業道路)前に並び、蛍光色の交通安全旗をなびかせてドライバーにアピールした。

 児童は子猫が主人公の紙芝居で交通安全についてしっかり“お勉強”。「信号が黄色だったら?」との問いには「止まるー」と元気に答えていた。同校に戻る時には実際に道道を横断。高橋署長らに誘導されながら、手を高々と挙げて渡っていた。(原山知寿子)

※●は「火」へんに「軍」


◎附属中1年・向美乃里 世界4位…アルペンスキー「ウィスラーカップ」KIクラス大回転
 6日からカナダ・ブリティシュコロンビア州で開かれていたアルペンスキーのチルドレンレース世界最高峰の大会「ウィスラーカップ」(FIS=国際スキー連盟公認)で、函館市の向美乃里(ニセコ・ティンカーベル、附属函館中1年)がKIクラス(小学5年生―中学1年)の大回転で、出場96人中日本勢最高の4位と大健闘した。初の海外レースで好成績を収めた向は「次こそ表彰台を狙う」と新たなシーズンに向け早くも意気込んでいる。(岡部彰広)

 チルドレンレースは、FISポイントが取得できる15歳より下の世代が対象。ウィスラーカップは将来のオリンピック優勝候補らが集まるビッグタイトルの一つで、今回は世界20カ国から300人以上の強豪選手が出場した。向は3月の「第8回ゴールドウィン ナスターレース チルドレンキッズ ジャパンカップ」(新潟県・苗場スキー場)のチルドレンIクラス(小学5年生―中学1年生)で初出場ながら総合優勝し、出場権を手にした。

 ワールドカップにも使用されているあこがれのコースは、初めて見る難コースでもあった。「次のポールが見えないぐらいの急斜面。日本では考えられない。距離もいつゴールにたどり着くのか分からないぐらい長い」。おまけに現地に到着して翌日すぐのレースで、準備万端とはいかなかった。ただ「滑れば何とかなるのでは。頑張ってみよう」と気持ちは前向きだった。

 初日のコンビ(大回転と回転の混合)は、大事に滑り過ぎて11位。「がっくりきた」。しかし、気持ちの切り替えが早いのが向の持ち味だ。その反省を生かし、翌日の大回転では積極的な滑りで難コース制覇を目指した。急斜面と緩斜面が切り替わるポイントでスピードがコントロールできず、スキーが“落とされた”状態となったが、3位のアメリカ人選手に0・59秒差の4位に食い込んだ。最後の回転は第10旗門手前で失敗してレースが終わったが「攻めた結果」と、一応の成果を得て海外初挑戦を終えた。

 今回の経験は、スキーに対する向上心に一層、火を付けた。上位の外国人選手は身長180センチはあろうかという大型選手ばかり。さらに3種目制覇のニーナ・ツィダー選手(スロベニア)とは、大回転で1秒82の差をつけられた。「大回転は決していい滑りではなかったので、うれしかったけど満足はしていない。それに北海道や日本ではいい成績が残せても、世界ではまだ下の方。だから外国人と戦えるよう頑張ろうと思う。ご飯を食べて大きくなる。そしてもっと努力をしたい」

 来年は一つ上のKIIクラスに臨む。「またウィスラーに。今度は…」。1年後にはどこまでたくましくなっているか楽しみだ。