2007年5月3日(木)掲載

◎水のある風景(2)三味線滝/余韻ある音の響き三味線の音色
 函館市岩戸町(南茅部地区)から国道278号を北上。右に噴火湾、正面に駒ケ岳と美しい風景を望みながら鹿部町に入ると、すぐ左手に落差約30メートルの滝が目に入る。沢の水が集まってできた三味線滝だ。

 近くの看板には「岩を流れ落ちる清流が三味線の音色に聞こえるから」と、命名理由が記されている。「ザザー、ドーン」。とても「ベン、ベン」には聞こえない。

 だが、何段もの岩壁を凝視し、注意深く聴くと、岩ごとに音の強弱があり、優しさを感じる。やはり弦の余韻がある三味線の音色に似ている。

 滝つぼに落ちた水はすぐ噴火湾に流れ込む。滝の音と波の音のハーモニーが心と体をリラックスさせてくれる。(山崎純一)

 ◆三味線滝 鹿部町大岩
 国道278号の函館市岩戸町(南茅部地区)との境近く。


◎企画「願いを託し」(1) 行政に頼らず地域力で…戸井・吉沢慶昭さん
 前町長の引退に伴う2002年3月の戸井町長選に、町助役を辞職して立候補し無投票当選。民間の建設会社から役場入りしたため、逆に「民間に負けられない」との信念を持った。「住民の意識改革」を公約に掲げ、地域の活力は地域で生み出す取り組みを続けてきた。

 ――町長当選時に考えたことは。

 従来の行政は役場にものを頼む「陳情型」でしたが、これからは「提案型」でないかと考えました。町政懇談会を開く前に町内会長らに諮ってみたら、それでいいのではという回答を得ました。「地域や自分たちでできることは自分たちでやろう」という考えで臨み、その考えは合併した以降も変わっていません。

 ――どんな「地域の力」が生まれましたか。

 行政からの補助金を受けず、町民有志の実行委員会形式で「盆踊り大会」が03年から始まりました。「ふれあい湯遊館」で開き、今は旧市内からの参加者も増えています。漁協の動力船部会や女性部の力で「お魚感謝デー」も03年から始まり、住民有志が試験的に天然フノリやヒジキ、ガゴメ(トロロコンブの仲間)の粉などをパック詰めで販売しました。こうした取り組みが地域を活性化させ、地域でできないことを行政がやるという形に変わりました。

 ――合併問題は。

 合併の「西尾私案」が出され、基礎自治体は1万人とされました。当時の4町村を合わせると1万7000人ほどでしたが、10年もすると大幅に減少し、函館とまた合併という話になる。「やるとすれば1回で」ということで、4町村長と話を進めました。町民には将来人口や高齢化率、財政問題を含め、理解をいただきました。

 ――合併後、地域は変わりましたか。

 漁業振興は合併建設計画通り、製氷貯氷施設の整備などが進み、ガゴメの漁場造成など市になって始まった取り組みもあります。ウニやアワビの種苗生産も旧町時代から続いています。

 私は町民に「合併はバラ色の将来を約束するものではなく、現状維持を続けるもの」と言い続けてきました。「行政サービスが低下した」という声もありますが、極端に悪くなったわけではありません。

 ――職員や地域に望むことは。

 職員と住民の対応次第で、住民の行政に対する不満は変わってきます。私は現場主義で、建設課長時代からとことん町民と対話し、さまざまな意見や要望を聞いてきました。顔を覚えてもらうと苦情も減る。電話で苦情を伝えた住民にも、現場で対応すると苦情は収まるのです。

 ――これからの自治は。

 繰り返しになりますが、住民には「地域でできることは地域でやる」「我慢するところは我慢する」という考えをさらに持ち、職員も住民と積極的に対話を重ねることが大切です。これは合併する、しないにかかわらず、同じです。地域が元気になると、函館も元気になる。住民と行政が連携し、協働のまちづくりを進めていくことが、今後ますます重要になってくるでしょう。(高柳 謙)

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 函館市と合併した渡島東部旧4町村の首長が、3月末で支所長(特別職)を退任した。旧町村時代からの思い出とともに、地域に寄せる思いや期待を語ってもらった。



◎5期連続「総じて停滞」…1―3月期道南経済レポート
 函館財務事務所がまとめた1―3月期の経済概況に関する「道南経済レポート」によると、個人消費の一部に好調な動きが見られたほか、低迷していた観光がJRやフェリーの利用増で前年並みに戻ったものの、全般的には低調で、5期連続で「総じて停滞しているものの、一部に動意がみられる」とした。

 個人消費では、主要大型小売店(7社)の売上高が、前年同期比3・4%減の133億600万円。コメや酒類などの飲食料品が同0・2%増の41億6700万円だった一方で、暖冬の影響から衣料品が同5・4%減の42億4900万円、身の回り品が同5・7%減の10億8400万円と不調だった。

 ホームセンター(4社)の売上高は、住宅リフォーム関連用品などで需要が高まったが、除雪関連商品が低調で、同11・8%減の29億3500万円と2期ぶりのマイナス。今回から大型小売店等と分離した食料品スーパー(2社)は、少雪による来店客増で売上高は同5・8%増加した。

 観光入り込み客数は、JRが同2・0%増の15万2000人、フェリーが同9・3%増の4万9000人と増加。空路が、道外客をはじめ台湾からのチャーター便減少などで、同3・6%減の18万8000人と低迷したほか、主要ホテル(11社)の宿泊客数も、同4・6%減の25万人に落ち込んだ。

 公共工事は、前年を上回る規模の補正予算による事業の実施や災害復旧工事により、同42・6%増の133億8200万円に達したが、2006年度累計では、前年度比8・4%減の861億9600万円だった。

 生産活動では、生コンクリートの窯業・土石や、珍味加工の食料品が前年割れ。しかし、半導体や水晶デバイスなどの電子部品、床板などの木材・木製品、造船、一般機械で、道外からの需要が目立つ。

 住宅建設では、持ち家が前年同月比6・8%減の69戸と3期連続のマイナス。逆に、分譲住宅が同57・1%増の66戸に好転し、全体では同6・1%増の350戸だった。(浜田孝輔)


◎企画「ザ・チャレンジ」磯浜料理
 三方を海に囲まれた函館市。イカやガゴメ(トロロコンブの仲間)など海の食材は豊富で、スーパーマーケットには季節の魚類が並ぶ。にもかかわらず、下ごしらえや調理方法が分からず、指をくわえて見ているだけ。函館生活も7年目。手軽にできるおいしい料理を学ぼうと、宿泊のほか野山クラフトづくり、磯浜体験などの教室を提案する「白浜のおばあちゃんの家」(同市住吉町16)を訪れた。

 道アウトドアガイドで調理師免許を持つ代表の木村マサ子さん(61)を講師に養殖コンブ・天然コンブを間引いた、いわゆる「早煮コンブ」の調理法を教えてもらうことにした。祖母と並んで台所に立った子ども時代。コンブは一晩置くほど時間をかけて調理していたことを思い出し「時間内に作れるだろうか…」と不安になりながらエプロンを手に取った。

 椴法華産の「おとひめこんぶ」でコンブ巻き、松前さくら漁協提供の細目昆布で「ゴマ昆布煮」に挑戦。「早煮コンブは調理時間の短さが魅力」(木村さん)と水の戻し時間は細目昆布が約10分、おとひめこんぶは約5分。約15センチにそろえ、3―4枚を重ね計20グラムになるように調整。旬の子持ちチカのほか身欠きニシン、サンマの缶詰などを中心にして巻く。

 コンブとかつお節で取っただし汁にコンブ巻きを入れ、途中、砂糖、しょうゆなどを加えながら約1時間ほど煮る間にもう1品。細目昆布を手早く刻み、いため煮した後、ごまをパラリ。教室中に広がる香りにお腹が切ない声を上げる。

 一晩どころか、2時間もかからずに出来上った2品を試食。薄味でコンブの味がしっかり楽しめ、いくらでも食べることができそう。コンブはヘルシーで美容にも効果があるといわれるだけに女性としてはうれしい。

 コンブ巻きは漁業の合間の休憩「空茶(からちゃ)」に食べたという。「親子で学んで家庭でも作ってもらいたい」。地元食材の普及を目指す木村さんの言葉をかみ締めながら、目の前に広がる自然に感謝した。

 〈メモ〉約2時間半で季節に合わせイカやコンブなどを使った3品を調理。食材によっては、前浜で磯浜体験も可能。料金は1人3000円で2人以上で受け付ける。問い合わせはTEL0138・22・2356。(笠原郁実)


◎温泉ホテル計画再開へ…桧山地域振興公社
 【江差】濱谷一治江差町長は2日の町議会議員協議会で、桧山地域振興公社(棚田清社長)が、昨年断念した鴎島入口での温泉ホテル建設計画の再開に向け、建設予定地の町有地売却を申請してきたことを明らかにした。

 提出された「旅庭・群来(くき)」の事業計画案によると、ホテルは2階建て延べ床面積は約1007平方メートル。10室の客室は2タイプあり、料金は1万5000円―2万円。総事業費は3億7200万円。2008年12月の営業開始を計画している。

 町有地は3793平方メートル。取得当時の価格は1億5000万円。町は随意契約で売却に応じる方向。濱谷町長は「計画が一度は頓挫したが過去の温泉掘削の経緯もあり、企業努力に期待したい」と話した。

 売却に際して町議会の議決は不要で、普通財産の処分を取り扱う審議会で妥当性を判断する。価格は不動産鑑定士に依頼して実勢価格などを勘案して決める。

 同社は01年に町有地で温泉を掘削し、地上6階建てのホテル建設を計画。03年には景観問題などから2階建ての高級ホテルに計画を変更したが、資金調達が難航して着工が遅れた。05年には客室数を削減するなど計画を縮小したものの、06年2月に計画断念を町に通告した。

 ホテル計画への支援策として03年、町は5年間で約1300万円に上る町有地の賃貸料を免除する時限条例を制定。だが、資金調達の遅れに伴い適用期間が経過。計画遅延の責任は同社にあるとして期間延長に応じず、用地売却にも難色を示した。同社は町に対し文書で法的措置を辞さないことを示唆した。

 暗礁に乗り上げたホテル計画をめぐっては、昨冬から道幹部や町議を橋渡し役に、町と同社が水面下で交渉を開始。4月下旬に同社が問題の文書を「妥当性を欠く」として撤回。対立を深めた町と同社の歩み寄りが実現した。(松浦 純)


◎政務調査費 使いません…公明党函館市議団
 公明党函館市議団(瀬尾保雄団長)は2日、記者会見を開き、本年度以降、会派に支給される政務調査費を、係争中の裁判がすべて結審するまで使用を自粛すると発表した。

 瀬尾団長は「市民の間に政務調査費に対する不信感が強い。毎年のように住民監査請求や訴訟が起こされ、裁判などに労力を強いられている。議員活動への支障はあるが、誤解を避けることで市民にも納得していただけるだろう」と述べた。

 政務調査費の支給額は、各会派の議員1人当たり月額5万円。通常は年2回6カ月分がまとめて振り込まれる。本年度は改選期のため4、5月分は4月に支給済みで、残りの6―9月分が6月、10―3月分が10月に支給される。

 同党市議団の場合、議員が5人いるため、年額は300万円。市議会政務調査費の交付に関する条例で、会派には必ず政務調査費が支給されるため、同党では、決算時に満額を返還するとしている。

 政務調査費の使途をめぐる訴訟は、道南市民オンブズマン(大河内憲司代表)が原告となり、2001年度分は被告側の市が最高裁に上告中で、04年度分は函館地裁で審理が続いている。(今井正一)