2007年5月6日(日)掲載

◎願いを託し…退任支所長に聞く(4)/細井徹さん(南茅部)
 2004年7月、現職町長が公職選挙法違反で逮捕され、衝撃が走った。函館市との合併まで残り4カ月余り。渡島東部4町村のまとめ役として、南茅部町が果たしていた役割は大きかった。当時、一度は出馬を否定したが、町内の混乱終息のため助役を辞し、同年8月末の町長選で初当選を果たした。

 ――町長としての任期もわずか。大変な時期でした。

 前町長の女房役として責任の一端は感じていたので、わたしも辞職するつもりでした。いろいろな人に「この急場をしのぐのはお前だけだ」と言われ、職場も放棄できなかった。合併に向けては、もう軌道に乗っていたので、特に問題はありませんでしたが、国保病院の医師や看護師の処遇や方向性、渡島廃棄物処理広域連合からの脱退負担金など、クリアしなくてはならない課題がありましたが、円滑に進めることができました。

 ――合併後の地域は変わりましたか。

 この地域が生き残る道は漁業振興しかなく、漁業からの波及効果が、他の業種にも及んでいく。現時点では、旧町時代からの事業も、順調に予算化や施策として実施されており、不平不満はありません。住民から具体的に「悪くなった」との声がないのは、この合併が良かったということ。わたしはそう考えています。

 それは、以前からこの地域が、経済や教育、医療、文化などすべて、旧函館市と一体だったからではないでしょうか。しかし、合併がなくては、いずれは財政的窮地が訪れていたはず。住民に心配をかけないで済んだ意義は大きい。住民も今はそれほど不都合もなく過ごしているのではないでしょうか。

 ――地域の課題は。

 まずは豊崎町までのバイパスの早期完成を国に要望してほしい。また、著保内野(ちょぼないの)遺跡から出土した中空土偶が5月末にも国宝に指定されることも決まり、展示する施設「縄文文化交流センター」(仮称)の整備を南茅部地域でお願いしたい。周辺の縄文遺跡を含めると、交通アクセス向上により、地域の文化と観光を一体化して進めることができます。(温泉施設の)保養センターとホテルひろめ荘も振興発展には欠かせません。漁業にも波及して、地域全体が発展ができるはずです。

 ――函館市としての発展は。

 合併で漁業の水揚げ量も道内有数の街になりました。豊富な資源に付加価値をつけて広く販売していかないといけない。市内の加工会社が買い取り、函館で加工した「函館ブランド」として売ってほしい。「南茅部産」と「函館産」では、全国的にネームバリューが違う。産地は、木直、尾札部産のまま、商品の名称は「函館―」としていけばいい。大都市圏に市のアンテナショップを置き、特産品の販路を広めていくべき。民間の力を借りて、是非やってほしいですね。

 ――地域の声の今後は。

 議員は地域の代表。議会では会派を持たないと弱い存在になってしまう。4地域から出た議員には、声を届ける場をつくってほしい。今後は、議会だけではなく、地域審議会の役割や重要性が発揮されるはずです。これまでの審議会以上に、活発な議論がされることが重要になってくると思っています。(今井正一)


◎企画「はたらく乗り物」 超低床市電「らっくる号」
 函館のマチに颯爽(さっそう)とお目見えした超低床市電「らっくる号」。話題を呼んだデビューから1カ月余り。「『いつ、どこを走る?』などの問い合わせがようやく落ち着いたところ」と、函館市交通局の管理運輸部運輸課営業係主任主事の岩田裕幸さんは笑顔で話す。

 レトロな雰囲気の既存車両と大きく異なる外観が目を引くが、車内の設備や機能も最先端を行く。乗降口、床にはほとんど段差がなく、料金表は液晶画面でより見やすくなった。座席の一部は収納して、車いす専用のスペースにすることもできる。

 乗り降りのしやすさや乗り心地の良さは、利用が多い高齢者に配慮した結果。だが、北海道初の2連接の車体やざん新なデザインは、通学の中高生や子どもたちも魅了する。中には「折り返しを1時間半待った」という生徒もいたとか。「電車、鉄道ファンも含めて、関心は予想以上」

 これからは修学旅行シーズンが本番。お土産やカメラなどを手にしたグループが電停や市電内でにぎやかに函館散策を楽しむ姿はおなじみだ。「低料金で行き先や経路がわかりやすいので、市電は修学旅行生にとって頼もしい“足”。らっくる号もさらに大活躍するはず」

 「でも」と岩田さんは続ける。「らっくる号の登場を機に、函館市民に市電を改めて見直してほしい」。日中は5分間隔で運行し、渋滞に巻き込まれることもない。「市民が市電の便利さを知り、もっと活用してもらいたい」と願う。

 路面電車が函館に開業したのは1913年で、6年後には100周年を迎える。「らっくる号」は近未来型の車体で、1世紀へと続く市民の変わらぬ足となっている。(原山知寿子)


◎企画「水のある風景」森町鳥崎八景二見ケ滝
 森町のアウトドアの名所鳥崎渓谷八景。国道5号線から鳥崎川に沿って上流へ向かうルートに、8カ所の景勝地がある。3番目の二見ケ滝は水の流れが緩やかで、水の音はささやくように聞こえ、ゆったりした気持ちにさせてくれる。

 同川周辺では、新緑がまばゆい季節を迎え、二見ケ滝のがけ岩も、緑色が輝き始めた。木漏れ日を受け、若葉とともに輝く滝は、しばらくすると葉の茂みの奥に隠れるようになる。滝の全景を見るにはいまの時期が最適だ。(山崎純一)

 ◆鳥崎渓谷八景・二見ケ滝 国道5号から道道霞台森停車場線(606号)に入り約5キロ


◎夜桜見物にぎわう
 ゴールデンウイーク終盤を迎えた5日、ソメイヨシノやヤエザクラ約420本が植えられている函館市青柳町の函館公園では、ちょうちんの明かりで照らされた夜桜を楽しむ家族連れなどが続々と詰めかけた。園内はほのかな明かりに浮かび上がるサクラの下、露店などで購入した食べ物を手に歩く人が夜遅くまで散策を楽しんでいた。

 同市は4日にサクラが満開となり、この日は朝から大勢の花見客が訪れた。暖かな日中とは打って変わり、午後8時現在の気温は9・7度。肌寒いとあり、シートを広げて料理を楽しむ人たちは上着姿で歓声を上げていた。

 市内の高校の同窓生3人で訪れたという同市深堀町の主婦古田江里さん(39)は「明日もまだ休みなので、今日は存分に楽しめる。ことしはいい日に満開になってくれた」と楽しんでいた。

 夜桜を楽しめる同公園と五稜郭公園の花見電飾は13日まで行われている。時間は午後7―9時(土、日は同10時まで)。(山崎純一)