2007年5月13日(日)掲載

◎おしま地域療育センターが存続危機
 障害児の診断やリハビリテーション、児童デイサービスなどを行うおしま地域療育センター(函館市石川町41、大場公孝センター長)が存続の危機にさらされている。障害者自立支援法施行に伴い、同センターと、運営する侑愛会(本部・北斗市)の経営状態が悪化する見通しになったためだ。併設するゆうあい会石川診療所の高橋和俊所長は「現状のままだと2009年までに閉鎖しなければならない」と危機感を募らせる。

 同センターは1985年に渡島・檜山管内の早期療育機関として開設。診療所が併設されていて、診断に合った適切なリハビリテーションや支援が受けられる。同様施設の多くは自治体が運営していて、全国でも数少ない民間施設の一つ。

 外来、リハビリを含めた2006年の利用者は約1000人。精神遅滞や脳性麻痺(まひ)、学習障害(LD)のほか認知度の高まりに合わせて自閉症が大幅に増えた。01年に比べ約10倍の369人に上り、全体の約4割。利用者は年々増加し、初診は現在、3カ月待ちの状態という。

 函館、北斗両市と七飯町の委託を受け、リハビリなどを実施。医師と看護師のほか、理学療法士、作業療法士、言語聴覚療法士計7人のスタッフが常駐している。

 しかし、06年の法施行で20分の訓練に対する医療費は一人当たり800円減った。09年にはさらに150円減ることが決まっていて「人件費にもならない」と高橋所長。

 (1)1件当たりの診療時間の短縮(2)当日キャンセルの減少(3)リハビリ受け入れの増加―などで経営の効率化を図る考えだが、「民間には限度がある。人的資源を道南から散出させないよう、近隣市町には公的な仕組みづくりを求めていきたい」(高橋所長)という。

 道南の障害児の保護者の多くは同センターを利用して発達相談などを行っているだけに存続問題は切実だ。市民団体「わっとな」の山口照美代表(35)=函館市在住=は「深くまで障害を理解している施設がなくなったら困る」、日本自閉症協会道支部道南分会の■樓(ごろう)礼子会長(49)=七飯町在住=は「道南には代わりになる施設がない。保護者として強く存続を希望し、自治体に公営化を求めていきたい」と話している。※■はにんべん(イ)に吾 (笠原郁実)


◎14日から「放課後子ども教室推進事業」スタート
 放課後の学校に子どもの安全な活動拠点をつくる「放課後子ども教室推進事業」が、14日の函館あさひ小学校を皮切りに、16日からは旭岡、南本通両小学校でも順次スタートする。本年度から事業主体が文部科学省から函館市に移行。昨年度までの実績がある3校から実施する。コミュニティ「あさひ」広場運営委員会(小玉陽造委員長)が運営するあさひ小の「夕焼け広場」では、新たにスポーツや学習の指導に取り組む。

 同事業は昨年度まで文科省の委託事業「地域子ども教室」として実施。本年度から厚生労働省と文科省の共同事業「放課後子どもプラン」の一環として進めることとなり、市町村が実施主体となった。

 市内では昨年度まで、各地域のボランティアでつくる運営委員会が委託を受け、あさひ、旭岡、南本通の3校で開設していた。本年度から実施主体は市教委となるが、運営はこれまで通り地域のボランティアを中心に進める。委託事業での実績がある3校をモデルに本年度はさらに3カ所増やす方針だ。

 あさひ小で活動する「夕焼け広場」は、3年間の実績がある。これまで地域住民らボランティアが見守る中、子どもたちは体育館やグラウンドでドッジボールなどの遊びやゲーム、物づくりを行い、異世代間の交流も深めてきた。

 本年度から開設時間が30分延長されたため、授業が終わる時間が遅い高学年を対象に、経験のあるボランティアが野球や卓球などを指導する「スポーツ体験の場」を新たに取り入れる。また、宿題や自習をする中高学年の子に勉強を教える補習時間を設け、学習アドバイザーに地域の元教員や現役大学生を活用する。

 小玉委員長は「もっと遊びたいという高学年の要望や保護者の勉強指導を望む声を取り入れた。個性豊かな、子育て環境のよい地域にしていきたい」と意欲を見せる。市教委生涯学習課は「地域の子どもを地域が育てる夕焼け広場の取り組みを、全市的に広げていきたい」としている。 (宮木佳奈美)


◎市立函館博物館、企画展と特別展を2回ずつ開催
 市立函館博物館(長谷部一弘館長)は本年度、例年1回ずつ開く特別企画展と特別展をそれぞれ2回開催する。本館(青柳町17)では道内初の国宝となる「中空土偶」をお披露目する「蘇(よみがえ)る北の縄文ロード」、11月に閉館予定の五稜郭分館(五稜郭町44)では収蔵資料を一挙公開する「さらば五稜郭の星」などを企画。同館は「この機会にぜひ足を運んで」と来場を呼び掛けている。

 同博物館はこれまで、本館で特別企画展、分館で特別展を年1回ずつ開催していた。本年度は箱館奉行所の復元工事に伴う分館閉館を機に多くの市民に来館してもらおうと、特別展を増設。本館は縄文遺跡の価値や、北海道と東北3県に通じる縄文文化の流れ「北の縄文ロード」を周知する狙いだ。

 本館は7月1日から8月19日まで「蘇る北の縄文ロード―発掘された縄文の世界―」を開く。道南や青森、岩手県の縄文遺跡の出土品など約1000点を展示する。中空土偶をはじめ、各地域の土偶(複製含む)、土器、石器など1300年前から1万年前の資料が集まる。期間中、一般市民を対象にした体験講座を開講する。

 続いて9月2日から10月21日まで、アイヌ民族の文化を伝える「アイヌからのメッセージ2007―現在から未来へ―」を開催。アイヌ民族30―40人が製作した民具や工芸品などを約100点を展示する。伝統的な民族の文様を現代アートに生かした作品なども見られる。

 分館で開く「さらば五稜郭の星」は2部構成。一部は7月14日から9月17日まで「血戦!戊辰戦争―東北・蝦夷地の戦い―」、2部は10月2日から11月30日まで「さよなら

 これが五稜郭分館だ!―収蔵資料一挙公開!見せます最後の五稜郭―」。

 1部は京都で新選組を結成した浪士組から分裂し、江戸に戻った新徴組や東北諸藩と戊辰戦争のかかわりなどを紹介。2部は収蔵資料を中心に1954年の北洋博覧会、「五稜郭氷」などの関係資料を展示する。

 午前9時から午後4時半まで。観覧は午後5時まで。月曜休館。問い合わせは本館TEL0138・23・5480、分館TEL同・51・2548。 (宮木佳奈美)


◎祝祷祭、野外劇の安全と成功を祈る
 今年で20周年を迎える市民創作「函館野外劇」のステージ設営を前に、祝祷(しゅくとう)祭が12日、函館市内の五稜郭公園内で行われた。関係者ら約50人が出席し、工事の安全とともに大きな節目の公演成功を祈った。

 公演を主催する市民創作「函館野外劇」の会(フィリップ・グロード理事長)の役員やスタッフ、工事関係者らが出席し、ステージの設営予定で行われた。祭服を着たグロード理事長は「子どもから大人まで分け隔てしない人間が集まり、歴史の良さを伝える、ほかにはない祭り。さらに20年、まだまだ続きます」とあいさつ。「(野外劇のある母国の)フランスもうらやましがっています。楽しみながら事故のないように進むことを祈ります」と聖書を朗読、賛美歌などを歌い、成功を祈った。

 同会は21日から水舞台の資材の搬入を開始する。6月9日までに完成させ、舞台でのけいこを始める予定だ。主要キャストは現在、発声練習や台本読みの猛特訓中。初めて土方歳三役を務める佐藤昭洋さん(34)は「せりふより、アクションが多い役。舞台が完成すれば、立ち回りも覚えることになる。気持ちが引き締まります」と話していた。

 今年は7月6日から8月5日までの毎週金・土曜の全10日(8月だけ土・日曜の4、5両日開催)。同会事務局は「出演者や裏方スタッフも随時募集中。多くの人に参加してもらいたい」と呼び掛けている。問い合わせは同会TEL0138・56・8601。 (佐々木 司)


◎金田議員の進退で連合会長「相談していく時期」
 リハビリの傍ら国会活動を続ける民主党の金田誠一衆院議員(59)=道8区=について、連合北海道渡島地域協議会の渡部正一郎会長は12日、函館教育会館(函館市中島町)で開かれた参院選の道8区合同選対会議で、「今後の政治活動をどうするか党や後援会と相談する時期だ」と述べ、進退を協議する必要性を示唆した。

 金田氏は2006年1月に脳こうそくになり入院。同9月に退院し、リハビリを続けて同12月に1年1カ月ぶりに国会復帰した。

 その後まだ1度も函館入りしておらず、渡部会長は「地域に顔を出さないのは問題」と懸念。6月の党道8区総支部の役員改選後に、党や後援会と3者会合の場を設け、問題提起する意向を示した。 (宮木佳奈美)


◎函館地区ハイヤー協会・夜間巡回指導開始
 函館地区ハイヤー協会(鍵谷良一会長)による夜間巡回指導が11日から、函館市本町などで始まった。同協会の指導委員会(横田有一委員長)のメンバーらが繁華街に繰り出し、交差点付近で客待ちをするなどの悪質なタクシーの一掃に乗り出した。

 業界を取り巻く環境の厳しさを打破するため、同協会は乗務員のモラル向上を優先課題に据える。同協会単独では初めての取り組みで、初日は同委員会のメンバー10人のほか、道運輸局函館運輸支局の職員2人も立ち会った。

 見回ったのは、会社帰りのサラリーマンらでにぎわう道道五稜郭公園線(行啓通)沿い。メンバーらは二手に分かれ、違法な駐停車車両がないかを確認。慌てて移動する車両も見られたが、中には忠告に応じず、同運輸支局職員から警告を受ける場面も。

 横田委員長は「指導を行き届かせ、タクシー運行に関し、市民に十分理解を得られるようにしたい」と話していた。

 夜間巡回指導は、6月2日までの毎週金・土曜の午後10時から約1時間程度行われる予定。  (浜田孝輔)