2007年4月25日(水)掲載

◎企画 「変革への船出」 西尾市政スタートへ・下…対応次第で批判や火種
 西尾正範・新函館市長の最初の課題となった、市役所職員の融和や議会、経済界との関係修復。いずれも市政の推進と公約を実現していく上で欠かせない。

 「当選したばかりの市長に、ただちに公約実現を迫る声は上がらないだろう」との声があるが、勝利の余韻が冷めれば、いや応なしに函館の厳しい現実が突きつけられる。「すべては今後の西尾の対応次第」。経済界や政界関係者は指摘する。何かでつまずいたら一気に批判が高まる恐れがあり、まずは互いの信頼関係を築くことが試金石となる。

 選挙結果に市役所の職員は冷静で、淡々としている。「もう井上派や西尾派などと言ってられない」と、西尾が唱える「変革の道」を歩む決意だ。ただ、西尾のこれまでの発言や言動がしこりとして残っているのも事実。西尾派とみられる職員と、井上派の職員をどう融和させ、新体制を築くか、手腕が問われる。「副市長の起用を含め、人事は大人の対応で分け隔てなくやらないと火種が残る」(関係者)。

 圧倒的な勝利という有権者の審判は重いが、あまりに“市民受け”する発言が続けば、職務に懸命な市職員の士気や組織体制にも影響が出る恐れは否定できない。当選後、西尾は「有権者から多くの願いが寄せられ、重い責任がある。自らを律して市長の職を4年間務めたい」と述べ、立場や責任の重さを自覚して行動する考えを示した。しかし「助役時代は軽率な発言もあった。そうしたことが続かなければいいが」(市OB)と懸念する声もある。

 議会はどうか。重要な案件などに必要な「根回し」を、西尾はこれまでするタイプではなかった。「その姿勢は変わらないのでは」との声が職員から聞かれる。本人も「これからの時代は与党も野党も関係なく、是々非々で臨んでもらいたい」と語っている。

 これに対してある保守系市議は「基本的に与党か野党しかない。われわれも選挙の審判を経てきた。最初から対立するつもりはないが、議会の信任はまだ受けていない」と語る。会派はそれぞれ「看板」を掲げており、西尾市政がどのような旗色を示すかが注目される。

 また議会では、会派の再編が水面下で進んでいる。その動向もカギを握りそうだ。

 経済界はどうか。「勝てば官軍。選挙結果から、経済界の一部は井上支持の形を取りながら西尾に投票したのも事実。批判された側はメンツがあるが、あとは静観の構えだろう。経済界がどうこうするのではなく、あくまで西尾がどういうスタンスで対応してくるかにかかっている」(関係者)との声がある。

 「対立の構図」を残した函館市長選。新市長には是正に向けたバランス感覚が求められ、議会や経済界は「お手並み拝見」というところ。西尾丸の船出は逆風だが、船長の判断と力量で順風に変えることもできそうだ。初登庁は27日。対立や恩讐(おんしゅう)を超え、西尾の考える「市民のための市役所づくり」への改革が始まる。(文中敬称略)(高柳 謙)


◎芋焼酎瓶詰 発売待つだけ…札幌酒精工業厚沢部工場
 【厚沢部】札幌酒精工業厚沢部工場(岩崎弘芳工場長)が町内産サツマイモを原料に昨秋から仕込みを始めた、本格芋焼酎「喜多里(きたさと)」が5月18日に初めて全道発売される。24日からは主力商品の720ミリリットル瓶の瓶詰め作業もスタートした。

 作業は洗浄、芋焼酎の注入、密栓まで完全自動化。焼酎が満たされた瓶は光にかざして不純物を含んでいないが厳重に点検され、次々と段ボール箱に詰め込まれていく。

 岩崎工場長は「昨年10月の操業開始からあっという間の半年でした。製造ラインが流れているのを見ると酒の工場だと実感がわきます」と笑顔を見せた。

 同社は一昨年まで、厚沢部産の焼酎用サツマイモ・黄金千貫(コガネセンガン)を札幌工場(札幌市西区)に運んで製造していた。札幌工場で使っている琴似発寒川の伏流水は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンが多い硬水だが、厚沢部工場が利用する涌水はイオン含有量が少ない道内有数の軟水だ。酒造りにも最適といわれ、初の厚沢部産焼酎の仕上がり具合が焼酎ファンの注目を集めている。

 岩崎工場長は「口当たりの軟らかい焼酎に仕上がりました。厚沢部の水が持つ特徴をうまく引き出せたと思います」と自信を見せる。

 計15万本を製造。同18日は全道で5万本が発売される。(松浦 純)


◎函館市営熱帯植物園 27日新装オープン
 温室の鉄骨改修のため昨年9月から休業していた函館市営熱帯植物園(湯川町3)が27日正午、リニューアルオープンする。温室内に展望台を整備したほか、芝生を張った前庭には、温泉を利用した足湯やぬくもりベンチを設置。約300種3000本の熱帯植物が楽しめる。

 同植物園は、湯の川温泉観光資源強化の一環として、温泉熱を利用したガラス張りの温室を設け、1970年7月に開園。今回の改修は、オープン以来初の大規模リニューアルで、鉄骨部分の老朽化による耐震強度不足を解消。植物の配置替えや刷新を図った。

 温室内の通路は、ウッドチップを敷き詰めた。新たに植えた植物はまだ高さが低いものが多く、すっきりとした印象を受けるが、数年内には大きく成長し、雰囲気も変わる見込み。また、中央部分には高さ2・5?の展望台を設置。温室内を一望できるほか、ガラス越しに見える砂浜が南国のビーチを思わせ、津軽海峡を見渡せる。

 イベント広場として使用していたスペースにはウッドデッキを配置し、展示などに利用できる。屋外では、大人が10人ほど座れる足湯や、温泉熱を利用したぬくもりベンチ、四季折々の植物が楽しめる花壇を整備した。100匹以上のニホンザルが愛らしい姿を見せるサル山も健在だ。

 オープン当日は無料で開放。28、29両日には、指定管理者のNPO法人(特定非営利活動法人)函館エコロジークラブ主催の記念イベントも開かれる。

 通常の開園時間は午前9時半から午後6時まで。入場は一般305円、小中学生100円。

 問い合わせは温泉課TEL0138・57・0905。(今井正一)


◎元課長に懲役3年…亀田農協1億円盗難
 函館市亀田農協(昭和4、山岸栄一組合長)の金庫室から現金約1億円を盗んだなどとして、窃盗などの罪に問われた同市西桔梗町、元同農協金融部運用課長で無職今正光被告(58)に対する判決公判が24日、函館地裁で開かれた。岡田龍太郎裁判官は「犯行は計画的で大胆で、農協全体の信用を大きく失墜させた」として、懲役3年(求刑・懲役5年)を言い渡した。

 岡田裁判官は犯行の動機を「競馬や競輪などのギャンブルに金銭を浪費して大きな借金を重ね、その返済に困窮した」と指摘。「先に起こした横領、詐欺事件の発覚を防ぎ、残った借金をまとめて返済しようとした。動機に酌むべき点は見出せない」と断じた。

 窃盗の手口も「職務上警備システムや鍵の保管場所、金庫の暗証番号などを知っていたことを悪用した」と非難。「一度退社するふりをして建物内に舞い戻り警報センサーを解除し、防犯カメラの映像が保存されるハードディスクレコーダーを投棄するなど、罪証隠滅工作にも及び、刑事責任は相当重い」とした。

 判決によると、同被告は昨年12月4日午後7時半ごろから同8時15分ごろまでの間、同農協金庫室内で現金9996万円などを盗んだ。また、同10月24日、同市内の女性(当時78)に架空の国債購入話を持ち掛け、現金約150万円をだまし取るなどした。

 検察側は前回公判(3月30日)で懲役6年を求刑。しかし、判決前に再開された弁論で弁護側が、同被告の家族が約350万円を弁済したことを報告。これを受け、求刑を懲役5年に改めた。


◎はしご酒でほろ酔い気分…西部地区バル街
 函館市西部地区の飲食店をスペインの居酒屋「バル」に見立てて飲み歩きを楽しむ催し「函館西部地区バル街」(実行委主催)が24日、開かれた。会社帰りの仕事仲間やグループなどが続々と繰り出し、この日だけのオリジナルのおつまみ「ピンチョー」や飲み物を満喫。通りははしご酒を楽しむ市民らでにぎわった。

 7回目のことしは過去最多の56店が参加。前売りチケットは2300冊を販売し、当日券を買い求める人も多くいた。アクロス十字街前ではワインや自家製生ハム、フランスパンを無料で振る舞い、長蛇の列ができた。

 レストラン「パクリッチョカキボウ」(末広町5)は2回目の参加で、自家製ピクルスやニョッキのクリームソースなどのピンチョーを用意。テーブルを取り払った店内には、ひっきりなしに客が訪れた。オーナーシェフの柿崎直美さんは「普段とは違う客層で楽しい」と話していた。

 飲み歩きで春の宵を楽しむ人たちはみな笑顔。函館市湯川町の介護老人施設職員、小川洋一さん(51)は「バル街は3回目。初めての店でも気兼ねなく入れるのが魅力。友人にばったり会って合流できたので、さらに盛り上がりたい」と話していた。(原山知寿子)


◎道南では210校実施…全国小中学校で学力テスト
 小学校6年生と中学校3年生を対象とした「全国学力・学習状況調査」が24日、全国一斉に行われ渡島・桧山管内の国公私立小中学校、特別支援学校(盲、ろう、養護学校など)約210校の8100人余りが国語と算数(数学)などに関する調査を受けた。

 両管内、一部の特別支援学校と対象学年を持たない学校を除く、全校で午前9時前、一斉にテストを開始。小中学校とも教科に関する調査では基礎知識を問う「A」と応用力を問う「B」を記述したほか、生活習慣や学習環境などに関する調査にも回答した。

 国私立各校や渡島・桧山両教育局によると、いずれも滞りなく終了したという。